3923 ラクス CAGR30%実現に向けて成長投資の期間

2018年12月27日

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成長企業への投資で重要なのは、
・その企業が提供する製品・サービスが潜在需要を掘り起こしているか。
・その潜在需要が満たされていない状況が続いているか
を確認することである。

潜在需要があるかを確認するとき、まず利益率を見る。
基本的に
”利益率が高い”=”需要が大きい”
と考えていい。

”利益率が高い”=”価格が高い”
 ということで、高い価格でも買ってくれる需要があるということ。

また、利益率が低い場合でも、需要が強い場合がある。

 利益率が低い時は2つのパターンがある
 ①値下げをして売る
  需要を無理に作りだしている。
 ②投資を積極的に行う
  供給のためのリソースを拡充し需要に応える。

様々なケースがあるがおおよそ、こんな見方でよいだろう。  

改めて言うまでもないが、
ラクスの提供するサービスは明らかに大きな潜在需要があり、満たされていない。
ラクスの場合、②の例である。

ただし、サービスの性質上、価格を上げにくい、という点は考慮したい。

決算も含め、順に見ていこう。

<要旨>

・想定を上回る決算

・楽楽清算はシェア確保のための投資期間
 メールディーラーは圧倒的なシェアで高収益確保

・継続的な成長の体制が整いつつある

・IT人材事業はテコ入れ期間終了で収益改善

・買収企業の貢献はまだ先

〇想定を上回る決算

 2018.3期は増収増益、会社計画を上回る決算を達成

 計画 → 実績 (単位:百万円)
売上高 6,050 6,408 前期比+29.9%
営業利益 1,172 1,241 同+27.2%

主力の楽楽精算、メールディーラーが想定以上に売り上げを伸ばした。

〇楽楽清算はシェア確保のための投資期間
 メールディーラーは圧倒的なシェアで高収益確保

 導入会社数の伸びは加速している。

 楽楽精算導入社数 (前期末比)
 2016.3期末 1,236 (+476) 
 2017.3期末 1,957 (+721) 
 2018.3期末 3,027 (+1,070)

 楽楽清算は積極投資を続けている。
 サポート、開発人員の採用、広告宣伝費等による効果が表れた。

 結果、2018.3期はわずかの黒字計上にとどまった。

 収益性は価格戦略投資戦略で決まる。
 旺盛な需要に対して、価格を挙げつつシェアを拡大できるのが利益成長には理想的なパターンだが
 コスト削減が目的のサービスのため、値上げは将来的な解約リスクや新規受託の障害になる。
 価格は維持しながら、機能拡充でサービスの満足度を高め、シェアを拡大をする。

 楽楽精算が提供する経費精算システムの市場は成長途上

 同社がターゲットとする従業員50名~1000名の中小企業10万社
 うち、経費精算を紙やExcelで行う企業64%の企業64000社のうち
 最低20,000社の獲得を目指す。

 導入後はスイッチングコストが高いサービスであり、早期にトップシェアを確保することが目標。

 投資をしただけ、売り上げが伸びる状況でコストコントロールが重要になるが
 同社は増収のための投資の費用対効果を意識して投資金額をコントロールしている。
 そのために効果的な投資を積極的に行う方針。

〇メールディーラー

 圧倒的シェア(7割)で高収益のメールディーラーが想定以上に伸びた。
 顧客の利用状況にあったサービスを提案できたことで単価が高い顧客が増えた。

〇IT人材事業はテコ入れ期間終了で収益改善

 業績推移からもわかる通り、増収減益で収益性は低下傾向にある。
 2019.3期は増益に転換する計画。
 人材不足が叫ばれる中で意外な印象だが、過去数年は定着率を高めるための構造改革を行ってきた。
 給与を売上と連動させ、満足度を高めることで退職率を落とすなど社員の待遇改善を行ってきた。
 その効果により収益性は改善すると考えている。
 IT人材はニーズが高い為、会社が想定するような成果が得られるか。
 離職率の変化、収益性の改善など今後の成果に注目したい。
 
 IT人材事業の業績推移(単位;百万円)
  売上高 利益
 2016.3期 1,361 179
 2017.3期 1,441 140
 2018.3期 1,660 134
 2019.3期(予) 1,928 188
  

〇買収企業の貢献はまだ先

 メール配信システムの売り上げ拡大のため、
株式会社ブレインメール(現 株式会社ラクスライトクラウド)を買収

同社の既存のメール配信システムと買収したブレインメールは
顧客1社あたりの単価で差別化されている。

既存のシステム:10,000円
ブレインメール:2,000円
提供するサービスの幅、顧客層を広げることにつながる。

同社のクラウドサービスはキャッシュが残りやすいビジネスである。

キャッシュを成長の為に有効に生かすうえでM&Aは有効な選択肢の一つだろう。

今回のM&Aについて簡単に見てみておきたい。
M&Aの評価は慎重にすべきであるが主に評価の基準は大きく次の2つだと考えている。

①相手企業の事業を熟知しているか
②安く買えたか。

①についてはすでに事業を持っており全く問題ないだろう。
 共通するノウハウがある点ではシナジーも期待できる。
 反面、同社を別会社のまま運営する予定であり、別会社で継続することで
 どれだけシナジーを発揮できるかという点は若干気になる。

②安く買えたかどうかは賛否があるのではないか
 買収価格については現状の情報だけでは評価しにくいが
 ”高くはないが安くもない”
 という印象。
 ・別会社で継続するためコスト削減要素は小さい。
 ・業績からの評価
 2019.3期の見通し(買収先ブレインメールの影響額)
 売上高427百万円
 営業利益181百万円
 と非常に高収益であるが
 営業利益 1.8億円×0.65=約1.2億円で取得総額15億円 PER12.5倍
 取得総額/営業利益 8.5倍

 のれんの8年償却、顧客関連資産5年償却
 という計画。

 昨今、大型で割高なM&Aで失敗している例が目立つが
 以上2つの点からみてその心配はなさそうな印象である。

〇高い成長目標

 CAGR(年平均成長率)30%を目標に掲げ、今期は成長投資を優先する方針
 最終利益はわずかのプラスに留まる。

 2019年3月期の会社計画
 売上高 8,430 (前期比+31.5%)
 営業利益 1,376 (同 +10.9%)
 当期純利益 890 (同 +1.7%)

 成長する市場に積極投資をすることで高い成長を維持する。

 事業環境に変化があったとしても、これまで同社を成長させてきた経営判断が行われれば
 無理な計画とは言えない印象。

2018年12月27日銘柄研究所

Posted by ono