6544ジャパンエレベーターサービスホールディングス銘柄研究 byやのや

既存の資産である住宅の維持、活用が課題になる中で、今後マンションやビルの老朽化対策である維持・修繕は中長期で増えてくるのは目に見えておりますね。
市場原理が働けば、同じ品質で安全が買えるのなら、安価なサービス価格を提示してくれる良心的なメンテナンス事業者は選ばれていくのは当然の流れでしょう。
同社はエレベーターのメンテナンスの契約期間は1年ですが、サービス内容からスイッチングコストが高く、着実なストックビジネスと言えるでしょう。独立系のポジションを活かし、シェア拡大しています。
必要なインフラであるエレベーターの管理という事業の特性から、好不況にかかわらず、安定した成長が期待できるのではないでしょうか。

それでは、早速事業内容から見ていきましょう。

 

○沿革と企業情報

独立系のエレベーターメンテナンス業でシェアトップの会社である。エレベーターのメンテナンスだけではなく、老朽化したエレベーターのリニューアル工事も取り込み、全方位で展開している。
石田社長は、独立系のエレベーターメンテナンス会社最大手SECからキャリアをスタートし、エレベーターメンテナンス業界への知見と経験が豊富で造詣が深い。1994年に現社長の石田氏が29歳のときに設立した。
2018年3月末時点で、国内拠点数69箇所(前年より6拠点新設)、海外関係会社3社、従業員991人(前年より64人増加)を抱える。
エリアとしては、北海道9拠点、東京2拠点、埼玉13拠点、千葉14拠点、神奈川17拠点、東海4拠点、関西3拠点、部品7拠点と展開する。
関西への展開は2017年から開始しており、今後は面での展開も期待できる。
海外は香港本社でインド現地のジンダルという財閥と合弁会社を設立し、エレベーターのメンテナンスと新設を行う会社を設立しており、海外展開も中長期では視野に入っている。

エレベーターの法定償却耐用年数は17年で規格型エレベーターの耐用年数は25年とされている。また、メーカーによる部品供給停止年数は、20~25年程度である。
リニューアル工事は、設置後20年を経過したエレベーターが対象となる。

○ 国内の保守エレベーター台数の市場規模

2017年の三菱UFJリサーチ&コンサルによると、国内エレベーターの年間の保守台数は約100万台あり、年1万台増加している。直近では年に1%程度の成長率に鈍化しているが、これまでエレベーターの保守台数は右肩上がりで増えてきた。
十数年前の2004年ごろは80万台程度の市場規模であったことを考えれば、この十数年で国内のエレベーター保守台数は2割以上増加したことになる。
年間の保守台数のうち、メーカー系の保守が8割で独立系の保守は2割の内訳となっている。
三菱ビルテクノサービス、日立ビルシステム、東芝エレベーター、日本オーチス・エレベーター、フジテックが日本5大メーカーである。
欧米では独立系の保守エレベーター会社が5~6割のシェアを持つが、日本の独立系はそれに比べるとまだ低い。
メーカーの新設エレベーターはゼネコンからの受注が9割である。各大手メーカーのシェアをゼネコンが指定するため、各大手メーカーは新設エレベーターを低採算で設置する。このため、導入時の赤字をエレベーターメンテナンスやリニューアル工事で稼ぐモデルとなっているのが実態のようだ。
大手メーカー間には紳士協定のようなものがあり、遠隔リモートシステムの関係から自社のエレベーターしかメンテナンスできないため、大手メーカーお互いにシェアを奪いあったりはしない。そのため、競争原理は働いておらず、メンテナンスコストは高止まりしているのが現状なのだ。

○シェア

独立系は国内に約300社程度あるようだ。
日本人はブランド志向が強いので、独立系はメーカーよりも安い価格を提示する必要がある。
同社は独立系の中で最後発であるが、同社のシェアは独立系の中で25%とトップシェアになっている。全体の市場規模のうち、独立系が2割なので、全体のシェアはまだ4%とポテンシャルは大きい。

 

○最後発の同社が独立系トップとなった理由

なぜ、同社が独立系のエレベーターメンテナンス会社の中で後発ながらも、異例の成長を遂げてきたのか。
創業時から高いメーカー製純正部品を使うことにこだわっており、部品購入のためのお金もかかっていたが、先行投資としてリモートシステムの開発を推進した。

その結果、2007年にリモート遠隔点検システム「PRIME」を導入でき、独立系で唯一大手メーカーと遜色ないリモート遠隔点検サービスを提供できることになった。
エレベーターの運行状況をリアルタイムで把握し、トラブル発生時には最寄りのエンジニアに障害情報を発信する。情報を受けたエンジニアが現場に急行するサービス体制を構築している。「PRIME」によって、自動診断運転による異常の予知ができ、故障の原因を特定し、遠隔操作によるメンテナンスを実現する。このシステムにより、点検時の停止時間の短縮や迅速な緊急対応が可能となった。また、有人点検が1ヶ月に一回必要であったが、3ヶ月に一回の頻度でよくなり、効率化がなされた。

国内で複数の特許取得しており、海外でも特許申請している。
メーカーは自社の機種に関してはこのようなシステムを構築しているが、他メーカー製エレベーターにはシステムを持っていないため、他メーカーのメンテナンスを物理的に獲得できない状況にある。同社の強みは、5大メーカーに対応できるリモートシステムを保有していることだ。

2017年10月に高層テストタワーを有する総合技術研究センターJIC(JES Innovation Center)を開設した。これにより、リニューアル事業の新制御盤の研究開発や「PRIME」のアップデートのスピード向上が可能となった。また、非常用発電・太陽光発電等により最大81時間の電力供給が可能となり、コントロールセンター等のBCPが強化された。

 

○ 顧客

ビル管理会社が6割、管理組合、大型商業施設、官公庁、ビルオーナーが1割ずつのイメージとなっている。
同社は5大メーカーのメンテナンスを中心に顧客を獲得している。
メーカーの場合は機種や使用年数によってメンテナンス料は大きく違うが、イメージとして、月5~6万円のメンテナンス料が同社に切り替えれば、月3万円くらいに抑えられることで、費用面のメリットや上述のリモートシステムを有することから同社に切替えが進んでいる。

 

○ 同社のエレベーター保守台数の推移

2011年3月期 保守台数2万台            売上56億円
2013年3月期     2万5600台          売上77億円
2015年3月期     3万2000台          売上104億円
※ ここまで2年毎の開示なので、注意。

2017年3月期     3万8800台          売上135億円
2018年3月期     4万3400台(前年比+11.8%) 売上153億円(+13%)
上場によって、認知度高まったことや関西エリアの営業を開始した結果、保守契約台数の獲得が年間4600台と前年度の獲得よりも大幅に増加した。ちなみに関西エリアは4600台のうち800台とのことである。

 

○ 同社の売上構成

18年3月期時点の売上のうち、保守保全事業が約8割、リニューアル事業が約2割という構成となっている。保守はストック収入となり、リニューアルはフロー収入である。

ビジネスモデルの特徴として、保守・保全とリニューアルが相互に強くつながっている点だ。つまり、保守・保全事業から耐用年数が経過するとリニューアル工事契約の獲得につながるし、またリニューアル工事契約を獲得した後、今後の保守・保全契約も獲得できるという循環型であるということだ。
リニューアル工事は官公庁中心に3月中心の案件が多いため、売上は4Q寄りになっている。
また保守保全契約は、マンションの管理組合の決算期などの関係で、4月からの契約切替が多いため、4月に増える傾向にあるため、4月の純増数は突出している。

① 保守保全事業
<保守業務とは>
・法定検査(建築基準法に定められている) 
・定期点検 (清掃、注油、調整、消耗品の補充・交換など)
・監視サービス(異常・不具合の有無の調査、遠隔監視・遠隔点検含む)
・ 緊急対応

<保全業務とは>
・ 修繕工事(点検結果による劣化した部品の取替えや修理など)

契約形態は下記の2パターンとなっている。
フルメンテナンス契約(保守・保全業務すべて)  約4割
POG契約(保守業務のみで、保全は都度課金モデル)約6割

使用頻度と磨耗率、走行距離(制御盤に指示のデータが残っている)、築年数によって、契約の料金は様々で全て見積もりが必要となる。
フルメンテナンス契約とPOG契約の合算の平均は、月平均2.3~2.5万円程度のようだ。POG契約は約1.8万円~となっている。

②リニューアル事業
制御盤と巻上機の主要部品の取替えを同社がメーカーとして行う。
中長期的にはエレベーター新設市場は横ばいで、リニューアルマーケットが活性化してくる見通しで、リニューアル事業の伸びは強くなる見通しだ。
制御盤の寿命は20年くらいで、大手メーカーが古い部品の供給を数十年経てば停止するので、大手もリニューアルを提案営業している。

 

○ 今期から本格的に分割リニューアルの市場を開拓

一括リニューアル(制御盤、巻上げ機、操作盤、天井LED)では、1台で600~1000万円かかるが、分割リニューアル(同社サービス名:クイックリニューアル)では、巻き上げ機は保守保全で長く使えるので、制御盤(頭脳)だけ変えることを提案する。1台約250万円と半分以下にコストを抑制できる。また作業も一括リニューアルは1週間エレベーターを停止する必要があるが、クイックリニューアルは約半日で終了するため、顧客利便性も高い。 

5大メーカーの日立、三菱でも現在2機種でしか分割リニューアルが対応できていない。
三菱は、エレモーションプラスゼロ(止める時間ゼロ日)として、一括リニューアルよりも分割リニューアルのほうが高い価格1300万円を提示している。

売れた機種中心に同社2機種できる技術持ち、今期中にさらに2機種の開発する方針。中長期では、これまでたくさん売れた15機種を中心に開発していきたい。
現状リニューアルの市場規模は40~50万台で、そのうち30万台は分割リニューアルになっていく見通しだ。同社の前期末契約保有台数43400台のうち、1600台が分割リニューアルの対象営業エレベーターとなっているようだ。

 

○新規事業として、エレベーター内の「広告収入モデル」を立ち上げ

エレベーター内に防犯カメラ内蔵のサイネージスクリーンを同社が無料で設置し、スクリーン上に動画広告を配信し、広告収入を獲得する。同事業は(株)INFORICH社と協業で行い、収益をレベニューシェアするモデルとなっている。
(株)INFORICHはサイネージスクリーン機器開発や広告主営業をする会社で、サイネージスクリーンのコストは(株)INFORICHが負担するため、同社のコストは増えない。同社は設置作業をするだけであり、事業立ち上げコストが小さく、事業の可能性は大きいと考える。
新たな収益源として、第二の事業に育成していくことに期待したい。

 

○限界利益率

 
保守業務は9割超、保全業務は部品調達コストがかかるので5割、リニューアルは外注費や材料費かかるため、35%程度の限界利益率と想定する。

18年3月期粗利率は34.7%で前年比2.4%改善した。保全・リニューアルで故障率を下げたことや生産性改善が寄与した。

 

○人の採用

2017年3月期の上期に営業人員を大幅に増やしたことで、反動で前上期は大幅増益となっている。社員数は前期末で991人、18年4月に新卒32名入社。今期末19年3月期目標は80名増員の1070名を目標にしている。2年間はトレーニング期間とし社員教育にかなり注力しており、担当ゼロの社員が現在60名程度おり、人員は余裕がかなりあるようだ。

生産性は都市部を中心に展開していることもあり、一人月100台(渋谷などは一人150台)、同業の中で最大の生産性を誇る。
年3000~4000台の新契約を獲得するのであれば、年30~40人増やす必要がある。
年間、新卒採用30~40人を目標に中途も採用すれば、今の成長には十分と言える。
現状の人員でも6万台までは今の人員で対応可能と見ており、さらに生産性向上に期待ができる。
M&Aで時間を買うことも意識している。4年前、北海道M&Aしたが、現在道内のシェアは2割と成功している例もある。

○ ターゲット 

日本のビルの90%以上を占めている15階までのビル。高層ビルはターゲットにしていない。高層ビルは速度が早くて特注品で部品が高くて数が少ないため。

シンドラーの事故のメンテナンスをSECがやっていた。同社はシンドラーはやらない。
5大メーカーはこれまで人命事故はないので、同社はそこしかやらない。

 

○今期予想の前提

保守保全事業  売上128億円(yoy+6.2%)
リニューアル事業   40億円(yoy+22.4%)

保守保全事業の前提として、月に300台程度の獲得を見込んだ数字。保守的な印象の会社計画である。仮に前期並みの4600台獲得できれば、台数成長で1割成長は見込める計算となる。

○バリュエーション

株価    2225円(5/24終値)
時価総額  445億円
PER(会社予想)48倍
EV/EBITDA 23倍
PBR 16倍
利回り0.6%

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA