プロを育てるとは?  リーダーを育てること by yamamoto

人を育てる プロを育てる

株式投資を始めようかなと80を超えた両親が私に相談するものだから、「やってはいけない」と止めたのです。私は投資家の育成にはそれほどは興味がありません。株式投資について私も啓蒙書の類を何冊か書いています。しかし投資は簡単なものではありません。投資は誰にとっても趣味になるような俳句や将棋のようなものではありません。ですから儲かるならちょっとやってみようかなという程度の心構えでは折角の初心者を落胆させるのがオチ。
 
覚悟のない投資家の数がいくら増えても世の中はよい方向には変わりません。投資家としての質が伴わないからです。何事にも言えることですが質が伴わないものを社会の中で増やしても意味がない。それどころが害の方が大きいのです。
 
質とは、まずは投資の目的がはっきりしていること。投資ですから結果も大事です。目的とは長期の益(つまりインカムゲイン)を積み上げること。そのためには長期で物事を分析すること。常識力も一般教養も必要になります。
 
一方、投資の短期的な値上がり益を目的にはしないということ。
 
こんな人々だったら社会にもっと増えたらいいなという投資家の理想像はあります。短期的な株価の動きに一喜一憂しない投資家。そういう投資家が増えると市場は落ち着きます。そして投資先の事業に共感していること。そしてその事業を長期的に是が非でも応援したいと思うこと。さらに業績が悪い時にこそ経営者を励まし社員を労わる。そのような覚悟があるとなお、よいですね。
 

アナリスト養成講座とリンクスリサーチ 

年に一度 アナリスト養成講座(8週間)やっておりますが、2018年から続けております。この講座はプロ運用者を育成するためのもので非常に厳しい内容になってしまいました。卒業した方の中にはシンガポールの長期投資の機関投資家に就職するものもおります。プロを目指す以上、高いハードルを課しています。その1つのハードルが毎週のディープレポートです。業績予想やビジネスモデルの説明とValuationsです。毎週出すのが卒業生たちの日課になっています。卒業生たちの任意参加でグロース銘柄発掘隊という団体が結成され子月隊長が率いています。北米の長期の投資家の調査を請け負うなど収益業務も任せています。月々1万円というお値打ちなお値段でNPOイノベーターズフォーラム億の近道の有料メルマガも手がけています。そのため毎週毎週調査しレポートを書くという修行の日々なのです。

プロを育成するためには継続が力。何かに真摯に打ち込む姿勢がなければなりません。今は日本に長期の株式運用ができる専門家がとても少ないのです。私も次世代の若手の育成は必要であるとの思いから重点的に数人のグロース銘柄発掘隊の幹部たちにはかなり厳しい指導を日々しているわけです。
 
まず土曜日と日曜日は全て勉強。仕事があっても朝と夜は勉強。忙しくても時間を無理にでも作る。これができなければ指導することに意味がなくなってしまう。不特定多数の方々に対しては「投資は趣味にはなりませんよ」としか言わない私ですが、本物のプロを作るのことには本気です。お金にがめつくない人間を育てるのが目的です。そして質が高い技術を持った本物の長期の投資のプロを育てればそれでいい。社会の方々はそれぞれのお仕事に邁進し、仕事に燃える社会人の特に若い人々は株の運用はプロに任せておけばよいと私は思っています。
 
質を高め、技術を伝承するためには、教える側にも厳しさがどうしても必要になります。プロの運用者を一人育てることに膨大な価値があるのです。運用者を目指すならば、運用以外のことは残念ですが諦めてもらう。プロになりたいなら、楽しくワイワイガヤガヤ時間を浪費することは避けてもらいたい。できれば旅行などはいかないで欲しい。グルメやおしゃれにならないで欲しい。
 
普通に暮らして普通に楽しむならば時間給で働く楽しいおじさんになればいいだけのこと。5時に上がって働き方改革を満喫して、「ああ今日は何しようかなあ」なんて毎日を過ごしていただければそれで最高です。それも大変立派な人生です。そういう方には私は優しいわけです。楽しいことをいっぱいして悔いない人生にしてもらいたいのです。
 

子育てとリーダー育成

子育ても同じ。厳しくするに限る。私は子供を育てているのではなくて社会のリーダーを育てているという思いです。一人前の大人になって大学まで出せばそれで終わりとは思っておりません。苦しい時に周りが頼りにするそんな本物の男になってくれという思いで厳しくしている。子供のときから周りの問題は自ら解決しろと考えさせてきました。「いじめのないクラスを作るのはお前の仕事だ。大人の仕事ではない。先生の問題でもない。お前たち自身の問題だ」と自覚を持たせました。先生を助けてよいクラスにするのはお前の仕事だ。チームをまとめるのもお前の仕事だ。家事もさせている。習い事も許さなかった。下町に住み、保育園から大学まで全て公立。今時の人間関係は希薄です。学校でわからなければ先生に聞け。友達同士で教え合え。至極当然のことが今の子供達はできないのです。できれば1つの問題集を何度もやってほしい。それがボロボロになるまでやっていればいい。友達がいて先生がいて問題集があれば塾にも行く必要はない。
(わからなくても何度もわかるまで読む。そうなると本はボロボロになる。写真は数学書。ガムテープで補強しないといけなくなるまで読み返す。ボロボロになった本が何冊あるか。そう自問してほしい。わからないことに何度も何度も挑戦してわかるようになることで人は成長する)
 
フィナンシャルアドバイザーの友達の中には子供の頃にお金の教育は必要だと熱心に活動している人もいる。立派な活動であり人を一般社会人として育てるならそれでいいと思う。
 
ただ私は子育てでもリーダーを育てているのです。そして運用業界のプロを育てるのですが、もちろん業界のリーダーになるように厳しく育てるのです。結果の全てを背負い、運用がよくても成功報酬など求めない。悪い時はじっと基本に忠実に自己研鑽に努める。専門性を身に着ける努力をずっと継続する。
 

リーダーシップとプロ

プロを育てるということはある意味、リーダーシップを身に付けさせるということです。業界や社会のリーダーになってもらう。業界としての1つの目標を定め時間をかけて成し遂げる。投資には膨大な集合知が必要だし、多数の専門家の声を集約しなければ投資プロセスは不完全です。リーダーでなければそれら人間たちを束ねることはできない。リーダーの人間力が必要なのです。多くの個人投資家はわずかな情報を元にして銘柄を過度に集中し、自らの立場を過激に正当化することに熱心です。常識的、教養的には疑問符がつく壮大な仮説を立てて壮大な業績拡大シナリオを描く。しかしプロはそういうことはしない。そして、そうあってはならないのです。世間を知らずしてはプロにはなれないです。そして、人は頭の中で妄想する。その妄想にはあまり価値はないことを自省せねばならないのです。私たちは世間をよく知り、できなくても確率を計算しようとトライして、将来の想定をしなければならない。ですから我々には特許を読む力も、数学も物理も化学などの学力も全て必須なのです。世間を知るということは深い教養を身に付けるということであり、古典も哲学も全ての教養が必要となるのです。どうでしょうか。そんなこと、一朝一夕にはできないものです。それでも20年かければ差別化になりそれが日本の運用業界の競争力になると思うのです。
 
リーダーシップがある人間を育てるということは、将来、どの道、何らかのプロになるということでもある。厳しくする方がこちらもシンドイ。楽にできれば楽にしたいものだがそううまい話はない。教える方はシンドい。そうじゃなくではプロは育てられない。世論や他者の目を気にする人間はリーダーにはなれない。たった一人でも信念を貫く、そういう人間を業界に一人でも多く輩出できるように頑張っていきたいと思うのです。
 
それにしても、グロース銘柄発掘隊はすでにTOPIXを36%アウトパフォームしたのか。そして毎週ディープなレポートを2年近く出し続けている。これがどれほどシンドイものか。やってみればわかることですが、それをやっている人々がいて、私も彼らに教えられることが多い。
 
私のダイヤモンドフィナンシャルリサーチの会員の中にも熱心なプロと呼べる人々が多数いらっしゃってどの方もかっこよいのです。どうしてカッコイイか。それは自分の裁量で自分の判断を下しそして他者の目を気にしないところでしょうか。プロとは、リーダーであり、リーダーとは趣味と仕事が一体化した方であるのではないかと思いました。