PERって意味ないの?あるの?

前置き

PERって意味ないよね。という話がTwitterで盛り上がったそうです。

議論の内容はくわしく見てないのですが著名個人投資家の方も反応したとか。

「意味がないならなぜ公開してるのだろうか?」

ざっと見た感じという意見もありました。

たしかにそうです。

意味があるから公開してる。

「株式投資の基本」的な本を見ても必ずPERについては言及があります。

アナリストレポートを見ても必ずPERについて言及がある。

だから意味がないはずがない!!

・・・・ほんとに?

・・・・確かめたの?

確かめてみた

ヤフーファイナンスに出てるのは実績PERではなく1期先予測PERです。まず確かめるのは「1期先PERと翌年のPERはどのくらい相関があるのか」です。

役に立つ数字ならある程度両者が関係してるはずです。N年目の実績PERとN-1年目の1期先予想PERの相関関係を見ます。

相関係数というのはものすごく大雑把に言うと、2つの変数をX軸とY軸にプロットしてその点の集まり具合を計算するやりかたです。

例えば、夏の気温をX軸、電気の消費量をY軸とします。

毎日の夏の気温と毎日電気の消費量をみてグラフ上に点を1個づつ描いていきます。
そうすると点の集団が出来ます。集団はたぶん右肩上がりになるはずです。
夏の気温が上がればクーラーをたくさん使うので電気消費量が上がると。
こういう関係がどのくらい強いのかというのを数字で返してくれます。
相関係数が1に近いほど相関関係が強いです。

さて、こういうデータセットを用意しました。
証券コード、日付、1期先予測PER、実績PERです。
予測PER、実績PERともは月末時点のものを使っています。

予測PERを1年ずらします。これで1年先の実績PERとの比較が出来ます。

カラムに予測PERと実績PERが両方入っていてほしいのでちょっと加工します。

予測PERと実績PERが入っていない行は全部削除します。

 

相関係数を見る

それでは全銘柄の予測PERと、1年後の実績PERの相関係数を見てみましょう。

・・・・・ほとんど相関がありません。

PERのレンジごとに見たらどうなるか?

低PERとか高PERとかで見るとうまく相関があるのかもしれません。
PERごとにビン分割して計算します。

これも相関がないですね・・・。

もうちょっといろいろやってみる

予測というのは当たったかか外れたかが問題なのではない。
予測は現在の投資家の期待である。
投資家の期待ごとに株価のパフォーマンスが変わるはず。
たとえば期待されていない銘柄ほどパフォーマンスが良い、などの法則があるはず。

それを見るべきではないか?

という反論もあるかと。

と、いうことで予想PERと1期先実績PERの乖離値みたいなのも出してみましょう。

(1期先実績PER – 予想PER) / 予想PER

としてビンごとにどのくらいの割合で乖離したか見てみます。

E_PER_BINがPERのビン(グループ)です。
ビンごとにPER乖離値の最小値(min)、平均値(mean)、最大値(max)、標準偏差値(std)、サンプル数(count)を出します。

 

PERが低いものは乖離値の標準偏差が高いです。
PERが高いものは乖離値の標準偏差が低いです。
(標準偏差はサンプル中の値のばらつきを表します。値が大きいほどばらつきます。)

PER0-15ぐらいは最大値も大きく、標準偏差も大きいので、予想からPERが大きく乖離しやすいようです。
PER15-50ぐらいだと最大はそれほどでもなく予想からの乖離が低いようです。
PER100以上の超高PER銘柄も予想からそれほど乖離しないようですね。

まとめ

  1. 予測PERはほとんど当たらない。
  2. 予測PERがほどほど、高め、の銘柄は来期の実績PERと乖離する確率が低い
  3. 低PER株はボラティリティが高い

ということがわかりました。

中、高PERの銘柄は予測がしやすいのであまりぶれないのでしょうか?

PERはワリと意味があるみたいです。
ただ予測PERがそのまま来期実績PERになるか、というとそうでもないようです。

おことわり

月末ベースでPERを出したので、すべての日付に渡って見ればもう少し結果が変わるかもしれません。

じゃあPBRはどうなのよ?という意見もありそうですが、予測PBR値がデータベースになかったので、計算しておりません。

PBRは数年先に効いてくる、みたいなことも検証できないことはないですが、まぁそれはまた今度ということで。

またこの記事は計算結果を書いただけです。

「このとおりやれば儲かる戦略」とかの宣伝ではありません。

この記事を参考にして投資すると損することがあります。

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追記

 

PERはワリと意味があるみたいです。

と書きましたがこれデータの見方しだいです。

例えば予測PERが30-50のグループ。

標準偏差が一番低いのでこのグループの予測と実績のブレ幅は他と比べると小さいです。

しかし、予想と実績の乖離の平均は0.717倍。

これの標準偏差は7.76なのでPER30-50のグループは1標準偏差が 8.477倍から-7.043倍です。

乖離がそもそも8倍から-7倍というのは結構大きな数字です。

確かに他のグループよりブレが少ないですが、個別のブレを見てみると結構大きいです。

PERはリスクを減らす目安にはなるかもしれませんが、予想そのものは実績と大きく乖離します。

コラム

Posted by 古瀬雄明