グレアム指数PERxPBRの使い方 (って使いようがねえっす泣!) by yamamoto

PBR/PER=ROE

PBR/PERはROEのことです。ROEの高い企業はPBRも高くなるものです。

PERとPBRとを掛け合わせた指標があります。それはグレアム指標(あるいはグレアムのミックス係数)と呼ばれるものです。

グレアム指数 

PERとPBRの両方を重視すると、困った問題がおきます。

企業の質が犠牲になるのです。

グレアムさんは私の大学の大大大大大大先輩ですが、困った指標を作りました。グレアム指数という困った指標で、これは PERとPBRを掛け合わせてしまったものです。こういうことをされると後輩としては辛い。

グレアム指数とは株価の二乗を(EPSとBPSの積)で除したもの。それが何を表すかと考えたときに、株価の二乗で指標が効くため、低位指標株を過大に評価してしまう懸念があるのです。

在庫(BS)で売上(PL)を割るとその比率は高い方がよい。また、営業利益率も高い方がよいのですが、その場合、投資効率の高さはPBRに反映されます。(当然ですが…)

したがって、PBRの低さとは、企業の再投資収益率の低さを示すものです。

PBRの低さは、投資の安全度でもなければ、投資案件としての安さでもないのです。PBRの低さは、差別化のできない企業であることを示します。つまり、PBRの低さは企業のダメさ加減も示すからです。それらの企業の過去の業績をエクセルでインプットしてください。赤字の期間があるはずです。

一方で、PBRに益利回り(PERの逆数)をかけたものがROEであることがよく知られています。益利回りにPBRをかけると、ROEであり、この単位は年率です。これは意味がある数字です。

グレアム指数の単位はやはり[年]となります。意味は、利益が黒字であり、その利益が将来もずっと安定するという見通しの元での回収期間PER。ところが、PERとはそんなものではなく、瞬間芸、高速で振動する利益の写真の一枚に過ぎないのでした。その大ブレ指数であるPERと差別化できない事業であることを示す指標のPBRとの積ですから、ダメダメ指数と言っても過言ではないでしょう。

一体、PBRというものは資本の大きさと時価総額とを比べて、時価総額が資本の大きさにに戻るであろうという平均への回帰を仮定したもの。その時間的価値は一体何年経ったら?ということは何も物語らない。

例えば、PBR0.2倍のものが、一体、何年経てば1倍になるのでしょうか。なるとすれば、大赤字になって、資本が毀損してなるかもしれません。

資本の毀損リスクの大きさとPBRの低さには因果関係があります。

事業内容が悪い。

それゆえ、収益力が乏しい。

それゆえ、固定資産が減損される。

それゆえ、資本が毀損する。

そうです。上記は因果関係です。

ダメ事業。

それゆえ、低い評価。

完璧な因果関係ですな。

2倍のPBRならば、解散価値に収斂してしまうと、株価は半分になってしまうか。

それがそうではないですね。

PBR2倍は決して割高とは言い切れない。何故ならば、資本が成長するからです。

事業内容がよい。

成長性がある。

それゆえ、高い評価となっている。

因果関係です。

一方で、「PBRが低い。それゆえ、株価が安い」というのは因果関係ではまったくありません。

多くの前提条件があって成り立つ偽の命題です。

PBRという指標を使うときは、Bがどの期間で今の大きさになったのかを気にして欲しいと思います。日本製鐵という企業が設立70年になりますが、彼らのBookは70年かけて積み上げてきたものです。資本金が70年で160万円程度から4000億円になった。その70年の動きを感じると、いつの時点のPBRですか?ということになります。PBRというものは、設立時期が違えば、その水準は企業間によって全く違うものになるのは当たり前!

例えば設立3年目の企業がPBRって言ったって、B(=book)を積み立てる時間がほぼゼロなんだから、Bが小さくて当たり前。どんだけのペースで増えていくかがE(earnings)の力っていうわけ。このようにPBRを使うときは、EによるBの積み上げトレンドを無視してはしょうもないわけ。グレアム指数はPERの二乗にROEをかけたものです。にわかには意味が掴みにくい指標ですがROEがとてつもなく低いものが評価され、PERが少し低いものが二乗で効いてきて評価される指標になってしまいます。あー頭がこんがりこーんのいちごのぽっきーです。

バリュー投資家は、PER10倍でPBR0.5倍であれば、いずれ(時間軸ははっきりしないが)PBR1倍に評価され、いまの株価でも10年で回収できるのだから、株価が2倍になるので、グレアム指数で5年で回収できるという計算になるとみるかもしれない。実際、それがグレアム指数を用いる投資家のロジックだろうと思われるのです。

グレアムのミックス指数は、様々な前提が多数入り混じっているため、実用的ではないとわたしは思います。

グレアム指数が想定している前提

利益は将来も安定する(実際は非常に不安定)

企業のエイジェンシーコストは低い。再投資資金はいずれ配当原資となり投資家の手元に帰ってくるはずだ。

(実際には調子がよいとき企業は金遣いが荒くなり、浪費してしまう)

株価は株主資本という解散価値で評価できる

(実際には、収益率の低い資産の価値は特に固定資産ではほとんどない)

株価が将来PBR1倍に収斂する

(実際には割安株はROEやOPMなどが低く、相応の赤字リスク=資本毀損のリスクを負う)

どんなに不利な貸し剝がし負債や高利貸しからお金を借りていても、PBRには反映されません。どんなにボンクラな資産を保有してガラクタ資産であっても簿価は簿価のまま。PBRには反映されません。資産内容だけではなく負債内容も反映されない指標。それがかの恐ろしいPBRという指標です。

感想

それにしてもPBRとは、恐ろしい指標です! 時間軸の概念が長過ぎてその増加ペースが全く死角に入って見えない。10年前のBと今のBがこれだけ違うのであるから、10年後や30年後のBはどれほど違っているだろうか。一つだけ言えることは、ミックス指数が小さい企業のBは10年後にはもっと小さくなっているだろうということ。その危険性は高いはずです。なぜならば、差別化できないから収益性がない。収益性がなければBは増加していかない。解散価値があった時代は、労働者は使い捨て。今、割増退職などの保証が必要です。企業の解散価値はありません。地方自治体や労働者の権利がグレアムの時代よりも強いからです。ESGの時代。PBRは明らかに過去の遺物になってしまった。さようなら。PBR。お元気で。

割引配当モデルのDDMか 配当割引モデルのDDMか (どっちでもええで!)

DDMでは、成長率の想定以外にもその成長率の想定が外れる具合をリスクプレミアムとそれを含む資本コストという概念で克服しているのです。リスクプレミアムの算出には、過去の株価や業績や過去配当などを参考にしますが、マクロ指標やセミマクロ指標を収益構造に合わせて計算することもできるのです。

DDMはPERよりも数多く存在します。1ステージ、2ステージ、3ステージ、そしてリスクプレミアムの種類も無数です。リスクプレミアムが無数というのは、投資家の属性によって、何をリスクと見るかが違うのです。それぞれの投資家にそれぞれにテイラーメイドのリスクプレミアムが刻一刻と変化しているといえばよいでしょうか。若年の場合と老年の場合ではキャピタルロスに対するリスク許容度が違ってきます。投資家が困ることを計量化したものが資本コストです。

皆様を応援します!

筆者について

山本 潤 (やまもと じゅん)  

ダイヤモンドフィナンシャルリサーチ投資助言部にて投資助言者 兼 投資判断者を務める。

長期株式投資ゼミの講師。コロンビア大学大学院修了。社会人時代を含めて哲学・工学・理学の3つの修士号取得。外資系投資顧問のファンドマネジャー歴20年。日系投資顧問2年。

日本株の成長株投資を得意としている。外資系投資顧問会社クレイ フィンレイ日本法人共同パートナーで日本株及びアジア株の運用などを経て投資教育の会社を設立。現在も年間400社前後の会社訪問と投資判断を行っている。


1997-2003年年金運用の時代は1,000億円を運用。


その後、2004年から2017年5月までの14年間、日本株ロング・ショート戦略ファンドマネジャー。過去22年の機関投資家としての運用戦績は年ベースで19勝4敗の勝率8割超(同期間の日経平均は、13勝10敗)。

現在は、DFR(ダイヤモンド フィナンシャル リサーチ)投資助言部において日本株ポートフォリオ22銘柄で投資判断の助言サービスを行っている。2019年9月30日現在、年初来パフォーマンスでリターン16%(年率20%換算)を20%の年率リスクで20銘柄強の安定したポートフォリオにてリスク管理をほどこして提供している。回転率は年率100%以下の設計。