7196 Casa 不採算の取引先見直しで足踏みも大手向けが動き出す by Ono
株式会社Casa 東証1部 証券コード:7196
2022年1月期 第1四半期の発表を受けてフォローレポート
ポイント
・第1四半期は前期比増収で黒字化を達成
・取引先見直しを新規獲得でカバー
・大手向けの取引が動き出す
・下期からの回復に向けて継続的な投資
<2022年1月期 第1四半期業績>
2022年1月期 第1四半期は売上高2,657百万円(前年同期比+6.2%)、営業利益134百万円(前期は76百万円の赤字)と増収、営業黒字化を達成した。
前年同期(2020年第1四半期)はコロナ禍の影響で家賃滞納が増えた。滞納者からの回収よりも公的支援の申請サポートを優先したため、求償債権が増加し、引当金計上により営業赤字を計上していた。
通期計画に対する進捗率は売上高25.7%、営業利益16.1%となっており、利益ベースでは進捗率が低水準にとどまる。コロナ禍の影響を織り込んで下期以降の回復を見込んでいるため、ほぼ会社計画通りの進捗となっている。
〇不採算取引先の契約解消を新規獲得でカバー
前期の業績を圧迫したのはコロナ禍の影響だけでなく、取引先見直しも影響した。取引先の手数料が高騰し、収益性が大幅に悪化した。競合他社がシェア確保のために採算度外視で紹介手数料をあげてきた為、同社も一部競合に合わせて手数料をあげて対応した。前期第4四半期以降、取引先の見直しに着手しており、不採算の取引先とは契約の解消を進めている。
取引先の見直しによる減収分を新規獲得によりカバーし、増収を確保した。
前年同期比で紹介手数料が減少258→244。第1四半期は紹介手数料が上がる為、取引先見直しとともに第2四半期移行は減少を見込む。
前期の第1四半期から紹介手数料の増加が顕著となっている。
主に管理戸数3,000件以上の大手管理会社の手数料が増加したため。
手数料増加の要因は主に2つ
・管理会社が管理手数料だけで収益をあげるのが難しくなっており、紹介手数料への依存度を高めている
・競合他社が採算を考慮せずシェア確保のため手数料を上げている
*2021年1月期説明会資料より
〇大手向け動き出す
特別調査委員会の調査報告が公表されるまでは大手取引先は新たな取引に動きにくい状況にあったが2月に報告書が出されてからは具体的に動き出している。
2021年4月19日リリース
リロ・フィナンシャル・ソリューションズへ保証サービス提供開始
リロ・フィナンシャル・ソリューションズは株式会社リログループの100%子会社。
損害保険代理店業、生命保険の募集に関する業務、賃料等管理業務受託事業を行う。
リロ・フィナンシャル・ソリューションズ社のサービスに同社の家賃保証サービスが採用されることになった。
他にも
公営住宅への家賃保証サービス提供開始がリリースされた。
・2021年3月17日 茨城県大洗町、山梨県昭和町
・2021年4月7日 静岡県
・2021年5月20日 静岡県浜松市、島田市
など
現在、同様のサービスを提供する自治体は
公営住宅の家賃保証 46自治体
民間賃貸の住替支援、家賃保証 25自治体
居住支援法人の認可を受けた都道府県 4自治体
まで拡大している。
https://www.casa-inc.co.jp/company/solution/
<2022年1月期 通期業績見通し>
2022年1月期の会社計画は売上高10,323(前期比+0.9%)営業利益832(同-19.3%)と売上はほぼ横ばい、二桁の減益の計画である。
売上総利益は横ばいを維持するが、社員の新規採用による固定費の増加、2021年9月より稼働する新システム移行に伴い旧システムと並列運用による一時費用の発生などによる販管費の増加が営業減益の要因となっている。
第1四半期時点では採用及び新規サービスの開発は順調に進捗している。第2四半期までは進捗が遅れるが、第3四半期以降は取引先の解消も落ち着き、回復を見込む。第1四半期は利益ベースでは遅れているように思われるが、下期以降の回復を見込んだ計画であり、現時点ではほぼ会社計画通りで進捗している。
現在、新規感染者数の増加により緊急事態宣言が出され、人の動きが制限される状況にあり依然として事業環境は厳しいが、コロナ禍の影響が収まるであろう来期以降に盛り返すべく、様々な取り組みを行っている。
<バリュエーション>
時価総額 110億円
株価 991円(2021年7月27日終値)
会社予想 EPS 48.32
会社予想 PER 20.5倍
一株当たり配当 30円
配当利回り 3.0%
<基本情報>
【企業理念】
Casaは人々の健全な住環境の維持と生活文化の発展に貢献し、豊かな社会を実現します。
【会社概要】
2008年10月、東京都新宿区に不動産賃貸物件の家賃債務保証事業を目的に設立したレントゴー保証株式会社が前身となっている。
【事業概要】
不動産賃貸物件の家賃債務保証事業
Casa(以下、同社)は、賃貸住宅の賃貸契約において賃借人に対して家賃債務の連帯保証サービスを提供する。賃借人(入居者)とは保証委託契約、賃貸人(家主)とは賃貸保証契約を締結する。不動産管理会社が管理する物件は約20,000店舗からなる不動産管理会社を代理店として全国12カ所の事業拠点で展開している。
【特徴(強み)】
蓄積してきたノウハウと安定した事業基盤があり、主に次のようなものがあげられる。
① 管理戸数10,000戸以上の大手管理会社向け売り上げが約60%を占めている。
② 不動産管理会社を利用しない管理戸数1,000戸未満の自主管理家主向けサービスを強化する。
(詳細後述)
③ デジタル化が進まない不動産業界でテクノロジーを活用し家主問題を解決する
【家賃債務保証事業】
家賃債務保証ビジネスとは、代理店契約をしている不動産管理会社を通して賃貸人(家主)と賃貸保証契約を結び、賃貸人(入居者)と保証委託契約を結ぶ。賃借人が家賃を滞納した場合に賃貸人または賃借人と管理委託契約を結ぶ不動産会社に代位弁済を実行し、賃借人に対して滞納した家賃の督促、回収を行う。約22,000店舗からなる不動産管理会社を代理店として全国12カ所の拠点(東京、札幌、仙台、千葉、横浜、さいたま、静岡、名古屋、大阪、岡山、高松、福岡)で事業展開している。
【ビジネスモデル】
・約半分がストック売り上げ
・売上は案分計上 費用は一括計上
売上は賃借人と保証委託契約を締結した際に受領する初回保証料と、入居後一年ごとに受領する年間保証料から構成される。
2020年1月期における構成比率は初回保証料が55%、年間保証料が45%程度となっている。
年間保証料が毎年のストックとして積みあがり売上計上されるストック型ビジネスとなっている。
賃借人から保証料を受領し、その一部を業務委託している不動産管理会社に支払手数料として還元している。
初回保証料と年間保証料については、受領時から1年にわたって案分して売り上げ計上される。
賃借人からは契約時に初回保証料を賃料の50%程度、年間保証料は年1万円受け取っている。
一方、不動産管理会社に支払われる手数料は支払い時に一括して費用計上される。
賃料延滞により代位弁済した場合、早期に回収が図られるが、代位弁済実行額のうち決算期末における未回収分である求償債権に対して貸倒引当金を計上している。
【事業環境】
不動産賃貸住宅市場は単身、夫婦のみの世帯数増加により拡大している。高齢者の単身世帯、外国人入居者の増加もあり、家族、親類、知人に連帯保証人を見つけることができない賃借人が増えている。家賃債務保証市場は拡大しており、今後もこの傾向は続くと考えられる。また、アンケートによれば賃貸物件の増加が続く中で将来的な空室リスクに対する不安を6割以上の家主が抱えている。
そのような環境下でこれまで同社は大手管理会社と関係を密にし、売り上げを拡大してきた。大手管理会社が管理する物件は1,000万件程度あるがすでにその60%程度は保証会社を利用している。一方自主管理家主が管理する物件は650万戸程度あるが保証会社を利用しているのは10%程度にとどまり、ほとんどが連帯保証人を利用している市場である。同社はそこにターゲットを定めて営業を強化する。
【注力する事業】
〇自主管理家主をIT化推進で開拓
そのツールが同社が提供する“家主ダイレクト”
“家主ダイレクト”が好調。累計契約数が10万契約を突破した。
*家主ダイレクトについてはこちら (casa”家主ダイレクト”WEBサイトが開きます)
“家主ダイレクト”はリコーリースと東京海上日動火災保険との連携で開発したサービス。集金代行、家賃保証、保険を提供する。競合が少ない自主管理家主市場で拡大を狙う。
“家主ダイレクト”は集金代行セット型の保証サービスだが、物件での事故があった場合に備えた家主負担費用や孤独死保険を付帯するほか、同社が持つ22,000店舗以上の仲介ネットワークを生かした入居者募集も行う。自主管理家主の賃貸経営のニーズに合わせて、“コスト削減”、“空室対策”といった経営安定化につながる充実したサービスを提供する。
大手管理会社と違い、小規模で点在する自主管理家主をターゲットとするとき、同社が契約する賃貸仲介のエイブル、ハウスコム等を通してアクセスできることが強みとなる。今後認知度が高まることで一層の拡大が期待できる。
【大手代理店向けサービスを強化】
今期に取り組む主な施策は次の3点
①取引先の精査による契約社減少を新規契約者増加で補う
②小規模向けに注力し家主ダイレクトの導入を進める。
③大手向け営業活動の正常化
①取引先の精査による契約社減少を新規契約者増加で補う
前期のコスト増要因の一つであった、手数料増となった取引先との契約の見直しに着手する。
不採算の取引先との取引を見直すため契約件数減少で減収となるが、新規顧客の獲得による増収で補う。
同社によれば、高い手数料を要求する取引先の契約者は滞納率が高い傾向にあり、取引先の精査により求償債権の増加抑制も期待できるとのこと。
取引先の選別においては手数料負担の大きさだけでなく、滞納発生率も考慮し、より質の高い取引先を精査する。
②小規模向けに注力し家主ダイレクトの導入を進める。
特に自主管理家主にとっては集金が不要、孤独死保険が付帯されるなど、安心して大家事業を行うことができる。
自主管理家主市場は650万戸、年間30万戸の借り換え契約がある。
自主管理家主の業務はIT化が進んでいない分野。
同社システムの導入による効率的な経営の仕組みを提供する。
契約代理店数は11,298社の計画。
小規模代理店は手間がかかる一方で、分散されることにより特定の取引先の動向による業績変動が抑制される。
特に今回の特別調査委員会の調査が進むまでは大手取引先の活動がとまっていた。
一方で小規模向けは影響は軽微なものとなっている。
小規模向けの契約増加が同社業績の安定にもつながることが期待される。
③大手向け営業活動の正常化
特別調査委員会の調査結果の発表を待ちたいという顧客の意向を受け、大手管理者向けの営業活動が停滞していたが、調査結果が公表されたことで営業活動は正常化している。
・審査機能をOEMで提供
2020年8月にリリースした”ダイレクトS”は個人信用情報を利用した審査業務を大手代理店向けに提供するもの。
・CasaWEBを提供
CasaWEBの導入により業務効率改善につながり、業務効率化を実現し取引継続につながる。
<リスク要因>
〇コロナ禍の影響が継続し、滞納発生率が高まること。
新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、緊急事態宣言の発出による影響は不透明である。
同社は新規基幹システムを刷新し、9月に稼働開始予定。
同システムにより保証先の分析精度が高め、滞納発生を抑え回収の効率性を高める。
<株主還元策>
決算発表と併せて、増配及び自社株買いの実施を発表。
配当 30円(前期28円から連続増配)
自社株買い 取得総額2億円
<コンプライアンス強化>
社内のガバナンス体制の強化に取り組む。
このような事案が発生するのは、上場企業として必要なガバナンス体制が整っていなかったと指摘せざるを得ない。その点を同社自ら見直しに取り組み、上場企業として必要なガバナンス体制の整備を目指す。
内部のメンバーだけでなく、外部の有識者にも参加してもらい、より透明性の高い仕組みを作り上げる。また、今回の事例を基に外部弁護士を入れた研修を実施するなど、新たな取り組みにも積極的に着手している。コンプライアンス強化の内容、進捗等は今後より一層見える化を進め透明性の高い体制を構築する。
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