4374 ROBOTPAYMENT 想定上の進捗で上方修正を発表
2023年8月14日 2023年12月期第2四半期の業績を発表した。
同社の事業の理解のために、
2023年7月30日に開催した東京勉強会(個人投資家向け説明会)の動画もどうぞ
ポイント
新規顧客獲得、顧客単価の上乗せが順調で上方修正
2つの事業が継続的に成長
2つの変化点がバリュエーションを変化させる
お金を扱うため業務フローの全般に貢献
IRの積極化が資本コストを下げる
<業績:想定以上の進捗で通期見通しを上方修正>
第2四半期累計業績は売上高1,029百万円、営業利益103百万円と増収増益を達成。
併せて発表済みの2023年12月期の通期見通しの上方修正を発表した
営業利益は第2四半期までに上振れした分のみを上方修正した。
第3四半期以降についてもこれまで通り売上高が想定以上に推移した場合でも、投資対効果について厳しく判断しながら投資をする方針。
売上高が想定を上回れば、利益が上振れする可能性もあると思われる。
各事業ごとの状況を確認する。
<KPIチェック サブスクペイは決済取扱高、請求管理ロボは請求金額の伸びが寄与>
主力2事業の顧客単価、アカウント数共に堅調な伸びとなっている。
特に注目するのは顧客単価の伸び。
サブスクペイが前年同期比+14.4%、請求管理ロボが同+9.2%。
〇サブスクペイ:決済取扱高の拡大
サブスクペイの顧客単価上昇を牽引した要因は決済取扱高の拡大。
前年同期比+28.8%、前四半期比較で+9.3%の伸びとなった。
要因は前期に獲得した顧客の利用が順調に伸びたこと、2022年10月にリリースした1click後払いもサブスクペイの決済取扱高の拡大に貢献した。
〇請求管理ロボ:請求金額の拡大
請求管理ロボの顧客単価上昇を牽引したのは請求金額の拡大。
前年同期比で+44.7%、前四半期比較では+19.5%(1,374億円→1,643億円)に高い伸びとなっている。
中堅以上、大手顧客の獲得に注力しており、中堅規模以上の受注の増加が寄与している。
下記の通り、顧客単価の推移を見ると2022年12月期の2Q、3Qと顧客単価が継続して下落していた。
単価の低い新規顧客が増えたことと既存顧客が伸び悩んだことが背景にある。
新規顧客獲得に注力したため、単価の低い顧客の影響が大きく出た。その後、単価を重視した営業を行い単価上昇が継続。
今後も単価重視で営業を行うとともに、全体の顧客数が多くなることで新規顧客の単価に対する影響が小さくなる見通し。
以下、改めて事業内容と各サービスについて、会社発表資料を使いながら整理する。
<事業内容>
ペイメント事業とファイナンシャルクラウド事業の2つの事業を行う。
主要なサービスは以下のリンクから。
ペイメント事業
サブスクペイ ︓https://www.robotpayment.co.jp/service/payment/
1click後払い ︓https://www.robotpayment.co.jp/service/1click_atobarai/
ファイナンシャルクラウド事業
請求管理ロボ ︓https://www.robotpayment.co.jp/service/mikata/
請求まるなげロボ︓https://www.robotpayment.co.jp/service/marunage/
〇売上構成
売上構成は2022年12月期通期実績で
サブスクペイ 1,032百万円
請求管理ロボ 674百万円
両プロダクト共に順調に成長している。
〇誰のどんな課題を何によって解決しようとしているか
非常に分かりやすい1枚。
〇ペイメント事業
サブスクリプションビジネス向けのインターネット決済代行サービス
サブスクビジネスを行う事業者にプロダクトとして”サブスクペイ”、”サブスクペイ Professional”、”1click後払い”を提供する。
・サブスクペイ
顧客の増加に伴い煩雑になる顧客管理機能と決済機能を提供する。
・サブスクペイ Professional
顧客管理・分析機能を提供し、解約防止、LTV向上を実現する。
”サブスクペイ” : 顧客企業のコスト削減に寄与する
”サブスクペイProfessional” : 顧客企業の売上向上に寄与する
*サブスクとは
サブスクリプションの略で、月単位または年単位で定期的に料金を支払い利用するコンテンツやサービスを提供するビジネスの事。
商品を「所有」ではなく、一定期間「利用」するビジネスモデルをさす。
Webサービスだけでなく、リアルの塾やジムなどもサブスクサービスである。
〇ファイナンシャルクラウド事業
「請求・集金・消込・催促」業務を効率化・自動化する経理DXサービス
BtoBビジネスを行う法人に対してプロダクトとしては”請求管理ロボ”、大手顧客向けの”請求管理ロボ for Enterprize”、請求業務をすべて代行する”請求まるなげロボ”を提供する。
・請求管理ロボ
・請求まるなげロボ
<業績推移>
2000年のサブスクペイ提供開始以降、リーマンショック、東日本大震災においても安定した売上を計上し、成長を続けている。サブスクペイに加え、請求管理ロボが成長を加速させた。
<2つの変化点>
投資を検討するうえで注目すべきことは将来に向けて現在が変化点にあるかということ。
バリュエーションに変化を与える変化点として次の2つに注目する。
①利益重視の中期経営計画への変更
2022年12月期通期業績の発表とともに発表済みであった中期経営計画を変更した。
米国の金利上昇とともに投資家は将来の利益に対する期待を見直すことが予想されるため、発表済みの売り上げ拡大重視で費用を積極的に投下する計画から、
毎年営業利益を創出する利益重視に方針を変更した。
旧中計では、CM等のマス広告を実施する計画もあったが、より費用対効果を測定しやすい広告を実施するような見直しを行った。
最終年の2026年12月期は売上が5,011百万円から4,000百万円に引き下げられたが、営業利益は1,210百万円から1,250百万円に引き上げられた。
②新規事業のリリースによる提供価値の向上
想定を上回って成長に寄与することが期待されるのが新たに投入されたプロダクトの寄与。
2022年9月 サブスクペイProfessional
2022年10月 1click後払い
2022年11月 請求管理ロボ for Enterprize
を提供を開始した。
・貢献範囲の拡大
サブスクペイProfessional:コスト削減+収益拡大
導入企業の顧客分析の機能を提供する。収益拡大に寄与することで、1顧客当たりの単価上昇が期待できる。
顧客の売上成長が同社の収益拡大につながるwinwinのプロダクトである。
1click後払い:受取+支払い
支払いを遅らせる、請求書払いをカード決済で支払う、銀行融資やファクタリング(銀行等が売上債権を買い取る)といったことをせずに資金繰りの改善を実現する。
サブスクペイ、請求まるなげロボなど顧客からの支払いを受ける既存のプロダクトに加えて、取引における支払いにもサービスを提供する。
企業が事業活動を行う上で発生する資金の動きを、仕入から売上回収まで、全般に関わる。
1社あたりの取引金額の拡大に加えて、他社プロダクトへ乗り換えるスイッチングコストが高まる。
・対象顧客の拡大
請求管理ロボ for Enterprizeは大手顧客向けの機能・性能を備えたサービスで1顧客当たりの規模が大きくなることが期待できる。
入金データの自動取込は、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行の3行のみ対応しており、入金データのー元管理が限定的であった。この度の「Moneytree LINK」との連携により、入金明細をインターネットバンキングからダウンロードしてインポートする際の自動連携が可能な口座を大幅に拡大し、利用者のデータ取り込み作業の負担をさらに削減。
マネーツリーの金融データプラットフォーム「Moneytree LINK」、ROBOT PAYMENT「請求管理ロボ」と連携したことで1,000以上の金融機関とパートナー連携が可能となり、ほとんどの金融機関との間で活用が可能となった。
https://getmoneytree.com/press-release-jp/202303-moneytreelink-robotpayment
・銀行連携のオプションを提案しやすくなり、アップセルや、新規獲得時の単価増加が期待できる。
・顧客が業務フローの中で銀行連携を利用することで利便性が高まり、解約率低下につながる。
<IR積極化が資本コストを下げる>
積極的に様々なIR施策を実施している。
・機関投資家、アナリスト向け説明会の実施
・個人投資家向け説明会の実施
・月次業績(月次リカーリング収益)の発表
・メールマガジンの配信
ここまでは実施する企業はある。
さらに
・LINE公式アカウントでの配信
室長の新藤さんが直接質問に応えるのだという。
個人投資家との対話に積極的ではない企業がまだまだ多く、電話問い合わせへの対応が負担となるためメール対応に切り替える企業もあるなかで、より積極的に個人投資家との接触の機会を作る。
・個人投資家向けファンミーティングの開催
8月29日に「第1回ロボペイファンミーティング」を開催する。
以前は株主総会後に事業説明会、懇親会をしたり、説明会終了後にアナリスト、機関投資家向けに開催する例はあったが、新型コロナ感染症の拡大以降はほぼ中止された。最近では株主総会もオンラインで開催するバーチャルオンリー開催も増えてきており、リアルでのコミュニケーションは減る傾向にある。
その中で同社は、株主だけでなく、自社に興味を持つ投資家=潜在株主にまで範囲を広げる。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4374/tdnet/2321333/00.pdf
積極的なコミュニケーションは長期的には資本コストを下げ、企業価値向上につながる。
企業価値は業績を継続的に高めることが大前提ではあるが、信頼できる企業であることが不可欠な要素である。事業への理解、企業文化の理解が企業と投資家の信頼関係を築き、資本コストを下げる。その結果、企業価値向上に寄与する。短期的には負担になるかもしれないが、長期的な視野で他社がやらない取り組みを行うからこそ得られるものがあるはず。
<バリュエーション>
時価総額71億円
株価1,801円(2023年8月14日終値)
会社予想EPS 25.68円
無配
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