2925 ピックルスコーポレーション ~ 縮小する市場で強く成長するモデル by Ono

2018年12月27日

ピックルスコーポレーション ~ 縮小する市場で強く成長するモデル

皆さんの朝食、夕食の食卓には何がのっているでしょうか

昭和の時代の食卓には必ずあったもの。
漬物
私の実家では、三食必ず漬物が出ていました。
また、来客時にはお茶請けに沢庵、松前漬けなどが出されたりしていました。

今はどうでしょう。
自宅で作ることがほとんどなくなり、ご飯食が減り、パン食が増え、
来客時にはコーヒー。

時代は変わりましたね。
漬物の出番は減りました。

しかし、居酒屋にもあるし、定食には必ずついてくる。
日本の食事に欠かせない食べ物として漬物はなくならない。

〇成り立ち

ピックルスコーポレーション(以下、ピックルス)は
「きゅうりのキューちゃん」で有名な東海漬物株式会社の子会社
東海漬物株式会社は古漬けを販売していたが、
1970年代に、大手量販店(セブンアンドアイ)から少量パックでサラダ感覚で食べられる、
毎日納品できる漬物の販売を依頼された。
この開発、販売に対応するために1977年株式会社東海デイリーとして設立された会社が前身となる。

現在、セブンアンドアイ向けの売り上げは3割程度を占める。

東海漬物株式会社はメーカーだったが、
ピックルスは他社製品の仕入れ販売も行う商社の機能を持ち、
自社製品が7割、3割が他の漬物メーカーからの仕入れとなっている。
顧客に必要な商品を提供し、顧客に寄り添う事業を行うのが特徴。

全国各地500件にも及ぶ契約農家からの調達網、直営工場と物流センターを持ち
全国に販売拠点を網羅しているのも他の漬物メーカーにはない特徴の一つ。

当初は漬物の製造販売のみであったが、M&Aにより販売品目を拡充し、
現在では浅漬け、総菜、キムチの生産を手掛ける会社となった。

 

〇”ご飯がススム”の開発

現在は看板商品である”ご飯がススム”シリーズは
主婦の社員をリーダーとしたチームが開発。
デザイナー、味付けなど重要な役割を2年目の若手女性社員が担当した。

・2002年 日韓共催ワールドカップサッカー
・2003年頃 韓国ドラマ「冬のソナタ」
などをきっかけに韓流ブームが起こった。
キムチ市場は成長しており、キムチ市場に向けた自社製品の開発を目指した。

当時、輸入キムチが多いなかで、著名料理研究家とともに、本場・韓国にも負けない本格派商品を開発したが
売上が思うように伸びなかった。

「自分たちが思うキムチの味と、消費者が食べたいと思う味にずれがあるかもしれない」
と考えた。
今となっては定番として受け入れられているが
”キムチなのに甘い”製品の開発は反対も多かったことは容易に想像できる。
主婦層をターゲットとし、同層を取り込むためには子供も食べられる味を開発し、社内を説得。
発売することとなった。
当初はなかなか売れなかったが、一部の店舗の成功から一気に他店にも広がり、
今の成功につながった。

社員の自由な発想と熱意を認めるオープンな社風がこの成功を生み出したのだろう。

甘くて、辛い。
”ご飯がススム”シリーズ
(CMの”♪ご飯が ご飯が ススムくん~”のフレーズから、
商品名は”ご飯がススムくん”かと思っていた。)

実は私は食べたことがなかった。
取材の帰りにスーパーで買って帰った。

翌日の朝食で早速食べた。

 

確かに美味しい。
あの、キムチの
最初は甘酸っぱくて、徐々に辛くなり、次第にヒーヒーいう感じとは違い、

最初の酸っぱさ控えめで
辛くなりそうで・・・・辛くならない、、、、美味しい!
そんな感覚。

朝食は普段少なめに食べているのにご飯をお代わりしてしまったw

妻と二人で2日で完食
(食べすぎだろw)

〇成長シナリオ

 過去の業績を振り返ると着実に成長を続けているのがわかる。
2010年2月期以降連続増収。
2010年2月期182億に対して2018年2月期は379億円の売り上げを計画(2倍以上)。
営業利益は2010年2月期の5.4億円から2018年2月期は2.6倍の13.9億円の計画。

今後も成長は続きそうだ。

次の4つの成長シナリオが期待できる。
・地域拡大
・販売先拡大
・新製品による値上げ
・他社撤退によるシェア拡大

・地域拡大
 これまでセブンアンドアイへの供給とともに関東、東北など東日本をカバーできている。
今後は関西以西、九州などへの展開を視野に入れている。
それに先駆けて生産拠点拡充のため、姫路漬物を買収。
中古工場など必要なところだけ買い取り、再生、改善をして1年程度で黒字化する。
生産する製品の見直しを行い生産効率化する。

・販売先拡大
 定食チェーンへの納入を開始。これまで同定食チェーンは各店舗で独自で作る方針をとっていたが
人手不足の問題から効率化を進めるため、ピックルスに委託。
安心・美味しい食品にこだわってきたからこそ選別されたのだろう。
このケースに限らず、定食チェーン、レストランなど同様の問題をかかえる飲食店は多く、拡大の可能性もあろう。

・取り扱い品目の拡大
 中食市場が拡大するなかで、スーパーの総菜コーナーは着実に拡大していった。
総菜市場は2010年約8000億円から2016年1兆円を超えた
2005年は売り場面積が6%程度だったものが足元では20%程度まで拡大した。
スーパーは店内調理を拡大するが、一方で人の確保が追い付かず、人手不足が顕著となった。
スーパーの省力化の手段は2つ
 ・調理を簡素化する
 ・パック済みの総菜を仕入れる
 調理を簡素化するという点ではケンコーマヨネーズが提供する真空パックのサラダなど、盛るだけで出せるものが増えている。ピックルスが提供するのは後者。
スーパーの総菜売り場の4割程度はアウトパック(パック済みの総菜の仕入れ)となっている。
スーパーなどの小売店における人手不足の解消として総菜へのニーズはより高まるだろう。
同社は顧客と一緒に商品を開発しており、取り扱い商品の拡大が期待できる。

・他社撤退によるシェア拡大
食に対する安全・安心の意識は高まりから、
フードディフェンス(食品への意図的な異物混入等を防ぐ取り組み)に対する
小売店の要求は高まっており、安心安全のための生産設備の拡充が求められるが、
価格転嫁は困難で小規模事業者にはコスト負担の影響は大きい。

ピックルスは、長年セブンアンドアイに供給することで厳しい条件をクリアしてきている。
他社が簡単に追いつけるものではない。

また、本来リスクである”野菜価格の高騰”も同社の成長を後押しするだろう。

 同社が材料とする野菜は工場ごとに地元の生産者と契約する。
安全・安心に拘り、ほぼ100%国産の野菜を使用。
”野菜価格の高騰”は同社にとって大きなリスクである。
しかし、安売りする競合他社にとっても影響が大きく、
受け入れる体力のない企業にとっては市場から退出するきっかけとなるだろう。
ピックルスにとっても影響を回避することはできないが、
受け入れる体力があり、競合の退出により寡占化が進みシェアが拡大するだろう。

漬物業界は斜陽産業であり、後継者問題がある業界である。
安定的なキャッシュフローで撤退する同業他社のM&Aも可能であり、
収益性の低い産業であるため割高で買わなくてもよいと考えられる。

 

〇商品の定期的な入れ替えが値上げと生産工程改善のきっかけとする

値上げについては簡単ではないながらも、付加価値を高めつつ、値上げには前向き。
輸送コスト、人件費の上昇、アベノミクスの推進などその環境が整ってきている。

野菜には季節性があり、季節ごとに製品の入れ替えがある。
200程度の取扱商品のうち新商品は年間100程度。
半分が入れ替わる。
新製品の開発により新たな付加価値を提供し、値上げにつなげる。
また、商品入れ替えは生産ラインの改善などにもつなげ生産性の改善作業への着手も可能。

私たちは安全安心を食品に求めるのであれば、
その負担を受け入れなければならない。
美味しいという気持ちだけで十分受け入れられるものであろう。

[expand title=”〇厳しい環境も追い風にする -衰退する市場で勝ち残る” swaptitle=”〇厳しい環境も追い風にする -衰退する市場で勝ち残る 閉じる”]

 社会の変化とともに衰退する市場は必ずある。
しかし、その中で勝ち残り成長する企業は必ず存在する。

厳しい環境を受け入れる強さがある。
同社はそのモデルとなる企業かもしれない。
勝ち残るために必要なものが2つ
 ・顧客の近くで顧客の声を聞く
 ・社内はオープンで権限移譲する

同社は設立後40年以上だが、過去10年の平均年齢は約32歳程度で推移している。
オープンな企業だからこそ、採用環境が厳しい中で年間30名程度の新卒学生を採用できており、
若くて明るい企業風土を維持していることが想像できる。

しっかり地に足をつけて長期で成長が期待できる。
リスクが限定的で今後も成長を続けるピックルスコーポレーション。

いつまでも食卓に安全でおいしい漬物、総菜など食品を提供してくれることを期待している。

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2018年12月27日銘柄研究所

Posted by ono