2471 エスプール ”わーくはぴねす農園”  見学させていただきました!

2019年10月25日

株式会社エスプールの子会社が運営する農園を見学させていただいた。

同社の事業を理解するために紹介させて頂きたいと思う。

 

目次

〇株式会社エスプールについて

〇障がい者採用・雇用支援事業

〇障がい者雇用支援事業の事業環境

〇農園の概要と実際の様子

〇紹介先企業との良好な関係

〇運営方法

〇農園施設内の様子

〇屋外の開放感が生み出す精神的な安定とやりがい

〇新規参入の難易度はきわめて高い

〇障がい者目線で設計

 

〇株式会社エスプールについて

今回訪問させていただいたのは

”わーくはぴねす農園 柏ファーム”

株式会社エスプール(以下、エスプール)の100%子会社 株式会社エスプールプラス

(以下、エスプールプラス)が運営する農園。

エスプールプラスは農業を活用した障がい者採用・雇用支援を行っている。

 

エスプールの事業は大きく分けて

・ビジネスソリューション事業

・人材ソリューション事業

の2つがあり、

エスプールプラスはビジネスソリューション事業に属する。

 

ビジネスソリューション事業の業績は

2019年11月期 第3四半期(単位:百万円)
売上高 3,596 (前年同期比 +13.2%)
営業利益 1,042 (同 +83.9%)

と成長しており、特にエスプールプラスの障がい者雇用支援の貢献度が大きい。

 

エスプールの紹介を含め、全体のビジネスモデルについては
下記のリンクより2018年5月に掲載したレポートをご覧いただきたい。

”2471 エスプール アウトソーシングの力で企業変革を支援し、社会課題を解決する”

 

また、”わーくはぴねす農園”については

youtubeにアップされている紹介動画もぜひご覧いただきたい。

わーくはぴねす農園 PR動画「Jobに、Joyを。」篇

 

〇障がい者採用・雇用支援事業

・ビジネスモデル

 エスプールプラスは就労希望の障がい者の方が農園で就労できるように研修を行ったうえで企業に紹介。企業は紹介を受けた障がい者の方を直接雇用する。

併せて、就労先として同社が運営する企業向け貸し農園「わーくはぴねす農園」を提供し、農園設備を企業に貸し出す。

 

*農作業の就労体験

 訪問した際、障がい者の方の就労体験会が行われていた。
実際の農場で農作業に従事できるのかを体験を通して判断する。
体験で就労が可能と判断できれば、その後およそ3カ月程度の研修を行い、
企業へ紹介することになる。

就労できた障がい者の方は契約企業から法定最低賃金以上の賃金を給与として受け取る。

障害年金を受給しながら月給10万円程度の給与を受け取ることで月々20万円程度の収入を得る。収入の面で自立につながる。

 

・主な数値データ

「わーくはぴねす農園」は16農園 (千葉県、愛知県、埼玉県に開設)

管理区画数は2,469区画(2019年5月末時点)

全体で1,300名以上が就労

他の就労機会を生かすことができず、農園で初めて就職できた障がい者が70%

8年間累計で定着率92%以上

契約企業数は230以上

 

*エスプールプラスの企業紹介(WEBサイトより)

「一人でも多くの障がい者雇用を創出し、社会に貢献する」を企業理念に、わーくはぴねす農園は、知的障がい者の“働く意欲”に注目した就労機会の創造ということをテーマに、株式会社エスプールプラスが独自に開発し、運営する“農業”を通した知的障がい者就労モデルです。

障がい者の就労モデルについて、当社にて試行錯誤した結果、“農業”の植物を育てるという行為が、知的障がい者の“働く意欲”に、とてもプラスの効果を上げることに気づきました。当農園は「安全・清潔」をモットーに、知的障がい者が長期に安心して就業できる環境を整備しています。

企業は当社が提供する農園に参加することで、農業事業の経験や知的障がい者雇用のノウハウがなかったとしても、知的障がい者に雇用機会を提供することが可能になります。

 

農園の紹介の前に簡単に事業環境について触れておきたい。

 

〇障がい者雇用事業の事業環境

同社の障がい者雇用支援が成長している背景にはいくつかの要因がある。

・障がい者雇用法の雇用率の引き上げが続く

 企業に障がい者の雇用を義務付ける

 ”障がい者雇用促進法”

 で定める雇用率(社員数に対する障がい者の割合)が段階的に引き上げられている。

 2013年4月 1.8% → 2.0% (従業員100人の企業は2人以上の障がい者を雇用)

 2018年4月 2.0% → 2.2%

 ~2021年3月(予定) 2.2% → 2.3%

 

また、雇用率を満たさない企業の納付金(罰金)が一人当たり月5万円(年間60万円)と
なっており、その対象が
2015年4月に従業員200名以上の企業から100名以上の企業に改訂
というように障がい者の雇用義務が拡大している。

 

・障がい者雇用水増し問題

 中央省庁及び自治体等の公的機関において、障がい者に該当しない方を
障がい者として雇用し、同機関の障がい者の雇用率が水増しされていた。
これにより、障がい者雇用問題がクローズアップされ、障がい者雇用率の達成が求められている。

 

・知的・精神障がい者の就労の遅れ

 障がい者でも身体障がい者の多くは就労が進んでいるものの、
知的・精神障がい者の就労については、障害の個人差が大きく、
コミュニケーションが難しいなど、二の足を踏む企業が多いため、
18歳から64歳の知的・精神的障がい者約240万人に対して就労者は15万人程度と
就労率が低い。

これらの外部環境が、障がい者雇用で実績を上げる同社の事業の成長を後押ししている。

 

〇農園の概要と実際の様子

 今回の訪問させていただいたのは
”わーくはぴねす農園 柏ファーム”

敷地面積 1万3000㎡

ちょうど東京ドームのグラウンド部分が入る面積。

敷地内には柏ファーム第1と第2の二つの農園が隣接して作られている。

ファーム内には

事務所:トレーラーハウス

農園:ビニールハウス

が設置されている。

ビニールハウスが8連棟×4つ

250名以上が雇用されている。

 

 

トレーラーハウスの事務所だが、トイレは水洗トイレでトイレ掃除も各企業が当番制で行い、
清潔感があったのが印象的であった。

体調を崩したときに休憩するための救護室等も完備されている。

 

〇紹介先企業との良好な関係

 農園の立地は必ずしも交通の便がよいとはいえない。広い敷地を必要とするため、最寄りの駅からバスで20分~30分程度かかる。

バスの運行は外部委託しているがバス運行の企業が同社の障がい者雇用を活用、
ビニールハウスの建設においても、建設する企業が利用している。

他にも下記のような企業が利用している。

業種を問わず利用企業が広がっており、事業を通して幅広い企業と良好な関係を築いている。

 

〇運営方法

障がい者3人に1人の管理者がつく。
管理者は主に60~65歳の男性で
”第2の人生は社会に貢献したい”
という思いで働く方が多いという。

障がい者3人が協力しながら作業を行い、
管理者は農作業だけでなく、障がい者の方の体調の変化などにも気を配りながら
施設内での行動全般のサポートをする。

〇農園施設内の様子

 ビニールハウスの中は、明るく広い空間で閉鎖感はない。
農園はビニールハウスだが、広い空間のハウス内に栽培設備が余裕を持って
すでに暑い時期は過ぎていたため、比較的快適であった。
夏であればかなりの暑さになるだろうと思われる。
夏は短時間で休憩をするなど就労する方々の体調の変化に気を配る必要があるとのこと。

ハウス内の設備を見渡すといくつかの気になることがあった。

・パミスサンドの活用

例えば、作物が植えられている土が白っぽい
肥料かなと思って聞いてみると
培地として一般的な土ではなく”パミスサンド”という専用軽石が使われている。
土ではなく、軽石。

軽石を使っている理由は安全。

農園では数カ月ごとに栽培する作物が変わる。
収穫が終わり、植えかえるときに必ず作物の根が残る。
土で栽培する場合、土に残った根をとるためには鍬で耕す必要がある。
障がい者の方が使い慣れない鍬を利用するのは危険なため、鍬を使わないで済むように
パミスサンドを使っている。

収穫後はパミスサンドを洗い、根を取り除くことで新しい作物に入れ替えることができる。

 

・栽培設備を低い位置に設置

 作業しやすいように考えれば、栽培設備は腰くらいの高さにすべきと考えるが、
あえて下に設置している。
 低い位置に設置することでハウス内の奥まで見通しが良くなる。
障がい者の方が突然体調を崩して倒れたりしてもすぐに気づくことができる。

これも安全に配慮して設計されたもの。

 

他にも施設内は様々な工夫によって作り上げられている。

 

〇屋外の開放感が生み出す精神的な安定とやりがい

 農園の敷地内を案内していただくとそこで働いている方が

”こんにちはー”

”お疲れ様です!”

と元気よく挨拶をしてくれる。
年齢でおおよそ判断はできるものの、
障がい者の方なのか、管理者の方なのか、すぐには判断できない。

皆さん同様にイキイキと働いていることが感じられて

とても気持ちのよい職場である。

開放的な空間と複数の方と協力して仕事をすることなどが、
精神的な安定を生み出し、精神障害の方が多いことを感じさせないのだろう。

 

〇イキイキ働ける職場作り

 写真を見てみてほしい。

スイカとメロンが並んで育成されている。

他にも様々な季節の農作物が栽培されている。

 

ここにも障がい者の方のやりがいを生み出す工夫がある

 

それは納期、品質、数量といった

”条件をつけない”

ということ。

農薬を極力使わないようにしており、手がかかることをひとつひとつ、
愛情をこめて育てることを優先する。

これがイキイキ働くモチベーションにつながっている。
その結果質の高い農作物を育てることができている。

 

収益を求めるビジネスであればありえないことだが、
条件を付けず、効率性を求めないことで美味しい野菜が出来上がった。

見学終了後に農園で収穫したばかりのピーマンとしし唐をいただいた。
見た目はきれいで形もよく、みずみずしく、とてもおいしく頂いた。

〇新規参入の難易度はきわめて高い

見学を通して改めて感じたのは、他社が模倣して新規参入する難易度は極めて高いだろうということ。
ビニールハウスや栽培用の設備を同じように作り、見た目の運営を真似ることはできるだろう。
しかし、現在の仕組みは、これまでに発生した様々な課題を解決した結果出来上がったもの。
蓄積してきたノウハウの塊である。

どんな課題にどう取り組んだ結果、このようになったか。

その過程がわからないまま、模倣しても、同じものはできない。

障がい者の方が働くという少し神経質にならなければならない状況において、解決してきた過程が重要である。見た目の模倣はできても、安定して運営し、拡大させることは極めて困難である。

また、農園の仕組みだけでなく、これまで作り上げてきた契約企業や自治体、地域、
障がい者学校などとの信頼関係を基にした連携などは短期間で作り上げることは不可能である。

新規参入の難易度は高く、障がい者雇用を拡大させるためには同社の活躍に一層期待せざるを得ない。

 

〇障がい者目線で設計

このビジネスが拡大しているのは、これまでの障がい者雇用支援が雇用する企業の環境に合わせようとする”企業側の目線”だけだったのを、障がい者側の目線に変えたことにあると考える。

農場を利用した障がい者雇用について、“雇用企業の現場の就労”でないことに対して否定ていきな意見も一部ではあるらしい。

しかし、知的・精神障がい者に必要なのは各個人のペースに任せることだろう。

効率性を求めるオフィスで効率性を求める社員と共にマイペースを維持しながらやりがいを持って働くことは難しく、定着率が上がらない要因でもあるだろう。

しかし、本来の目指すべきことは、障がい者にもやりがいを持って働く機会を与えること。

特に知的・精神障がいという不利な状況を受け入れる環境を作り、就労を通して自立させることができれば、それ以上に臨むことはないのではないか。

もちろん、障がい者雇用を促進する方法はこれだけではないだろう。

今後も、新たな方法を作り出す企業が増え、多くの障がい者の方が自立することにつながることを期待している

 

 

 

2019年10月25日成長株投資, 銘柄研究所

Posted by ono