理論株価クイズ011 実技科目 -配当分析-
理論株価クイズ011 配当時系列を分析する
問題:
企業の時系列配当列を分析しましょう。成長率のみならず、そのモメンタムもあわせて分析してみましょう。
解答例:
わたしがYou-tubeで週に一度程度のペースで行っているSTOCK VALUATIONSというプログラムがあるのですが、そこでは株価の分析手法を解説しています。(ただし英語です… recommend watch this with 2x speed)
毎回、宿題も出しています。
まずは、配当列を用意しましょう。
たとえばこのような配当列がとれたとします。
これはとある自動車メーカーの配当列ですが…
配当をD(t)とすれば、 (2009<= t <=2019) で成長率g(t)=LN(D(t)/D(t-1))と計算するのでしたね。連続複利で計算します。また、モメンタムをm(t)とすれば、モメンタムm(t)=g(t)-g(t-1)と定義したのでしたね。
計算結果はこのようになります。
解釈が重要なのです。たとえば、2015年や2016年を見てください。配当成長率g(2015)=34%と高い成長を記録。また、g(2016)=9.7%とこれもまた高い成長を記録しています。配当はどんどん増えています。つまり、D(2013)=76からD(2015)=188まで急増。その後もD(2016)=207と着実に配当が増加しています。ところがモメンタムm(2015)やm(2016)はマイナスになっています。m(2016)=g(2016)-g(2015)=-25%と大きなマイナス。こういうとき、たとえ配当成長率がプラスであっても株価は下がる場合があるのです。もっと高い成長を市場がしてしまうからです。
重要なことは、成長率の高さだけではないのです。成長率の変化もまた同時に観察しなければなりません。
株価を見てみましょう。
2012年を起点に強い上昇を見せますが、2015年をピークにあとは冴えない展開です。
モメンタムを見てみましょう。
2011年から2014年まで強いモメンタムですが、それ以降、2015年からはモメンタムは鈍化しています。株価が冴えないのはこのためです。
次に配当成長率を見てみると、2016年もプラスですが、すでに株価を押し上げる効果まではありませんでした。むしろ、株価は下がってしまったのです。このように、増配であっても前年までの増配ペースから鈍化してしまうと株価を押し下げることになる場合があります。
筆者について
山本 潤 (やまもと じゅん)
ダイヤモンドフィナンシャルリサーチ投資助言部にて投資判断者を務める。株の学校長期投資ゼミの講師。
コロンビア大学大学院修了。
哲学・工学・理学の3つの修士号取得。外資系投資顧問のファンドマネジャー歴20年。
日本株の成長株投資を得意としている。
外資系投資顧問会社クレイ フィンレイ日本法人共同パートナーで日本株及びアジア株の運用などを経て投資教育の会社を設立。現在も年間200社前後の会社訪問と投資判断を行っている。
1997-2003年年金運用の時代は1,000億円を運用。
その後、2004年から2017年5月までの14年間、日本株ロング・ショート戦略ファンドマネジャー。月刊マネー誌『ダイヤモンドZAi』誌上の銘柄分析を10年以上続けている。
過去20年超の機関投資家としての運用戦績は年ベースで17勝4敗の勝率8割超(同期間の日経平均は、12勝9敗)。
現在は、DFR(ダイヤモンド フィナンシャル リサーチ)投資助言部において日本株ポートフォリオ22銘柄で投資判断の助言サービスを行っている。2019年8月2日まで年初来7ヶ月間でTOPIXを8%上回る成績を提供している。
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