-理論株価クイズ 004-

2019年7月2日

理論株価クイズ004

MBAの教科書を読んでいると、めちゃくちゃ間違っているところだらけでこちらが恐縮してしまう毎日です。

いきなり挑戦的な書き出しですが、こんな案件の期待値を出して、「やるべきだ」という答えをわんさか書いているのがMBAの教科書ですね。

この案件に投資すべきか?? 

ある投資案件があります。年間で50%の確率で倍になります。50%の確率で1/2になります。翌年以降は、キャッシュアウトせずに投資成果は全て再投資されます。投資期間はトータルで10年です。投資をすべきでしょうか?

A) すべき

B)すべきではない

MBAの卒業生: 答えはもちろんA! 投資すべきです。なぜならば、上がる率が100%(単利)であり下がる率が50%です。確率が五分五分なら投資をすべきです。その場合の期待値は、MBAで教えてもらった通り100+(-50)/2 = 25%が期待値となります。今どき、こんな良質な案件ございません。超お得な取引です! 

もちろん、1が2になる確率が50%です。1が0.5になる確率が50%です。結果と見ると2 x 1/2 + 0.5 x 1/2 = 1.25が期待値です。これは超お得!!となると考えるのが普通でしょう….

なぜ投資すべきではないのか!!

リスクを計量してリターンを計量した時、ちょっと待ってね、本当にこの案件に継続的に投資をしていいのかということになります。この問題をみて、ああ、標準偏差は瞬時に75%ぐらいあるんだなと思えるかどうかが勝負の分かれ目です。(100-25=75, -50-25=-75)

仮にリターンの目算が25%としてリスクが75%とすれば、リターンをリスクで除した比率は25/75で1/3程度です。リスクとリターンの3倍程度の案件ってなんなのよ?ということを考えるのが投資家です。あれれTOPIXと同じじゃん。それならばTOPIXの三倍レバレッジと同じなのがこの案件なのね、と考えるのが投資家。じゃあ、つまんないね。やめとこうかとなるのが投資家です。答えはBの投資をすべきではない、です。

この施行を10回行うとき、5回勝ち、5回負けると1が最終的に10年後に1に戻ります。しかし、1024回に1回の割合で資金は1024倍になるというすごいことが起こりますが、逆に多くの場合にほぼゼロになり投資資金をほぼ失ってしまうのです。

上のグラフでは、一番高い山が25%程度の確率ですが、ここに落ち着くと1が10年後に1に戻ります。左右隣の山は、確率20%ですが、資金は4倍になるか1/4になるかです。その外側の両隣の山は確率10%程度の山ですが、16倍になるか、1/16になるかです。ここまでが多くの予想される結果です。16倍になればすごいですね。1/16になれば悲しいですね。多くの犠牲者がでる仕組みは期待値の高さではなく、リスクの大きさにあるのです。リスクが高ければ、全てを失う可能性も相応にあります。それがわかって割り切ってハイリスクを覚悟を決めてやる、お金を捨てるつもりで最初からやるのであればそれはそれで合理的な行動です。

99%の確率で元本を超える投資期間を見積もる

一般に投資リターンの期待値は投資期間に比例しその標準偏差は投資期間の平方根に比例して大きくなります。その関係と、リスクの概念から標準偏差の3倍を超えて見通しが狂って損をする確率は1%未満と想定できます。よって99%の確率で得することを保証する投資期間は逆算できます。

インデックス並みの投資リスクとリターンでは99%の勝率を保証するには81年もの投資期間が必要となります

上の不等式からσ/g=1/3を代入して求めます。これが97%程度の保証でよければ36年まで短縮できます。また、70%程度の保証でよければ9年まで短縮できます。このようにほぼ確実に勝つまでの期間を見ることで投資案件を選別することがあります。

winner takes all では面白くない

一般に、リスクが高い案件、宝くじ、信用取引による個別株集中投資、仕手株投資は標準偏差が極めて高いので、リスクとリターンの関係は著しく悪くなります。このような取引では少数に富が集中してしまうのです。この運のよい少数者を個人投資家の啓蒙を担うはずの株の雑誌が取り上げて、1を10にするとか、お宝銘柄発掘とか馬鹿馬鹿しいことをやる時があります。運がとてもよい人を取り上げるのは宝くじに当たった人にその秘訣を聞くことと似ています。リターンをどう確保したかをそれっぽく話せばそれがノウハウかもと思うのでしょうが、リスクの量を聞かず、リターンばかり聞くのは問題です。運がよい人を参考にするのではなくリスクを見積もることを覚えるのが先決です。リスクを聞きましょう。

リスクが低いものに投資をするならば全員が勝者になりますが、富の増えるペースは亀の歩みとなってしまいます。亀ではなくウサギになりたい人が極めてリスクとリターンの割合の悪いものに引き込まれ、結果として、一文無しになってしまうです。そして一文無しになる確率の方が成功する確率も同様に高いのです。リスクを考えて、リターンのみではなく、リスクとリターンの組み合わせで投資を考えて欲しいと切に願います。

長期で投資をデザインしましょう。そうすればほぼ勝てます。増やそう資産を!着実に!

 

2019年7月2日成長株投資の理論と分析手法

Posted by 山本 潤