3921 ネオジャパン 機能充実グループウエアを低価格で提供 by Ono
3921 ネオジャパン
ポイント
グループウエアを提供し、パッケージ版でトップシェア(クラウドでも提供)
低価格で充実した機能を提供
運営負荷を軽減するユーザーインターフェース
働く人々にとって必要不可欠なICTツールの提供者という自覚を持って、事業を拡大
海外戦略はマレーシアを拠点にASEANへ
連結した子会社の貢献にも注目
<何をしている会社か>
国内最大級のグループウェア ”desknet’s NEO”をパッケージとクラウドで提供する。
パッケージ版では国内トップシェア。
システム開発会社を子会社化し、顧客層、事業領域の拡大による長期的な成長を目指す。
グループウェアとは:
社内において情報の共有やメッセージのやり取りなど業務を効率化するために利用されるツールを統合したサービスを提供するツール。クラウドとパッケージで提供される。
提供される機能は、ポータル(社内情報を一括管理)、スケジュール、WEBメール、ワークフロー(稟議書や出張申請など、社内の申請業務のペーパーレス化が可能)、掲示板、文書管理(社内の規定集や契約書などの文書を一元管理し、共有)、施設(会議室)予約などで導入により業務効率の改善を実現する。
<マネジメント>
〇新しいことにチャレンジする、新しいものを生みだすマインド
代表取締役社長 齋藤 晶議氏
インタビュー
・成長戦略
・マザーズIPO
https://www.value-story.com/company/3921
高校卒業後、日本電信電話公社(現NTT)にエンジニアとして入社し、企業内大学に入学し、卒業後は横須賀通信研究所で光通信方式の研究員として配属、世界的な研究を続けていたが民営化により自分がやりたい事と会社が求めることの間にギャップを感じ、チームごと離脱しシリコンバレーへ。
インターネットの創世記のシリコンバレーで面白い、やりがいのある仕事が多く、夢中になって研究・開発に携わっていたが、その後、日本に戻って、研究ではなくビジネスの現場で開発したいと考え、いくつかの企業で開発に携わる。
インターネットで世界を変えていこうと考えて起業したが、まずはシステムの受託開発からスタート。多数の案件を受託していたところ、スケジュール管理の負担が大きかった。すでにグループウェアはあったものプロジェクト単位での導入には高額なため、自社でブラウザベースのシステムを作ってしまった。そのツールが他社にも評判がよく、現在の製品版の開発につながった。
新しいことにチャレンジする、無いものを自ら生みだすマインドはこれらの経験から作られたものである。
<沿革>
<会社の特徴・強み>
少数精鋭で高収益を実現。
エンジニアが社員(単体の社員126名)の半分程度を占める。
エンジニアは社内で新卒から育成する。
営業は代理店営業を中心とし、高い技術力を生かしモノづくりに注力する。
<製品の特徴>
〇グループウェア ”desknet’s NEO”
紹介動画
・多機能(27の基本機能)を搭載し社内業務で必要な機能がほぼ揃う
・一人当たり月400円と低価格で全ての機能を提供
・2020年1月時点で導入ユーザー数415万人 クラウド版のユーザー数は30万人
・一般企業だけでなく、官公庁や教育機関へも幅広く導入実績
・顧客満足度が高い
*顧客満足度IT 製品比較・レビューサイト「ITreview」グループウェア・ワークフロー2 部門で『desknet’s NEO』が6 期連続アワード受賞(2020年7月15日リリース)
クラウド版が高い伸び
パッケージ版ではトップシェア
・企業においてグループウェアを導入するポイント
グループウェア導入を決定するうえで重要なポイントは、価格や機能数だけでなく、
”企業内のシステム部門の運用負荷を低減できること”
だと筆者は考える。グループウェアは全員が毎日利用するアプリケーションである。
低価格で機能が豊富だとしても、利用開始時の導入教育や日々の運用において
利用者からの問い合わせが続くようなアプリケーションであれば、
企業内のシステム担当者は導入を躊躇するだろう。
同社のアプリがトップシェアを維持し、かつ競争が激しい市場で成長しているのは
その点で優れているからだと思われる。
同社は顧客サポートのために小規模のコールセンターを用意しているものの、
問い合わせは非常に少ないとのこと(代理店を問い合わせ窓口にしている部分もある)。
UIに優れ、問い合わせすることなく使用されているツールであることの証左であろう。
〇業務アプリ作成ツール「AppSuite(アップスイート)」
desknet’s NEO上で利用する。
紙・メール・エクセルで行われている業務を誰でも簡単にWEBアプリ化できるツール。
・ノンプログラミングでWEBベースのアプリを作成できること
・豊富なアプリを標準で用意し、ドラッグアンドドロップだけで部品を組み立てることが可能。
自社に合わせたカスタマイズをすることで導入を容易に自社用のアプリを作成し、
早期の業務効率改善を可能とする。
・一人当たり320円と低価格で提供
AppSuiteの紹介動画
紹介事例:
・紙主体の社内の作業依頼や申請などの事務処理
紙主体の事務処理では記入不備や読み取り困難による担当者間での書類のキャッチボールが発生する。
紙主体の事務処理は非効率な業務の温床であり、ストレスの原因でもある。
導入により、入力フォーマットはマウスで並べるだけで作成可能。既存の書類とフォーマットが同じであることから、紙主体からWEBベースへの移行も容易である、とのこと。
・Excelで業務情報を管理・複数人で共有
Excelは同じファイルを複数人で共有、同時に編集などの運用が得意ではない。
現場業務ですぐに利用可能なアプリを準備していることから、簡単なカスタマイズで自社仕様にすることが可能。Excelで管理していたものを代替するアプリを作成する。
多くの業界でエンジニア不足が叫ばれている中で、ノンプログラミングの流れが加速している。
業務効率化が実現できた事例が増えれば導入が加速する可能性がある。
<市場・競合>
グループウェアはほとんどの大企業が導入済み。中小も8割程度は導入済み。
現在はMicrosoft(Office365)、Goolge(Gsuite)、国内の企業からも多くの種類の製品が提供されている。クラウド化による低価格化が顕著であり、導入済みの製品からのシフトが進んでいる。
競合との価格比較は以下の通り。
価格は最も安い設定となっている。
*1ユーザーあたりの月額利用料
〇ネオジャパン
desknet’s NEOクラウド版 ¥400/月
AppSuiteクラウド版 ¥320/月
〇Google:Gsuite
プラン 料金
Basicエディション ¥680/月
Businessエディション ¥1,360/月
〇MicroSoft:Office365
プラン 料金
Business Essentialsプラン ¥540/月
Businessプラン ¥900/月
Business Premiumプラン ¥1,360/月
〇サイボウズ:Garoon
ユーザー数 月額料金
〜300ユーザー ¥845
301〜1,000ユーザー ¥800
〇サイボウズ:サイボウズOffice クラウド型
プラン 料金
スタンダードコース ¥500
プレミアムコース ¥800
<業績>
2019年8月にPro-SPIREを連結子会社化し、システム開発サービスが上乗せ。
連結子会社化したのは8月で2020年1月期は2019年8月から2020年1月までの6カ月だが、
第3四半期は貸借対照表のみ連結し、損益計算書では第4四半期から連結。
Pro-SPIREの連結寄与額
2020年1月期 第4四半期のみ 661
2021年1月期(会社計画) 通期 1,927
2021年1月期 業績見通し(会社見通し)
売上高 5,331
営業利益 540
経常利益 560
当期純利益 352
人材確保、海外子会社への投資額を増やすため、増収減益の見通し。
<成長戦略>
同社が掲げる中長期の目標と事業戦略
1.グループウェアビジネスの目標
・累計1000万ユーザー獲得 (現在415万ユーザー)
・国内シェアNo.1獲得 (現在5位)
2.Pro-SPIRE事業買収の目論見
・拡大戦略における技術開発人材の確保
・優良顧客を基盤にSIシナジーを拡大
3.海外展開戦略
①DELCUI設立
技術アライアンス・技術習得
②マレーシア進出
海外初めての重点販売市場、ASEANの拠点
〇グループウェアの成長とPro-SPIREの業績貢献
海外の業績寄与が意識されるのは少し先になるだろう。
グループウェアとPro-SPIREについての見方をコメントする。
1.グループウェアについて
これまでは機能の追加拡充に注力してきたが、機能数は27まで増加した。
今後は機能追加よりも機能改善や連携、管理機能の充実に重点を置くとのこと。
グループウェアは競合が多いが、価格の安さ、充実した機能、継続的な製品の質の改善により、
同社の業績を下支えすることが期待できる。
AppSuiteについて
desknet’s NEO導入企業のAppSuite利用率は非開示とのこと。
利用率が高まれば単価上昇による業績寄与が期待できる。
さらに、AppSuiteを利用した業務フローが企業内に定着すれば、
他社製品へのスイッチングコストが高まる。
ただし、利用率の向上には時間がかかるだろうと予想する。
前述の通り、グループウェアの導入数が伸びている背景には、
価格の低下に加えて手間をかけずに導入から運用まで移行できたことにあると筆者は考える。
中小規模の企業ではシステム部門の人員が十分にいないことが多い。
アプリ作成を容易にするツールだが、着手できる企業は多くないのではないか。
他社の導入事例、業務効率化の効果の数値データが多数出てくれば、
活用を促すきっかけとなると考え、注目しておきたい。
2.Pro-SPIREについて
長期的には同社の成長に寄与する可能性が大きいと考えている。その理由は次の3つ。
①エンジニア不足の状況が続く中で、エンジニア人材を確保
システム開発で受託できる案件の規模は確保できる人数によって決まる。子会社化で人材を確保できたことは新たに事業を拡大する上で優位に働く。
同社は子会社化により
・開発力の向上:ネオジャパンの既存製品の改善、カスタマイズ受託、新製品の開発
・SI強化:大企業や官公庁、都道府県庁などのdesknet’s NEOの運用保守業務の受託による、
あらたな収益獲得などのシナジーを期待しているとのこと。
②業績改善の余地が大きい
企業向け基幹系システム及び情報系システムの開発・保守などを手掛けており、2期連続増収で安定しているものの収益性は低い。現在効率化を進めており収益性は改善傾向にあるとのこと。プロジェクト管理の徹底、新たな事業分野への進出などにより収益性が改善する可能性がある。
③高額な買収にならず、リスクは小さい
前述の通り、収益性の低い事業を手掛けていたため、発生したのれんは138百万円にとどまる。
のれんの償却負担は限定的となっている。収益性が改善せずにのれんの減損を計上するリスクは小さく、将来的な収益性の改善が同社業績に寄与する部分は大きい。
*買収前の業績
2019年6月期(単位:百万円)
売上高 2,004
営業利益 44
営業利益率 2%
買収に伴うのれん 138
のれんは10年間にわたる均等償却
<バリュエーション>
時価総額 411億円
株価 2,772円 (8月21日終値)
会社予想PER 116.9倍
配当利回り 0.3%
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません