7201 日産自動車 – CEO逮捕で配当は維持されるのか - by yamamoto

2019年6月7日

持続可能な成長とは何でしょうか

経営者だけが高額報酬を受け取る、その一方で社員を解雇をし続けるならば…

赤字のときも減益のときも ほぼ無関係に高い報酬を受け取るならば…

減益が続く企業が増配を続けるならば…

末端の社員はつぶやくでしょう 「報酬の額が桁違いで、僕には想像すらできない」と

これが欧米の国際標準の経営のスタンダードな経営ならば… 資本主義に未来はないことになります

「みんなの運用会議」は基本的に企業を応援するサイトですが今回は悪い経営の例としてあげます。

この記事はわたしが主催する定額運用サービス、[10年で10倍を目指す超成長株投資の真髄]のサロンサービスのうち、過去のライブラリーから、投資判断やバリューエションの部分を全面的に削除した上で、企業研究のレポートとして再編集したものです。フルバージョンをご覧になりたい方は、以下のURLから会員登録をお願いします。

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=== ゴーンさんの大功績 === 

ゴーンさんの大功績は1999年からの2000年台前半における日産の大復活劇です。当初の5年間はヒーローといってもよい大活躍をしました。

ゴーン氏は、19年前、日産の再生に立ち会いました。 
コストカッターとして、日本企業の系列のしがらみに囚われないで、購買先を次々と見直しました。 
部材単価を値切ることで、業績を向上させる手法をとりました。 
その大胆なコストカットの手腕は市場から高く評価されました。 

当時の市場がゴーン氏を持ち上げたのは、ゴーン氏が単なるコストカッターではないと感じさせたからです。 

そのときのゴーン氏は、「日産車のファンだ」と公言していました。 
往年の名車フェアレディZを復活させたことがありました。 

また、一旦、廃部を決めた野球部でしたが、就任後に都市対抗野球を見学に訪れたゴーン氏が社員の一体感に感激し、 
野球部廃部を取りやめるという決断をしたこともありました。 
(リーマンショックのときに結局廃部となります) 

当時の日産の社員は、「ゴーン氏が日産を愛している」と感じていたのです。 
だからこそ、ゴーン氏は組織の中で求心力を保つことができました。 

ただし、その後、直近の10年は時価総額が伸び悩んでいます。

この10年間の時価総額の低迷

15年前、2014年3月期の日産自動車株式会社(7203)の時価総額は5兆円を超えていました。現在の時価総額は4兆円台に低迷しています。 
一方で、当時の有利子負債は2兆円台でした。 
現在の日産の有利子負債は7兆円台です。 

つまり、この15年間で、日産は有利子負債を3倍以上にしてしまったのです。 
そして、同期間の時価総額は上がるどころか、むしろ下がってしまったのです。 
ゴーン氏の経営は、株主から見ても、評価できるような内容ではありませんでした。 

     - 増え続ける借金と増配したのに下がる時価総額 -  

一方で、トヨタやマツダやスバルなどの競合は2015年に過去最高の時価総額を更新するなど日産の不振ぶりが目立っってしまいます。特に、米国において販売報奨金の水準が日系ではもっとも高く、ブランド価値が毀損しつつありました。 

=== 時は流れ、人心が離れて === 

時は流れ、会社が減益となっても、ゴーン氏は高額報酬を貰い続けました。 
会社の計画を達成できないときは部下のせいだ、ともとれる発言を度々してしまいます。 

社員たちの心は次第にゴーン氏から離れていきます。 
日産の組織は血流が止まったような悪い状態になってしまったのです。 

今回のゴーン氏の逮捕は、報酬の虚偽報告、会社資産の流用、私的な支出を会社経費とした、などとされています。 
社内の告発とはいえ、最後まで誰からも親身の進言がなかったことからゴーン氏は裸の王様であったのでしょう。 
絶対権力者だったゆえに、引き際を失った形になりました。今回の逮捕劇はあまりにも衝撃的な末路でした。 

社員の心をひとつにしてきた日産野球部の最後の試合の応援席の様子

=== 今後の展開 === 

ルノーや三菱自動車の経営も掌握していたゴーン氏が退くことで、この3社のアライアンスの方向性が揺れ戻る可能性があります。 

日産は独自色を出そうとするでしょう。日産技術陣は、技術ではルノーに負けていないと自負しているからです。 
ルノーからやや距離を置くことになれば、大株主のルノーの株式の将来の放出などのリスクが生じる可能性もあります。 
そこまではならないでしょうが、よい関係を維持しながら、日産の独自性を打ち出していく方向性にいまの日産はあるのでしょう。 

大株主の意向で配当を年々増やしていった経緯を考えると、今後、日産株には減配のリスクはあるのではないかと考えざるを得ません。 
配当を増やしていったのは、ゴーン氏自らが300万株を超える日産の株主であることや何十億円にものぼるとされる株価連動報酬のためだったのでしょうか。 
そう考えるのは勘ぐりすぎでしょうか。 

わたしはゴーンはつまらない人だなと思ってしまうのです。

経営者というのはやはり自分が我慢して社員を立てるというのが理想です。

これを見て欲しいのです。

減益の続く日産の営業益の推移

日産の営業益は過去3年、減益が続いています。

一方で、配当はどうでしょうか。

この増配はひどい。心がこもっていない。なにがなんでも自分の利益のために増配してきたのか?

どんなに減益でも、赤字だろうが、なんだろうか、増配を続けるのはクレイジーな経営です。持続可能ではないからです。また、減益でも天文学的な報酬を社員からむしり取る経営は悪質です。

社員の生産性のグラフが下です。このグラフを見て、わたしは泣きました。従業員は生産性を上げ続けています。ギリギリのところで頑張っています。今後、日産は配当を維持できるほどの余裕があるのでしょうか。 
近年、自動車業界は、次世代技術の電気自動車、水素自動車などへの対応を求められる上、自動運転やカーシェアリング事業への足場を作る必要があります。 
借金を増やして配当を出している余裕がないのが実情です。 
社員に報いるためにまずは労働分配率をあげるのが先決です。 
自動車産業を取り巻く環境を考えると、来期以降、日産株の減配のリスクは相応にあると考えざるを得ません。 

(レポートの表現に不適切な表現があるかもしれませんが、すみません。許してください)

 

2019年6月7日銘柄研究所

Posted by 山本 潤