子供やる気を引き出す その1 「好きこそものの上手なれ」(子育てコラム#3)

2019年12月18日

子どものやる気、モチベーションについて考えたいシリーズ第一弾です。(子育てコラム第3回)

10年前(2007年2月)のコラムです。長男が小学三年生で清新ハンターズ(少年野球チーム)に入ったばかりのころのものです。

■ 野球少年 ■

小学校3年生のユウくんは、週末は、朝の9時から夕方5時まで野球チームで練習漬けだ。 ポジションはセカンド。1球ごとに走り回らなければならない一番忙しいポジションだ。 覚えなければならないことが沢山ある。 チームを強くするために、自分で勧誘ポスターをつくった。 クラスの仲間を誘って、今日も、3人の友達が、初めて練習を見学する。 平日も、昼休みやすくすくスクール(学童保育)で三角ベースで遊んでいる。 図書館に行って、野球関連の本を借りてくる。 野球の専門書には習っていない漢字があるが、 ユウくんは、「上手くなりたい」、「もっと野球を知りたい」ため、 辞書を引きながら野球の「専門書」を少しずつ読み進めている。 いつもかばんに野球の本がはいっていて、パンパンに膨れ上がったカバン。友達から笑われる。 お風呂では指のストレッチ、布団では柔軟体操で股関節をイタイ!イタイ!といいながら伸ばしている。 朝はランニングをしている。 とにかく野球が上手くなりたいのだ。 夢は? 当然、プロ野球の選手だ。

■ ピアノをやめたい少女 ■

小学校5年のさやちゃんは、ピアノが嫌いだ。 練習はしたくない。 毎週のレッスンが苦痛だ。 やめたいと思っている。 お母さんが横に付き添って、ヒステリー気味に、練習につきあってくれる。 レッスンは5年やっているが、それなりの進歩でしかない。 さやちゃんの家族は、クラシック・コンサートに通うような家庭ではない。 食卓で、クラシック音楽を鑑賞し、家族の話題が新鋭演奏家のすばらしさについて、といういうわけでもない。 普通のサラリーマン家庭で、バラエティー番組をテレビを見ながら、夕食をとっている。 お父さんやお母さんは「本を読め、勉強をしろ」という。 しかし、お父さんやお母さんは、家で勉強しないし、本も読んでいない。 さやちゃんは、不満がたまっている。 本人もお母さんもお父さんもいつか、「さやちゃんピアノをやめてしまうだろうな」と思っている。 中学受験をする予定だからだ。中学受験はピアノをやめるよい言い訳になるだろう。 お母さんが本当に楽しそうに、素敵なピアノを毎日弾くような家庭だったら、ちょっとは変わるのだろうか?

■ 30才 2才男児の母親 ■

あやねさんは、30才の母親。 今日も、買い物のついでに、2才の息子をモールのプレイランドに連れて行く。 プレイランドは、モールの3階レストランやおもちゃ売り場の横にあり、無料のためか、いつも10-20人程度の幼児が遊んでいる。 怪我をおそれてか、遊び道具(おもちゃ)は、やわらかいクッション(いろいろな色がある)しか置いていない。 積み木のようにクッションを積み上げて遊ぶ子どもがいれば、当然、クッションは足りなくなる。 クッションの争奪戦になれば、大きい子、強い子が有利だ。 自然と取り合いが起こる。 わが子が他のこどもたちと喧嘩しそうになると、それをすぐに察知して、あやねさんは、幼児たちの間に入る。

「おともだちが、『かーしーて』っといっているよ。かしてあげようねえ」といって、喧嘩をさせない。 相手の親の手前もあるし、面倒(トラブル)はいやなのだ。

他の親たちも、同様だ。 10秒ごとに、母親たちは、注意をする。

「ケンちゃん、それは駄目よ」

「コウちゃん、ばっちい、ばっちいよ」

「エイちゃん、お友達にかしてあげようね」

今日も、プレイランドで、喧嘩は起きない。 親はわからないし、知らないのだ。 子どもたちだけで喧嘩を解決したり、子供たちだけで感情をコントロールできることを。 泣いている子どもがいると、自然にやさしい子が声をかけることを。

「親」は、「木の上に立って見守る」と書きます。 誰にとっても「見守る」ことは「口出す」よりも難しいものです。

■ 好きこそものの上手なれ ■

多くの母親は子どもをスポイルしてしまいます。 口をすっぱくして子供に注意する。その回数は明らかに多すぎるのです!

駄目だ」「駄目だ」と1分間に何回もいわれて、人がちゃんと育つでしょうか? 楽しいことは危険と隣り合わせ。楽しいこと、好きなことは、危ないという理由で親が邪魔をする。 子供がせっかく好きなものを見つかりそうなのに、親が邪魔をしているのです。

本当に好きなものを見つけたら、ひとりで努力できる人間になります

努力の過程で、必要な学力や体力はついてくるものです。 野球少年のユウくんは、1年後、どれだけ上手くなっているでしょうか。

本人だけでなく、彼の成長を、チームの監督やコーチも楽しみにしています。 そして、仲間たちと友情を育むでしょう。 彼の成長は、親だけのものではありません。 監督や仲間やチームのものでもあり、そして、なによりも、本人のものです。

「礼儀作法も他人への思いやりも、ユウくんは生きていくうえで必要なことはすべて、野球から学んでいくんだろうな」とわたしは思いました。

ピアノをやめたい少女が、いやいや練習する、つまらない時間を浪費してしまう一方で、 プロ野球を夢見る少年が、あっという間に過ぎ去る時間を満喫する。 人生とは短く、はかないものです。

■ まとめ ■

~ひとつの分野でやる気が何十年と持続する人は、その分野のプロフェッショナルだ~

執筆から10年。その後、野球少年のユウ(長男)は、小学校5年生でレギュラーのサードになり、二番バッターとして活躍しました。江戸川区立清新第一中学校では野球部の部長として投手とショートを任されました。清新ハンターズ中学部で週末も野球。ハンターズ中等部では江戸川区のチャンピョンになり、都大会に出場しました。勉強は高校に入ってから。でも、高校3年になって一日15時間の勉強で現役で北大に。

いま、北海道大学医学部野球部の二年生。抑えのエースといえば聞こえがよいが、控えピッチャーとして明日、東医体で東日本医学部野球部29校の頂点を目指します。明日の対戦相手は東大理3です。プロ野球選手になる夢は、小児外科医になる夢へと変わりました。野球ばかりしていた野球少年でしたが、いまでも、野球は大好きなようです。

まとめ

  • 子供がどうしても習いたいと強い意思のときだけ習い事はやらせる
  • 親が勝手に子供の習い事を決めないこと。習えと説得しないこと。
公教育を共に支えましょう!

2019年12月18日子育て・教育コラム

Posted by 山本 潤