宅配費用の動向を見る ーECサイトはこれからどうなるのか?ー
輸送費があがってます
新聞記事を引用するでもなく、宅配便を含めて、輸送費が上ってます。通販サイトでも少し前までは、無条件で送料無料でした。最近はそんなサイトも少なくなりました。
値上げの影響からか、総量規制の影響からか、はたまた両方か。ヤマト、佐川、日本郵便は利益が上っています。株価も調子がいい様子。
さて、輸送費が上がると困るのがECサイト。なんとか配送コストを下げようとしています。例えば、最近はアマゾンに頼むとヤマト、佐川、日本郵便ではない業者の人がよく来るようになりました。
どのぐらい上っているのか?
輸送費はどのぐらい上っているのでしょうか?
総務省発表の消費者物価指数と、日銀発表の企業向けサービス価格指数を比較してみました。前者には「運送料」、後者には「宅配便」という指数がそれぞれあります。
消費者物価の「運送費」
ここから入手できます。CSVなので集計しやすいですね。下の図は2017年12月までの運送費の変化率です。(変化率を使った理由、グラフを2つに分けてた理由などは後述の補足を参照してください。)
運送費の定義は
- 家計が購入したサービスであること
- 宅配便運賃、重量10KG、タテ・横・高さの合計100cm。同一都道府県内配送運賃。
- 宅配便業者別
- 取扱個数の多い代表的な宅配業者を複数選定する
とあります。おおむね小物を送るときの料金と考えて良さそうです。
下は個人向けの運送料指数のグラフです。変化率は前月比です。これをみると数回大きな改定があったのがわかります。あとはフラットです。
集計が変更されてからのグラフはこちら(これも前月比の変化率です)。これも一回改定されただけのような印象を受けます。
個人が使う分にはそれほど影響してなさそうですね。
企業向けサービス価格指数の「宅配便」
ここからデータを一括ダウンロードできます。データの解説はここやここ。
この指数は
- 企業間で取引されるサービスである
- 企業向け価格
- ウェイトはサービス提供者別
- トラックにより宅配便を輸送するサービス、とする
- 宅配便の定義は重量30kg以下の一口一個の貨物を特別な名称を付して行うサービス
- 運賃は輸送区間、貨物内容、取引先を特定した「実際の取引価格」を調査
という定義のようです。消費税込みと、消費税抜きの指数があります。消費税は消費者が払うものなので税抜きの指数をで見てみます。
下は前月比のグラフ。2017年からこっち、指数の上昇が何度もあったのがわかります。
下は前年同月比です。2017年末からかなり上っています。
これからの業績への影響は?
3月決算の企業だと、このコラムを書いてる9月でだいたい半期終わったところ。すでに1Q の業績がしょんぼりしたものになっていて、それが株価に反映されていそうです。
2019年の4月になって運輸会社がもう一段の値上げを提案するのであれば、もう顧客への通知は終わっていそうです。
とくに影響がなさそうな企業で、今の期はなんとか乗り切れたとしても、期末にかなり保守的な次期予想を出すところが増えるかもしれません。
ECサイトはこれからどうするのか?どうやって儲けるのか?
何もしないと業績がしょんぼりしだして、株価がどんどん下がっていきます。「配送費があがったので売り」と考える投資家も多くなるでしょう。
対策をきちんとする企業には希望がないわけではないです。自社物流に切り替えたり、物流センターを取得して、宅配便をなるべく使わないようにしていくと思います。それが見て取れるのが下の図。
どちらも企業向けサービス価格指数のうち、「積み合わせ貨物輸送」の消費税を除いた分です。上のほうが前月比。下のほうが前年比の変化です。
見てほしいのは変化率。前月比、前年比、ともに宅配便の変化率より遥かに緩やかです。
積み合わせ貨物輸送とは
- 複数の荷主の貨物を一台のトラックに積合せて輸送するサービス(ただし宅配便、メール便を除く)
- 輸送区間、貨物内容、取引先を特定した「実際の取引価格」を調査
- 貨物内容は、加工食品、農作物、金属製品、化学製品、酒類、自動車部品、繊維製品、など。
のこと
ヨドバシやビックは自社便のネットワークを持っています。こうすれば顧客の住所まで自社便で送れます。これが理想。
そうでなくても、いきなり地方の自社倉庫から東京などに輸送するのではなく。消費地の近くに自社の物流拠点を作る、そうしてそこまで自社便で運んで、仕分けてから宅配便に渡す。それでもけっこう節約になるはずです。
ユニクロのように店舗を持っているところは「店舗配送なら送料無料」としたりするでしょう。コンビニ大手が「コンビニ受け取りなら送料を節約できますよ」とEC業者にコンビニを使わせる提案をしていくかもしれません。
(こんなことを書いていて、そのうち店舗受取りが当たり前になるような気がしてきました。コンビニぐらいにならとりにいってもいいかも。と思い始めてきました。)
補足: 指数について
消費者物価の運送費指数
業者ごとの「輸送費 X 数量」のを足し合わせて、基準年と比較しています。
(業者Aの輸送費 X 業者Aの数量) + ・・・・ +(業者Zの輸送費 X 業者Zの数量)
という計算を基準年と、比較年(2010年)で出して変化率をとっています。
出てきた指数のポイントを比較するのではなく、指数同士の変化率を比較しています。
なお、2018年1月からは運輸業界の変化などを反映するため、計算方法を変えているようです。なので、それ以前の数字と比較するのは避けました。
企業向けサービス価格指数の「宅配便」
運送費指数と比較するため、変化率を使いました。
2010年からしかないのは基準年が2010年だからでしょう。
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