投資家に必要な基本的な素養 -「寛容」 について思うこと

2020年12月31日

日本国籍と差別

私は日本国籍を持つ。4代前の兼吉、3代前の金次郎、2代前の鹿十郎、先代の登。そして私へと繋がる系譜がある。もし誰かが、「山本は日本人だからズルをする。日本人だから民主主義を破壊する」と批判されたなら気持ちよいものではないでしょう。

しかし、日本人が「あんたは日本人、とっとと国に帰れ、お前が出る幕じゃない。人種的に劣っているから犯罪ばかり起こす。やっぱり日本人だ」と日本人から言われることはない。一方で、日本人が中国や韓国やロシア人を馬鹿にして批判することはたまに耳にする。ヘイトスピーチなどを公然を行う輩も多い。

今年はコロナ禍で、米国大統領選挙が行われ、トランプ大統領が政治的な伝統文化を破壊し、極めて有害な陰謀論を世間に撒き散らし、民主主義の破壊を試みている。ことあるごとに敵を作り出し、他者を吊し上げ、盲目的に証拠もエビデンスもなく批判している。そしてトランプの陰謀論を信じる、あるいは支持する証券業界の関係者が存在している。21年続いている伝統的なメルマガである「億の近道」でも今週の月曜日(2020/12/7配信)に、陰謀論を支持するコラムが掲載されてしまった。非常に残念に思っています。なんとも悲しい週末です。

株式投資というものは多くのステイクホルダーをまとめ、企業を社会的存在へと昇華させる活動です。企業が社会へ与えるESG的な付加価値を永続させようとする活動です。

人類は協力し経済的利益を共有してグローバルな経済を発展させてきました。そして時代と共に人類の生活水準は向上してきました。経済的に豊かになり医療水準も上がり、長寿になりました。私たちはニュートンの万有引力の発見を微積分というコンパクトな学問として継承してきました。全ての学問領域で過去の偉人の構築したシステムや新しい知見を受け継ぐことで科学技術は発展しました。科学技術の発展だけではありません。小説も芸術もスポーツも人類の各人がそれぞれに活躍できる社会になりました。

社会の発展の恩恵は黒人も黄色人種も白人も一様に受けてきたのです。

リーダーの役割

我々は必ずしも仮想の敵を必要としません。しかし、悪いやつがいると思う人々がいる。悪いやつがいて社会に害を与えている。そう考える人がいる。そう考える人はリーダーには不向きです。一般論で暴論を吐く人がいる。中国共産党はロクでもない組織だ。北朝鮮はけしからん国家だ。もしそう思うならば、それは100%間違っている考え方です。共和党は正しく民主党は間違っている。そう思える人は合理的な思考が育っていない人です。世の中、それほど単純には割り切れないからです。今時の子供も単純な善悪ストーリーなどは信じません。エヴァンゲリオンしかり、ガンダムしかり、鬼滅しかり、相手には相手の事情があり、こちらにもこちらの事情がある。妥協ではなく昇華による解決がある。そう考えるのが21世紀の漫画やアニメのストーリーです。北朝鮮の政策にも学ぶべきところはある。学ぶべきではないところも当然多い。だが、中国の政策の多くは日本から学んだことを活かしている。日本も太古の昔から先進国中国の技術や制度を多いに学んだのです。

どんな人からも学ぶべきところはあり、自分がいつも正しいとは限らない。だからこそ、互いに違う意見をぶつけ合い建設的な合理的な行動や戦略へと落とし込んでいく。企業の経営者は、女性が活用できなければ組織は回らないでしょう。LGBTの方々を活用できなければ競争はできません。基本的人権を守り、環境問題に取り組まなければ、競争に勝てないのです。そしてもっとも肝心なことは競争相手は敵ではないという当たり前の事実です。ライバルと切磋琢磨し、お互いの特徴や違いを尊重し、業界を一緒n健全なものにしていく、よりよい業界、よい社会へと進化させていく仲間です。友です。同志です。多種多様な方々が集い、感性を持ち寄り、得意なものを持ち寄ることで人類は発展してきたのです。リーダーには寛容さも必要です。株式投資家も同様です。

いまこそ Diversity ますますESG

記者が時間をかけて調べ書いた記事を証拠もなくフェイクニュースだ、マスゴミだと断罪し、自国の利益を他国に優先する。そしてトランプは黒人への差別を放置し、白人から熱狂的に支持されている。いきつく先はマッカーシズム、ナチズムです。トランプのような不寛容なリーダーよりも寛容なリーダーの方が前向きで建設的な社会にはふさわしいでしょう。私たちはそれぞれが多様性を重視しなければならないのです。対立する課題があったとしても、そこは互いに触れずに、共同の利益が目指せる領域を作り出し、一緒に協力することはできるのです。米国は民主党も共和党も協力できる分野は多く、今こそ協力しなければならない待ったなしの分野が山積みです。環境問題。人権問題。経済格差問題。健康問題。

COVID-19による死者とされていますが、大元を辿れば、ジャンクフードの過剰摂取や米国人に多い肥満体質にいきつきます。当然、マクドナルドやコカコーラを過剰にとって身体によいわけはない。COVIDそのものよりもマクドナルドをはじめとするジャンクフードが人を殺しているのではないか。そういうものへの規制は持続可能な社会へと通じます。

もはや美味しいものをバカすか食うのが民主主義ではありません。自己を律し、あるべく理想を万人と目指す。それが人類というものです。二酸化炭素を必要以上に出すのはいけないことなのです。ガソリンをわざわざ燃やして走る車はもう認められないのです。紙を大量に印刷することもご法度です。そして自分のことばかり主張するのもいけないことなのです。自分のみたい現実だけをみるのはいけないことなのです。他人に寛容になり、多様性を認め、移民と協力する。近隣諸国とよい関係を構築する。そういうことから目を背けてはなりません。

他者をフェイクとか敵に見立ててはなりません。みんな違ってよい。天の川を復活させ、川辺のコンクリートを自然に変えていかなければならない。核兵器を廃絶しなければならない。銃を規制しなければならない。ジャンクフードの販売を規制しなければならないのです。

そして それがESG投資へとつながっていくのです

株主に求められるもの。その一つは寛容さです。投資家は差別する側に経ってはなりません。
寛容さとは他者の出方や態度によって変わるものではありません。
黒人もLGBTも女性も全員がこの多様な社会を支えています。

立場の違う意見があります。
意見が違う人に自分をさらけ出すことは難しい。
だからこそ、私たちは批判や批評ではなく、対立相手の痛みや苦しみに寄り添ってまずは慰め、励まし、感謝しなければなりません。

「勇気を出して教えてくれてありがとう」と。

政治信条や宗教や人種や性癖や立場が違う相手の知恵を拝借できるのが投資家の強さです。

日本人の幸せと人類の幸せは両立します。
若者と老人とで世代対立をする必要はありません。
韓国のキムちゃんとも中国のソンさんとも日本のヤマダッチとも親友になれる。
キムちゃんが作ってくれた半導体メモリーでソンさんが作ってくれたパソコンがあるからヤマダッチは安心してパソコンでアニメを描くことができる。そのアニメが大ヒットして世界中の人々がハッピーになる。

それが投資家の強さなのです。寛容でなければ他者の多様で豊かな才能をドブに捨てることになります。分断しているように見えた世の中は実は愛に満ち溢れていたのです。民主主義国家にもその民主主義をより質の高いものにしていく責務がある。独裁国家には民主化へと道筋をつけていく努力が課せられる。香港の自由や台湾の独立は守りたい。しかし強引なやり方ではむしろ逆効果です。継続的な対話。これを粘り強くすることです。

隣人を大切に。隣国を尊敬する。祖国を誇りに思い、自分にプライドを持つ。これらはすべて同時に成り立ちます。

2020年12月31日コラム, 成長株投資の哲学  

Posted by 山本 潤