コラム アナリスト・レポートとは?ーフロイント産業と日本ベル投資研究所ー by yamamoto

2018年2月16日

2018年1月26日。日本ベル投資研究所からフロイント産業のアナリストレポートが発行されている。

これはすごいレポートだ。伝えたい熱意に溢れている。37ページの渾身のレポートだ。HPのご紹介であり、レポートを転用するわけではないので、そのままベル研のレポートをご紹介したい。

まずは、ご一読を。

ベル研究所 フロイント産業レポート

日本ベル投資研究所は、代表取締役 主席アナリスト 鈴木行生さんが経営するリサーチハウスである。残念ながら、鈴木さんとは面識なく、いつかお会いしたいなと思っている。Web上で一般にご公開されている。

リサーチハウスには様々あるが、独立系のリサーチハウスの多くはヘッジファンド向けに会社訪問の結果を即座に伝える売買アイデア型のリサーチハウスだ。ARJとJERが有名である。ほとんど一般には知られていないのは、レポートのほとんどは非公表だからだ。(Advanced Research Japan, Japan Equity Research)

彼らは情報の鮮度を重要視する。少人数で調査をして、限られた顧客、主に、ヘッジファンドにレポートではなくて電話で詳細を伝えるのが仕事だ。「なぜ買いか?」「なぜ中立か?」というポイントだけのレポートである。それでも生業として成り立つのは、ヘッジファンドが膨大な売買手数料を払うので、その一部が調査への対価となっている。

一般投資家に馴染みが深いのが、証券会社から出るレポートである。

多くの証券会社のアナリスト・レポートは、売買をしてもらうことで証券会社が収入を得るためにレポートを出している。セルサイドアナリストといわれている人たちだ。だが、最近は、四半期決算の報告が中心となり、会社の本質に迫る渾身のレポートの率は大幅に減少している。やむを得ないことだが、証券会社である限り、短期売買を否定することはできない。また、大胆な業績を予想しても、注文はネット証券に流れるので、アナリストたちは、最初に、自分の懇意の顧客に電話をして、レポートの方向性を示唆し、顧客に売買の猶予を与えた上でレポートを発行するケースが昔は多かった。よくないことである。

アナリスト・レポートの中には残念なものが多い。

レポート読むより、自分で短信やIR資料を見た方がよっぽどわかるのだ。

シェアドリサーチというものがあり、

企業サイドの依頼を受けて良質な情報を投資家を選ばずに公表するというビジネスモデルのリサーチハウスである。シェアドリサーチは、どうしても企業寄りになりやすく、大胆なアナリストの予想は載せない。にも関わらず、ニーズがあるのは、セルサイドアナリストがカバーしない、あるいは、カバーをしても、企業の事業内容の理解が会社側から見て不十分に思うからなのだろう。四半期報告に明け暮れるアナリスト・レポートは社会にとって必要とはされていない。

鈴木さんのように、企業寄りにならず、投資家の目線で、フロイント産業の業績が悪いときに、そして、これからさらに悪化する局面で、いつも渾身のレポートを書く、何十年とリサーチの第一線でやってこられた。こういう人がやはりマーケットから尊敬されるのだ。

普通?のアナリストは業績が悪いときは見捨てるのが普通だ。

そして、フロイントは来期19年2月も減益になる見通しだ。そんなのとき、昨年は、レーティングの引き下げが相次いだ。業績は思ったよりも悪かったからだ。

フロイントは新規ビジネスに社運をかける。当然、固定費は上がるだろう。まったくもって利益の方向性という意味では、「買っていけない」というタイミングに思える。一般の投資家には。

しかし、いま、ここでフロイントの「買い」の準備をすることは、非常に合理的なのだとわたしも思っている。昨今の不人気さと相場の調整によって、よい投資機会が現れて、わたしは購入を検討しているところだ。

おそらく、投資家の大多数の方々にはまったくもって理解が難しい判断であると思う。

フロイント産業に注目が集まる理由

EVの二次電池向けの正極・負極材料のナノ粉砕技術が注目されているからである。 

現時点の正極・負極活物質はミクロンレベルであるが特に体積当たり表面積の向上による容量増加・充放電の高速化の観点から微細化は進む。 実用的には微細化により発生する副作用等をいかに抑え込むかによりその実用化のサイズは決まって来る。 電池性能の向上に関しては粒子の微小化要因のみならず決まる部分が有るので一概なことはいえないのだが。

 粒子界面の低抵抗化、応力の緩和を目的とする助剤に関しては先行的にナノレベルのパウダーが用いられていくと、わたしは考えているが、その粉砕技術をフロイント・ターボが持っているのだ。
 さらに粒子界面のナノレベルの表面改質(コーティング)も同様に新たな必要技術として用いられるので、本体との相性や役割分担も明確だ。

フロイント・ターボの粉体技術については、トナーの技術の転用である。そもそも二
次 電池への転用を考えたのは、4−5年前だ。 ターボミルは負極材の粉砕に関して5年前から実績が出始めた。 正極等向けにはV-Turbo による対応を2016年初から始め、その後中国等の対応
を開始した。
フロイント・ターボは特許がほとんどないが、知財面では新規装置を中心に既に申請中だがまだ非公開だ。

研究レベルでは、粉体による負極新材料としてシリコンが今年話題になっている。フロイント・ターボのVターボCの試作レベルでは既にシリコン等次世代金属負極材の粉砕実験も進行中だ。

業容拡大について。人員の拡充や研究開発について。開発費は増額基調になるだろう。既存分野の応用、転用のR&Dのため、金額的には、例年のR&D費用が微増していくレベルかと考えらる。生産能力の向上に関しては、投資は必要になり、検討中だろう。

最近の受注で競合を抑えて受注を獲得している理由。 マーケティングとしては、この分野に対して、後発で有ったが故、先行メーカーの不足する仕様を補って市場投入した事が功を奏したのだ。試験機レベルではスペックの優劣であり試作機では他社を追い抜いている。

だが、量産への課題は残っている段階である。

フロイント・ターボは湿式に関してOB ミルに於いて得た知見をベースに、後継機としてA-Turbo
-TZを2017年11月より上市。この装置は競合と考えられる装置に比べ特に二次電池用粉砕として優れた仕様を複数有している。湿式粉砕がメインと考えており、既にSi等の次世代電極材の粉砕では
100nm近傍の粉砕を多々実施している。

Li イオン二次電池
・Liイオン電池において、負極材料としてSiナノ粒子が実用化されると、従来のグラファイトと比べると10倍以上の大容量化(蓄電)が可能。
かつ、急速充放電が可能なため理想通りのシナリオとなれば、ガソリンの給油と同じイメージで電気自動車の大容量充電が短時間で可能となる。このような電気自動車であれば間違いなく現在のガソリン車は駆逐される。
 
・このように理想的に見えるSiにも実用化へ向けた重大な課題がある。そのひとつはLiイオンを蓄積するとSi粒子が膨張して破壊してしまうことだ。
 
・このような課題はSiを粒径150nm以下にナノサイズ化することで回避可能なようだ。
 
 
・実用化のためのブレークスルーは、このような方法で作製されたナノ粒子が、リチウムイオン電池電極として本当に実用に耐えるものであることが確認できること。
 
フロイントターボの試作装置を中韓の電池メーカーがコンペに勝ち残って納入にこぎつけたとのことで、実用化検討の当事者となる大変良いポジションにいることは間違いない。フロイント産業がナノ粒子電極に必要な造粒とコーティングの技術を持っているのは魅力的だ。
 
投資家に確約などない!
 つまり将来有望だが、足元は悪い、という状況。
 

本業の受注が悪すぎるのは、ジェネリックの普及のために、ジェネリック薬価も下げてしまったからである。しかし高齢化の折、薬の販売量自体が落ちるわけではない。製薬業界の投資が止まっている時期が投資のチャンスであることは間違いない。

投資家は、確約がほしいわけだ。19年2月の減益幅はどの程度なのか。あるいは、受注が底入れるタイミングはいつなのか。フロイント・ターボの将来性はどうなのか。確約がほしい。

だが、確約はない。

悪いときも、よいときも、投資は難しい。よいものだけを買ってもポートフォリオとはいえない。悪いものの中から、いつかはよくなるものを買うのが基本だ。

というわけで、ゆっくりと下がれば買いのスタンスでよいのではないか。

アナリスト・レポートとは??

わたしのように、言いたいことをそのまま書き、「おい、俺の意見を鵜呑みして損してもそれはあんたの責任だぜ」と注意書きも載せないのは、その方が好ましいと思うからである。

いまの日本株市場では、日本ベル投資研究所の鈴木さんのように、渾身のレポートが圧倒的に足りないのである。近いうちに、鈴木さんに会って素晴らしいレポートをありがとう、こんなものを無料で読ませてもらって、わたしは幸せだと伝えたいものだ。

レポートには形式があり、見てくれがあり、どこに何を載せて、どんな順番で書くかまでを統一している証券会社もあるが、形ばかりで魂がなければ、もう、書かなくてよろしい。といえば言い過ぎだろうね。まあ、わたしも含めて、大切なことは、形ではなく、本質だ。レポートは心を込めて書きましょう!

フロイント・ターボ

フロイント・ターボ(以下FT)はフロイント産業の100%子会社。
2010年にフロイント産業が買収した。
2014年 Vーターボを開発・商品化。
2016年12月2日に製品技術説明会を国際粉体工業展 東京2016にて開催。
『粉砕性能が飛躍的に向上した高効率アニューラーギャップ方式ビーズミル』と題した。
2017年3月に初めて[国際]二次電池展(バッテリージャパン 東京ビックサイト)に展示。
分級機内蔵型粉砕機V-ターボCを発表。
同機において、二次電池の電極材料に対応できることを示した。
接粉部がセラミック仕様であり、金属のコンタミを限界まで抑えることに成功。
(FT開示資料より)

2017年10月11日に粉体工業展大阪でリチウム二次電池の特設コーナーを開設。
以下の製品群を「製造ライン」として展示した。
<電池コーナー>
■セラミック仕様 分級機内蔵型粉砕機 『V ターボ C』
・独自の特殊粉砕刃を搭載し、優れた分解・洗浄性を実現、セラミック仕様により金属コンタミ「0」も可能
■粉砕機 『ターボミル S』
・50 年売れ続けているロングセラー商品、高い粉砕能力とシャープな粒度分布が可能
■分級機 『ターボスクリーナー』
・特長のある円筒型樹脂スクリーンにより高い分級能力、分解清掃性及び静粛性を実現
■乾式造粒機 『ローラーコンパクター』
・バインダーを使用せず原料粉末をそのまま圧縮、成形、粗砕、整粒が連続的に可能
■複合型造粒コーティング装置 『スパイラフローSFC』
・粒子形状、粒度分布及び嵩密度を自由にコントロール、混合・造粒・コーティング・乾燥が 1 台で可能
■高速攪拌造粒コーティング装置 『グラニュマイスト』
・独自技術のアジテータスクレーパーとチョッパー羽根の採用により高い攪拌造粒が可能

2017年11月発売予定の新製品湿式粉砕・分散機【アクアターボ Tz】や高速混練攪拌分散機【バランスグラン】等の展示を昨年見た。

ブースを訪れたが、「営業にはフロイントグループをあげて力を入れます!」と気合ある返事をいただいたので、注目したが、買いのタイミングを考えているところであったのでレポートにはしなかった。

参考
 
【参考資料】
 
(1)リチウムイオン電池とナノ科学
 
 ・負極材料としてSiを用いた場合、グラファイトの10倍以上の容量。
 ・Liイオンを取り込むとシリコンが膨張して破壊に至るという課題があるが、ナノサイズとすることで課題をクリアできる。
 ・ナノ粒子のため表面積が膨大!しかも高速充放電が可能。
 ・ナノ粒子やナノワイヤーを利用することで,これまでのリチウムイオン電池電極を遥かに超えるような高速充放電が可能になる。
 
(2)高性能リチウムイオン電池用シリコン負極材料の進展(Merck)
 
 ・シリコンナノ粒子のサイズを粒径<150nmとすることで充放電に伴う膨張による破壊の回避が可能。
 
(3)リチウムイオン電池負極への Si ナノ構造の導入
 
 
(4)切粉由来シリコンナノ粒子のリチウムイオン二次電池負極への応用
 
 
(5)NIMS、リチウムイオン電池負極用高性能SiOx複合ナノ粒子の高速生産法を開発
 
(6)微粒子の生成方法について
 
(7)平成21年 特許出願技術動向調査報告書 リチウムイオン電池
 

2018年2月16日コラム

Posted by 山本 潤