会計知識を学ぶきっかけとして by Ono
友人から
”簿記知らない人向けに簿記3級からファイナンスの基本までを一日でやる勉強会をやってくれ”
と無茶ぶりをされた。
そもそも簿記3級とは普通、どのくらいかけるのか
TACを見てみたところ
商業簿記3級講座
全10回9,800円(17300円のところ)
講義時間40時間程度
だそうな。
・40時間もかかるのか
・たった9800円なのか
というのが正直な感想。
それを1日(5時間)だとぉ
さらにプラスして、ファイナンスの基本、企業評価にも触れてほしいとは・・・
無茶ぶり過ぎるが、友人の頼みは断れず、受けることに。
簿記:3時間
ファイナンス:2時間
として、簿記3級を3時間に収めることができるのか。。。
ただ、簿記3級の合格が目的なのではなく、
ファイナンスを学ぶ、企業評価のための基本的な簿記
なので、ひとつひとつの仕訳や元帳、などを理解する必要はない
ということで、初学者向けに必要なことを整理してみた。
あくまでも
“初学者向け”
で整理したのでベテラン投資家の方には参考にならないかもしれないのでスルーしてほしい。
しかし、会計知識抜きに株式投資をしている方も多いのではないかと思われ、
ここでその一端を紹介することで学びのきっかけになるならば多少の価値はあるかもしれない。
〇全体の構成
全体の構成としては
簿記3級+指標の見方+企業価値評価の基礎
とすると
① 財務三表の役割、見方
② 指標の見方
③ 企業価値とは
④ 企業価値が高まる経営判断
こんな感じだろうか
今日はこの①と②の部分についてまとめたことをご紹介しようと思う。
では順に見ていこう。
① 財務三表の役割と見方
財務三表の説明でよくつかわれるのは
CS(キャッシュフロー計算書):一期間に流れるお金の増減の大きさ
BS(貸借対照表):一時点の会社の大きさ
PL(損益計算書):一期間の取引の結果
というもの
記述方法で共通する特徴は
上から重要度が高い順に書かれているということ
それぞれに対する私の捉え方は
“一番大事なのはCS”
“じっくり見るのはBS”
“ちらっと見るのがPL”
そして
3表は独立してみるのではなく関連付けてみて考える
長期の流れを見る(単年度のみではなく)
〇CSから判断すること
足元の資金繰りと企業のステージ:成長(投資)期 回収期 安定期
キャッシュフロー計算書は
営業キャッシュフロー(以下、営業CF)
投資キャッシュフロー(以下、投資CF)
財務キャッシュフロー(以下、財務CF)
と分かれている。
この3つは
営業活動で得た資金から、新規投資を行い、借入金を調達(返済)し、配当を支払う
という事業全体に関わる大きな流れを表している。
それぞれを順に見ていこう
・営業 CF
冒頭の“ポイント”で重要度が高い順に記述されていると書いた。
営業キャッシュフローの上位にあるのは何か
a.営業活動で生み出したキャッシュとそのコスト
税引前利益
減価償却費(すでに支払い済みの今期分)
b.営業上のキャッシュの動きに影響を与えたか
売上債権の増減
棚卸資産の増減
仕入れ債務の増減
*これらの項目は資金の循環の変化を表している
売上債権、棚卸資産などが増えることは、資金の循環を悪化させる。
大きな金額であれば、回転期間などの水準をチェックする必要がある
c.その他の活動
税金支出
保険金
下のほうに書かれていることはよほど大きな金額でなければ見なくてよい
・投資CF
有形無形固定資産増減
(投資)有価証券増減
もちろん、事業に関わる投資のほうが重要である。
四季報、短信の表紙など、投資CFの表面上の総額だけでは内容がわからない。
事業に投資しているとしても、どの事業にどの程度投資をしているかが重要であり、
企業に確認すべきポイントの一つである。
・財務CF
借入金・社債増減
特にコメントはない。あまり見ないかな。
〇BSは 過去から現在までで作り上げられた総合力
よく言われるのは前述のとおり、BSは
“一時点の会社の大きさ(状態)”
ではある。
しかし、私はもう少し違った捉え方をしている。
BSは
“企業が過去のすべての期間を通して、この期末時点まで積み重ねてきた結果の姿”
さらに
“これからさらに継続して事業を続けていくための姿”
だと。
ちょっと大げさだがw
そのくらいBSは重要なのだととらえている。
よって、CS,BS,PLについて冒頭で
“じっくり見るBS”
と表現したのはその意味である。
投資家から見たとき、BSは企業との対話のポイントが多いはずである。
例えば、簡単な例は
・(利益を生み出さない)現金をそんなに持つ必要はあるのか
・資産をどのように投資していくのか
・持ち合い株は必要か
〇PLからわかることは少ない(は言い過ぎか)
“ちらっと見るPL”
と書いた通り、あまり見ない、PLからわかることは少ない
・増収率の変化
・利益率の変化
を見て、その要因を知る。
要因を把握するためにセグメント別にブレイクダウンして確認し、
さらに可能であれば、特に同社の業績をけん引している製品・サービスについて調べる。
売り上げは 価格×数量
価格の変化は?
数量の変化は?
とブレイクダウンして把握する。
企業との対話では特にこの価格と数量について集中して聞くことになる。
全体の業績数値よりもまず個別の製品・サービスである。
具体的な数字でなくても増えている、減っている、継続的か、一時的か、その要因は、
といった具合に掘り下げていくと、実態が見えてくる。
以上、ざっと、私なりの財務三表の役割、見方をご紹介した。
少し、オリジナルのところがあり、違和感がある方もいるかもしれないが、
自分なりに理解していればよい。
ただし、わからなくてスルーしてはいけない。
次に指標の見方
② 指標の見方
ポイントは
・市場全体、業種別、個別を知る
・ビジネスモデルを理解する
・同業他社比較する(同じビジネスモデルなのに差があるならば何かある)
・長期で見る 変化を見る
簿記3級を勉強すると、たくさんの指標を学ぶだろう。
それぞれに意味はあるが、他社比較するにあたってざっくりと次の指標があればよいのではないか
・収益性
わかること:提供するサービスの付加価値の大きさ 稼ぐ力
指標 売上総利益率 営業利益率 経常利益率 ROE ROA
・安全性
わかること:倒産リスク 支払い能力
指標 短期:流動比率、長期:自己資本比率
・活動性
わかること:機動力(ちょっと表現が難しい)
指標 回転率(棚卸回転率など) CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)
・成長性
わかること:成長力
指標 増収率 増益率
指標でみることの利点は、なんとなくのイメージではなく、数字で理解し、比較できること
〇ステークホルダーを知ることでビジネスモデルを知る
前述の指標の単純な数値比較にはあまり意味がない。
業種ごとに関係者、ステークホルダーは異なる。
すべてのステークホルダーも考慮したうえで
取引の流れ お金の流れを把握する必要がある。
ビジネスモデルを理解することにつながる。
突然だが、マツモトキヨシHDと大正製薬HDを比較しよう。
マツモトキヨシHD 売上高5,590億円 営業利益336億円
大正製薬HD 売上高2,800億円 営業利益370億円
(数値は前期実績)
大正製薬は売上高が半分だが、営業利益は上回っている
どんな取引があるとどうなるか
取引の具体例をイメージする
マツモトキヨシ:仕入れ → 販売
大正製薬:仕入れ → 加工 → 販売
加工の部分で付加価値を高めることができるために利益率に大きな差ができる。
〇社会の変化と結び付けて影響を考える
単純に、
“利益率が高いね”
“自己資本比率が低いね”
だけで終わってはいけない。
その先に思いをはせる。
例えば
サービス業など原価の多くが人件費の場合、今後人件費はどうなるか
負債比率が大きい企業は 今は金利が低いけど金利が上がったらどうなるのか
といった具合に、指標を見ることは数字で明確に理解したうえで
思考を始めるきっかけにするものである。
以上が、簿記3級部分、前半3時間の部分。
具体例を織り交ぜながら、理解を確認しながら進めたら3時間では終わらないかもしれない。
以上、ご参考まで。
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