企業研究 レオン自動機 (6272) -存在理由のある企業たらん- by yamamoto

饅頭のお墓

2018年の夏は異常に暑い夏でした。

知財情報の活用のため、この夏よりリンクスリサーチと発明塾とのコラボレーションを行い、弊社の相川アナリストと発明塾の楠浦塾長と3人で同社を訪問したのです。

8月下旬のことでした。

レオン自動機(6272)の宇都宮本社を訪問しました。本社は駅からは離れていました。タクシーで20分ほどで本社の敷地に到着したのです。本社の敷地にはお饅頭のお墓がありました。世界で初めて自動機でお饅頭の生産に成功するまでの間、そして、成功してからも、開発に次ぐ開発を重ねて機械に改良に改良を重ねてきた期間、同社は、大量の食べ物を試作として「粗末?」にしてきたとの念から、丁重に敷地内に饅頭墓地をつくり、饅頭を弔ってきたのです。わたしもそのお墓に手を合わせました。

お饅頭のお墓

レオン自動機の本社には、もちろん、お墓(というか記念碑)だけではなくて、その歴史を綴った展示室もありました。そこには創業以来のエポックメイキングな開発機や量産機が並べられていました。また、創業者・林虎彦氏の写真や実際に創業者が設計図を描いていた机もともに展示されています。

展示室にある創業者林虎彦氏の創業当時の開発の様子

また、敷地内には研究棟があります。同社の技術によって幾重にも重ねることのできる生地や何重にも包むことのできる試験機によって、日々、新しいレシピが生まれているのです。日本の名だたる食品メーカーの開発者が半ば常駐している様は圧巻でした。日本の次世代の量産食品の新しいアイデアは日々はここで作られているのだという想いを持ったのです。

昭和48年(1973)当時の新聞広告

レオン機の導入事例

HPに豊富な事例が紹介されています。

http://www.rheon.com/jp/products/list.php

主力製品のひとつが「火星人」シリーズです。名前のごとく、姿が火星人のように見えるからだそうです。

火星人CN500

知財の力で他者を圧倒

特定の知財領域(FIやIPCなど)でライバルを圧倒している企業ということで、わたしたちも期待して訪問しましたが、期待を裏切ることのない取材となりました。

正直、食材を包むという技術では、ライバルと言えるほどのライバルはいない状況です。(中国などに価格半分以下で完全な違法コピーの模倣品は出回っています)

同社の要素技術は主に次の3つですが、3つとも今後、長期に渡る知財の排他的所有権が認められています。

包あん(ほうあん) 整形技術

要素技術の1つは包あん整形技術です。重量という物理現象を利用して餡子と皮を棒状で落とすのですが、その切り方が基本特許となりました。包着盤の特許です。

まずは同社のHPにある、この動画をみてください。生地を呼び込みながら餡子を包む様子がわかります。

包あんの基本特許は、しかし、1983年に満了します。

同社はその後も強力な基本特許を次々と取得していきます。スライド角型シャッタの特許をを取りますが、2006年に満了。 おはぎ向けに揺動式シャッタの基本特許をとりますが、これも2013年に満了。次に、 ミックス式シャッタの特許。これが2018年に満了します。さらに、さらに、回転式シャッタ・ベンドタイプ耐久性の特許でチーズインハンバークの提案を行いますが、この特許は2014年まで有効でした。次に、野菜たっぷりコロッケ)や三重包あん、そして、粉つけやスライスもオプションでつけたり、超音波カッターを採用し、ワイヤカットによる無駄を省くなど画期的な機構を次々と商品としてきました。しかしながら、次の基本特許も抑えてあり、その特許が切れるまでに、さらに新しい特許を取得するのです。それが可能になるのは同社には100人以上の開発者がいるからです。

シャッタというのは、文字通りカメラのシャッタのシャッタですが、動画を見るのがわかりやすいので紹介します。

機種は同社の主力製品のひとつ「火星人シリーズ」のCN500です。4分間の動画です。

生地の作成

生地(シート)からパンを整形する基本特許がですが、シートは連続面体ですが、そこから精度高く1gの精度で次々と切り分けるのです。水分を多く含む面体は湿度や温度の違う条件下で、さらに重量は発酵や蒸発により影響を受けますが、その影響を排除しているのです。この分野では1994年に基本特許が満了。しかし、やはり、次々に基本特許を成立させます。ストレッチャーの基本特許(1999満了)。さらに、HMラインの基本特許(1999満了)。マルチストレッチャー基本特許(2012満了)。 律動ローター基本特許(2014年満了)。 現在の基本特許は正転・逆転式マルチローラーですが、この特許は2027年に満了となります。

Do Feeder(連続生地排出機構)

3つ目の要素技術は、Do feeder(ドウフィーダー)で、これは個片の生地(シート)を連続的に排出する機構です。MM line方式の基本特許が成立(1995年満了)。次にユニバーサル・エクストルーダー方式を権利化(2003年権利満了)。 次にはリング・エクストルーター方式で特許取得(2003年に特許権利消滅)。次にCWライン(2003年満了)。 F型ドウフィーダー(2016年満了)次には ツインデバイダー(2019年に満了予定)。次に フレックスDo devider(2032年に特許期限)。さらに、EZ devider方式は2033年に特許が満了となります。ところがこの調子ですから、同社は2100年になっても、基本特許を脈々と生み出しているのではないかと思います。

ここまで要素技術を極めていくと、孤高の戦士のような存在となります。相撲で言えば白鵬、野球でいえばイチローという具合でしょうか。

レオロジー

社名の由来はレオロジーです。

以下は、HPより抜粋したものです。

 

長期の展望を持つ よい経営陣

現社長の田代さんの人柄について聞きました。

創業者の名誉会長は典型的なカリスマです。創業者と比べると田代さんはご自身でカリスマ性はないと悟っていらっしゃるご様子なのだとか。

そこで、田代さんはこう方針を決めたそうです。

社員の声をきこう。

それでしょうか、田代さんの経営するレオン社内の風通しはとてもよいそうです。

田代社長は、バブル崩壊後のデフレや業績不信の時期を経験していらっしゃるので、慎重な面もあるようです。

食品はディフェンシブですし、顧客のキャッシュフローはそう大きく変動しないはずです。また、食文化はそう簡単に切り替わらりません。同社の目標は必然と微増収を目指すことになります。売上で2−3%を少し少し持続していきたいそうです。

長期で「じわり」が理想

現在の懸念は、この数年よすぎたこと。結果として、組織として足元が弱くなっていることを懸念しているそうです。

トップダウンではなく、ボトムアップで提案ができる組織に変えようとしているのです。 利益と売上を確保しつつ、人材を育成を同時にしています。 毎年20−30人を採用し、特に海外に通じる人を採用しています。何がなんでも何人とるという感覚ではなく、よい人だけをとる方針です。昔は地元の方が多かったが最近は世界から人材がきているようです。

現在、組織体制を見直すことを5年計画でやっています。

海外の開拓へ

機械の6割は国内で海外は4割です。5年後にはこの数字を逆転していく計画です。

生産体制や販売網も自社のみでしたが、 今後は、協力工場を積極的に開拓し、社員を増やさないで増産を可能にしていく方針です。

同社の営業マンは機械を売るわけではありません。機械からできる商品の可能性や夢をお話しできる人が同社の営業なのです。ですから、営業といえども、食品というものを熟知しなければならないのです。そのため、同社は研究室が本社にあり、レシピを絶えず開発しています。

同社に訪問して「よい企業だな」と思ったことは、彼らが「人を育てるのは時間がかかる」ということを認識していたことです。

今後は、世界中で代理店をどうやって強化するかが課題です。 124カ国に導入実績はありますが、いまは、特に中国が日本の食文化を受け入れてくれているらしく、中国で日本の味がヒットしているそうです。

また、同社は社員の昇給に熱心です。平均年収は5年前の500万円台が現状700万円台となっています。

長期で伸びる会社がどれだけ社員を大切にしてきたか。わたしは身を以て20年間体験してきました。(逆は必ずしも真ならず)。同社は典型的な長期投資に向く企業であることは間違いないでしょう。

以下のチャートが、このレポートでもっとも見せたいチャートです。レオン自動機社員の平均年収の推移です。

どのように低価格競争を避けているか

アジアにはレオンの自動機を模倣する田舎者もたくさんいます。価格競争に巻き込まれない方策を聞きました。

答えは、美味しいものにこだわる、新製品にこだわる顧客とパートナーになることでした。安かろう古かろう不味かろうを目指す顧客は安物の機械を買うでしょう。

理想的な顧客は

  • 日本の大手食品メーカ
  • セブンイレブンなどのコンビニ各社です。コンビニでは、たとえば、昨今、プレミアム肉まんなどが流行っていますが、同社の機械による製法です
  • 志が高い個人経営を含む料理人や外食やケーキ屋パン屋お菓子などの小売店。自らが開発したレシピを科学的に再現し省人化を助けます

このようにレシピ開発の苦労を共にしつつ、その国、その国で食文化を支えている気概のあるプライドのある顧客だけを相手にすることで同社は過去、価格競争には巻き込まれなかったのです。

技術開発の方向性

その1 生産能力よりも食の深さや美味しさを追求する方向性

成熟化する社会において、いま、求められているのは量ではなく、質です。これを食品に置き換えるならば、たらふく食うよりも、美味しいものを少しだけ食べる、というトレンドです。

腐りやすいものを腐らないようにするために、食品には多くの防腐剤など薬が使われていますが、そのような薬の量を減らしつつ、鮮度を保つ製法を開発していくことになります。

その2 完全自動化の方向性

技術のもうひとつの方向性は、食品製造現場での全自動化・省人化です。

実は、今年から同社はロボットを使った全自動ライン、あるいはロボットとの協調製造ラインを顧客に提案しはじめたところです。

この提案は、人手不足の昨今、顧客は非常に高い関心を寄せているそうです。

あとがき

これは単なる訪問日記です。株の推奨のためのものではありません。

同社の理念は、「存在理由のある企業たらん」です。

いま、どれだけの企業経営者がこの覚悟をもって経営の任務についているのでしょうか。毎日の雑務に追われてしまうのがわたしたち凡人です。特許は20年の排他的権利です。次の20年のBlue Oceanの構築を法律が応援してくれるのです。田代社長は、創業者の林さんと一緒に自動機開発で苦労をしてきた方です。社員の日々の開発の苦労、営業の苦労を長期的に支えるデザイン力が経営には求められます。日本企業のひとつのあり方を示すよい事例だと考えて、掲載させていただきました。レオン自動機のIRのご担当者の方、取材をさせていただきまして、誠にありがとうございました。わたしも微力ながら御社の発展を祈願いたします。

付録

増収率の推移

売上の推移:過去最高の売上水準

営業利益(=OP):過去最高の営業利益水準

ROE: 過去最高のROE水準

営業利益率(=OPM):過去最高の営業利益率の水準

BETA: 2年で倍増した株価を反映し、BETAは上昇基調

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

note: データ出所:金融データソルーション グラフは筆者と古瀬アナリストが作成

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