次の「リーマンショック」が来た時に減益率が一桁に留まる企業は?by yamamoto

2020年2月6日

2012年以降の絶好調相場、そろそろ最終段階でしょうか??

好調な企業業績も2018年に入り踊り場懸念から、株価は一進一退。新興国通貨と新興国の債券市場の混乱から心配になる方々も多いのでしょう。

仮に、ギリシャショック、リーマンショック、アジア通貨ショック級のショックが来た時に、保有銘柄がどの程度下落するだろうか。

気になる方は、シミュレーションぐらいはすることはできます。

(リンクスリサーチのpython教室や株の学校ではこういうことが計算できるようになります….)

手順1

増収率の系列から過去の増収率の標準偏差を計算。標準偏差の2倍分を減収率と仮定します。

手順2

固定費を計算します。簡易的には平均年収(単体)と従業員数(連結)の1から1.5倍とします。これは非常にざっくりしたものですので、もう少し、しっかり計算しなければならないのですが、わたしの場合は、全銘柄を一気に計算するので最初は簡易的に行って、銘柄が特定できてから精査する、ということでご勘弁ください。

手順3

損益分岐点を計算します。これは固定費がわかるので、結果として変動費がわかる。変動費がわかれば変動費率(変動費を売上で割ったもの)がわかる。変動費率から限界利益率(=1から変動費率をひく)がわかる。固定費を限界利益率で割ったものが損益分岐点売上です。それをいまの売上で割る。損益分岐点比率がでます。

手順4

現在の営業利益率を確認。増収率の標準偏差の2倍(=2σ)に限界利益率(MPR)をかける(=2σ*MPR)ことで失うべき営業利益率が算出できるので、それを営業利益率(の絶対水準)で割ると、営業減益率が算出できます。

2σ MPR /OPM = 2σ減収率の場合の想定営業利益をいまの営業利益で割ったもの

例えば、σが0.1でMPRが0.3であれば、2σMPR=0.06ですが、今のOPMを0.15とすれば、新しいOPMは0.15-0.06=0.09になります。その場合、減益率は0.09/0.15ですね。

これが0.9以上であれば、リーマンショック級の出来事があっても、二桁減益にはならない、という計算になりますね。二桁減益にならないのだから、株価も二桁%はやられなんじゃないか、という考えです。

この手順では、過去の増収率の標準偏差を基準にしましたが、一律で20%減収になったらどうなの?という計算も合わせてしてみてください。保有銘柄はどの程度減益になりますか?

こういう計算をすることで、対策を立てることができる

もし、不況を心配する人々がいて、でも、もう少しオリンピックのある手前、来年ぐらいまではいけそう、などと考えているならば、保有銘柄を少し不況の耐性のあるものへシフトするのもよろしいかもしれません。

  • 営業利益率の高い企業(不況時の減益率が相対的に低い)
  • 損益分岐点比率の低い企業(不況時に黒字を確保できる)
  • 限界利益率の高い企業(ショック後のリバウンドで反発力が高い)
  • 固定費率の低い企業(赤字になりにくい)
  • 増収率の過去の平均が高い企業(時代に合う商品を出しているか、M&A戦略をとっている)
  • 増収率の過去の標準偏差が低い企業(商材に対する潜在的な需要が大きいと考えられる)

上記の計算が0.9以上の企業は、リーマン級のショックがきても減益率が小さいと計算されます。だたし、たまたま標準偏差が小さい企業や、時系列データが数年しかない企業は精査が必要です。

どんな結果になる?

まず、データが4期間以上揃ったもの、さらに、一定のROE以上のものので計算すると、案外、少ない銘柄となりました。減益率の低い順です。最後のセゾンあたりでは、2割程度の減益になります。1割以下に収まるのは15位のオラクルまで。これらの銘柄の特徴はストック型のビジネスが多いところです。

SECURITY_CODE securityName ROE
2391 プラネット 12.52292376
7164 全国保証 20.4181404
9022 東海旅客鉄道 12.94431844
3912 モバイルファクトリー 22.98695457
4327 日本エス・エイチ・エル 19.48586118
3901 マークラインズ 24.76349471
4684 オービック 13.30739536
3908 コラボス 13.62433862
4732 ユー・エス・エス 14.22113172
4923 コタ 13.59182531
8841 テーオーシー 28.69495524
4368 扶桑化学工業 13.14745009
8920 東祥 14.46792163
4521 科研製薬 16.72286914
4716 日本オラクル 29.54438023
4507 塩野義製薬 18.11875569
9928 ミロク情報サービス 17.68393878
3926 オープンドア 18.26528147
4307 野村総合研究所 13.1519323
2371 カカクコム 46.76078992
3679 じげん 19.07189313
3763 プロシップ 12.67729384
3848 データ・アプリケーション 15.84754263
3659 ネクソン 12.19887061
6073 アサンテ 12.09497686
8771 イー・ギャランティ 17.62093386
2326 デジタルアーツ 20.66795741
6036 KeePer技研 13.32417582
7575 日本ライフライン 18.20527802
5695 パウダーテック 12.04554152
4345 シーティーエス 14.74137931
9039 サカイ引越センター 13.28082716
6039 日本動物高度医療センター 13.62148003
8898 センチュリー21・ジャパン 15.93871081
5194 相模ゴム工業 21.78184846
8798 アドバンスクリエイト 16.21149224
4975 JCU 21.4002181
2127 日本M&Aセンター 37.03568993
7747 朝日インテック 18.73787132
3923 ラクス 23.58337831
2485 ティア 12.87574345
3687 フィックスターズ 24.54825914
9640 セゾン情報システムズ 37.43385096

半値以下になる可能性があるもの(右数字はROE) (不況に弱い)

減益率が6割以上になるとの計算になったものは以下の通りです。(データが4期以上あるもの)

減益率がひどい順に並んでいます。

SECURITY_CODE securityName ROE
2121 ミクシィ 24.61012956
3765 ガンホー・オンライン・エンターテイメント 37.74669251
6669 シーシーエス 19.5
6027 弁護士ドットコム 21.12491825
3917 アイリッジ 14.39466158
6861 キーエンス 15.24882753
4641 アルプス技研 19.28152493
4587 ペプチドリーム 15.96799562
3724 ベリサーブ 14.08061117
7169 ニュートン・フィナンシャル・コンサルティング 32.34063912
3031 ラクーン 13.23322384
9744 メイテック 20.26111222
3904 カヤック 18.07486631
6080 M&Aキャピタルパートナーズ 23.65073596
8697 日本取引所グループ 18.44022924
6264 マルマエ 17.15014345
3692 FFRI 19.96402878
3826 システムインテグレータ 21.97452229
2183 リニカル 24.88470407
2337 いちご 15.69132265
2193 クックパッド 14.84331817
3835 eBASE 19.66276079
3914 JIG-SAW 22.62521589
4082 第一稀元素化学工業 12.05714054
7844 マーベラス 19.08409387
3655 ブレインパッド 22.51802551
6069 トレンダーズ 14.19191919
4849 エン・ジャパン 22.37369124
6048 デザインワン・ジャパン 16.54826578
6071 IBJ 32.7020202
9697 カプコン 12.80364313
2301 学情 12.47061229
6093 エスクロー・エージェント・ジャパン 18.13353566

過去の増収率の系列からの標準偏差がたまたま小さいもの、データ数が少ない上場直後の会社は精査が必要です。

これらの企業は、たまたま、過去の増収率の標準偏差が高いのに、限界利益率も高いので、大きな減益となると計算されてしまいました。目立つのは、半導体製造装置関連とゲーム関連です。

ゲームは増収率の標準偏差が7割もあるので、業績予想は無理です。だからといって売りかといえばそうでもないのです。あくまで上記の手順による結果にすぎません。装置関連も同様です。売上の予測は事実上、できない業態です。

不況になるならディフェンシブで利益率の高い、損益分岐点の低いところ

もちろん、当たり前のことですが、不況になっても、大幅な黒字であれば、期間利益は黒字。

ということは、BPSは増え続ける。配当も無傷です。

長期投資の場合、無配、減配が投資回収を難しくするので、長期投資に向く銘柄は、リーマン級ショックでも黙々と配当を稼いでくれる企業群となります。

わたしの好みでいえば、オービック(4684)とかJR各社、JT(2914),表には出ていないかもしれませんが、日進工具(減益率計算8%)、SHIMPO(同8%)、第一カッター(同8%)、タクミナなどでしょうか。

NTTなども候補になります。あまりにも売られ過ぎている、安川や売られ過ぎた可能性がある製造装置関連も議論するでしょう。

もっとも、不況になる、という確信があるなら、株の比率は引き下げる必要があるでしょう…..

損益分岐点比率を出してみてはどうでしょうか

スクリーニングというものは、みなさんもご承知の通り、当てにならないものです。実際は、今後の売上の見通しが重要。特に、これから伸びる商品を扱っているところは、あまり心配する必要はありません。

保有銘柄について、それぞれ損益分岐点を計算するなど、事前に保有銘柄の特徴を掴んでおくとよいと思います。限界利益率は高い方がよいのですが、固定費を限界利益率で割れば損益分岐点となる売上が算出できます。あるいは、過去の増収率などが一定以上に高い場合は、時代の追い風を受けている企業ですから、不況になっても伸びる可能性があります。また、ストック型のビジネスは業績が安定しています。

2020年2月6日成長株投資の理論と分析手法

Posted by 山本 潤