次の「リーマンショック」が来た時に減益率が一桁に留まる企業は?by yamamoto
2012年以降の絶好調相場、そろそろ最終段階でしょうか??
好調な企業業績も2018年に入り踊り場懸念から、株価は一進一退。新興国通貨と新興国の債券市場の混乱から心配になる方々も多いのでしょう。
仮に、ギリシャショック、リーマンショック、アジア通貨ショック級のショックが来た時に、保有銘柄がどの程度下落するだろうか。
気になる方は、シミュレーションぐらいはすることはできます。
(リンクスリサーチのpython教室や株の学校ではこういうことが計算できるようになります….)
手順1
増収率の系列から過去の増収率の標準偏差を計算。標準偏差の2倍分を減収率と仮定します。
手順2
固定費を計算します。簡易的には平均年収(単体)と従業員数(連結)の1から1.5倍とします。これは非常にざっくりしたものですので、もう少し、しっかり計算しなければならないのですが、わたしの場合は、全銘柄を一気に計算するので最初は簡易的に行って、銘柄が特定できてから精査する、ということでご勘弁ください。
手順3
損益分岐点を計算します。これは固定費がわかるので、結果として変動費がわかる。変動費がわかれば変動費率(変動費を売上で割ったもの)がわかる。変動費率から限界利益率(=1から変動費率をひく)がわかる。固定費を限界利益率で割ったものが損益分岐点売上です。それをいまの売上で割る。損益分岐点比率がでます。
手順4
現在の営業利益率を確認。増収率の標準偏差の2倍(=2σ)に限界利益率(MPR)をかける(=2σ*MPR)ことで失うべき営業利益率が算出できるので、それを営業利益率(の絶対水準)で割ると、営業減益率が算出できます。
2σ MPR /OPM = 2σ減収率の場合の想定営業利益をいまの営業利益で割ったもの
例えば、σが0.1でMPRが0.3であれば、2σMPR=0.06ですが、今のOPMを0.15とすれば、新しいOPMは0.15-0.06=0.09になります。その場合、減益率は0.09/0.15ですね。
これが0.9以上であれば、リーマンショック級の出来事があっても、二桁減益にはならない、という計算になりますね。二桁減益にならないのだから、株価も二桁%はやられなんじゃないか、という考えです。
この手順では、過去の増収率の標準偏差を基準にしましたが、一律で20%減収になったらどうなの?という計算も合わせてしてみてください。保有銘柄はどの程度減益になりますか?
こういう計算をすることで、対策を立てることができる
もし、不況を心配する人々がいて、でも、もう少しオリンピックのある手前、来年ぐらいまではいけそう、などと考えているならば、保有銘柄を少し不況の耐性のあるものへシフトするのもよろしいかもしれません。
- 営業利益率の高い企業(不況時の減益率が相対的に低い)
- 損益分岐点比率の低い企業(不況時に黒字を確保できる)
- 限界利益率の高い企業(ショック後のリバウンドで反発力が高い)
- 固定費率の低い企業(赤字になりにくい)
- 増収率の過去の平均が高い企業(時代に合う商品を出しているか、M&A戦略をとっている)
- 増収率の過去の標準偏差が低い企業(商材に対する潜在的な需要が大きいと考えられる)
上記の計算が0.9以上の企業は、リーマン級のショックがきても減益率が小さいと計算されます。だたし、たまたま標準偏差が小さい企業や、時系列データが数年しかない企業は精査が必要です。
どんな結果になる?
まず、データが4期間以上揃ったもの、さらに、一定のROE以上のものので計算すると、案外、少ない銘柄となりました。減益率の低い順です。最後のセゾンあたりでは、2割程度の減益になります。1割以下に収まるのは15位のオラクルまで。これらの銘柄の特徴はストック型のビジネスが多いところです。
SECURITY_CODE | securityName | ROE |
2391 | プラネット | 12.52292376 |
7164 | 全国保証 | 20.4181404 |
9022 | 東海旅客鉄道 | 12.94431844 |
3912 | モバイルファクトリー | 22.98695457 |
4327 | 日本エス・エイチ・エル | 19.48586118 |
3901 | マークラインズ | 24.76349471 |
4684 | オービック | 13.30739536 |
3908 | コラボス | 13.62433862 |
4732 | ユー・エス・エス | 14.22113172 |
4923 | コタ | 13.59182531 |
8841 | テーオーシー | 28.69495524 |
4368 | 扶桑化学工業 | 13.14745009 |
8920 | 東祥 | 14.46792163 |
4521 | 科研製薬 | 16.72286914 |
4716 | 日本オラクル | 29.54438023 |
4507 | 塩野義製薬 | 18.11875569 |
9928 | ミロク情報サービス | 17.68393878 |
3926 | オープンドア | 18.26528147 |
4307 | 野村総合研究所 | 13.1519323 |
2371 | カカクコム | 46.76078992 |
3679 | じげん | 19.07189313 |
3763 | プロシップ | 12.67729384 |
3848 | データ・アプリケーション | 15.84754263 |
3659 | ネクソン | 12.19887061 |
6073 | アサンテ | 12.09497686 |
8771 | イー・ギャランティ | 17.62093386 |
2326 | デジタルアーツ | 20.66795741 |
6036 | KeePer技研 | 13.32417582 |
7575 | 日本ライフライン | 18.20527802 |
5695 | パウダーテック | 12.04554152 |
4345 | シーティーエス | 14.74137931 |
9039 | サカイ引越センター | 13.28082716 |
6039 | 日本動物高度医療センター | 13.62148003 |
8898 | センチュリー21・ジャパン | 15.93871081 |
5194 | 相模ゴム工業 | 21.78184846 |
8798 | アドバンスクリエイト | 16.21149224 |
4975 | JCU | 21.4002181 |
2127 | 日本M&Aセンター | 37.03568993 |
7747 | 朝日インテック | 18.73787132 |
3923 | ラクス | 23.58337831 |
2485 | ティア | 12.87574345 |
3687 | フィックスターズ | 24.54825914 |
9640 | セゾン情報システムズ | 37.43385096 |
半値以下になる可能性があるもの(右数字はROE) (不況に弱い)
減益率が6割以上になるとの計算になったものは以下の通りです。(データが4期以上あるもの)
減益率がひどい順に並んでいます。
SECURITY_CODE | securityName | ROE |
2121 | ミクシィ | 24.61012956 |
3765 | ガンホー・オンライン・エンターテイメント | 37.74669251 |
6669 | シーシーエス | 19.5 |
6027 | 弁護士ドットコム | 21.12491825 |
3917 | アイリッジ | 14.39466158 |
6861 | キーエンス | 15.24882753 |
4641 | アルプス技研 | 19.28152493 |
4587 | ペプチドリーム | 15.96799562 |
3724 | ベリサーブ | 14.08061117 |
7169 | ニュートン・フィナンシャル・コンサルティング | 32.34063912 |
3031 | ラクーン | 13.23322384 |
9744 | メイテック | 20.26111222 |
3904 | カヤック | 18.07486631 |
6080 | M&Aキャピタルパートナーズ | 23.65073596 |
8697 | 日本取引所グループ | 18.44022924 |
6264 | マルマエ | 17.15014345 |
3692 | FFRI | 19.96402878 |
3826 | システムインテグレータ | 21.97452229 |
2183 | リニカル | 24.88470407 |
2337 | いちご | 15.69132265 |
2193 | クックパッド | 14.84331817 |
3835 | eBASE | 19.66276079 |
3914 | JIG-SAW | 22.62521589 |
4082 | 第一稀元素化学工業 | 12.05714054 |
7844 | マーベラス | 19.08409387 |
3655 | ブレインパッド | 22.51802551 |
6069 | トレンダーズ | 14.19191919 |
4849 | エン・ジャパン | 22.37369124 |
6048 | デザインワン・ジャパン | 16.54826578 |
6071 | IBJ | 32.7020202 |
9697 | カプコン | 12.80364313 |
2301 | 学情 | 12.47061229 |
6093 | エスクロー・エージェント・ジャパン | 18.13353566 |
過去の増収率の系列からの標準偏差がたまたま小さいもの、データ数が少ない上場直後の会社は精査が必要です。
これらの企業は、たまたま、過去の増収率の標準偏差が高いのに、限界利益率も高いので、大きな減益となると計算されてしまいました。目立つのは、半導体製造装置関連とゲーム関連です。
ゲームは増収率の標準偏差が7割もあるので、業績予想は無理です。だからといって売りかといえばそうでもないのです。あくまで上記の手順による結果にすぎません。装置関連も同様です。売上の予測は事実上、できない業態です。
不況になるならディフェンシブで利益率の高い、損益分岐点の低いところ
もちろん、当たり前のことですが、不況になっても、大幅な黒字であれば、期間利益は黒字。
ということは、BPSは増え続ける。配当も無傷です。
長期投資の場合、無配、減配が投資回収を難しくするので、長期投資に向く銘柄は、リーマン級ショックでも黙々と配当を稼いでくれる企業群となります。
わたしの好みでいえば、オービック(4684)とかJR各社、JT(2914),表には出ていないかもしれませんが、日進工具(減益率計算8%)、SHIMPO(同8%)、第一カッター(同8%)、タクミナなどでしょうか。
NTTなども候補になります。あまりにも売られ過ぎている、安川や売られ過ぎた可能性がある製造装置関連も議論するでしょう。
もっとも、不況になる、という確信があるなら、株の比率は引き下げる必要があるでしょう…..
損益分岐点比率を出してみてはどうでしょうか
スクリーニングというものは、みなさんもご承知の通り、当てにならないものです。実際は、今後の売上の見通しが重要。特に、これから伸びる商品を扱っているところは、あまり心配する必要はありません。
保有銘柄について、それぞれ損益分岐点を計算するなど、事前に保有銘柄の特徴を掴んでおくとよいと思います。限界利益率は高い方がよいのですが、固定費を限界利益率で割れば損益分岐点となる売上が算出できます。あるいは、過去の増収率などが一定以上に高い場合は、時代の追い風を受けている企業ですから、不況になっても伸びる可能性があります。また、ストック型のビジネスは業績が安定しています。
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