9984ソフトバンクは投資対象となるか by Ono

2018年12月27日

”成長株投資においてソフトバンクは投資対象となるか”

 

私たち”みんなの運用会議”では

10年で100倍の運用を目指している。

 

必然的に大型株は対象になりにくく、中小型の成長株が投資対象となる。

 

しかし

”1年程度で50%近く上昇したソフトバンクなどは対象とならないのか”

という方もいるかもしれない。

では、ソフトバンクについて検討してみたいと思う。

 

ソフトバンクの時価総額は10兆円を超えている。

数年で2倍、3倍になるか、トヨタを超えるのか?

”ドコモを超えた”孫正義氏なら”可能”というかもしれない。

 

ソフトバンクの成長のカギはなんだろうか?

〇経営者 孫正義氏 への期待

 孫正義氏をカリスマ経営者と評価する人たちは多い。

その経営手腕を最近のARMの買収から考えてみよう。

専門的なことがわからない時は専門家の言葉を参考にする

ARMの買収に対する評価についてある書籍からピックアップする

 

***「プラットフォームの教科書」根来龍之(WBS教授)より 引用ここから***

・ARMは半導体設計のみを行い、様々な半導体メーカーにその設計データを共有

省電力設計という強みからスマホなどのモバイル向けプロセッサ市場で80%以上のシェア

・IoT時代においてカギとなる技術の一つはセキュリティ技術

自動運転が外部から勝手に制御されるといった危機を回避できる技術TrustZoneという技術が確立している

これらの特徴からIoT時代において同社の技術は重要な位置を占める可能性があり、売上が何十倍にもなると思われる。

 

その可能性を高めるためには開発投資を増やしていく必要がある。

 

レイヤー構造的な見方をすれば、ARM買収は、IOT時代において、

プラットフォームレイヤで主導権を握るための事業投資ととらえることができる。

 

孫正義氏はこれまで常に産業構造の変化を先取りし、プラットフォームレイヤーに参入してきた。

今回はIoTのプラットフォームレイヤーに参入しているのだと考えられる。

「囲碁でいう重要な”飛び石”を表す。すぐそばに石を置くのはわかりやすい。しかし、囲碁で勝つためには必ずしもそこが正しいとは限らない」(孫正義氏)

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ARMの成長の可能性は高そうである。

 

ARMの買収後、ソフトバンクの株価は上昇している。

ARMの買収による成長を好感したのだろうか?

投資家が期待しているものはなんだろうか?

ARMでIoTの世界を制覇

孫正義氏の手腕に期待しているのか?

 

私は少し違う見方をしている。

 

〇ARM買収の資金調達がソフトバンクに有利に働いた

今回の買収資金の調達は銀行から多額の借り入れによって行っている。

 

リスクの高い投資にはエクイティ

リスクの低い投資にはデッド

というのがファイナンスの基本である。

格付け機関のソフトバンクに対する格付けは”投機的”である。

ARM買収によりソフトバンクは3兆円近いのれんが増加する。

(無形資産もすでに7兆円ある)

IFRSであるから償却負担は心配しなくてもよいが、

いつキャッシュフローを得られるかわからないビジネスに貸し付けをできるのか?

 

銀行は顧客から預かった資金を貸し付けてスプレッドで儲けるのが基本である。

”銀行は経営者を見て、経営者の覚悟で判断しろ”という無茶をいう方も多いが、

銀行にはリスクの高い相手には貸付はできないはずである。

 

・それでも貸し付けたを実施したのはなぜか。

2つの観点から判断することができる。

①銀行は預入が増える一方で、貸付が伸びず、預貸比率が高まっている

 大手銀行9行の預貸率(銀行の預金残高に対する貸出金残高の割合)は61.4%で前年同期と比べて

2.53ポイント減少した。大手銀行の貸出先である大手企業が内部留保を高めている状態で、貸し出しを伸ばすことができていない。

➁金利が低く、大型の貸し出しは”のどから手が出るほど”欲しい、ということであろう。

 

・貸出先のリスクをどう考えるのか

 またとない貸出案件とはいえ、”投機的”となっている企業であり、

キャッシュフローが読めない相手先への貸し付けはできるのか。

ソフトバンクは保有株式株価情報として

”当社が保有する上場株式の”時価総額合計”および”含み損益合計”をWEBサイトで開示している

時価総額193,979億円

含み損益合計173,312億円

https://www.softbank.jp/corp/irinfo/stock/performance/

つまり17兆円の含み益があるということである。

うち、アリババが15兆円を占める。(保有分もほぼ15兆円)

アリババの時価総額51兆円に対して15兆円。

一定の支配権を維持したいと考えれば、その保有分をこれ以上売ることは考えにくいが

いざとなれば売ることができることから、デフォルトはおきないと銀行が判断したのであろう。

 

自社の保有資産を見せつけた結果、ソフトバンクは銀行からの借り入れを行うことができた。

自社が追うべきリスクの一部を銀行に負わせてしまうことができた

孫正義氏の経営手腕といえよう。

 

〇10兆円ファンド

 ソフトバンクに期待するもう一つの材料は、10兆円ファンドである。

10兆円ファンドがソフトバンクの企業価値向上に寄与することが期待できるかを考える。

 

 10兆円ファンドという巨額のファンドで思い出すのは

野村証券の1兆円ファンド=ノムラ日本株戦略ファンド。

先日、設定来、やっと基準価格が10,000を超えたことが記事になった。

設定当時、かなり話題となり、多くの投資家が投資をしたが

設定後、3年程度下げ続け、半値以下となった驚きの商品だ。

下げ続けた理由は、明快だ。

ファンド設定のために株式を買い続けて、自分が株価を上げてしまい、

集めた資金による投資が終わったら下げたということ。

 

10兆円ファンドが1兆円ファンドと違うのは

・上場企業に限定せず、成長企業に投資するということ

・対象がグローバルであるということ

であるため、投資対象が非常に大きいという主張もある。

 

アリババで成功した孫正義氏なら、成長企業の目利きができるかもしれないと期待したいところだ。

しかし、今は世界的に株式市場は活況で、資金も潤沢にある。

上場企業以上に未上場企業のほうが割高になっているという話をよく耳にする。

 

10兆円ファンドにおいて高い成長を達成する企業に投資し、

期待したリターンを得ることができる企業がどれだけあるか

 

ベンチャー企業に対する割高なバリュエーション、ベンチャー企業の成長確率

を考えると

期待以上のリターンを得ることができる確度が高いとは考えにくい

また、そもそもその確度を根拠をもって把握できるか。

 

〇結論

ここまでを整理すると

①ARMは成長が期待できるかもしれない

➁孫正義氏の経営手腕に期待できるかもしれない

③ベンチャー投資の資金は豊富だが成功確率はわからない

 

成長性を検討する根拠として数値化しにくい要因が多い。

結果、私たちにとっては

ソフトバンクは投資先企業とはならない。

と現時点では判断する。

 

私たちは

漠然とした期待や根拠の乏しい成長シナリオには投資をしない。

リサーチによって確度を高められる成長企業に投資する。

 

みんなの運用会議 小野

2018年12月27日コラム

Posted by ono