9416 ビジョン  by yano

2019年2月7日

 

海外渡航者とインバウンド旅行者向けの無線通信端末wifiのレンタルの事業で、世の中に必要とされるニーズを良心的な価格で満たすユニークな企業を本日はご紹介します。
Wifiと聞くと、国内格安スマホ(MVNO)事業者は過当競争で厳しいのですが、ビジョンはMVNO事業者ではありませんし、国内でサービスしていないので、ブルーオーシャンなのです。

機関投資家時代、2017年2月に最初の訪問の後レコメンドして、株価が2倍になった企業です。当時時価総額は200億円強で、PERが25倍程度でしたが、成長率を加味したDDMモデルで割安と判断して、急いでその日のうちにレポートを書いたのを覚えています。
先日再訪問しましたが、まだまだ成長継続中でした。

売上急成長のグローバルWiFi事業

17/12期3Q累計 売上77億円(yoy+33.5%)  営業利益13.7億円(yoy+53%)

海外に行って、いつでもどこでも日本と同じようにスマホやタブレット、パソコンで無線通信で通信したい場合、これまでドコモやKDDIやソフトバンクなどの大手通信事業者の海外1日通信使い放題2980円に入って国際ローミングする選択肢しかなかった。
海外ローミングを使うと、間違えて高額請求被害に遭う人も多く、代表の佐野氏もそんな経験をした1人だった。このおかしな仕組みを変えようと新規事業として立ち上げたのが、グローバルwifi事業だ。
2011年以降、海外の通信事業者を独自に直接開拓していった。既存事業の情報通信事業での取引先であるソフトバンクには利益相反にならないよう事前に相談し、許可を得て進めた。その結果、ソフトバンクとの良好な関係でビジネスを進めることができ、最初の提携先であるシンガポールの大手通信事業者を紹介してもらった。
現地法人の設立など事務手続きを着実に進め、地道に交渉な交渉を続けた。
2014年12月期に黒字化するまでは、累計で5~6億円の赤字が積み上がっていた。
地道に実績を積み上げ、横のつながりで他の通信事業者を紹介してもらうことで各国に広げていった。
いち早く海外の大手通信事業者を順次開拓し、通信網を卸してもらって、市場を作ってきたことから、参入障壁は高い。
同社はwifiを使えば、1日1000円程度に節約できることから、口コミやリピーターで伸ばし、直近の去年シェアは48%まで高まっている。ちなみにおととしは38%。
2番手はイモトwifiが30%、3番手はテレコムスクエアが20%強とほぼ3社で寡占している状況になっている。

ライバルが少なく、過当競争ではないので、なんと限界利益率は7割台と高い。
限界利益率は様々な工夫をして年々上昇している。
直近の取り組みとしては、wifi端末をクラウド対応したものに2年の償却が終わったものから順次入れ替えており、さらに限界利益率は向上している。これまではSIMの入れ替えに人手がかかり、当月の通信利用可能残量の少ないものを翌月まで寝かせる必要があったが、クラウド端末はデータ上で制御できることから、これらの作業が不要となる。2017年6月末で2割だったが、9月末では4割までクラウwifi端末に入れ替えを行った。
端末コストは同社独自の仕様で中国のベンチャーが供給している。技術革新しても、調達コストは変わらず、限界利益率向上につながっている。

そのほか、法人利用比率が大きく上昇して、wifi端末の稼働率が上がり、売上や限界利益率が向上している。
個人は2年に1回ペースに対して、法人は年10回も利用してくれる。
法人契約数は2万社にもおよぶ。
法人比率は件数ベースで全体の43%、金額ベースでは5割に達する。
おととしくらいは件数ベースで全体の3割、金額ベースで4割だった。
法人の開拓は、個人で利用した人が会社名で領収書をとるので、その会社に営業するという効率がいい営業を行っている。
また、空港での受け取りカウンターの整備や利用頻度の多い法人には置き貸しを進めており、余計な配送コストがかからない仕組みを構築している。昨今のドライバー不足から来る配送コスト増加を受けない。

<レンタル件数の推移と同社のシェア推移>

※会社資料より

単価は平均7日の使用で7000円程度と、ここ数年安定的にほとんど横ばい。

<ポテンシャル>
アウトバウンド(日本→海外)      年1700万人 横ばい
インバウンド(海外→日本)  2016年3月期 年2400万人 
インバウンドの人数は2017年は9月までの累計で前年比18%増と二桁で増えている。
海外子会社で韓国や台湾、中国、アメリカなど日本への渡航者が多い地域では積極的にマーケティング活動し、旅行者向けに海外wifiのレンタルを開始している。

アウトバウンドのうち、同社海wifiルーターを利用している割合は前期末の8%台から今上期に11%台に高まった。中長期的には4割くらいまで利用の拡大をイメージしている。
インバウンドは、旅行者数が年々増加しているが、同社の利用シェアは2%台。
海外子会社でこの旅行者の取り込みを積極的に進めることで大きなポテンシャルがある。
韓国は2位、台湾は2位か3位の地位を築いている。日本の空港カウンターに英語、中国語、韓国語ができるスタッフを配置し、現地だけではなく、日本でのレンタルも行っている。

安定成長の情報通信事業

17/12期3Q累計 売上53億円(yoy+3%)   営業利益8.8億円(yoy+10%)

2001年設立当時からの事業で、ターゲットは新設法人とベンチャー企業向けに、携帯電話の代理店事業やコピー機や電話加入権、ホームページ作成など新規立ち上げに必要なサービスを提供している。
顧客の3割が飲食店、ほかはサロンなどのサービス系が多い。
年間の日本の会社法人登記件数は、2015年11.1万件、2016年11.4万件とこの10年緩やかに増加基調にあり、同社が獲得している新設法人は、2015年1.82万社、2016年1.89万社と約6社に1社を獲得している状況。
獲得は独自のノウハウを持つリスティング広告を中心としたWEBマーケティングをとっている。ここは長年このビジネスに特化している一日の長があり、新設法人がネットで検索する「電話加入権」などのワードでトップに表示されるように独自で研究している。
リスティング広告に年7億円かけて、ここに全体の広告費の8割を投下している。

固定電話や携帯電話は毎年、ソフトバンクやNTTが価格を1割程度下げるなど条件が下がってきた。それを補うためにホームページの作成や改修など手がけ、2年前はゼロだったが、地道な営業活動によって、今は全体の売上の2割に拡大している。他にライバルがおらず、1回20~30万円の売上計上ができる。代理店事業ではないので、利益率も高まっている。
2017年6月からサービス開始した電気小売の代理店事業もすでに、月の獲得の2割まで高まっている。
創意工夫した営業活動による新規のアップセルが奏功している。

グローバルwifi事業でアップセル商材を拡充

出資先のログバー社が開発した瞬間翻訳機「illi」の独占レンタル権を獲得して来期から有料化をしていく。英語、中国語に対応し、旅行先での言語の問題を解決してくれる。オフラインで利用でき、立ち上げ時間がかからず瞬時に翻訳でき、コミュニケーションの円滑化ができるのが最大の魅力。人工知能を搭載で機器自体の学習効果で翻訳性能が高まる。

今期は利用促進のため、法人向けに第4四半期に1万台無料で利用促進を図る。
来期からレンタル料は一日300~500円に設定する予定で、アップセルにつなげる予定。
機器の仕入れ台数はコミットしておらず、状況を見て調整が可能だ。
機器はグローバルwifi端末同様、2年償却で投資する。

社員への還元

社員数 単体426人、連結499人
パート含めると、情報通信事業に250人、グローバルwifi事業に470人従事している。
10年前は情報通信事業しかなく、営業も厳しかったことから離職率は3~4割あったが、直近の離職率は7~8%に改善。
労働集約的な営業会社からの脱皮で社員の満足度も上がった。
平均年齢31歳で平均年収500万円と平均年収は比較的高い。
社員への賞与の還元も積極的で、四半期ごとに賞与引当(4Qで調整でやや増える傾向にある)を行い、前期は普通賞与とは別に決算賞与として、1.6億円還元した。
業績を一生懸命上げてくれた社員にしっかりと賞与を払って、社員を大切にする企業である。

業績とバリュエーション

3Q累計で売上進捗率79%、営業利益進捗率96%と上方修正濃厚。
旅行先で一日3000円といういわゆる独占大手のぼったくり通信サービスを良くしようと立ち上げ、2年間その事業は赤字で既存事業の利益を削って、苦労して黒字化した。
世の中に必要とされるサービスを良心的な価格で提供し、消費者の口コミで広がり、企業も採用し始めた。消費者に感謝され、いい循環ができている。需要の拡大は続くだろう。

矢野予想
17/12期 売上175億円  営業利益19億円  純利益13億円  EPS79.5
18/12期 売上210億円  営業利益 24億円  純利益16.8億円 EPS102.7

株価  2693円
時価総額 438億円
来期PER26倍
EV/EBITDA 15.8倍

2019年2月7日銘柄研究所

Posted by 矢野