9214 Recovery International 訪問看護で社会課題へ挑む by 宇佐見

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9214 Recovery Internationalレポート_20220824

沿革

1.看護師業界の革新を胸に同社設立 (-2013年)

2013年11月1日、30歳の時に同社を立ち上げた大河原峻氏は設立前、看護師としてユニークな経歴を辿っている。看護学校卒業後病院へ勤務し業務に取り組む中で同氏は次第に、病院独特の年功序列システムに裏付けられた努力と成果がダイレクトに評価へ繋がりにくい日本の病院システムを実感。「頑張っても報われない」状況をどうにかしたい思いが強まり次なるステップとして海外で働くことを選択。オーストラリアの病院で一定の経験を積んだ後にフィリピンや東南アジアを放浪。そこで自宅で医療を施される患者に触れる機会を得、日本国内の訪問看護の実態に対して関心を抱き帰国、看護師が働きやすい会社を作りたいという従来からの思いを軸に訪問看護業界で会社設立を決意するに至っている。

■同社代表 大河原峻氏

出所:同社HP

2.西新宿で訪問看護サービスをスタート(2014‐2015年)

会社設立から2ヶ月後の2014年1月、初めての事業所拠点となる訪問看護ステーションを本社が構える同じビルの同じ6階に開設する。場所は西新宿、最寄りの西新宿五丁目駅から徒歩10分の位置で、設立からおよそ8年半が経った現在もここで本社機能と原点となる事業所の運営を行っている。

■訪問看護ステーションリカバリー 西新宿事務所兼本社(写真中央ビルの6階)

出所:同社HP

2014年初旬に初拠点開設の後、翌2015年には沖縄、新島村、東村山、大田と全国に散らばり4か所に拠点を新設。この内新島村の拠点は2019年5月に閉鎖に至ったが他3つは現在も運営が行われており、この内東村山拠点については西新宿拠点と共に東京西側地帯を挟む形で現在、積極的なドミナント展開を行っている。

3.事業理念への共感で経営陣固まる(2015年)

設立から約1年半後の2015年6月には、自身も会社設立の経験がありサイバーエージェント社外監査役等の経歴を持つ沼田功氏が、身内に訪問看護の経験から訪問看護を広めたいという思の元、経験の浅い大河原氏を支援すべく取締役として参画。その翌年2016年には、配偶者が医師等、親族に医療従事者が多く医療現場や訪問看護の実態に知見があり、是非この業界に一石を投じたいという思いより公認会計士として勤めていた監査法人からの転職で柴田旬也氏がジョイン。経営体制の礎が構築された。

4.訪問看護ステーション設立へ(2016‐現在)

経営基盤が盤石になった同社は、ステーション拠点の開設とよりよい運営へと集中して進めて行く。2016年は新たに、本拠地新宿周辺として石神井公園と荻窪、兵庫県西宮、高知、そして、大河原氏の地元である富士の5拠点を開設(富士は2019年10月に閉鎖)。その後一進一退の時期を経ながら2022年7月現在14拠点を運営するまでに成長。そして現在、同社独自の拠点運営手法に基づいたドミナント戦略を今後の方針に掲げて2022年2月東証マザーズに上場(現在は東証グロース)、次の段階へとステップを踏んだ。

■訪問看護ステーション新規開設数推移

出所:同社開示情報を元にリンクスリサーチ作成

■現在の運営拠点(地図内赤字は現在も運営中、青字は閉鎖した事業所)
〇東京西側:現在のドミナント展開中心地

〇国内西側:高知と兵庫県で各2拠点運営。九州は福岡に2018年設立したが2019年閉鎖

〇沖縄:設立から1年4か月後2015年3月に那覇に新設し、現在1拠点のみ

〇離島:新島村では2015年~2019年5月のおよそ4年間にわたり運営
〇富士:2016年~2019年のおよそ3年間にわたり運営

業界動向

1.現代訪問看護基礎の成り立ちまで

本格的な国内医療の充足は1961年に国民皆保険制度が、介護サービスの本格体制は2000年に介護保険制度がそれぞれ施行されて以降となるが、訪問看護の原型としては江戸時代に富裕層向けに「派出看護」が実施されていた記録が認められる。国内で看護師教育が開始した1884年を経て1890年代終わり頃には当時伝染病流行などの背景から、家庭に看護婦を派遣する「事前看護婦会」が発足していたものの徐々に世界的不況等で減少。その後は、高度成長期1960年より次第に社会問題化した寝たきり高齢者問題をきっかけに訪問看護に再び焦点があてられるようになり、1982年介護保険の前身といえる老人保健法が施行されたのを機に訪問看護が医療保険の診療報酬対象に認められるように。精神科やがん、難病も順次診療報酬の対象とされるなど、1980~2000年頃のおよそ20年間にわたり現在につながる訪問看護バックアップ体制の基礎が構築されてきた。

2.訪問看護を後押し、目的が少人数での介護予防観点から病床数削減へ目的が移行

寝たきりや核家族化などの高齢者に係る問題を背景に老人福祉法、老人保健法と進められてきた施策は2000年に介護保険法と姿を変え、以降は高齢者単身世帯増加、人口減少など諸問題をも乗り越えるべく予防に重点を置いた「地域包括ケア」をスローガンに、介護と医療の連携を重視した訪問看護の普及へと、国主導で促進が行われていく。


出所:各種情報を元にリンクスリサーチ作成

一方同時期には、「地域包括ケアシステム」は介護予防のみならず、現在世界トップである国内病床数の削減を実現するための構想という意味合いも強まっていく。2018年4月、団塊の世代が75歳以上を迎える2025年までの国内病床数一定削減、を掲げた、「地域医療構想」が策定され本格態勢へ。過去数回にわたる診療報酬改定では主に、病床数削減の実現に直結するための下記項目について継続的に見直しが進められてきている。

●在宅医療の24時間体制構築
●退院後の在宅医療への速やかな切り替え
●在宅でのターミナルケア拡張
●在宅医療の対象を小児へ拡張
●訪問看護ステーションの機能強化(高度医療対応可能化)

また介護保険においても、訪問看護項目の基本報酬額が引き上げられる傾向となっており、このようにして、「地域包括ケアシステム」構想において重要な役割を担う、訪問看護を後押しする力は益々強まってきているといえる。

3.拡大するマーケット

訪問看護を明確に後押しする意図を持った、2011年の介護保険法改正直後の頃より、それまで約10年の間横ばいに推移していた訪問看護事業者数は増加に転じ、以後その傾向を保ったまま2018年には1万事業所数を突破。「地域包括ケアシステム」構築への道のりがまだ半ばであること、また国内高齢化への対応拡充はその先も継続していくと考えられることから今後も、訪問看護事業者数の増加は継続していくと予想される。

■訪問看護ステーションの数

※2020年まで:厚生労働省統計情報部データ 2021・2022年:全国訪問看護事業協会データ
出所:一般社団法人全国看護事業協会提供資料を元にリンクスリサーチ作成

4.高い廃業率

管理療養費(後述)が適用される一般的な訪問看護ステーションの場合、開業要件は基本ベースで下記のとおりとなる。事務所賃料をメインとした少額の資金と3人の看護師さえ準備が整えば開業できるのが実質であり、やる気さえあればチャレンジできる。しかしながらいざ実務ではオンコール(時間外対応)や医療機関との連携、患者対応に係る予期せぬ問題への対応等が求められるため、少人数で訪問看護事業を日々運営していくことは相応の計画性や対応力が必要となって厳しいのが現実でもある。こうした背景から廃業率は2021年に全国平均約33%、2022年には全国平均約27%と高い水準を保っている。


出所:各種情報を元にリンクスリサーチ作成

■地域別訪問看護ステーション数等 稼働数の多い上位10まで
(稼働数は2022年測定時点、休止・新規・廃止は2021年中の動向に基づく)

出所:一般社団法人全国看護事業協会提供資料を元にリンクスリサーチ作成

■地域別訪問看護ステーション数等 新規設立に対する廃止率上位10まで
(稼働数は2022年測定時点、新規・廃止は2021年中の動向に基づく)

出所:一般社団法人全国看護事業協会提供資料を元にリンクスリサーチ作成

5.市場規模

訪問看護マーケットの今後は、主に高齢者の増加に伴う介護、医療市場の規模変化に依存する。厚労省調査では2040年に75歳以上人口が全体の2割に到達と予想されており、マーケットは拡大の一途を辿るものと思われる。

■マーケットの拡張予想(同社資料より)

※1)内閣府:令和3年版高齢社会白書(全体版) ※2)厚生労働省:「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」在宅医療市場28兆円、在宅介護市場8.2兆円の合計 ※3) 厚生労働省:「国民医療費」「介護サービス施設・事業所調査」の令和元年を基に集計
出所:同社資料

収益の源泉である保険算定の仕組み

1.保険サービス種別割合の傾向

訪問看護を専業とする同社の収益はその内約98%が、医療保険および介護保険枠内で決められた算定数に従ったものとなっており、医療保険は2年毎、介護保険は3年毎に改定が行われるがその背景にある国の長期的方針が同社を含めて看護事業者の業績を左右することとなる。介護保険の整備に伴い普及が後押しされてきた訪問看護は現在、病床数を削減しようとの目的に沿ってより医療的側面が重要視されつつあるものの、高齢化を迎える国内で訪問看護においては介護面、医療面両方の視点が欠かせないのが現状。同社もいずれかの機能へ注力して強化しようとの考えは現時点ではない。

■同社収益のサービス種別割合

出所:同社資料を元にリンクスリサーチ作成

 

同社は現時点では、ドミナント方式に基づく多拠点開設に最も重点を置いているため、新規依頼の獲得を最優先としていて患者の選別はしていない。そのため、保険区分の割合を意図的に調整していく意思はなく、その部分についてはマーケットに委ねるとしている。

参考として下記表は、国内の各訪問看護事業所において、提供するサービスが医療保険適用か介護保険適用かを表している(両方が適用となる事業所はダブルでカウントされている)。年を経る毎に徐々に、医療保険が適用されるサービス提供のみを行う事業の割合が増加、2016年には逆転している。

■適用保険別訪問看護提供事業数

出所:厚生労働省統計資料を元にリンクスリサーチ作成

2.保険算定基準

(1)収益源の把握

同社は、医療保険売上と介護保険売上の合計を訪問件数合計で除して算定した数値を根拠として、訪問1件あたり売上が8,000円だとしている。実際にはその単価は適用保険、提供内容、訪問時間、患者疾患内容、事業所体制等に応じて多様であるためこれらを分類把握することは困難だが、概ねの算定基準は下記概要のとおりとなっており、この内患者負担が1~3割となっている。

(2)どちらの保険が適用となるか

医療保険または介護保険いずれが適用となるかは、対象患者が置かれている条件および症状により定まる

■保険適用判定の流れ 

出所:ナーステート(リカバリーインターナショナル運営)HPを元にリンクスリサーチ作成

(3)医療保険算定

医療保険が対象となる訪問看護頻度は原則週に3回までで1回あたり30分~90分。基本療養費、管理療養費、加算項目が順次加算される他、精神科は別枠で料金が設定されている。

① 基本療養費(ごく基本的な項目のみ)

出所:厚労省情報を元にリンクスリサーチ作成

② 管理療養費
安全な体制を整えているというベースを備えたステーションが対象となるが、中身は高度医療への対応力に応じて4段階にレベル分けされそれぞれに応じ算定数が設定されている。

出所:厚労省情報を元にリンクスリサーチ作成

③ 加算
下記表に記載以外にも多数の加算項目がある。

出所:厚労省情報を元にリンクスリサーチ作成

(4)介護保険算定


出所:厚労省情報を元にリンクスリサーチ作成

同社の特徴・強み

同社は、国内訪問看護事業所とその関連機関が抱える課題―訪問看護事業所における廃業率の高さ、医療業界全般におけるIOTの遅れ、医療機関に勤務する看護師のやりがい面―を解決する事業を興す、を設立から目的に据えており、優位性もここにおいて発揮されている。

1.採用基準は厳しく、離職は少なく

同社の看護師採用基準は、IT化を推し進めるためとして対象を30代までに限定。患者とのコミュニケーション及び事業所内での人間関係を円滑に行えるかどうか人間性を重視し採用倍率は2倍と、業界平均年齢が40代後半かつ人材不足の業界において、妥協のない姿勢を貫くが現状採用数は直近の期間において目標の90%を達成している。
報酬額は業界平均で年額450~500万円のところ同社は450万円前後と低い方に位置するが、離職率は15~20%と業界平均20~25%を下回る。低い離職率を実現できている背景としては1つ目に、人柄重視採用により現場での人間関係が良好であること、2つ目に、ドミナント戦略によって実現できている各人に対するオンコール(夜中対応)担当頻度の少なさ等がある。この2点はいずれも看護師が職場選択する際に重視するポイントであり、看護師が働きやすい職場づくりを同社設立目的の一つとする大河原氏の意思が反映されている側面であると言える。
一方、近年看護師の平均年齢が上昇している背景や、将来的に医療業界でのIT化が促進されていけば、看護師採用数の増加を目的として採用対象を40代以降へ広げる可能性、併せて看護師報酬額引き上げの可能性があるとしている。

■HP、noteやInstagram、ステーションによってはFacebookで日々の様子が語られており職場の様子が分かるため、応募者にとっては自分が働いている姿をイメージしやすい。

出所:Web上同社提供情報

同社に入社する看護師の9割以上が未経験者であり、大半は学校卒業後に病院で1~2年の経験を経、看護の基礎を備えた人材となる。OJTを中心とした3ヶ月間教育プログラムを組み、入社後4か月目から1人前として勤務する流れとなる。また他訪問看護事業者にも当てはまることであるが、看護師にとっては介護も学べる点、そして勤務時間は9時~18時がほぼ徹底され残業を要されないためワークライフバランスを大切にできる点でも魅力的な職場となる。

2.地域連携

訪問看護事業者は患者と接する際、医療保険適用の患者であれば担当医師から、介護保険適用の患者であれば担当ケアマネジャーから指名を受けることが前提となる。訪問看護開始後は医師またはケアマネジャーと訪問看護士は各々に患者に接するため、連携作業は基本的には発生せず、そのため両者間でコミュニケーションをとらずとも業務は行える。ここに対して同社は敢えて、患者の状態報告を都度行うなど地域連携期間とのコミュニケーションを積極的に取ることで信頼関係構築を図り、新規利用者やリピートの獲得に結び付けている。

出所:同社資料

SaaSである性質上から売り上げ拡大と共に利益率は高まる見通しとなっているが、一方、新しいツール開発へ向けた研究開発費は促進の方針であることから当面は売上成長率30%に対し、営業利益は20%成長をターゲットに据えるとしている。

3.ICT化の促進

医療業界は相対的にICT化が遅いと言われる中で、同社はICT化を重要戦略の一つに掲げている。事業所毎の事務員配置をせず事務作業は本社での一元管理。Faxはクラウド化し全社で共有する等の工夫を行っている。また、カナミックネットワーク(東証プライム3939)のシステムを導入しているとする。

出所:同社資料

4.徹底したドミナント方式

同社は廃業率の高い訪問看護業界において運営継続できる手法としてドミナント戦略を方針として掲げており、そのため運営する事業所の在り方を明確に定義している。個々スタッフに過剰な負担がかからないバランスとして1事業所あたり看護師数6人、リハビリ職数5人を定め、開設から徐々に職員数および患者数を充足させていき2年を目途に完成させる。完成後は同拠点人数を14名まで増やした後、近隣に新拠点を開設して看護師を3人送り込みサポートを行いながら新拠点育成にあたる。1事業所につき開設から完成まで2~3年を要する理由としては採用ピッチを無理なく保てるようにすること、マネジメント層の育成に相応の時間を要することがある。マネジメント層に対しては収益及び損益を考えながら事業所運営ができる人材の育成を行っている。
現在、ドミナント戦略の中心地は本社が構える西新宿を含んだ東京西エリアとなる他、高知、兵庫にも2022年2月に新設した尼崎を含めて各2拠点を構えている。2023年12月期については7拠点開拓の目標を掲げるが、具体的な新設地はまだ検討中とのこと。

■ドミナント戦略図
各拠点(()内は開設年):東村山(2015)、小平(2021)、東久留米(2022)、田無(2018)、武蔵野(2022)、中村橋(2021)、石神井公園(2016)、荻窪(2016)、新高円寺(不明)、中野(2021)、代々木公園(2021)、新宿(2014)

出所:同社資料

前述のとおり国内訪問看護マーケットはまだ始まったばかりである中、新拠点を設立後の事業所成長においては市場開拓という要素が濃い。訪問看護の認知度そのものが高くなく既存のニーズが乏しい中で病院と連携し、退院患者を紹介してもらうことによって少しずつユーザーを増やしていく、そうした手順で少しずつドミナント拡大をしているのが同社現状であり、また同時に、零細事業者が多いマーケットで拡大戦略を進める先駆者としての優位性があるものと考える。

成長戦略

当面は自社運営型事業所のドミナントによる一定拡大が目先の目標となるが、中長期的計画では、コンサルティングやフランチャイズ運営、またクロスセル戦略等を含めた、事業そのものの幅拡大を視野に入れている。

1.フランチャイズの運営

廃業率7%の業界構造に対して、フランチャイズ運営という形で他事業者をサポートする計画。訪問宅間を15分で行ける効率性、報連相などを重視する同社の運営スタイルが必ずしも他事業者に適応するわけではないことからM&Aよりも有用であるという側面がある一方で、流通網や商品があってのコンビニフランチャイズと異なり提供するものが運営ノウハウや人材成長の仕組みであることによる難しさもあるため、構想の実現化にはまだ至ってはいない。

2.コンサルティング

訪問看護マーケットで先駆者として積んだノウハウや知見をコンサルティングの形で提供していく計画。

出所:同社資料

競合

■訪問看護を行っている上場(上場廃止含む)企業、拠点数の多い順

出所:各社情報を元にリンクスリサーチ作成

競合は訪問看護に特化している企業から子会社を通じて副次的に行っている企業まで幅広く、また企業毎に特色を持っているのが特徴となる。最大の拠点数を有するN・フィールド(2021年6上場廃止)は精神分野に特化。セントケアホールディングス(東証プライム2374)、ニチイ学館(2020年11月上場廃止)、ソラスト(東証プライム6197))、ツクイホールディングス(2022年3月上場廃止)は事業の中心を介護としその一環として訪問看護を展開。内セントケアホールディングスは全12種以上の介護・看護サービス提供を行っており訪問看護専門型の他、介護と複合するサービスである看護小規模多機能型も48拠点で展開している。日本ホスピス(東証グロース7061)はホスピス施設と同一場所にステーションを設けている。子会社等を通じて副次的に行っているのがスギホールディングス(東証プライム7649)と帝人(東証プライム3401)。ルネサンス(東証プライム2378)はリハビリを主とした訪問看護事業を2拠点で展開。警備事業のセコム(東証プライム9735)も訪問看護事業を行っている。未上場でも多数の企業が訪問看護を事業の一環として手掛けている状況となっている。またセントケアホールディングスらは同社と同様ドミナント方式戦略を掲げている。このように現14拠点を有する同社に対して規模面で現在圧倒している競合も存在する中、同社においては採用面での独自性等を武器として今後も展開をしていくこととなるが、国内は今後も高齢者の増加に伴ってマーケットが大幅に拡大していくと予想されており、シェアの奪い合いの状況には当面はならないものと考える。

業績

拠点数の増加、そして各拠点の確立に従って増収および増益となっている。

■売上高、営業利益、営業利益率(通期)

出所:同社開示情報を元にリンクスリサーチ作成

■拠点数推移

出所:同社開示情報を元にリンクスリサーチ作成

2Qにあたる4~6月は新規入社看護師に対する育成投資の比重が大きく、利益率は例年下がる傾向のため売上高及び営業利益は下期に偏重する傾向となっている。
また新規開設に伴う初期投資は約200~300万円、その大半を占めるのが看護師給与30~50万×3人=90~150万円。ドミナント開設の場合には開設当初から黒字が可能だが新たにハブを作る場合は黒字化までに10か月程度を要する。2021年12月期時点で11拠点の内2事業所がまだ赤字の状況となっている。

■売上高及び営業利益率(四半期)

出所:同社開示情報を元にリンクスリサーチ作成

KPI

同社の収益は、「売上=単価×延べ訪問件数」によって算定されるが、1件当たり単価は保険制度上決まっているためKPIには延べ訪問件数を設定している。延べ訪問件数を伸ばすためには看護師の増加と利用者数増加が条件となるが利用者数については拠点数増加に応じて増加が見込めるため、同社のKPI達成如何は看護師採用の成否にかかっているといえる。同社は拠点新規開設の計画を当面年間4~7拠点としており2021年は達成、2022年12月期については2Q経過時点で既に3拠点(尼崎、東久留米、武蔵野)の開設が完了していることから目標とする最低4拠点開設の実現可能性は高い。2023年12月期に目標としている7拠点開設については1年間における拠点拡大数で過去最高であること、また、2021・2022年に開設済み8拠点が現時点育成中であり相応数の看護師採用達成が必要となる。

またドミナント展開の進捗に従って効率性を重視した訪問エリアが広まった結果、訪問看護スタッフ1人当たり訪問件数が2019~2022年の間、月あたり4件ずつ上昇している。同社が算出する8,000円/件、各年の訪問看護スタッフ数を基準に算出すると、ドミナント展開の拡充に伴う増収額は下記表のとおりとなった。しかしながら1人当たり訪問件数の数には限度があるが、既に現在の稼働では実労働時間8時間の中で1日あたり6~7件の訪問が実現できているとのことであるため、今後同要因での増収分は近年中に頭打ちとなると考えられる。

出所:同社資料

以上

成長株投資, 銘柄研究所

Posted by usamiseira