7196 Casa 家賃保証サービスを提供 不動産業界の非効率をITで解消を目指す

2019年9月25日

株式会社Casa 東証1部 証券コード:7196

前回レポートをアップデート

・家賃債務保証サービスを提供 入居者の課題解決に寄り添う

・“家主ダイレクト”が好調 自主管理家主市場を開拓

・不動産IT企業へ舵を切り、不動産業界の非効率を解消する

 

【会社概要】

2008年10月、東京都新宿区に、不動産賃貸物件の家賃債務保証事業を目的に設立した、レントゴー保証株式会社が前身となっている。

【事業概要】

不動産賃貸物件の家賃債務保証事業

Casa(以下、同社)は、賃貸住宅の賃貸契約において賃借人に対して家賃債務の連帯保証サービスを提供する。賃借人(入居者)とは保証委託契約、賃貸人(家主)とは賃貸保証契約を締結する。不動産管理会社が管理する物件は約20,000店舗からなる不動産管理会社を代理店として全国12カ所の事業拠点で展開している。

【特徴(強み)】

 蓄積してきたノウハウと安定した事業基盤があり、主に次のようなものがあげられる。
① 管理戸数10,000戸以上の大手管理会社向け売り上げが60%以上を占めている。
② 支払いが滞ってしまった賃借人の問題解決に手間を惜しまず積極的に課題解決の手助けをし、延滞債権の回収を進める。
③ 不動産管理会社を利用しない管理戸数1,000戸未満の自主管理家主向けサービスを強化する。

【株価指標】

時価総額 132億円
株価 1,207円 (2019年9月18日 終値)

BPS 604.22 (2019年1月期 実績)
PBR 1.91倍
ROE 13.3%
PER 14.1倍
配当利回り2.2%

【業績推移】

 

 

【家賃債務保証事業】

 家賃債務保証ビジネスとは、代理店契約をしている不動産管理会社を通して賃貸人(家主)と賃貸保証契約を結び、賃貸人(入居者)と保証委託契約を結ぶ。賃借人が家賃を滞納した場合に賃貸人または賃借人と管理委託契約を結ぶ不動産会社に代位弁済を実行し、賃借人に対して滞納した家賃の督促、回収を行う。約20,000店舗からなる不動産管理会社を代理店として全国12カ所の拠点(東京、札幌、仙台、千葉、横浜、さいたま、静岡、名古屋、大阪、岡山、高松、福岡)で事業展開している。

*2019年8月に“さいたまサテライト”を開設

【ビジネスモデル】

 売上及び費用計上に特徴あり

売上は賃借人と保証委託契約を締結した際に受領する初回保証料と、入居後一年ごとに受領する年間保証料から構成される。2019年1月期における構成比率は初回保証料が53%、年間保証料が47%程度となっている。年間保証料が毎年のストックとして積みあがり売上計上されるストック型ビジネスとなっている。
賃借人から保証料を受領し、その一部を業務委託している不動産管理会社に支払手数料として還元している。初回保証料と年間保証料については、受領時から1年にわたって案分して売り上げ計上される。賃借人からは契約時に初回保証料を賃料の50%程度、年間保証料は年1万円受け取っている。一方、不動産管理会社に支払われる手数料は支払い時に一括して費用計上される。
賃料延滞により代位弁済した場合、早期に回収が図られるが、代位弁済実行額のうち決算期末における未回収分である求償債権に対して貸倒引当金を計上している。

 

 

【特徴・強み】

大手不動産管理会社と代理店契約を結び、集金代行セット型の保証サービス“Casaダイレクト”を提供する。同社の強みとして主に次の2点があげられよう。
① 管理戸数10,000戸以上の大手管理会社向け売り上げが60%以上を占めている。
② 支払いが滞ってしまった賃借人の問題解決に手間を惜しまず積極的に課題解決の手助けをし、延滞債権の回収を進める。
③ 不動産管理会社を利用しない管理戸数1,000戸未満の自主管理家主向けサービスを強化する。

具体的には以下のようなものである。

① 大手管理会社のネットワーク

 管理戸数10,000戸以上の全国展開している大手管理会社を代理店とする売り上げが60%以上を占めており、同社の収益の柱となっている。年々同社売上高に占める割合が高まっている。長年の経験と蓄積されたノウハウを生かし、家賃債務保証事業に真摯に取り組む姿勢が強固な信頼関係の構築に寄与している。

*2020年1月期 第1四半期末時点(会社より提供)

② 手間を惜しまず借主の課題解決の手助け

求償債権の割合(保証債務に占める求償債権の割合)が低下傾向にある。
求償債権の回収が進んでいることを示しており、その要因は
 ”手間を惜しまず賃借人に寄り添って問題解決に取り組む”
 という点にあるだろう。
 *求償債権とは:賃借人が滞納した賃料を賃借人に変わって賃貸人(大家さんまたは代理人となっている不動産管理会社)に支払ったうち、期末時点の未回収分。

 まず、支払いができない賃借人について一人一人、原因を確認する。”うっかり忘れてしまった”という人は連絡すればよいが、何らかの”支払いができない問題”が発生していることも多いという。解決方法として、生活保護の申請ができるのであれば生活保護の対応方法を伝える、といったことを一人一人対応する。
 主に行っているのは
 (1)公的支援制度の案内
 (2)NPO団体と連携した食糧支援の実施
 など
 具体的には
 (1) 公的支援制度の案内
社員は各種福祉制度等についての知識を習得し、情報を提供する。
 不払いとなった賃借人の課題解決の手助けのため、次のような制度について情報提供し、活用を促す。

 保険制度:健康保険、雇用保険
 年金制度:年金担保融資、障害年金・老齢年金
 貸付制度:緊急小口貸付、総合支援資金
 福祉制度:福祉助成金・貸付、児童手当
 給付制度:住宅確保給付金、教育訓練給付
 自治体の各制度:育成制度
 生活保護制度:生活扶助・住宅扶助
 など。

 


 
 同社の受付スペースの壁には多くの写真と手紙が貼られている。支援を受けた方々からの感謝の手紙と写真である。社外へのアピールというだけでなく、”ありがとう”の言葉が社員のモチベーションにもつながっている。

 (2) NPO団体と連携した食糧支援の実施
 農林水産省が支援するNPO団体”フードバンク”と提携し、食糧支援を手掛ける。
 顧客である入居者が食に困っていることがあり、その際にセカンドハーベストジャパン(日本で初めて設立されたフードバンク団体)からの食品を活用したことから始まったとのこと。これら賃借人の課題解決のための活動が、顧客である家主のリスク抑制につながるとともに信頼関係を作ることにつながっている。

社員数は派遣含め400名。そのうち半数程度が回収を担当している。手間のかかる回収に注力していることがわかる。回収において家主と接触することにもなるため営業活動にもなっている。

*”③ 不動産管理会社を利用しない管理戸数1,000戸未満の自主管理家主向けサービスを強化する。”
 については下記の”注力する事業”で詳細な解説をする。

【事業環境】

 不動産賃貸住宅市場は単身、夫婦のみの世帯数増加により拡大している。高齢者の単身世帯、外国人入居者の増加もあり、家族、親類、知人に連帯保証人を見つけることができない賃借人が増えている。家賃債務保証市場は拡大しており、今後もこの傾向は続くと考えられる。また、アンケートによれば賃貸物件の増加が続く中で将来的な空室リスクに対する不安を6割以上の家主が抱えている。
そのような環境下でこれまで同社は大手管理会社と関係を密にし、売り上げを拡大してきた。大手管理会社が管理する物件は1,000万件程度あるがすでにその60%程度は保証会社を利用している。一方自主管理家主が管理する物件は650万戸程度あるが保証会社を利用しているのは10%程度にとどまり、ほとんどが連帯保証人を利用している市場である。同社はそこにターゲットを定めて営業を強化する。

 

【注力する事業】

〇“家主ダイレクト”で自主管理家主市場を開拓する

“家主ダイレクト”が好調。第2四半期で利用オーナー数25,695人、契約件数13,079件と順調に拡大している。

 *家主ダイレクトについてはこちら casa”家主ダイレクト”WEBサイトが開きます

 

 

家主ダイレクト”はリコーリースと東京海上日動火災保険との連携で開発したサービス。集金代行、家賃保証、保険を提供する。競合が少ない自主管理家主市場で拡大を狙う
“家主ダイレクト”は集金代行セット型の保証サービスだが、物件での事故があった場合に備えた家主負担費用や孤独死保険を付帯するほか、同社が持つ20,000店舗以上の仲介ネットワークを生かした入居者募集も行う。自主管理家主の賃貸経営のニーズに合わせて、“コスト削減”、“空室対策”といった経営安定化につながる充実したサービスを提供する

大手管理会社と違い、小規模で点在する自主管理家主をターゲットとするとき、同社が契約する賃貸仲介のエイブル、ハウスコム等を通してアクセスできることが強みとなる。今後認知度が高まることで一層の拡大が期待できる。

 

 

〇市場の変化を捉えたサービス充実

 同社は入居者、家主の双方にとって便利なサービスを拡充し、顧客満足度を高め、契約者拡大につなげている。
主なサービスとして次のようなものがある。
・様々な決済手段の導入
 初期導入費用のカード決済を業界に持ち込んだのは同社の宮地社長。導入前は決済手数料が高く、不動産業界では浸透していなかったが、決済手数料を抑えた商品を提供し、導入を促進した。その後、様々な決済手段も取り入れた。
・外国人対応
 現在、日本において人手不足が問題となっており、国の政策として外国人労働者の受け入れを勧めようとしている。年々増加する外国人の入居希望者にとって、問題は保証人と言語である。同社は利用料無料、年中無休、24時間、11か国語で対応可能な通訳サービスを提供する。
・高齢者対応
 日本は高齢化が進み、単身高齢者の入居希望者が増える一方で、家主にとっては入居者の孤独死がリスクであり、契約には二の足を踏む。同社は孤独死保険を開発して提供。家主ダイレクトに自動付帯することで高齢者の入居促進を図る。
・入居者向けWebサービス
 同社の入居者向けサービス“入居者カフェ”では提携した様々な企業の優待サービスを受けることができる。例:ビックカメラの購入時ポイント追加サービス、家具雑貨のKEYUCAの割引サービスなど。

 

・家財保険商品
 家財と火災がセットになった保険。入居時に家賃保証と一緒に入ることで入居者も管理会社も別に行うわずらわしさを省くことができる。また、保険料を保証するサービスのため保険の更新時の付保漏れを無くすことが出来ます。

 

 

〇不動産IT企業へ舵を切り、不動産業界の非効率解消を加速する

 同社はこれまで蓄積してきたノウハウを生かし、不動産業界の様々な非効率をIT技術の活用により解消することに取り組んでいる。以下、子会社設立及び資本業務提携により自社のノウハウだけにこだわることなく、他社の技術を活用することでさらに積極的に進める。

  • 子会社設立 株式会社COMPASS (2019年6月10日)

“家主ダイレクト”の契約数が順調に拡大しており、さらに自主管理家主の経営支援のためのITプラットフォーム構築を積極化するために子会社を設立。これまで蓄積してきたデータやノウハウを生かし、既存のビジネスを新たな技術で置き換えることで不動産オーナーの業務効率化を実現する。

  • リーウェイズ株式会社との資本業務提携 (2019年6月25日)

リーウェイズ社が新たに発行するB種優先株式総数4,200株のうち2,100株(議決権総数に占める割合約4.5%)を割り当て、96,600,000円の出資により引き受ける。同社の技術を生かして提供するサービスは

AIによる賃料査定から入居募集及び家賃管理までワンストップでサポートするサービスを想定している。

*リーウェイズ株式会社について

同社は6,000万件超の不動産物件の賃料データをはじめとした不動産取引情報や、人口動態・地価情報などのビッグデータをAI技術で解析し、不動産の将来価値の予測を可視化する不動産評価モデル「Gate.(ゲイト)」を開発し、不動産関連会社や金融機関に提供している。

・オリックス銀行向けのキャッシュフローシミュレーターの提供

・静岡銀行との資本業務提携

などAIを実際のビジネスにつなげて実績を上げている。

同社WEBサイト: https://www.leeways.co.jp/

 

〇成長投資を積極化

同社は現在成長投資を積極化している。
主な内容は以下のようなものである。
・人材採用・育成への投資 2億円
 営業人員の強化やシステムエンジニアの積極採用及び階層別、業務別研修の実施
・システム投資 3億円
 家主と仲介をつなぐハブシステムやAIによる社内業務の自動化、賃貸取引のデータベース化

システム投資においては、不動産管理会社向けサービスとしては入居募集→申し込み→契約→契約管理→問い合わせといった一連の業務をIT化し、業務効率を高めることを実現する。また、家主向けサービスでは入居募集→内見→申込→契約→入居→退去までをワンストップで提供するためのシステム開発を進めている。自主管理家主は世代交代により若返りの傾向があり、ITを使った経営効率化には前向きな層が増えるとみており、ITを生かした大家経営の効率化サービスを続々提供することで顧客満足度を高める。
上記の、子会社設立、リーウェイズ株式会社への出資により成長を加速させる。

【業績動向】

〇2020年1月期第2四半期

 2020年1月期第2四半期は売上高4,642百万円(前年同期比+9.2%)、売上総利益3,020百万円(同+7.2%)、営業利益711百万円(同+7.9%)と増収増益となった。会社計画の第2四半期累計売上に対する進捗率は売上高で49.1%、営業利益で50.4%とほぼ会社計画通りの進捗となっている。

契約数は新規契約数69千件(前期比+10.3%)、保有契約数504千件(同+8.1%)。通期計画の新規契約数127千件(前期比+7.2%)、保有契約数529千件(同+9.9%)に対しても計画を上回って進捗している。
前述の“ビジネスモデル”で記述した通り、初回保証料と年間保証料は契約期間を通して案分計上することになっており、新規契約数及び保有契約数の増加が通期を通して売り上げ計上されることになる。

前期の後半から注力していた自主管理家主向けで“家主ダイレクト”を利用した営業の効果が発揮され自主管理家主の契約数が増えたことが増収に寄与した。

 

・四半期別売上高及び前四半期比の増減率

 

・新規契約数 保有契約数推移

 

〇2020年1月期 通期会社計画

 2020年1月期の会社計画は、売上高9,454百万円(前期比+9.8%)、売上総利益6,250百万円(同+10.2%)、営業利益1,409百万円(同+6.3%)と増収増益の計画。営業利益率は14.9%。大手管理会社からの契約拡大に加え、自主管理家主向けの営業強化による売り上げ拡大を見込む。成長投資を増額するため、営業増益率は低くなる計画である。契約数は新規契約数127千件(前期比+7.2%)、保有契約数529千件(同+9.9%)を見込む。

【株主還元】

2020年1月期
一株当たり予想配当26円
配当性向30.34% *配当性向30%を目安に配当を実施する方針。
*2019年1月期の実績は
 一株当たり配当26円 (普通配当23.75円+記念配当2.25円)
記念配当がなくなる2020年1月期も一株当たり配当26円を維持する。

【リスク】

 自主管理家主マーケットの開拓が進まない可能性
 自主管理家主マーケットへの営業強化をしているが、大手管理会社向けと違い、小規模家主を個別に開拓するため手間と時間を要する。会社が想定する以上に時間とコストがかかる可能性がある。

 景気悪化による代位弁済が拡大するリスク
 代位弁済の抑制のため、賃借人に関わるデータベースを構築し、独自の分析による与信管理を行っているが、想定以上に経済環境が悪化し、賃借人の家賃支払いに影響を及ぼし、代位弁済が拡大した場合、同社の業績に影響を与える可能性がある。

 成長投資の遅れ
 今後の成長を加速させるため、人への投資及びシステム投資を計画し、推進している。システムエンジニアの人材不足が業界を問わず顕著となっており、同社においても採用が想定通り進まず、投資が遅れる可能性がある。

 

2019年9月25日銘柄研究所

Posted by ono