6566 要興業 ゴミは減少中、しかしそれがチャンス

2018年12月27日

要興業は東京23区内のゴミの回収と分別を行っています。

全国的にゴミの排出量は減っています。

しかし、減るほうがむしろチャンスになります。

 

概要

 

要興業は東京23区内のゴミの回収と分別を行っています。事業系ゴミ、家庭ゴミ、粗大ゴミ回収、廃棄される機密文書など扱う種類はさまざまです。処分場への持ち込み料ベースで見ると、業界シェアは23区内でトップですが占めるシェアは10%ほどです。

 

建築時に出る廃棄物を扱うタケエイやダイセキと違って、要興業は家庭や事業所から出るゴミ袋に入った普通のゴミを扱います。環境省の「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成27年度)について」を見ると、全国のゴミの排出量は年々減っています。平成17年から平成27年にかけて約17%の減少。しかし、全国のゴミ処理費用のうち、委託費は増加を続けていて同期間で約30%増えています。

 

東京都の「くらしと統計2017 」によると、ゴミの排出量は平成18年から平成26年で11%の減少。自治体(*1)はゴミ回収、収集の委託を民間業者に委託しているケースが増えてきています。ゴミの回収業者は500業者ほど許可されているようですが、規制に対応しきれない業者、事業継承がうまくいかない業者などもあり、年々数は減ってきているようです。

 

ゴミが減っているとはいえ、最終処分場は新しい物を建設することはほぼ不可能。さらに、ゴミを回収して処分するのは財政に余裕がない地方自治体の仕事。彼らはなんとかゴミが減らせないかと要興業のような専門家を頼っているのです。

 

*1 ゴミ回収は以前は都の管轄でしたが、現在は移管されて各市区町村が行っていいます

 

ゴミ回収の歴史

 

処分場のキャパシティは30年前から限界

 

1992年の廃棄物処理法改正により、産業界がゴミの削減に意欲を見せ始め、廃棄物管理票の利用徹底や、排出情報のオンライン化などが始まりました。このころから首都圏では最終処分場の確保が問題になり始め、自治体が民間業者にゴミの処理を委託し始めました。1991年度をみても、全国のゴミの委託総量の半分は首都圏からのゴミでした。首都圏の自治体が東北の業者に処理を委託したケースもあったようです。

 

1994年に入って、セブンイレブンが23区内の店舗を手始めに、ゴミ回収の一元化を始めました。自治体のゴミ処理費用の値上げに対応し、回収コストの削減を狙ったものでした。自治体も従来は家庭ゴミと事業系ゴミを区別していませんでしたが、事業系ゴミは重量にかかわらず有料化していく意思を見せ始めました。1995年に入って、家電業界も廃家電の回収と処理のシステム作りを始めてゆきます。さらに1995年6月になって容器包装ゴミリサイクル法が施工、企業がペットボトルなどの容器包装ゴミの再利用をしなくてはならなくなりました。

 

こうした流れを受けて、ゴミ収集やリサイクルなどの環境ビジネスが盛んになりました。たとえば豊島区では95年からビン、カン、食品容器などの回収を業者に委託し始めました。区の財源が逼迫する中、自前で回収をやるのは不可能。委託するので精一杯だったようです。

 

ゴミの回収の有料化

 

1996年12月からは、全ての事業系ゴミの回収が有料化されました。これを受けて、安くゴミを回収する業者が現れはじめます。飲食店の多い商店街では、「生ゴミの回収が週三回では足りない」などとして、民間に処理を委託することを決めたケースもありました。さらに、ゴミ出しの有料化は区役所の出先機関などにも適用されため、自治体も、関連施設のゴミ収集を委託業者に切り替えてゆきました。

 

1997年になって、ダイオキシンの発生源とされる、学校などにあった焼却炉が廃止されました。当時の文部省の公立学校調査では、校内でゴミを焼却している学校は全体の約83%あったようです。焼却炉の廃止され、自前で処分できなくなったゴミは業者や自治体に回収されていきます。1999年になってゴミ収集を民間業者に委託している自治体は全国で295市(51.9%)になりました。 2009年頃からは家庭ゴミの回収も有料化され始めました。

 

そして現在

 

東京都環境局のウェブサイトには「都の廃棄物埋立処分場は東京港内における最後の処分場です。そのため、現在の処分場をできるだけ長期間使用しなければなりません。分別やリサイクルの促進等により埋立処分量は年々減少しており、処分場の残余年数は試算では50年以上となっています。」とあります。

 

ゴミの削減は自治体にとって重要な課題です。処分場を延命するためにも、なんとかしてゴミを減らさないといけません。また、東京都の処分場は、自治体ごとにゴミを持ち込んだ量に応じて分担金を請求しています。ゴミの量が減れば分担金の節約にもなります。

 

要興業の事業

 

需要はありますが、誰でも簡単にできる仕事ではありません。

 

ゴミ回収ネットワーク

ゴミ回収業者がゴミを処分場に持ち込むと1キロ辺り約15円の処理費用がかかります。この費用はどの業者が持ち込んでも同じ値段です。ゴミ回収車の配車ネットワークを広くし、配車効率をあげることで、どれだけ回収コストを節約できるかが競争力につながります。

このネットワークがきちんとしていなければ、収集が得意な地区、苦手な地区ができてしまいます。たとえば、苦手地区なので、受けるとコスト増になるため受注できなかったり、無理をして受注してしまったり、ということがありえます。顧客の増加が必ずしも利益につながらないことがおこりえます。

要興業はドライバー400人、収集車400台をもち、東京23区の収集拠点を路線化しています。500軒のコンビニから収集依頼があっても2日後には対応できるほどの手配体制が整っています。このためコスト増にならずに顧客を増やして、収益をあげることができるようです。

 

自治体からの事業委託

現在、足立区は要興業に年間1億6千万円でゴミの分別と処理を委託しています。2013年度はこの委託の結果、不燃ゴミを90%削減することに成功。同年足立区が処分場へ持ち込んだゴミの総量は341トン。23区のなかで一番少ない量でした。要興業は足立以外にも、板橋、豊島、中央区からも委託を受けています。こうした実績もあることから、自治体からの受注を獲得しやすい有利な状況にあるようです。

 

安売りはしない

ゴミを排出する事業者のニーズは様々です。たとえば、1999年の日経産業新聞には飲食店の多い商店街では「週三回ではなく生ゴミ回収を毎日してほしい」というニーズがあったことが書かれています。コストを重視する排出業者も多いでしょう。要興業の目論見書を見ると、「廃棄物の処理先をコスト重視ではなくコンプライアンス重視で選択する排出事業者との結びつきを強め、適正な価格での廃棄物処理委託契約を維持でき、収益の安定化及び業容の拡大に結びついているものと考えております。」と低価格でのサービス提供をしていないことが伺えます。

 

事業内容

 

 収集運搬・処分事業

   23区内の事業系一般廃棄物、産業廃棄物の収集運搬と処分。

 リサイクル事業

   リサイクルセンターに運び込まれた、古紙、ビン、カン、ペットボトル、粗大ゴミなどの処理と資源化し、

   再資源化品や有価物を業者に売却している。

 行政受託事業

  東京23区の依頼により、不燃ゴミや、ビン、カン、ペットボトル、プラスチック容器などの容器包装ゴミの資源化処理。

  加えて、家庭からの一般廃棄物を23区からの委託で行政の処理施設や処分場に運搬する。

   

業績と従業員(平成29年3月期末時点)

売上高(連結) 10,042 (百万円)

営業利益(連結) 1,034 (百万円) 

従業員数(連結) 432人

平均年間給与(単体) 5,332千円

アップデートレポート

2018年12月27日銘柄研究所

Posted by 古瀬雄明