6294 オカダアイヨン

2018年12月27日

”アイヨン木っと・カット”
”アイヨン与作”

同社の製品名である。

製品名に愛を感じる企業。
6294 オカダアイヨン

〇社名の由来
1938年に創業。今年2018年は創業80年の年だ。
1961年に発売した油圧ショベル取り付け式の大型エアーブレーカIPH400(アイピーエイチヨンヒャク)が大ヒット商品となり、成長のきっかけとなった。

また工事現場でもこの略称であるI4(アイヨン)がブレーカの代名詞として使われるようになった。
そしてコーポレットアイデンティティーという言葉が出始めた頃、当時の岡田眞一郎社長が社名を変更した。

〇国内シェア

2016年度(2017年3月期) → 2018年3月期第2四半期
クラッシャー 大型の大割機42% 小型の小割機39% → 大割機45% 小割機41%
カッター 40% → 47%
油圧ブレーカー 13% → 14%
それぞれシェアを拡大している。
特に開発が活発な首都圏では
クラッシャー 大割機50% 小割機49%
カッター 50%
とほぼ半分を同社の製品で占めている。
*自社WEBサイトでは動画により製品が確認できる。
 ブレーカーは”たたいて壊す”仕組み
 動画で静音性などの特徴を謳うがで差別化しにくい製品。
 http://www.aiyon.co.jp/product/download/movie

〇強み

上記のようなシェアを拡大できた強み

・丈夫さと形状の自由度の高さ
 40年以上の実績。特殊鋼を使った鋳鋼品で非常に丈夫である。また、型に流し込んで作るため、形は自由。
鉄板を溶接、圧着するなどによって製造する他社製品と比べて丈夫さ、形の自由度で優れている。

・アフターサポート
 固い建造物を破壊するため、使用を続けるうえで部品の摩耗や故障は常態化している。
自社でメンテナンス部門を持つのは同社のみであり、クラッシャーの爪の部分の摩耗や部品の故障、
破損などへの迅速な対応が可能となっている。同社が適切な顧客サポートを行っていることが顧客満足度を高めている。同社の補材・修理の売り上げは国内売り上げに対して20%弱となっており、ストックビジネスとなっている。

・営業・開発が一体となった商品開発力

全ての油圧ショベルメーカーに納入している。
6割をショベルメーカーの販売代理店経由、2割を直販で販売。
全国にサービス拠点を持ち、顧客サービス充実に注力している。

 販売代理店だけでなくエンドユーザーへの直接販売も行い、ユーザーニーズを得ている。
迅速なアフターサポートにつながるだけでなく、現場のニーズをとらえ、商品開発に生かしている。

〇歴史から強みの源泉を知る
同社はWEBサイトに
”半世紀の歴史”
を掲載している。

に現在の同社の強みの源泉がつづられている。
創業から変わらず続けてきたからこそ失われない強固な信頼につながっているのだろう。

一部抜粋
昭和中期
日本の高度成長にとって象徴的な出来事といえば、昭和45年の万国博覧会です。
オカダのアイヨンは、この万博でも千里丘陵の会場跡地の破砕に数多く使用されました。
また、わが社が油圧ブレーカを日本で初めて輸入したのもこの頃のことです。
当時、私どもが後年、このアメリカの機械を販売するとは想像もつきませんでした。
まして、将来、私どもが油圧ブレーカを米国をはじめ世界の各国に、大量に輸出することになろうとは・・・。

昭和後期
景気後退という中で、私どもが一貫して守ってきたことは、従来の機械に徹底したサービスを
お付けして販売するということでした。加えて、より使い易く、高性能で低コスト、
さらに公害が少ないことをモットーに、機械の改良、開発に努めてきたことです。
また、この間、長い取引先である多くの会社のご協力を得まして、
業界の新しいニーズにお応えする製品を次々と世に送り出しました。

〇業績推移
下記の通り、リーマンショック後に営業赤字となったがその後回復基調をたどっている。
2016年は円安の材料価格上昇時に大量発注したこと、1部上場のための準備、優待の設定、コンサルの導入など
が重なり、減益となったが、今期は過去最高益を更新する見込み。
(単位:百万円)
決算期 売上高 営業利益 営業利益率
2008/03 9,307 766 8.2%
2009/03 6,950 204 2.9%
2010/03 4,288 -518 -12.1%
2011/03 5,294 41 0.8%
2012/03 8,266 501 6.1%
2013/03 8,475 592 7.0%
2014/03 10,371 866 8.4%
2015/03 11,943 892 7.5%
2016/03 12,043 760 6.3%
2017/03 13,113 1,106 8.4%
2018/03予 14,000 1,250 9.4%

四半期実績
第2四半期累計
売上高 6,742(前年同期比+7.4%)
営業利益 705(同+22.3%)
売上高営業利益率 10.5%
通期計画に対する進捗率は58.5%

特に第2四半期単独で見ると
売上高営業利益率は11.5%まで高まっている。
足元で首都圏の都市開発が高水準で同社も高水準の生産が続いている模様。
休日対応なども含め、かなり忙しい状況である。
計画の超過達成が期待できよう。

〇今後の成長シナリオ
 アイヨンテック朝霞工場の増設工事を終了
朝霞工場では製品の仕上げ、メンテナンスを行っている。
部品在庫などに利用していたスペースも作業スペースとして利用する。

 東京オリンピックまでは活発な開発が続くことが予想され、
同社の業績は堅調に推移することが期待できる。
また、長期にわたるであろうテーマとして首都高更新がある。
老朽化が進む首都高の更新は首都高の地下化となればさらに大きな長期工事となることも期待できる。
今後はこれらの新しい受注が発生するかで長期の成長角度が変化する。

・買収した林業機械メーカー
株式会社南星機械、株式会社南星ウインテック及び暁機工株式会社の株式の取得し、子会社化した。
開発製品が重ならない反面、販売先は重なることが多かったとのこと。
林業機械は公的な補助金による開発が可能であるため、開発コストが拡大するリスクが小さい。
また、営業が弱い点をオカダアイヨンが補うことでシナジーが期待できる。
*M&Aのリスク
M&Aで成功する重要なポイント
相手をよく知っていることである。
当然のことだが、日本企業が失敗する事例は、例えば海外展開を模索していて、
よさそうなところがないか調査会社に調査を依頼して相手企業を知った場合が多い。
競合や取引先として相手の事業内容をよく知ってから、買収に踏み切る場合はリスクを抑制することができるだろう。

買収金額8億円
純資産3.3億円
のれん約4億円を5年で償却する計画。

・海外展開

海外は好調だ。

第2四半期

売上高1,525(前年同期比+34.8%)

営業利益291(同+94%)

北米でレンタル需要が回復したことと、販売代理店拡充によるアジア・欧州の伸びが寄与している。

過去業績推移

海外セグメント 売上高 営業利益 営業利益率
2014/03 1,473 71 4.8%
2015/03 1,890 209 11.1%
2016/03 2,313 318 13.7%
2017/03 2,096 235 11.2%

 

現在、販売網を拡大している。北米は100%出資のオカダアメリカ
北米以外は代理店展開。EU内販売代理店17カ国に拡大した。
現地に即した開発が進めば徐々に売り上げ拡大が期待できるが短期では米国の影響が大きく

業績のボラティリティは大きそうだ。

多くの建機メーカーが進出しており、競争が厳しい。
同社の強みである”丈夫さ”は日本の頑丈な建造物に対応したものであり、海外においてオーバースペックである。
故障や摩耗が少ないことからアフターサポートの強みも生かしにくい。
騒音規制は厳しくないため、静音ニーズは強くない。
中国はほぼブレーカーである。

ひとまず、騒音規制、丈夫な建造物という点で共通すると思われるシンガポールなどが期待できる市場であろう。

しかし、長期で見た場合、米国の影響が小さくなり、新興国についても生活水準が高まれば、騒音規制が強化されるだろう。

また、日本のゼネコンの海外進出なども進めば、同社の製品に対するニーズも高まる。

 

同社のそれらを見ながら長期に見ていきたい企業である。

 

2018年12月27日銘柄研究所

Posted by ono