6195 ホープ 益々求められていく自治体と企業とのマッチング by宇佐見聖果 ※アナリストレポート

2023年11月3日

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6195ホープ レポート2023年9月14日

はじめに

18年前の創業以来同社のビジネスは一貫して、自治体が抱える、労務面での負担軽減と財源確保を目指すものだった。そしてその手法は、自治体が保有する様々なスペースを広告スペースとして企業に販売することから開始し徐々に、自治体と企業とのビジネスマッチングの支援へと業容が拡大されていく。

公務員数に対して多くの業務を抱える特徴を持つと言われる日本の自治体では従来から、公共サービスの提供を民間事業者に委託する官民連携のケースが存在した。限られた財源で多くの業務を担う自治体の見え辛い部分のニーズを捉えてきた同社のビジネスは着眼点に優れる。

さらに、公共投資が地域経済安定のために第一の是とされていた二昔程前までと異なり、この数年で加速し出したAIの進歩や、少子高齢化等が現在、地域環境を急速に変化させている。諸問題を取り巻く解決策は複雑化しており、放っておけば自治体の負担は増すばかり。同社グループが属するマーケットは変化が目まぐるしい。

自治体と企業とのマッチング、言い換えれば官民連携ないし官民融合を推し進めるべく、同社グループがこれまで18年かけて築いてきたバックボーンがいよいよ力強さを発揮していくタイミングに今ある。

■創業者であり代表取締役社長兼CEO 時津孝康氏

出所:同社HP

現在の事業区分

最初に、同社グループの事業区分について説明する。同社グループの事業は現在、大別して2つのセグメントに分割されている。

1つ目が、創業から続く、企業から得る広告収益によって自治体の業務負担軽減ないし財源の獲得を図る「広告事業」。ここで同社は、自治体に対しては広告枠の買い取りないし住民向け冊子「マチレット」の提供、企業に対しては広告の販売という形でサービスを提供し、広告枠の仕入れと販売の差額を収益として得る。同セグメントでは、自治体の媒体に広告枠を設定するサービスを「SMART RESOURCEサービス」、マチレットの提供を「SMART CREATIONサービス」とカテゴライズしている。

2つ目が、自治体への情報提供や自治体と企業とのマッチングサービスを行う「ジチタイワークス事業」。この事業では、自治体に対しては行政マガジン『ジチタイワークス』を通じた情報提供、企業に対しては主に自治体に対するマーケティング等の支援を提供し、主に企業に対して提供したサービスの対価を同社の収益としている。ここではおおまかに、行政マガジン『ジチタイワークス』の提供を「ジチタイワークス」、それ以外を「BtoGソリューション等」とカテゴライズしている。

同社の売上はこの2大セグメントで96.9%が占められている(2023年3月期)が、その他に「その他の事業」として、育成中ないし、現時点では大きく収益に貢献していないものの今後のビジネス展開に際して重要な存在になる可能性を持つ事業がいくつか存在している。

次章以降で、同社グループが展開しているサービスについて提供開始順を基本として追っていきたい。

■「事業セグメントとサービス」

出所:同社決算説明資料

自治体が持つスペースを広告枠として活用 「SMART RESOURCEサービス」

広報紙や公式ホームページをはじめ役所内のエレベーターやカウンタースペース、住民が必ず手に取るゴミ袋等々、自治体が管理する場所や媒体には様々なスペースが存在する。

2005年2月に創業した同社が翌年6月からスタートさせたのはこの、自治体が有する未利用のスペースを有効活用させていくサービス。すなわち、自治体が保有するスペースを、広告掲載スペースとして利用促進していく事業であった。自治体から買い取ったスペースに広告掲載を希望する企業に対して販売するこの「SMART RESOURCEサービス」(旧称:「DS(デッドスペース)サービス」)は、自治体の業務上の負担軽減と財源確保を行うことができる。同社グループが展開している複数の事業の中でも創業から現在まで18年と最も歴史の長く継続しているこの事業は、同社グループが展開するその他のビジネスの種を生んでもきた。

■掲載イメージ(上:広報紙、下:公式ホームページのバナー広告)

出所:同社決算説明資料

現在、この事業で同社グループが自治体から広告枠を買い取る手段はその殆どを入札に依っており、地場の広告代理店等複数の競合とバッティングするが、在庫リスクを負いながら1年分の広告枠を一気に買い取ってかつ売り切ることで利益を確保している。それは、このビジネスで全国を網羅している同社だからこそ持ち得る優位性といえる。

広告枠の仕入れが決定したら、予めリストアップした中から広告出稿の見込み候補の企業に対して広告掲載の営業を行う。自治体の所管内に掲載される広告は住民から信頼が得られやすく、多くの企業にとってポジティブ。売り上げた広告掲載料金から、自治体に支払った仕入原価との差額が同社グループの利益となる。自治体と企業、双方に各々のメリットをもたらすユニークなサービスと言える。

■「SMART RESOURCEサービス」売上高及び(自治体との)契約数

出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成
※契約数は契約案件数であり、契約先の自治体数とは異なる
※売上は2015年6月期からのみ開示
※決算期変更のため、2014年6月期、2022年3月期は9か月間

2017年1月時点において、同社がこの「SMART RESOURCEサービス」を提供する対象としているのは人口2~3万人以上を有する自治体だったが、2016年6月のサービス開始時に対象としていたのは人口20~30万人以上の自治体であった。社内のマンパワーが限られている事情や効率性追求の観点から、人口が20万人を切る自治体へ向けて広告主とのマッチングをシステム内で行うプラットフォーム「LAMP(Local Ad Market Place)」を開発し、2017年1月から提供をスタートさせた。しかしながら同システムは普及が想定に届かず現在は運営を停止している。

住民向け情報冊子を作製して自治体に納入 「SMART CREATIONサービス」

「SMART RESOURCEサービス」の拡張に奔走し、僅かなメンバーで地方を駆け回り自治体との契約を積み重ねていくこと7年目、ようやく社員数も20名を超えるようになり業績は順調であった。同時に、将来に渡る同事業の成長度合いについてもおおよその予測ができてくるようになる。

そのまま「SMART RESOURCEサービス」の1本で成長していく選択肢もあったが、成長のレベルをワンステップ上げることでより社会的意義の高い企業を志向し、かつ上場を目指していた同社は2013年9月、2つ目となるビジネスをスタートさせる。住民を読者として想定した情報冊子「マチレット」を自治体と一緒に発行する「SMART CREATIONサービス」(旧称:「MC(メディアクリエーション)サービス」)。

自治体にとっては、住民が求める情報をわかりやすく説明できるツールとなる同サービスは、冊子内に企業広告を掲載することでマネタイズが図られた。創業から7年の間に築き上げた、全国自治体や民間企業とのネットワークと営業ノウハウをバックボーンにして立ち上げたこの新事業は無事に軌道に乗り、コンテンツの多様化やクリエイティビティのブラッシュアップ等工夫を重ねながら現在も同社の業績に貢献している。

■同社が作成したマチレットの一例

出所:同社決算説明資料

■「SMART CREATIONサービス」売上高及び契約数

出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成
※契約数は契約案件数であり、契約自治体数とは異なる
※決算期変更のため、2014年6月期、2022年3月期は9か月間

企業の対自治体マーケティングを支援 「BtoGソリューション」   

2014年8月、同社は3つ目となる新サービス「BtoGソリューション」(旧称:「営業活動支援サービス」→「BPO支援サービス」→「BtoGマーケティング」)をスタートさせた。企業のビジネスと自治体のニーズを結びつけるいわゆるマッチングサービスである同事業は、直接の提供先が自治体ではなく企業となる点で「SMART RESOURCEサービス」や「SMART CREATIONサービス」とは性格が異なってくる。

開始当初は営業代行やマーケティングリサーチを担っていたが、近年は自治体職員向けや企業担当者向けセミナーの開催、集客支援やテレマーケティングといった業務を中心に提供するようになってきている。

DX、マイナンバー、空き家、観光等、自治体が取り組むべきテーマが一昔前と比べて多様化している今、自治体マーケットでのビジネスチャンスをつかみたい企業も増えてきており、同社のBtoGソリューションの活用機会も広がっている。「BtoGソリューション」はプレーヤーが少なく、値入に際しても強みがある。今後も「BtoGソリューション」の存在感を維持できるよう、慎重な市場開拓をしているとのこと。

■受託例(2018年6月期~2023年3月期)

出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

■「BtoGソリューションサービス」売上高

出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成
※社内組織の再編成等によるセグメント変更により、2019年6月期及び2020年6月期については非公表

自治体職員・地方議会議員向け行政マガジン 『ジチタイワークス』

2006年6月「SMART RESOURCEサービス」、2013年9月「SMART CREATIONサービス」が走り出し、いずれも軌道に乗せた同社は2016年6月に上場を達成。そして次のステップへと進み出す。

「SMART CREATIONサービス」で提供する「マチレット」制作の経験からコンテンツ作りのノウハウを蓄えてきていた同社は、2017年12月、自治体職員を読者として想定した行政マガジン『ジチタイワークス』を創刊する。自治体が担う業務の効率化や改革のヒントとアイデアをインタビュー等の記事で紹介したもので、1からコンテンツ作成を手掛ける。全国1,788の自治体で働く職員、さらに2023年3月期からは新たに地方議会議員にも無料配布されており、誌面内容は定期的にリニューアルしているとのこと。

「マチレット」と同様に企業広告を掲載して一定の収益は得ているものの、「ジチタイワークス」の位置づけは「BtoGソリューション」の認知を拡充させていくための手段。自治体と企業とのマッチングという、マーケットにとって目新しいサービスのブランディング構築を主眼に置いた媒体としている。

■ジチタイワークスVol.24(2023年2月発行)目次の例


出所:ジチタイワークスWEB

■行政マガジン『ジチタイワークス』売上高

出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

その他の事業

自治体の財源確保・負担削減を目指した、「SMART RESOURCEサービス」と「SMART CREATIONサービス」で構成される「広告事業」。自治体と民間を繋ぐ架け橋を目指した、「BtoGソリューション等」と「ジチタイワークス」で構成される「ジチタイワークス事業」。以上が、同社グループが展開する事業の内主なものとなる。

それに加えて同社には、黎明期を脱して成長の芽を出しつつある事業、生まれたばかりの事業、あるいは現時点では大きく収益に貢献していないものの今後のビジネス展開に際して重要な存在になる可能性を持つ事業と、確認しておかなければならない複数のビジネスが存在する。

「企業版ふるさと納税支援事業」

「企業版ふるさと納税」を簡単に説明すると、自治体が行う地方創生プロジェクトに対して寄付を行った企業が税制上の優遇措置を受けられるシステム。PR効果や自治体とのパートナーシップ構築の機会も期待できるということで、2016年の開始以来マーケットは拡大中。

「企業版ふるさと納税支援事業」でも同社グループが担うのは、企業と自治体とのマッチング。同社と企業版ふるさと納税支援の協定を結んでいる自治体に、営業対象の企業から寄付がなされた場合に自治体から一定の委託料が入る。2021年9月のサービス開始から2023年6月末時点までに同社グループを通じて行われた寄付額はおよそ3.8億、マーケットの成長に比例するように委託料収入も伸びているとのこと。

■寄付額および1件あたり平均寄付額

出所:内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局内閣府地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)について」令和5年2月

空き家対策の総合プラットフォームakisol(アキソル)

空き家のお悩み解決のための総合サービスであるビジネスとして2021年9月にスタートした。現在はまだ収益化に至っていないとのこと。

■同社グループが運営するHP「akisol」

出所:akisolHP

広報紙等をアプリで閲覧。マチを好きになるアプリ 「マチイロ」

アプリで自治体の広報紙等を閲覧できるサービス「マチイロ」(旧称:「i広報誌」)は2014年7月に開始した。同社への利益貢献度は低いものの、自治体との契約数は右肩上がりと好評だという。

■マチイロのイメージ画面

出所:同社決算説明資料

■契約自治体数(累計)

出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

業績

新電力事業の失敗から得た学び

ここで、同社グループの歩みを辿るに際して無視することのできない、同社グループの存続を揺るがすこととなった出来事を振り返る。

2018年3月、同社は電力小売事業を開始した。2016年4月にスタートした電力小売全面自由化を受け、強みを活かせるとして、自治体に対して電力供給を行うビジネスであった。

ところが、2020年末からはじまった仕入価格の急騰に見舞われる。上がり続ける仕入価格を目の前に手の打ちようなく、2021年6月期を終えて期末で債務超過に。金融機関からの借り入れ叶わず、2021年に2度のエクイティファイナンスにより資金調達を行うが債務超過は解消できなかった。2022年3月に決算期を3月期に変更、同3月に子会社のホープエナジーが破産手続開始決定となり連結から切り離された。

その後2022年12月に株式会社チェンジ(現・株式会社チェンジホールディングス)に対する第三者割当増資と資本業務提携を行い、同社の持分法適用会社となった。この資金調達をもって2023年3月期末に債務超過を解消している。

代表取締役社長兼CEOの時津孝康氏は一連の経緯を経て、先を読む力、想像力、リスクヘッジ能力の不足を反省すると同時に、ガバナンス強化のため投資諮問委員会の設置を発表。

今後の同社グループを見守っていきたい。

■日本卸電力取引所(JEPX)スポット市場価格(年平均、システムプライス)

出所:JEPX information

下の2表は、本来の業績推移と電力小売事業を除いた業績推移とを、比較の観点から掲載したものとなる。

■売上高及び営業利益率 (上:本来、下:電力小売り事業を除いたもの)


出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

広告事業は案件の見直しに着手

同社グループの広告事業は現在、成熟期を迎えている。18年をかけて全国の自治体の開拓を進めてきた今、0から営業をかけなくても毎年一定の契約が得られる状態にはなっている。そうした中で2017~2018年、契約数を追うあまりに採算性の低い案件を引き受けるケースも出てきていた。

こうした事態に対する対策を開始したのが2017年ごろから。この時から現在まで、同社の広告事業は立て直しのフェーズにあった。全ての案件について見直し採算性の合うものだけを残してきた結果、案件数そのものは減少したが、収益性の追求が奏功し、2023年3月期以降は人員を再配分してもう一度上昇を目指すタイミングに来ているという。

■1案件あたり平均売上高

出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

セグメント毎の業績

■広告事業(「SMART RESOURCEサービス」及び「SMART CREATIONサービス」)

■ジチタイワークス事業(「BtoGソリューション」及び「ジチタイワークス」)

■その他(企業版ふるさと納税支援事業、空き家事業等)

出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

バリュエーション

時価総額     48.1億円
株価       295円(2023年9月14日終値)
会社予想EPS   9.7円
会社予想PER   30.3倍
実績PBR     6.01倍

                                            以上

2023年11月3日成長株投資, 銘柄研究所

Posted by usamiseira