6194 アトラエ by yano

2019年2月7日

 

2016年6月にマザーズ上場。

ビッグデータを活用した人材紹介と求人広告の良いとこを合わせ持つユニークなビジネスモデルの企業を紹介。

 

ビジネスモデル

インターネット上で「Green」というサービス名でIT・WEB業界の求職者への人材紹介を行う独自のビジネスを展開している。

10年以上にわたって、求職者や求人企業のデータ、選考過程のデータを蓄積してきた。

このビッグデータを活用し、求職者に似た人の事例や求職者の閲覧履歴などから求人情報の最適化を行い、求職者の興味関心が高い求人企業をレコメンドして、「Green」のサイトでマッチングを行う。労働集約的な人材紹介ビジネスから脱却する事業モデルを築いている。

特にIT・WEB業界は人材の流動性が大きく、求職者はインターネットリテラシーが高く、多忙であることから、自分に合った最適化された求人をネット上で閲覧できるというメリットは大きい。

紹介手数料は固定の成功報酬型とすることで、他社人材紹介事業者よりも割安で価格優位性があることから、同社が後発ながらも選ばれる理由となっている。

リクルート、JAC、インテリジェンスなど人材紹介事業者は、コンサルタントが求職者に対してアナログでマッチングし、成功報酬として、求職者の年収の30~35%程度を紹介企業から紹介料としてもらうビジネスモデルである。

同社はビッグデータを最大限活用してマッチング精度を高めることから、コンサルタントが一切不要であり、ライバルの人材紹介事業者に比べて安価な料金体系を実現している。

 

さらに一回同社を利用すると、永久にサイトに掲載できるという点では、求人広告の要素もある。

リクルートやマイナビ、エン・ジャパンといった求人広告事業者に掲載した場合は、1ヶ月の掲載で約40万円程度の求人広告掲載料が求人企業にかかる。

掲載費用が掛け捨てにならないので、今すぐに求人が欲しいわけではなく、いい人がいれば採用したいニーズも取り込み、企業自体の広告としても有効に利用できるメリットがある。

 

 

 

収益モデル

初期設定費用と成功報酬手数料の2本柱で、初期設定費用が売上の25%、成功報酬手数料が売上の75%の構成とっている。

初期設定費用は、40万円、60万円、100万円の3本の体系があり、1回のみの課金で永久に「Green」に掲載できる点が強みである。

40万円コースは提供資料をもとにライターが求人記事を作成し、60万円コースは企業に訪問取材をして求人記事を作成する。100万円コースは、訪問取材後に求人記事作成し、1週間検索上位に表示する。

1件当たりの平均単価は60万円。

 

成功報酬手数料のほうは、年収に応じた変動手数料ではなく、すべて固定で東京は90万円、他主要都市は70万円、地方は50万円と30万円の4本の料金体系を持っている。

1件当たりの平均単価は70万円。

他社の人材紹介事業者の場合は、平均年収が500万円で30%の手数料率と仮定しても、1件あたりの平均単価は150万円程度であろう。

これだけの価格差だから、料金面の優位性は大きいといえる。

 

同社は書類選考通過率を求人企業に対してクオリティー担保するという意味で重要視しているが、ここ数年書類選考通過率が高まり、3割を達成している。

同業のコンサルタントを介すライバル企業も約3割でこの点は引けをとらない。

 

 

市場規模から見た売上ポテンシャル

直近のデータである2017年8月の有効求人倍率(パート含む)は1.52倍とバブル期の1.46倍を超え、1974年2月以来43年5ヶ月ぶりの高水準だった。完全失業率も2.8%と低い水準だった。企業の求人に対して、実際に職に就いた人の割合である充足率は15%と低く、依然として企業の人手不足感は強く、将来の人手不足を見込んで長期雇用の正社員の雇用を増やしている。

正社員のみの有効求人倍率も2017年6月に統計のある2004年11月以来初めて1倍を上回って、1.01倍。正社員数は前年同月比で60万人増えて、3ヶ月連続で非正規社員の増加を上回った。

IT人材にフォーカスすると、求人倍率は5.98倍と業種の中で最も高く、採用難であることが分かる。

経済産業省によると、IT産業の供給人材数は2016年度で約92万人おり、人材不足数は19万人と推計され、2030年は供給人材数が85万人まで下落する一方で、人材不足数は59万人程度になると推計されている。

具体的には、2016年度の先端IT技術部門で1.5万人、情報セキュリティ部門で13.2万人ほど不足感があり、2020年には先端IT技術部門で4.7万人、情報セキュリティ部門で19.3万人不足する見通しである。

背景には、IoTや人工知能、ロボットといった大幅な市場拡大が予想されるためである。

今後IT・WEB業界の人手不足感はますます強くなり、同社の属する市場規模は大きくなることが予想される。

 

また、業界のプレーヤーのリクルート、JAC、インテリジェンス、@type(キャリアデザインセンター)など大手4社は求人数出していないため正確には分からないが、4社で40%程度のシェアと予想されている。依然として中小の人材紹介事業者も多く、寡占化が進んでおらず、シェアの面から見でも同社のビジネスチャンスは大きい。

 

 

顧客はネット業界の大手ばかり

IT・WEB業界大手やベンチャー企業を中心に5000社以上(求人件数は約10000件)が利用している。登録者数は40万人を達成している。

最近では、IoT化を背景にIT・WEB業界以外からもIT人材の求人が増えており、ソフトバンクやヤフー、日産自動車など大手も利用している。

営業は社内に3人だけだが、半期で330社が新規顧客となっている。

 

 

アルバイトの成功報酬型人材紹介「リブセンス」との違い

 

SEOを頼りにアルバイトは人材紹介にそもそも馴染まないが、SEO頼みで単に人を集めていたが、SEOはGoogleが常にアルゴリズムをアップデートしており、変更があったときにすぐに対応が難しい。

同社は正社員の中途で独自にデータ蓄積し、最適化するノウハウを作り上げてきた。

 

 

 

収益構造の分解

 

新規事業その1『webox』

2017年4月から事業開始。

社員の働く企業に対してエンゲージメントを定量的に把握し、多角的な分析をし、定点観測をすることで、組織を改善することができるサービスである。

具体的には、社員に対して、PC・スマートフォンで簡単なアンケートを月1回実施して、その事業部ごとにデータ分析をし、組織の課題をいち早く見つけることができ、人材の流出を防ぐことを目的としている。

EAP(従業員のメンタルヘルスの課題をカウンセリングで解決し、組織の活性化や生産性を高める就労環境支援サービス)の市場規模は224億円程度ある。

導入は1社員月額300円と安価なので、導入しやすく、継続率も高い。

すでに導入企業は累積で100社を超えてきた。ストックビジネスとして育成している。

 

 

新規事業その2 『yenta』

2015年12月に一部立ち上げ、2016年から本格的に事業を開始した。

Facebookのソーシャルデータをもとに、人工知能AI活用により、相性の良い10人の候補者を選び、毎日12時にレコメンドし、興味あるかないかをスワイプ操作で振り分ける。

お互いに興味ありとなった場合のみ、マッチングが成立し、実際に会うことができる。

このサービスにより、起業・営業・提携・出資・採用といったことができている。

ユーザー数17000人 

ユーザーの所属企業数5710社

累計マッチング数 44万件

ユーザーのマッチング率93.8%

基本は無料だが、有料プランもある。アクティブプラン月1000円で表示5倍にできるサービスを、プロフェッショナルプラン月5000円で自分で会いたい人のバッググラウンドなど指定できるサービスを提供している。

 

業績推移

労働集約型の事業ではないので、厳選して採用活動し、新卒が年3~4人入社する。

社員数はわずか37人で平均年齢28歳。

2016年11月に全社員に日本の上場企業として初めて特定譲渡制限付き株式を交付することを決定した。3年働く条件付きで3年平均100株を譲渡する。社員のモチベーションを向上させ、愛社精神を育て、全社員が経営への意識を持つことにつながると期待している。

新居社長は元々インテリジェンスで子会社の社長をしており、人材紹介業には造形が深い。

 

株価とバリュエーション

株価 6430円(10/18終値)

時価総額  252億円

有利子負債 なし

現預金等  14億円

EV/EBITDA(予想) 37倍

Growth (ROE*1-配当性向) 24%

フリーキャッシュフロー 6億円予想

配当利回り0%

2019年2月7日銘柄研究所

Posted by 矢野