4441 トビラシステムズ テクノロジーで特殊詐欺被害”0”(ゼロ)社会へ挑戦する by Ono

4441 トビラシステムズ

企業は社会の課題解決のために存在する。
ただ自社の利益を追求し、社会から”価値の搾取する”事業を行う企業には継続性がない。

企業の成長の源泉は、社会課題の解決であり、その企業の製品・サービスの提供はその課題解決の手段である。

社会課題の解決の取り組みがぶれなければ、その手段は変わっても成長を継続することが可能になる。

長期投資においては、短期的な業績の確認よりも、その製品・サービスを理解し、
どんな社会課題を解決しているのかを理解することが最も重要である

10年投資するならばその企業の過去10年を知らなければならない。
100年投資するならば、、、、
100年続く企業にはその企業独自の人・文化がある。
その人・文化が企業を継続させる。
長期継続性の信頼度を高めるうえでその企業の人・文化を理解することを重視したい。

ポイント
・”祖父を守るため”から始まった事業
・実績により信用構築
・競合なく3大キャリアに導入
・長期で成長が期待できる事業へ投資
・取得した電話番号データを活用したサービスの可能性を模索

読んでいただいている皆さんの故郷はどちらでしょうか。
ご両親は健在でしょうか。

私の実家は福島で、両親とも身体は弱っているものの健在です。
毎日楽しみはテレビだけ。
時代劇を見て、野球を見て日々を過ごしています。
私が今までやりたいようにやらせてもらえたのは両親のおかげ。
自営業でした。
父親は休みらしい休みもほとんどなく、ほとんど毎日のように働いていました。
突然身体の自由が利かなくなり、運転免許を卒業し、外出がめっきり減りました。

腰が軽い人で、常に動き回っていましたが、突然自由を奪われて楽しみは少しの庭いじりとテレビだけの生活を強いられました。
離れて暮らす親に対してなんの親孝行もできませんが、
”なんとか心穏やかな生活を過ごしてほしい”
ということを常に願っています。

引退後、生活に必要な最低限のお金があれば、穏やかに過ごすことはできるでしょう。
しかし、全国で多くの高齢者が思わぬ詐欺にあっている。
人を疑うことを知らない高齢者が被害にあっているのです。
自分は大丈夫と思っても自分の両親が大丈夫とは言い切れない。
”人のいい”自分の親だからこそ詐欺にあってしまうのではないかと心配になりますよね。

コロナ禍で帰省が儘ならず、心配は増すばかりですが、
心穏やかな生活を奪う”特殊詐欺”から守るのが同社のサービス。

被害にあってからでは遅い、予防策として同社のサービスは心強い見方になるはず。

同社は
テクノロジーを活用した事業で
特殊詐欺被害”0”(ゼロ)社会の実現を目指している。

<沿革: 祖父を守るために作られたシステム>

明田社長は1980年生まれと若い。
大学在学時からソフトウエア開発に携わり、エンジニアとしての経験を積んでいた。
そんな時、同氏の祖父が特殊詐欺にあってしまった。
一度詐欺被害にあうと電話番号がリスト化されて詐欺グループ内で共有されてしまい
詐欺の電話がひっきりなしにかかってくるようになった。
それを防ぐための製品を探したが、当時製品化されているものはなく、
自身で開発しようと考えた。
2011年6月、迷惑電話の社会問題解決を目的とした迷惑電話フィルタ「トビラフォン」を開発し、販売開始した。
当時も特殊詐欺に関する関心は高く、そこで完成させた端末が有効な製品だったため、新聞テレビなどのメディアで取り上げられた。
2012年1月、メディアで取り上げられたことをきっかけに、愛知県警と特殊詐欺電話の実証実験に関する覚書を締結、
警察と連携して実証実験を始めることになった。
開発した端末を各エリアで無償配布。10年かけて全国の警察と連携し、ネットワークを構築した。
2013年2月、警察と連携して実績を積み重ねてきたことが信頼性を高めることにつながり、
株式会社ウイルコム(現ソフトバンク株式会社)と迷惑電話データベース提供契約締結し、
PHSのオプションとして販売を開始。その後、ソフトバンクの子会社となり、さらに事業を拡大させた。

<会社概要>

社名の由来
企業理念
「私たちの生活 私たちの世界をよりよい未来につなぐトビラになる」
が名前の由来となっている。

<事業概要>

 セグメントは”迷惑情報フィルタ事業””その他事業”の2つ。
このレポートでは”迷惑情報フィルタ事業”に絞って解説する。
”その他事業”は過去に構築したシステムの運用保守、WEBサイトの制作などの事業であり、
現在は注力していないため。

迷惑情報フィルタ事業では以下の3つのサービスを提供する。
①モバイル向けフィルタサービス
②固定電話向けフィルタサービス
③ビジネスフォン向けフィルタサービス

〇サービス別売上構成比

同社の売上全体に占める売上構成比は(2019年度)はそれぞれ次の通り

①モバイル向けフィルタサービス:75.7%
②固定電話向けフィルタサービス:10.9%
③ビジネスフォン向けフィルタサービス:1.6%

残り11.9%はその他事業

〇サービス概要とビジネスモデル

①モバイル向けフィルタサービス

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの主要通信キャリアと提携し、
それぞれのユーザーのオプションパック契約に採用され、アプリ形式で”迷惑電話フィルタ”を提供している。
 オプションパックを契約した利用者はアプリをダウンロードすることで迷惑電話フィルタ機能を利用できるようになる。

・通信キャリア別のアプリ・サービス一覧

 

同社と通信キャリアの契約形態は次の3パターン
(どの通信キャリアとどの契約形態になっているかは非開示としている)

 

・キャリア別の売上

 キャリア別の売上は以下の通り。
フィルタリングサービスの売上だけではない点に注意が必要。
それぞれ、以下のような売上が含まれている。
ソフトバンク:受託開発
KDDI:固定電話向けサービス
ドコモ:アンドロイド版はマカフィー経由で販売しているため、マカフィー向けで計上
構成比は異なるが、フィルタリングだけの売上で見てもソフトバンクが最も多く、
KDDIとドコモが同程度の売上とのこと。

②固定電話(IP電話)向けフィルタサービス

 通信回線事業者のオプションパックとしてIP電話向けの迷惑情報フィルタサービスを提供。
現在はKDDIとKDDI系の中部テレコミュニケーションの2社に提供している。
 ホームゲートウェイにアプリケーションを内蔵し、着信電話番号をサーバーに登録された迷惑電話番号と照合し、
迷惑電話であればブロックする。

③ビジネスフォン向けフィルタサービス

 迷惑電話フィルタ「トビラフォンBiz」、個人のスマホを仕事に使える「トビラフォンCloud」を提供。
 トビラフォンにクラウドサーバーによる通話録音システムや電話番号等の管理システムを追加して提供している。
また、従業員の所有する携帯電話を会社の内線電話機として利用でき、
利便性の向上とコスト削減が可能になるトビラフォンCloudを提供している。

・トビラフォンBiz

・トビラフォンBizのビジネスモデル

・トビラフォン Cloud

 

・トビラフォンCloudのビジネスモデル

<特徴・強み>

〇蓄積した迷惑電話データベースと更新するアルゴリズム

 同社の最もユニークな強みは各サービスに共通する迷惑情報データベースにある。
警察からの提供データ、利用者の許可・拒否、統計データなど複数の情報源を基に長期にわたって、
迷惑電話情報をデータベース化してきた。ただ蓄積しただけでなく、適切に更新してきたことで信頼性の高いデータベースが構築された。
迷惑電話はデータベースに登録されてフィルタリングされると、利用されなくなり、解約される。
その電話番号は一定期間をおいて他の利用者に使いまわされることになるが、データベースに登録されたままだと、
その電話番号は利用できない可能性がある。同社は電話番号の利用状況を独自のアルゴリズムで評価し、
データベースから削除する。信頼性の高いデータベースを維持管理している。
同様のDBを構築するためには同程度の期間が必要であり、実質的に参入は困難といえよう。

 

〇高収益で安定したストック収益

 固定電話、携帯電話共に一度契約すれば、長期にわたって利用することになる。
オプションとして契約された場合、契約期間の間は継続的に課金される。
またビジネスフォン向けサービス以外は通信キャリア、通信回線事業者が販売促進、
料金回収などを実施することから広告費や営業面の人員確保を行う必要がなく、
固定費の低い高収益のビジネスモデルとなっている。

<市場環境>

〇顧客動向

 携帯電話の総契約者数は約1億8千万で毎年600万以上増えている。
個人利用とビジネス利用で一人当たり複数端末、複数回線の利用が増えていると考えられる。

〇年齢別スマートフォン保有率


スマートフォンの個人保有率を見ると、50代が72.7%、60代が44.6%、70代が18.8%。
各通信キャリアにおいて簡単スマホなどを供給することで高齢者のスマホ保有を促している。
高齢者の保有割合の増加が顕著となっている。

〇特殊詐欺について

 被害撲滅のための様々な活動により被害額は低下しているが、認知件数(人が被害を受けたもの)は高止まりしている。
年齢で見ると特殊詐欺被害者全体の83.7%が高齢者となっている。
高齢者のほうが人を信じてしまいやすい、自ら被害から避ける方法を知らないことにあるだろう。
これはテクノロジーで解決するしかない。

*警視庁令和元年における特殊詐欺認知・検挙状況等について(確定値版)
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2019.pdf

*特殊詐欺とは
犯人が電話やハガキ(封書)等で親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、
現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ、
犯人の口座に送金させる犯罪(現金等を脅し取る恐喝や隙を見てキャッシュカード等をすり替えて
盗み取る詐欺盗(窃盗)を含む。)のことです。(警視庁WEBサイトより)
特に高齢者は詐欺に合うきっかけは電話が多いと考えられる。

今後ますます高齢者人口の割合が増えていく中で特殊詐欺等の被害防止は喫緊の課題と捉え、
令和元年6月 25 日に開催された犯罪対策閣僚会議において、特殊詐欺等から高齢者を守るための総合対策として
「オレオレ詐欺等対策プラン」が決定された。これに基づき、警察では、
幅広い世代に対して高い発信力を有する著名な方々により結成された
「ストップ・オレオレ詐欺 47~家族の絆作戦~」プロジェクトチーム(略称:SOS47)と共に
広報啓発活動を展開するなどの被害防止対策、犯行ツール対策、効果的な取締り等を推進している。

<業績推移>

〇2020年10月期 第3四半期実績

(単位:百万円)
売上高 902(前年同期比 +24.9%)
営業利益 376(同 +18.1%)
純利益 241(同 +16.1%)

〇通期計画比進捗率

第3四半期累計業績
売上高 73.5%
営業利益 80.4%
純利益 78.7%
利益の進捗率が高いが利益の上振れ分は投資に配分する方針

事業別売上高
迷惑情報フィルタ 71.3%
その他事業 84.5%

<成長戦略>

 特殊詐欺は年々巧妙になり全国で絶えず発生している。他社にはない迷惑電話フィルタサービスに対する社会からの期待、
需要は一層高まると考える。また、新たな政権の政策として”携帯電話料金の値下げ”が上げられた。
各キャリアともサービス充実、通信料金以外のサービスによる課金を検討することになるだろう。

 サービス毎に今後の成長につながるポイントが複数ある。
継続的に同社から出るリリースに注目しておきたい。

①モバイル向けフィルタサービス

 ・潜在ユーザー層の契約増
  オプションパック契約者において潜在ユーザー層が3,400万以上あり、
  徐々に増加することが期待される。
 ・ショートメール排除機能のドコモ向け採用による単価アップ
  KDDIとSBでショートメールのフィルタリング機能が採用されている。
  フィッシング詐欺にショートメールを利用する例が多い。
  同社はKDDIとソフトバンクの契約者に届くショートメールを全て監視対象としており、
  文面パターン、URLパターンなどを統計的に判断してリアルタイムにショートメールを排除している。
  短時間で精度の高いフィルタリングを実現している。ドコモに採用されることで単価アップにつながる。
  *架空請求詐欺の90%はSMS(ショートメッセージサービス)経由
  かつてはEメールで虚偽の請求が届くことが多かった架空請求詐欺だが、
  現在はSMSを利用した被害が多発している。KDDIが確認できている範囲では、
  スマホを使った架空請求詐欺の90%はSMSを通じて実行されているという。

 ・楽天モバイル向けの提携開始
  楽天が新たな通信キャリアとして参入し、現在無料でサービスを開始している。
無料サービス期間が終了後はサービス充実の一つとして導入されることが期待できる
(現在は既存事業に注力し、同社への営業は進めていないとのこと)

②固定電話向けフィルタサービス

 ホームゲートウェイ、迷惑電話フィルタ「トビラフォン」
 現在、固定電話契約者数が5400万弱、アンケートによれば有料でも迷惑電話対策をしたい層は30%程度(1610万)いる。
同社のアプリケーション利用者数は月間34万にとどまり、成長余地は大きい。

 現在の契約している通信事業社は2社のみ(KDDIと中部テレコミュニケーション)だが、
契約会社数を増やすべく営業に注力している。
 また、最も期待するのは固定電話の回線が圧倒的に多いNTT向け。NTTの固定回線は5400万回線ある。
昨今の特殊詐欺の発生が続く状況からNTTも対策に動かざるを得なくなると考えられる。
サービス提供開始には通信回線の変更が必要であり、一気に普及することは難しいが、
中長期的に成長ポテンシャルが大きい。

③ビジネスフォン向けフィルタサービス

 迷惑電話フィルタ「トビラフォンBiz」 「トビラフォンCloud」
他のサービスと違い、自社でマーケティングを行う。業務効率化のツールとしてサービスの提供先はもちろんだが、
電話番号のデータベースも活用して様々な企業との提携の可能性が考えられる。
ポテンシャルは未知数であり、提携先次第では展開が早い可能性もある。

<バリュエーション>

時価総額 219億円
株価 2,094円
会社予想EPS 30.03円
会社予想PER 69.7倍
一株当たり配当金 10.6円
配当利回り 0.5%
配当性向 33.5%

<財務指標>

                     

成長株投資, 銘柄研究所

Posted by ono