3928 マイネット 構造改革終了 原点回帰で反転攻勢へ(3/10リリース分 update) by Ono
*2020年3月10日 同社からリリースがあり、内容を反映
2019 年 12 月期における特別損失の追加計上および2020 年 12 月期連結業績予想の上方修正に関するお知らせ
過去の開示資料の訂正だが、ネガティブなものではない。
訂正したのは”のれんの処理について”
リリースによれば、
会計監査人によって2月14日公表の決算短信は確認されており、
3月2日にも連結計算書類に適正意見を述べる監査報告書を受領している。
その後、3月4日に会計監査人である監査法人内の品質管理部門から指摘があり、協議を行った結果、監査法人の意見を受け入れた。
とのこと。
監査法人内でのチェックが前後してしまっている理由は定かではないが、
本来であればチェックも行ったうえで、監査報告書が渡されるものであろうと考える。
〇不透明要因分がなくなったことはポジティブ
この開示は”追加減損の可能性”という今期の業績の不透明要因が縮小された点ではポジティブに捉えることができよう。
修正の前後で同社ののれんの金額は
修正前:498百万円
修正後:64百万円
となった。
その結果、追加の減損リスクが低下。
2020年12月期の会社計画は
営業利益が上方修正されたことに加え、経常利益及び、当期純利益まで開示された。
2020年12月期会社計画(単位:百万円)
売上高 11,000
営業利益 750
経常利益 700
当期純利益 500
以上、リリースについてのコメントはここまで。
以下のレポートは、数値面をリリースに合わせて修正済み。
<ゲーム業界について>
〇これまでのゲーム業界
一発当てれば膨大な利益につながる。
作ってリリースし、当たらなければ短期で終了されてしまうゲーム。
物質としては残らないため、意識されにくいが
開発者が精魂込めて作ったゲームである。
収益性だけでお蔵入りされてしまうのはエンジニアの能力の浪費になりはしないか。
作っては捨て 作っては捨て・・・当たるまで繰り返す。
あのゲームが当たったから似たようなゲームを作ろう・・・
これでは質の良いゲームが生まれるとは到底思えない。
ちょっと言い過ぎかもしれないが、新しいゲームが頻繁に生まれていることに対して
こんな印象を持っていた。
そして、そんな中でゲーム業界の中プレイヤー(関わる人たち)はどうかんがえているのだろうか、と。
〇開発エンジニア・クリエイターの思い
会社が収益性を重視するのに対して、エンジニア、クリエイターは違った考えなのではないか
多くの人たちに楽しんでもらいたいという思いで深夜まで開発に携わり、
魂を込めたゲームをリリースする。
そんなゲームが思うように売り上げが伸びず、短期で終了することになったとき、
エンジニアやクリエイターはどんな思いだろうか。
〇ユーザーの思い
ソーシャルゲームの普及でユーザーにとってゲームの世界は変わった。
パッケージゲームでは一人の世界だったものが、ソーシャルゲームは他のユーザーと空間を共有する。
ユーザーはキャラクターを育成し、同じゲームのユーザーとのコミュニケーションを楽しむゲーム空間に創り出す。
そのゲームが運営企業の都合で短期終了するということはその空間を奪ってしまうことである。
〇日本のゲーム文化
海外からも高い評価を受ける日本のゲーム文化。
そこにはゲームクリエイターの愛があるから。
ユーザーはゲームのキャラクターに思いをはせ、ゲーム空間に自分の生活の一部を置く。
ユーザーとクリエイターの思いがつながって今の日本のゲーム文化が生まれた。
〇その中で“マイネット”が提供する価値とは
玉石混交のゲームの中で利益を生み出すゲームを仕入れて自社運営によるバリューアップを実施。
運営に注力し、開発会社が短期間で終了することを想定していたゲームの運営期間を延長する。
エンジニアにとっては同社に販売または運営が移管されれば自分自身がかかわることはできないものの
自分が開発に携わったゲームが使い続けられること、その空間が存在し続けることは仕事のやりがいにつながるだろう。
ユーザーは自分の育て上げた空間が維持され、継続して楽しむことができる。
“ゲームに新たな命を吹き込むことでゲームの空間を長期間維持する”
ことはゲーム業界に関わる全てのプレイヤー(開発者も含めたすべての関係者)に価値を提供する。
同社の事業の価値はここにあると感じる。
3928 マイネット
<企業理念>
“会いたいときに会いたい人に会える社会の実現”
私たちはインターネットによる人と人とのつながりの進化を通じて「会いたいときに会いたい人に会える社会」を実現します。
・コーポレートアイデンティティ
創業コンセプトとして「100年成長する会社」を掲げ、これを表現するサステイナビリティー(持続可能性)の象徴として円環を採用しています。また、正三角形が集合してできた円環は「企業家の土台たること」を表現しています。
マイネットの企業理念である「会いたいときに会いたい人に会える社会の実現」の中に使われている「会」の文字の部首である「ひとがしら()」 を正三角形で表しています。この「人」が集まり輪になることで、理念をロゴが体現しています。
<沿革>
2006年6月 株式会社マイネット・ジャパン (現マイネット)を設立
2006年7月 国内初のソーシャルニュースサイト 「newsing(ニューシング)」リリース
2007年1月 携帯サイト作成・集客ASPサービス 「katy(ケイティ)」リリース
2007年6月 携帯専用デコレーションブログサービス 「デコブロ」リリース
2009年2月 お店情報ポータルサイト 「どこでも!ケイティ」リリース
2011年4月 ソーシャルミートアップサービス 「たべにこ!」リリース
2012年9月 スマートフォンゲーム事業に参入 「ファルキューレの紋章」リリース
2014年5月 ゲームサービス事業を開始 協業にて1タイトルを運営
2015年12月 東京証券取引所マザーズ上場
2016年11月 クルーズ株式会社のゲーム事業の一部を買収
2017年12月 東京証券取引所市場第一部に市場変更
<上原仁社長>
1998年 NTTに入社してインターネット事業開発に従事。
2006年7月 株式会社マイネット・ジャパン(現マイネット)を創業し同社代表に就任。自社のモバイルCRM事業を国内3万店舗まで育成した後にヤフーへ事業売却。現在はゲームタイトルの移管・再設計を手がけるゲームサービス事業のリーディングカンパニーとして業界を牽引している。
*同社WEBサイトより
<事業概要>
・何をしている会社か
“開発ではなく運営に注力し長期提供をはかる「ゲームサービス業」”
他社が開発したゲームを買い取り、または運営移管をうけて自社運営によるバリューアップを実施。
開発会社が短期間で終了することを想定していたゲームの運営期間の延長を目指す。
<強み>
・運営タイトル数が国内スマートフォン業界で圧倒的ナンバーワン
2019年12月末 36タイトル
・データを駆使しゲームをバリューアップするノウハウ
買収や協業により仕入れたゲームに累計60タイトルの運営で蓄積してきたデータを活用したバリューアップノウハウを駆使し、スマート運営を行うことで、ゲームの長期運営を実現する
<収益モデル>
長期運営が実現できた場合の収益モデルは以下のようなイメージとなる。
約24カ月で償却後、継続して運営する期間は償却負担がなくなり、運営コストだけとなる。
運営期間を継続するだけ利益が積みあがる。
<業績>
〇通期業績推移
*2020/12は会社計画
順調に事業を拡大、事業買収もあり、2017年12月期には売上高100億円を達成。
一方で不正アクセスの発生、得意分野以外へも拡大させたことにより2期連続最終赤字につながった。
〇四半期業績推移
2019年に入り四半期ごとの売上総利益率は40%を下回って推移、成長を志向し事業を拡大する中で、
必要な人材を増やし、固定費が大きくなりすぎた。
得意分野以外への“チャレンジ”が高コストの要因となり、赤字の原因となった。
〇2期連続最終赤字 それぞれ要因は異なる
2018年12月期、2019年12月期と2期連続最終赤字となった。
それぞれ要因は以下の通り。
・2018年12月期 :不正アクセスの発生
同社サーバーへの不正アクセスが発生、一時サービス停止、減損損失などを計上
最終利益ベースで31.4億円の影響が発生し通期で最終赤字。
インターネットでサービスを提供する企業であればサービス停止があってはならないが、
100%防ぐことは難しい。発生後の対応が重要となる。
対策:社長直轄のプロジェクトを発足し、再発防止及び抜本的なセキュリティ対策を実施した。
また、経営責任の明確化として代表取締役社長 上原氏の役員報酬を1年間無報酬
*大企業で比較にならないほどの損害を発生させておきながら、自らここまで明確に経営責任をとることができた社長がどれだけいただろうか。
・2019年12月期 : 得意分野以外に拡大した事業で失敗
買収したゲームの減損と人員最適化に伴う再就職支援金を計上。
同社の強みは、データを駆使し、スマート運営を行うことでゲームの運営期間を延長すること。
以下の3つの形態のチャレンジタイトル11本はその強みからは外れるものであった。
事業拡大を目指し、2018年後半から開始したもの。
新たな事業へのチャレンジは評価したい。しかし、短期間に11本というのは
“拡張を意識しすぎたこと”
“過去の成功について過信があった”
のではないか。
それぞれのチャレンジとその結果
①再設計型
赤字タイトルを戻して再生する
→再生確度を高めることができず
②グローバルチャレンジ
他メーカーが開発・運営しているタイトルの海外版を開発運営
→海外ローンチしたが失敗
②グロスアップ
コストをかけて売り上げを上げていく
新機能開発等によってグロス逓減率を向上させる
→成果が出たが総じてコストが膨らむ結果に
以上の失敗を認識し、2019年12月期 第2四半期に下方修正を発表した。
<事業環境>
ゲーム業界の成長は踊り場、成熟期。変化する事業環境は同社にとって追い風
〇成長は踊り場
出所:市場調査会社newzooレポートより
これまでモバイルゲームを中心に成長を続けてきた日本のゲーム市場は2017年をピークに家庭用ゲーム、モバイルゲームともに減少に転じ、市場全体の成長はマイナスとなった。
〇戦略の転換を迫られるゲーム業界
成熟期にある市場において新しくヒットするゲームが出にくい状況にあり、ゲームメーカーは大手、中小ともに戦略の転換を迫られる。
・大手は開発本数を減らし大ヒットを目指すも、ROIが想定を下回ればたとえ利益が出ていても売りに出し、次の開発に着手する。
・中小はヒットを出すことが難しく、継続が困難となり撤退の判断をする。
〇両社に共通するのは開発の効率化と既存ゲームのキャッシュ化
効率性を重視し、運営はゲームサービス企業に運営を移管。移管によって運営に充てていた人員を新規タイトル開発に再配置することができる。また、利益が出ていたとしてもゲームタイトルを移管することで、ゲームメーカーは将来得られるキャッシュを先取りでき、短期間で効率よくキャッシュを創出することが可能となる。
〇ゲームサービス企業の同社にとって戦略転換が追い風
ゲームメーカーの戦略転換により利益が出ているゲームも売却候補となり、同社にとっては良い仕入れがしやすい環境である。
〇ユーザーを送客する
使い始めると継続して使い続ける傾向にあるのがソーシャルゲームの特徴
新しいゲームで大ヒットするゲームが出にくい要因の一つでもあろう。
一方でいろいろなゲームを楽しみながら好きなゲームを探すユーザーも一定数いる。
そんなユーザーのために同社は相互送客ネットワーク
「CroPro(クロプロ)」
を提供している。
相性の良いゲーム間で相互送客を行うことで、ユーザーが本当に遊びたいゲームに出会える機会を提供する仕組みを作っている。
参加企業は無作為に集客コストをかけることなく、自社ゲームと親和性の高いユーザーの集客を可能とし、
ユーザーは自分の嗜好に合ったゲームを手軽に見つけることが可能となる。
<成長シナリオ>
構造改革を終了、反転攻勢へ
強みを生かす既存ビジネスに集中し筋肉質に
〇構造改革を終了し反転攻勢へ
2019年12月期第2四半期の発表時に公表したリカバリープランは、下半期で構造改革を完了。
2020年12月期は反転攻勢へ
リカバリープランの公表とその結果
・リカバリープランを公表
前述の通り、得意分野以外に拡大したために業績が悪化したことから
2019年12月期第2四半期業績発表時に
「転換点 リカバリープラン」
を公表
戦略の転換点であるととらえ、失敗を繰り返すことのないように施策をうつと宣言
規模成長の追求から持続的利益体質の構築に戦略を転換し、
不得意分野の事業を終了または縮小し、得意な事業分野に集中する。
また、固定費削減のため人員の適正化を実施
・リカバリープランの実施結果
2019年12月期通期でリカバリープランの構造改革は完了
固定費の圧縮は超過達成
リカバリープランにおける固定費の削減率は
当初計画23% → 実行後29%
当初計画 23%
↓
実行後 29%
・12月から単月黒字化
コスト管理手法を刷新した成果と旧gloops2タイトルの寄与で12月に単月黒字化を達成。
営業黒字はさらに拡大する見通し。
〇強みを生かす既存ビジネスに集中し筋肉質に
タイトル数を追わず同社の得意とする分野で確実に利益化できるものに集中して6本獲得する。
〇クラウドゲームでメインプレイヤーになる
クラウドゲーミングは今後3年~5年先のゲームのメインストリームになると考えている。
そこでのメインプレイヤーになるために動いている。
経営陣を含め携わっており、起きてくる新しいフォーマット(新しいゲームの形)を発明しに行く。
〇事業をけん引するキーマンは変わらず残る
リカバリープランにおいて人員の最適配置を実施。
気になるのは、その後の事業をけん引するキーマン(マネジメント、エンジニア等)の離脱がないか
ということだが、既存事業及びクラウドゲーム、AI事業に携わる重要なキーマンについては人員最適化対象外とし、
離脱はないとのこと。
<同社に対する見方>
リカバリープランプランの実行を完了し、反転攻勢開始を宣言した。
信頼できるかどうかの判断が求められる。
社長の言葉を聞いてください。
〇説明会の動画
直近の決算説明会
・2019年12月期 通期及び第4四半期決算説明会
転換点・リカバリープラン公表時
・2019年12月 期第2四半期 決算説明会
社長の言葉から悔しい思いが伝わってくる。
2019年12月期第2四半期業績発表時にリカバリープランを公表し、着実に実施してきた。
現時点では有言実行を評価したい。
ここから再度成長路線に戻すことを信じられるかは投資家各自が考えることである。
2期連続の最終赤字で投資家の信頼を回復するのは簡単ではない
まずは会社計画の営業利益4億円を達成するのが大前提となる。
それでも市場の評価は懐疑的なままだろう。
継続して着実に数字を達成し、成長することが求められる。
前述の通り、この2年で上原社長の責任感、リーダーシップを確認することができる機会が2度あった。
・2018年12月期の不正アクセスの損失では経営責任を明確にするために、1年間の役員報酬を無償とした。
・2019年のリカバリープラン作成も、深手を負う前に迅速に決断し、実行に移した。
企業が苦しい時に求められるのはトップのリーダーシップである。
また、苦しい時を乗り越えたリーダーこそ、企業を長期で成長させることができると考えている。
長期投資のよいタイミングと判断する。
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