3040 ソリトンシステムズ 黒子だが先進のセキュリティ企業 by Ono 更新20171204

2018年12月27日

昔々、私がSEだったころ、同社のソフトウェアを利用していたことがある。

WindowsのアプリをサーバーとTCPIPで接続するためのソフト

SolitonTCP

ネットワーク上のデータ送信を手助けするソフトで、私はシステム環境構築側にいたので、同社のソフトウェアの導入を度々していたが、利用者はまったく意識することがないソフトウエアだ。黒子的存在である。

今回、ネットワーク関連企業のイメージをもって同社を取材したが、まったく違っていた。セキュリティ関連の先進的企業に変身していた。しかし、黒子的存在であることは変わらないが企業のセキュリティを強化する重要な存在だ。

 

社長の鎌田氏が東工大博士からインテルを経て同社を立ち上げ。

77歳の誕生日を迎えた社長のもと、現在も成長を続けており、新たな成長事業も手掛けている。

東証一部に指定された際の社長インタビューが動画になっています。

主な事業内容も確認できます。

http://www.soliton.co.jp/ir/jpxinterview.html

(このインタビュアー ”トリトンシステム”って言ってる、2回も。会社名間違っちゃダメでしょw)

 

ネットワーク構築事業を手掛ける中でセキュリティ技術の必要性に気づき、他社に先駆けてネットワークセキュリティ関連のビジネスをスタート。現在の圧倒的なシェアに結び付いている。

セキュリティ分野で利益率の高いキャッシュカウビジネスと新たな成長ビジネスで成長が続く。

〇2つの企業向け認証サービスが利益率の高いキャッシュカウビジネス

セキュリティ関連ビジネスはスイッチングコストが高い特徴がある。

企業は新しいセキュリティ関連のソフトウエア・機器を導入する際、慎重に検討し、時間をかけて導入する。一度採用すると他社製に切り替えることはまれである。乗り換えのために検討、テストと時間をかけることはしない

 

1.まずPC利用者を2要素認証により本人認証するソリューション”SmartOn”

http://www.soliton.co.jp/products/category/product/pc-security/smarton/

 2要素認証とは、PCの利用時に

 ①felicaなどカードをかざす+②ID Password の2つの組み合わせで本人認証をするもの

 最近はカードをかざすのではなく顔認証も増えている模様。

 なりすましの回避やPCの紛失・盗難にあった場合のセキュリティを強化する。

 1996年からサービス提供を開始し、高いシェアを獲得。国内にはほぼ競合がおらず、依然成長が続いている。

 

2.もう一つは正規ユーザーからの接続のみ可能とするネットワークシステムNetAttestEps”など
事前に証明書をインポートしたPCのみ接続を許可し、不正ユーザーからの接続を排除する“

http://www.soliton.co.jp/products/category/product/network/netattest_eps/

 2004年ごろから参入。3G回線の普及により回線速度が高まり、営業マンが社外からアクセスするビジネスが始まったころから、他社に先駆けてスタート。

1台100万円程度から導入が可能で、導入から管理者の管理、証明書の発行まで容易に移行できる。

セキュリティはソフトウェアで実現するため、高性能なサーバーを必要とせず、専用のハードウエアとして最低限の機器構成でよい。ハードディスクレスで壊れにくい設計となっている。

また、導入とともに保守契約を交わし、常時ソフトウェアをアップデート。契約更新時に新型のハードウエアを導入。継続率はほぼ100%。

セキュリティソフトウェアはその機能に対する満足度が高ければ乗り換えはほぼない

依然、導入数は伸びており年率二桁程度で成長している模様。

工場などでIPADを活用した設計、工程管理なども新しい事例としてはあるようだ。

 

2つ共に、ハードではなく、ソフトウェアで高いセキュリティを実現しているため、利益率が極めて高い。

 

販売はほぼ代理店経由で行う。CTC、NRIなど大手SI企業や、富士通、NEC、日立などが代理店として販売している。海外展開を考えると、海外大手(CISCO、HP等)がシェアをがっちり握っており、海外展開は難しい。国内での成長にとどまると考えたほうがよさそうだが、依然成長が続いており、高収益安定成長が期待できる

*認証:NetAttestEPS
国内シェアトップの認証アプライアンス
端末・利用者の認証を強化する
 CTC、富士通ネットワーク、日立システムズ
 大手が販売
・様々な環境
 リモートアクセス(VPN)、ワイヤレスアクセス(WiFi)、有線LANアクセス
・様々な認証方式に対応
 ID/パスワードなどの単純な認証から、電子認証やワンタイムパスワードを用いた高度な認証までオールインワン
 電子証明書管理の簡素化(UIの改善)
 二要素認証(ID/password+カードやトークン)

・ほぼすべての種類のデバイスに対応
 PC、スマホ、タブレット

 

〇成長が期待できる注目製品は“働き方改革”を実現するソフトウェアたち

キャッシュカウビジネスを持ちながら、新たな製品・サービスで成長を目指す。

注目はモバイルセキュリティとサイバーセキュリティ。

 

まず、モバイルセキュリティ対策のサービス

MobiControl , SecureBrowser , ClearDeck といった製品群

 政府主導で“働き方改革”が叫ばれる中で、当然懸念されるのは外部から社内情報にアクセスする際のセキュリティ問題。前述のNetAttestEpsなどでも可能な部分もあるが、個人所有のPCを使ったモバイル接続におけるセキュリティサービスも提供している。

個人PCにデータが残らないもの、データを残してもセキュアな環境を維持するものなど企業の利用環境に併せたサービスを可能としている。

足元で20%以上の成長を果たしており、リモートワークが拡大する中で一層活用が進むことが期待できそうだ。

 

もう一つはサイバーセキュリティ対策のサービス

InfroTraceなど

 PCのセキュリティというとウィルスがOS上に常駐して情報を盗むといったことを想像すると思うが、この“アプリレベル”でのセキュリティ分野はすでにいくつかのアンチウイルスソフトが普及し、市場は競争激化している。同社のInfoTraceはファイヤウォールを乗り越えてアクセスしてくるサイバー攻撃を防御、検知、さらにカーネルレベルで何が行われたかの詳細なログを記録し、管理者に提供する。アタックがあった場合にシステム管理者がすぐに対応できるようなサービスである。

米国で行われたサイバーセキュリティイベント

blackhat に2年連続で出展

世界展開に向けて注力している。

2016年12月ごろから始めたもので実績はこれからだが、国内に競合他社はおらず、すでに大手企業に導入があり、今後一層成長が期待できそうなサービスである。

 

〇ちょっと気になる製品・ビジネス

  公衆モバイル回線(3G/4G/LTE)で映像を送ることができる製品も注目だ。ソフトウェアで画像圧縮し、複数回線(6回線)を使って映像データを飛ばす。高精細な画像をよりリアルタイムで送ることを可能としている。最初の製品はテレビ撮影用のハンディカメラに取り付けるものだったが、より小型化した新製品を開発した。世界最小・最軽量の製品“Smart-telecaster Zao-S”(こちらは3回線利用)。ドローンにも搭載が可能として注目されるが、小型の高精細カメラがどこでも使えるという特徴は一層活用の幅を広げるだろう。どんな使い方がひろがるか注目したい。

 

      ↓ リアルタイム中継を小型化

圧縮処理(H265 最新の圧縮技術)をソフトウェアで実現しているため、発熱の問題もなく、

消費電力を抑えることが可能となり、長時間の連続利用を実現している。

重量約350g 内臓バッテリーで60分稼働

(外部バッテリー併用可能 専用バッテリーで約180分稼働)

 

〇社員の頑張りに報いる

足元の業績は好調だ。製品売上とともに保守契約を結び、保守契約の売り上げは契約締結時に、一括で計上するため、

前受け金が30億円から37億円に増えていることから契約が順調に伸びていることが確認できる。

“第3四半期で営業利益率の進捗率94%ですね。上方修正はしないのですか?“

と質問したところ、

社員が頑張ったおかげだから、上方修正をするよりも、社員への還元を優先したい

とのこと。

セキュリティの分野でも特に他社に先駆けたサービスを提供している同社にとって、

人材こそ競争の源泉だろう。

高い能力を持った社員に対して実績を評価しなければ社員が他社に引き抜かれるリスクもあるだろう。

社員を大事にする企業。

この企業は伸びる!

 

2018年12月27日銘柄研究所

Posted by ono