調査は仮説ー検証の繰り返し 決算短信の読み方 by Ono
投資対象企業の選別・調査を行う際、大切なのは
仮説、検証の繰り返し
企業調査をするとき
様々なきっかけでその企業に出会います。
・自分のお気に入りの服
・よく行く飲食店
・会社で使っているシステム
などなど。
ちょっと調べてみようと思ったとき
企業のWEBサイトのIRページで開示資料を見ますね。
まず、
決算説明会資料から見ていませんか。
もちろん、説明会資料も有益な情報ではありますが
まず、決算短信からみることをお勧めします。
いい意味でも悪い意味でも
説明会資料は会社の恣意性が入った内容・構成
になっています。
まず決算短信をさっとでも読んで見ましょう
無味乾燥な数値情報が中心ですが、そこから企業について
ある程度の数字情報を把握してから説明会資料を見る。
そこで、まず決算短信をさっと読むための方法を解説してみます。
財務諸表の基本的な読み方がわかることが前提となる部分があります。
記述内容が何を意味するのかは各自調べてみてください。
〇たった数ページからでも豊富な情報が得られる
今回解説しているのは
決算短信の1ページ+セグメント情報
ページ数でたった2~3ページ
ですが、
財務の現状と
実績3期+予想
の数字があり、得られる情報は豊富です。
以下のポイントを3分程度でとらえるようになりましょう。
〇調査は仮説→検証 仮説→検証のくりかえり
調査は
仮説→検証、仮説→検証
の繰り返しです。
仮説を立てずに、調査をすると
ポイントが定まらず、調査に時間がかかることになります。
単純な例ですが、
自分がとても気に入った飲食店があり、
いつもお客さんがいっぱいで混雑している
儲かってそうだ
と考えたとします。(仮説)
その企業を調べ、
・店舗の売り上げのどの程度を占めるのか
・利益率はどうか
・そもそもどうやって稼いでいるのか(直営かFCかなど)
などの調査を行います。
今回ご紹介するのは調査開始の
一番最初の仮設から検証の入り口の部分です。
この数ページに収められた豊富な情報から仮説を作ることから
始めてみることを提案いたします。
では始めましょう。
〇会計基準
企業が採用している会計基準を確認
日本基準
IFRS(国際会計基準)
米国会計基準
見逃していませんか?
つい、数字に目が行ってしまうと思いますが
会計基準が違うと、会計処理が違います。
つまり
基準が違うと財務諸表の捉え方が違うということ。
例えば
日本基準の売上高営業利益率10%
と
IFRSの売上高営業利益率10%
を単純に”同じ”ということはできないのです。
主に海外でも事業展開している企業において
IFRS、米国会計基準を導入している企業が多い。
採用している会計基準を踏まえて財務諸表を見る必要があります。
〇売上高
成長性への仮説
売上の成長がバリュエーションに影響を与える重要ポイント。
2期の数字が書かれていますが
前期比の増減率が2期分書かれているので
3期の数字を把握できるということです。
3期の数字を見ることで
成長の傾向を見ることができます。
もちろん、その後、過去の長期データを見たうえで、
現在の3期の数字をとらえる必要があります。
前期(最新)の増収率 > 前々期の増収率
であれば、成長率が高まった可能性あり
逆に
前期(最新)の増収率 < 前々期の増収率
であれば 成長率鈍化 の可能性あり
〇営業利益・売上高営業利益率
事業環境変化への仮説
収益性と売上内容の変化の有無
上記の売上高と同様
3期の動きを見ることができます。
増益率の変化も大事ですが
増収率との比較でみてください。
増収率 < 増益率
例えば
増収率 5% < 増益率 15%
であれば、
利益率の高い商品の売り上げが高まっている可能性あり
売上総利益率の変化なのか販管費の変化を確認する。
〇営業利益と経常利益の金額比較
大きく違うのであれば
営業外損益に何かあったのではないか
〇当期純利益
特損や過去業績についての仮説
法人税の実効税率 30%ですが調整額等が入ること考えると
として、経常利益の60~70%程度の額になっているか。
大きく違うのであれば
特別損益、過去の繰越欠損金による税額控除
などがあったのではないか
〇自己資本比率
ビジネスモデルの仮説
50%程度を基準として
高いか低いかを把握
営業利益率と併せてチェック
自己資本比率が低ければ、
・低収益な事業で続いている
・レバレッジで稼ぐビジネス
自己資本比率が高ければ
・長期的に安定的なビジネス
・多額のキャッシュを必要としないビジネス
などの可能性あり
〇キャッシュフロー
フリーキャッシュフローが黒字か赤字かほぼフラットかで
企業の事業ステージの仮説
黒字 営業キャッシュフロー - 投資キャッシュフロー > 0
事業は回収期かも
赤字 営業キャッシュフロー - 投資キャッシュフロー < 0
事業は投資期かも
フラット 全く同額ということはないが
5%も違わなければ、ほぼ、営業キャッシュフローの範囲内で投資をして
事業は安定している。
〇業績予想
実績の売上高、営業利益の推移と比較から終わった期からの現在の期に対する会社の見通しの仮説
表面的な数字で判断する投資家が市場の大半であるため
多くの投資家は前期までの伸びの延長で読み取りがちです。
例えば
実績+10% →予想+10%以上
という見方が多い。
成長鈍化か、前期または今期に特殊要因があるのか
〇配当 配当性向
配当に対する考え方、株主還元に対する意識の仮説
説明会資料等に書かれていることが多いですが、読むまでもなく短信からある程度仮説を立てることができます。
2期実績+予想配当と配当性向の数値から
・増配している=業績次第で増配も期待か
・同水準の配当性向が続いている=配当性向が基準か
〇セグメント
セグメントがわかれている企業であれば、
短信の中にセグメント毎の業績が記述されています。
以上のような業績の数字を把握してから
セグメント情報をみて、以下のようなチェックができれば
おおよその仮説が立てられることでしょう。
利益率の高いセグメント
成長しているセグメント
を把握。
成長しているセグメントは利益率が低くても気にしない。
二桁成長していたら調査対象です。
セグメントが投資期にあるため利益率が低い可能性があります。
限界利益率が高ければ、有望な調査対象です。
限界利益率が高いかどうかはそのビジネスを理解する必要があります。
まだ利益率が低いときに内容を理解できるかどうかが
他の投資家との差別化ポイントかもしれません。
〇たくさん繰り返せば必ずできるようになる
上記の内容を読むだけで5分~10分かかったことでしょう。
はら落ちするためには何度も読む必要があります。
さらに実際の決算短信を見て企業の現状を想像ができるようになれば
かなり分析力が高まっているはず。
繰り返すことで
”あの企業と似ているかな”
という仮説のバリュエーションが増えます。
仮説のバリュエーションが増えると企業を見る目が変わってくる。
繰り返しが力になるのは間違いない!
まず100社を目標に
ぜひ繰り返しトライしてください。
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