ミライの授業 ー 投資家 瀧本哲史さんを忍んで by yamamoto
投資家の瀧本哲史さんがお亡くなりになりました。47才の若さでした。瀧本先生には大変お世話になりました。
出会いは、先生の弟子たちがきっかけでした。瀧本先生は、東大、京大にて瀧本ゼミの活動を行っていらっしゃいました。五年ほど前に私はゲストで招かれて、瀧本ゼミの東西対抗戦へと伺ったのが最初です。京大と東大の学生たちが投資対象のプレゼンをするのですが、勝ち負けを判定する審査員として招かれ、その前と前の年に東大が勝っていることを知って、私は京大にも勝ってもらいたいと思い、少しやや京大よりにバイアスをかけて審査をしてしまったのですが、運よく、私の魂胆はバレませんでした。(ちょっとした差配で勝負は「引き分け」になりました)
瀧本さんは、私の話を聞くと、いつも、上場株と未上場株との違いはあるが、投資手法が瀧本さんと私とでは同じやり方なのでびっくりするとおっしゃってくれたのです。
五年前の東大のエースはS君でしたが、S君が私の勤めるヘッジファンドへインターンにいらっしゃって、実は、山本さん、瀧本ゼミでは弊著「インベストメント」を教科書として使っているのですと教えてくれたのです。それには、とてもびっくりしたのです。実は、こっそりと瀧本さんと思しき方が、アマゾンの書評で2002年にコメントをしています。もう、随分、昔のことです。
2002年1月4日
著者と同じハイテク関連の投資(私は未公開投資)を行う私から強く推薦したい。対象としては個人及び機関投資家・アナリスト・ベンチャーキャピタリストである。この本の特徴としては2点ある。一つ目は「株式投資の勝利の方程式」である。これは時価総額と利益及び成長性に関してどのように評価していくかである。未公開株式投資でも共通しているフレームワークであり、企業の株価に影響する要素を因数分解(市場×シェア×価格×利益率×・・・)し、その各ポイントに対してどのように評価していくかという基本が書かれている。 2つ目としては、調査方法が具体的に記述してある点である。私は経営コンサルティング会社にて業界調査等を深くやってきたが、同様のアプローチをとっている。手軽に電話でインタビューし、人の意見でなく、ファクトに基づいて自分で投資判断をする基本となるだろう。特に「特許リーディング」が面白い。ハイテク関連投資を始めたい人には入門書としてよいのではないだろうか。 最後に投資哲学に関して一言書くと、この本で書かれていることはじっくり銘柄を選んで、選別して投資するという投資スタイルが根底にある。単に「よそうな」会社の株式に分散投資している人に読んでもらいたい一冊である。(mkoba)
外資系コンサル、マッキンゼーでハイテク分野をカバーしていること、そして、瀧本ゼミで教科書に指定してくれたこと、そして、瀧本ゼミ生が使う様々な語彙、「ファクト」、「因数分解」という語彙から、私は数年前から、ああ、mkobaさんは瀧本さんだよね、って思っていました。でも、野暮なので何度かお会いした時に、わざわざ、確認はしませんでした。
その後、S君が就職活動をしているときに、どうしても運用会社に入りたいと言って国内投信の就職試験の前に、京都で会ったとき、就職で苦労している、なかなか、運用会社で新卒の枠がないという話でした。話を聞いてみると、S君は、セクターを持つならこのセクター、自分の嫌いなセクターはどこどこでここはやりなくないなどと「のたうちまわっている」ので、私は強く説教をしました。これは4年前のことだと思いますが、Sくん、そんなんじゃ、受からないよ。「トイレ掃除でもなんでもやります、部署は総務でも受付でもなんでもやりますから入れてください」と必死になって頼むしかないよと言ったことを思い出しました。雨の降る京都の夜、2年連続で東西対抗に呼ばれた後の打ち上げ(大学近くのビートルズを流すお店)での話です。(この年は京都大学が強く、エース格が何人もいたので京大が東大に勝利しました)
こうしてゼミ生たちが、私の元へ、インターンに来るようになったのでした。S君の後、京都で代表を務めたTくん。今はエンゲイジメントで有名な投信でアナリストをしています。その後も、東京の代表のOくん、そしてTくん、またS2くんと、私たちの周りにはいつも瀧本さんの教え子がいらっしゃいました。グロース銘柄発掘隊のKさんもその一人です。
2017年、私はマングループを退社しましたが、そのとき、NPOイノベーターズフォーラムの松田さんと私と瀧本さんでランチをしました。瀧本さんは、ブティック型のヘッジファンドを立ち上げて、ひっそりと知る人ぞ知るというのが山本さんにはあっているよとアドバイスをしていただきました。私は、もう、それは十分にやったので、これからは個人投資家向けのサービスをコテコテにやりたいんですよ、定額運用に持っていきたいのですと意見を交換させていただきました。定額の運用のプランを瀧本先生にOくんを通して見ていただきましたが、行けると思うよ、と背中を押してもらったのです。これが後々、DFRの有料メルマガと運用サロンサービスに発展していきました。
先生とはFBで繋がっていることもあって、私が「英語で数学を学生に教えると英語も数学も同時に勉強できるから一石二鳥だ」と主張をしていたところ、多くの方々からバッシングを受けたことがありました。1年前のことです。「お前はわかっとらん」と。
その様子をご覧になった瀧本先生から、「山本さん、旧石器時代の人々には何を言っても無駄だよ」とコメントをいただきました。先生は孤独を恐れず、尖った意見を持て、エビデンスで勝負しろ、と若者たちを鼓舞し続けましたが、私のようなロートルにもガンバエールをよく送ってくださったのです。
発明塾の楠浦さんとの特許セミナーにも参加していただきました。私が個人的に開催した勉強会にも参加をしていただいたことがあります。楠浦さんも京都大学で発明塾を開催しており、瀧本ゼミも京大で活動していたこともあって、自然と、私も楠浦さんとの接点ができたのです。
その後、二番目の愚息が東京大学に入学したこと知ると、「息子さんは投資に興味がありますか」とメールをいただきました。あいにく、愚息は全く投資には興味がなく、「ないようですね」と返信したのが最後の関わりとなりました。2019年5月の頃です。瀧本ゼミで鍛えていただければ私としても嬉しかったのですがかなわぬ夢となりました。
色々なことをお話させていただきましたが、最後まで戦う人でした。そして、最後の最後まで運用をし続けた人でした。私は上場株、瀧本先生は未上場株と、違いはあれど、アプローチはとても似ておりました。全くおこがましい限りですが。。。
先生の教えを受けたOくんやSくんやTくん、そしてグロース銘柄発掘隊の元瀧本ゼミのメンバーには、先生の教え、そしてその志は引き継がれていくでしょう。
私の家族、妻、四人の息子は先生の「ミライの授業」を愛読しています。私は先生の「僕は君たちに武器を配りたい」「君に友だちはいらない」が大好きでした。
多くの若者に武器を配り、巨星墜つ。残された著書に鼓舞された若者が日本のミライを背負って立つでしょう。
瀧本哲史先生のご冥福をお祈り申し上げます。
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