新型コロナウイルス蔓延で正念場の世界経済 by yamamoto

2020年3月5日

非常に厄介なウイルス性の「風邪」である新型コロナウイルス禍による株式市場の変調。これまで対岸の火事のような動きをしていたニューヨークが若干の調整をしたことで日本株も年初来安値が連日500銘柄を超える「大バーゲンセール」です。

ようやく収束に向かったCOVID-19

朗報としては、中国政府が完全に新型ウイルスによる疾患COVID-19を撲滅に追いやったこと。深センは収束までに2ヶ月を要したが四川省などは6週間で撲滅に成功した。1800を超えるチームを組織して徹底的に感染者との接触を洗い出し、感染者に接触した人々のほぼ全てに検査を受けさせました。人の移動を制限すると、急速に収束に向かったのです。もともと感染力が高いと思われていたが、WHOと中国とのジョイント研究で25人のWHO調査団は報告書を2月26日にまとめました。各国政府はこれを見て徹底対策を施します。

COVID-19の感染力は皆様が信じないぐらい、実際には弱いということがWHO報告書には書かれています。。

例えば、四川省では20000人以上の接触者への検査で、濃厚接触による二次感染率はわずか0.9%であった。

もっとも多く発生したクラスターは家庭。そもそも濃厚接触だらけ。密室。屋内。ウイスルの活性が9日程度続くことから、家庭にウイルスが持ち込まれると持ち込めれてから9日間は活性ウイルスの脅威にさらされるのです。WHOは報告します。家庭内の二次感染率は非常に高く3%から10%。これはそれぞれの家庭環境に依存。手洗い、うがい等を家庭内で徹底すれば1%未満。飛沫感染であるため、電車等では防ぎ方がある。

後追いで失敗する投資家

株式投資家にとって重要な視点は、感染者の数の報告がバックミラーです。この感染者は12日前の発病。

実際、武漢でガンガン感染者が増えていると我々が思ったとき、事実は新しい感染者は毎日激減していたのです。日本でも感染者数が上がっていくが、新しい感染者はその時は減っている可能性が高い。それを示しているのが下の図。遅れて報告数が増えていくが実際の病気が収束した後に増えていく。株式投資家は報告者数に騙されないこと。デルタ、差分で考えることが非常に重要です。つまり感染者が400人の時38人が新たに感染した。マスコミは38という絶対数字で見る。投資家はそうしては投資で失敗するのでそうは見ません。300人の時に感染者が31人出ていたら、収束に向かうかもしれないと見るのです。31が38に増えても、成長率(増加率)は鈍化。鈍化で収束するのが感染症の常です。あれだけの感染者を出した武漢も収束。2ヶ月で終わったのです。

WHOの報告書は以下の通り。

世界のお手本となった中国COVID-19の収束

中国の徹底的な封じ込めにより収束したCOVID-19。四川省の感染者の推移ですが、COVID-19は二次感染が比較的起こりにくいため、なかなかうつされない。そこで人の移動を抑えるとたちまち収束することが明らかになった。この報告書に、各国政府は希望を見出し、今こそ、徹底的な対策を打たなければならないということが国際的なコンセンサスなった。我々に実行力があれば、もう、株式投資家にとって、この病気は終わったイベント。過去のことです。広東省では、熱が出てクリニックに出向き検査を受けたのが32万人もいたが、2月16日の検査においては、0.02%がCOVID-19陽性であった。もっともひどかったのは1月30日の0.47%の陽性率。これがピークで最悪の数字であった。最終的には32万人のうち0.14%が陽性であった。体調がだるく熱がある状況であっても、0.1%程度の罹患率。終わったのですね。しかし、条件がありました。我々に実行力があれば。。。。今の東京の状況を見ると心もとないですね。

COVID-19は怖い病気であり、徹底的に封じ込めるしかない。クラスター感染がクラスター感染を呼ぶと追尾が困難になります。クラスターを形成しないこと、調子の悪いものは外出を控えることが重要だ。政府が非常事態宣言を出せる体制を整えたいのは、こうした中国の強権的な自由の制限が今回に限っては最適解なのです。どんな病気にもステージがあり、そして終焉する。概ね8-10週間で終焉します。パンデミックになっても終焉するし、ならなくても終焉する。WHOは、ちゃんとやれば勝てる相手だと見ているが、日本のように統制が取れていないと勝てるものも勝てない、ということになってしまう。それが最大のリスクになっているので政府は非常事態を宣言したいわけですが、なかなか国民の納得が得られない。

理論株価に与えるCOVID-19の影響は軽微

理論株価を考える立場としては、一年や二年、配当がゼロになっても、その後、日常に戻れば株式価値への影響はないと言えます。今後10年のキャッシュフローを現在価値に換算しても、株式価値の半分にも満たない。

株式価値とは投資家にとってのフリーキャッシュフローである将来配当を現在価値に直したものです。N年後の将来配当とは、現在の配当を1としたときに、exp(gN)となります。gは配当成長率ですね。expは指数関数で自然対数e=2.7182…のgN乗と見なしてもよいもの。

それを資本コストrのN年分で割り引くのでexp((g-r)N)が将来配当の現在価値。これは今の配当の1とは違うものです。

それを将来永遠に足し合わせると、

∫exp(st)dt [0≦t≦∞] = 理論株価 (s=g-r)

となります

これを二つの部分に分けて、これから10年部分と10年以降の部分にして、前半の価値はいくらほどでしょうか。

∫exp(st)dt [0≦ t ≦10] = 1/s(exp(20s)-1)

where s = g- r (r: capital cost and g: dividend growth rate)

ではs=2.6%のケースで30%程度です。つまり、10年よりもっと先の配当が株価の大半の70%を占める。こういうと意外と思われるかもしれませんが、配当は成長するので、そうなってしまうのです。おめでとう。それでは、この2年間の配当の理論株価への寄与度はどうか。この先2年間の理論株価の4-5%程度を構成するに過ぎない。ということは、収束まで2年間かけて頑張ってトントンで企業活動やって、その後、なんとか、頑張ってくれると、株価の下落は5%程度で済むという皮算用です。それよりも景気悪化の影響は大きい。景気が悪化するので、政府はよろしく、ということです。こうなると、いつものこと。いつものことならば、パニックは治る。だから、株価は大丈夫、ということになる。

長期投資家である私のような能天気な人々は非常に少数ですから、通常は、株式というのはキャッシュフローを割り引くのではなくて、あいつがここでたくさん買ったから、今、苦しいだろう、だから投げるだろう、というファンド解約型の発想で方向を示唆するのです。これを需給モデルと言います。需給モデルでは、キャッシュフローのないもの、ゴールドとか原油とかコモディティの方向性を計算することができます。需給モデルがマーケットでは万能です。キャッシュフロー割引モデルはビジネスのような現金収益が毎日上がるようなものしか対象ではないので万能ではないのです。

コロナウイルス 厄介な敵 念には念を入れて撲滅する

ウイルス性肺炎である新型コロナによる疾患ですが、いくつか注意点があります。

  1. ウイルスなので、抗生物質が効かない(抗生物質は細菌をターゲットとするため)
  2. 抗ウイルス薬がない
  3. 予防のためのワクチンもない
  4. 罹患率が高い

SARSについても、収束したのですが、これは完全な封じ込めによるもので、いまだに治療薬はありません。抗ウイルス薬があればいいかといえば、そうでもなく、副作用が大きい。獲得免疫能を弱めてしまうのです。つまり再感染しやすくなってしまう。

中国政府のような徹底的な封じ込めを行う以外に感染を阻止する手段はないのです。実際にSARSについては院内感染が多く完全隔離で封じ込めることができた。ところが、今回の新型コロナは、すでに市中で感染が広がっている。もう防ぎようがなく、政府が何をやってもすでに遅い。遅いがやらないよりは、やったほうがよい。つまり、出来るだけ感染者の増加のペースを鈍化させるということしか対応ができない。でもやりましょう。やるならしっかりやりましょう。そう思っていたのが1週間前までの世界でした。ところが、WHO報告書を読むと、いや、こりゃ撲滅できるな、という方向性になった。3月3日はWHOのトップがこのように話した。

COVID-19haインフルほど効果的には拡散しない。つまり、十分に封じ込めは可能であると。そしてWHOから中国へ渡り調査を率いた Bruce Aylward氏は対応をしっかりすれば抑え込めるとおっしゃっている。

最悪の事態は避けられるのではないか、という流れがこの2月末から急速に高まったのです。

それでも念には念を。最悪の事態に備える政府

ただ、押さえ込み可能であっても、危機感のない人々は集会を開いてしまいます。クラスター感染の温床である家族、そして集会。サウナも営業中です。「コロナに負けないぞ!」とか言っている。非常に危険です。こういう方々がいる限り、最悪の事態に陥る。撲滅できず、風邪のように慢性的に毎年生じるようになるリスクが残ります。

それを私はニューノーマルとしています。ニューノーマルでは、ああ、ワクチンによる予防や抗ウイルス薬がないコロナにかかってしまったよ、となる。それで対処療法で致死率を下げるように工夫するようになる。幸い、健康な方は、自己免疫で対応できる。一方で、基礎的な疾患がある方についてはインフルエンザよりも怖い病気ということになる。基礎的な疾患にならないように、普段から節制し、気をつけるしかないのです。

かかった人がほとんどになると抗体もできて、致死率は現在の0.3-0.6%(2%ではないことに留意)がもう一桁下がるようになる。事実、ドイツやシンガポールの致死率はゼロ。韓国も致死率だけ見ると1%以下です。広東省の例を見れば、罹患率は0.1%以下に抑えられるかもしれない。すると対処法さえしっかりすれば致死率は0.0..%程度にできるでしょう。

ニューノーマルになればそれはそれでそういうものだという日常になります。アルコール殺菌や抗菌手袋などで気をつける。一番大事なことは、夜更かししないことです。体力の温存です。

十分な睡眠を取ること、お酒もほどほどにすること。疲れないように働くこと。これだけで十分です。できれば、ブラック職場を無くし、ホワイト職場に能動的に変えていくことがコロナの本質的な対策になります。

元気に過ごしましょう たまには浪費もいい

こういう時に、大切な人へちょっとしたプレゼントを買いましょう。株価が下がって資産が減少している時に、支出をちょっとだけ増やすのが投資家のたしなみではないでしょうか。

株価は冴えませんが、必要もないのに無理に売っていただいたファンドや投資家がいらっしゃいますので、もう下がらないでしょう。そういうものです。バックミラーを見ているおばかちゃんやどアホウ様たちに株をガンガン売っていただいたら、それが最後のセリングクライマックスですね。

明るく

楽しく

健やかに

いつもより少しだけ贅沢に

 

2020年3月5日成長株投資, 成長株投資の理論と分析手法

Posted by 山本 潤