エグく稼いでるAmazon

2020年2月26日

Amazonはなんの会社でしょうか

日本国内で聞くと大半の人が通販の会社だと答えるはずです。

アマゾンがないとものが買えない、とか、楽天が対抗してて、とか、アマゾンのおかげで配送費が、とかまぁいろいろでしょう。

AMZNの10K見てみましょう。

(in millions USD) Net Sales Operating Income
North America 141,366 7,267
International 65,866 -2,141
AWS 25,655 7,296

リテールがNorth AmericaとInternational。AWSはサーバーのレンタル事業です。

あれだけ世界を騒がせてるアマゾンのリテール事業。米国外は赤字だというのはちょっと驚きですが、AWS事業が米国内のリテールと同じぐらい稼いでいるというのも驚きです。それにしてもリテールは意外に利益率が低い。

利益を見る限り、アマゾンはほぼサーバー屋さんであると考えてよいのではないでしょうか。

AWS

AWS使ったことがある人はこのサイトの読者に少ないのではないでしょうか?

古くはウェブサービスを作ろうと思ったら自社内かサーバーセンターにサーバーを設置するのが普通でした。もちろんメンテも自分でやります。これも昔からあったのですが、そういう手間が惜しいと思う人たちのためにサーバーレンタルの業者がありました。

AWSがやってるのはこのサーバーレンタル業者と同じようなことです。同じようなことですが、もっと大規模でもっと便利です。

そのサービス数は170以上あり端的に説明するのが困難なのでここでは説明しません。

では、AWSはどのくらいの規模で使われているのでしょうか。ほぼすべてのウェブサービスを運営する会社がAWSからサーバーを借りて、サービスを運営しています。

Amazon断ちを試みたGIZMODOの記事(出典1)があります。記者はAmazonの通販を使わないだけでなく、AWSを使っているウェブサービスを遮断するようにもしてみたそうです。

そうしてみたところ

・携帯のアプリがほとんど使えなくなった

・AWSへの経路を遮断しても、実は別の経路でAWSにアクセスしているので、完全に遮断は不可能

・結局Amazonなしでは普通の生活ができない

とわかったとか。

(出典1) さよならGAFAM:Amazonやめてみる→ムリでした

たかがレンタル業者なのになぜ儲かるのか

他人の成果物をうまく使うやり方は結構儲かります。

松下は過去「マネシタ」と呼ばれていました。

マイクロソフトもアップルからさんざんパクリ商売であると批判されていました。MS-DOS他社から買ったものだし、WindowsのGUIはUnixやMacのGUIからパクったものだと言われています。

人がある程度作ったものの上に何かを作るのは結構楽。AWSもかなり他人の成果物の上にタダ乗りしているところがあります。(投資も人の推奨銘柄聞いたほうが楽ですね。)

サーバーは買ってきただけでは動きません。OS、サーバソフトウェア、データベース、などをインストールして諸々の設定をして、ネットワークにつながるように設定しないといけません。それが終わって初めてウェブサービスのプログラムが動かせます。これがかなりめんどくさい。(初めてPCを買ってきて電源を入れるとだいたい設定したりで、しばらくかかりますよね。それと同じです。)

ウェブサービスのコードをどこかにアップロードするだけで、勝手にAWSのサーバーが起動してくれたら素晴らしい。と思うのは誰しも。実はほぼほぼそういうことができます。それを可能にするのは世界中で開発されている各種オープンソースのソフトウェアのおかげです。

オープンソースの利点

オープンソースソフトにはPythonやRubyのように企業に所属していないものもありますが、企業が自社製品のソースを公開して開発しているものもあります。企業はソースコードを公開したほうが開発が盛んになるので公開しています。

プログラマーの世界というのは善意で成りたっています。公開する理由は、いいものができたのでみんなと共有したい。使ってみて、バグがあったら最低でもバグを報告したい。できれば修正パッチを送りたい。見返りを求めずにそういったことをするのが当たり前になっています。

逆に言えばこうしたコミュニティを作って、そこに参加する人を集めることができれば製品をより良いものにできる。使ってもらえる人が増えるのだから、とりあえず基本ライセンスは無料にして、サポート契約なんかで稼げばいい・・・と企業も思っていました。

オープンソースにタダ乗りするAWS

AWSでも各種オープンソースソフトウェアが使えます。例えば検索エンジンソフトである ElasticSearch。このソフトは使うだけなら無料で、サポートは有料です。制作はElastic というオランダの会社が行っています。

自分でこの検索エンジンをサーバーにインストールしてもよいのですが、同社は ElasticSearchをクラウドサービスとして提供しています。ここを使えば各種設定やメンテナンス、チューニングをしなくて良いのが利点です。が、AWSも同じようなサービスを AWS上で提供しています。AWSのElasticSearchサービスを使ってもElastic社にはカネが入りません。Elastic社はAWSを訴えたようです。(出典1)。

Elasticだけではありません。こうしたタダ乗り状態に異議を唱えるべく、ライセンスを変更し、クラウドサービスでの利用を制限するようにした会社もあります(出典2)。

(出典1) Prime Leverage: How Amazon Wields Power in the Technology World 

(出典2)Redis、MongoDB、Kafkaらが相次いで商用サービスを制限するライセンス変更。 AWSなどクラウドベンダによる「オープンソースのいいとこ取り」に反発 

 AMZNはどうなるの?

さあ・・・

株価はどうなるかわかりません。PER77とこれだけでもかなりの水準です。ただFacebook やGoogleやNetflixよりエグく稼いでいるのは確かです。GAFAとかFANGとか言いますが、彼らの殆どはプラットフォームを提供する商売。

そのプラットフォームを動かしている会社でAWSを全く使っていないというところはないのではないでしょうか?

儲かる商売の基本として

  • 競合がいないこと
  • 一定の需要があること

が挙げられますが、

  • 他人の作ったアイディアやリソースを流用する(なるべく自分で作らない)

というのも重要です。

Amazonはそのへんをとてもうまくやっているのではないでしょうか?

2020年2月26日その他, コラム

Posted by 古瀬雄明