子育てコラム #8 子供のやる気シリーズを引き出す(その5)
利己主義や狭視野と決別し、奥行きのある見方を身に着ける(子育てコラム第8回)
■花火大会と裏方さん
今年も各地で花火大会がありました。 ただし、首都圏の大きな花火は、どこもすごい人だかり。 込み合っています。 さて、盆踊りや花火大会がどれだけの人のサポートで開催されているのでしょう。 警備や大会運営など、役所の方々も土日返上で大変です。 各地の自治会やPTAやこども会の役員などが、もくもくと仕事をして、これらのお楽しみの「無料」サービスの仕組みを提供しているのです。 彼らのボランティアがなければ、無料で盆踊りや花火が開催できるはずもありません(税金も投入されております)。 力仕事もある裏方は嫌。 でも、花火大会は見たいという人が全体の99%です。 たった1%の人が裏方として残りの99%を支えています。
■モンスターペアレント
学校に対して、親からとんでもない要求がくる。 「体操着を家で洗うのはどうか。学校でまとめて洗ってくれないか?」 「朝起きるのが大変。学校からモーニングコールをしてくれないか?」 など。 これらの非常識かつ理不尽な要求をする親、「モンスターペアレント」が誕生。 学校の給食費の納付率が低く、中には、払いたくても払えない人もいるようです。 しかし、学校の先生の一般的な見立ては、 「未納の親の90%の人は、払えるのに払っていない」
■こども会の消滅
全国的にこども会、保育園父母の会、PTA、自治会の消滅が相次いでいます。 こどもがいなくなったからではなく、引き受け手がいなくなったのです。 PTAや自治会の役員は、かけもちをする人が大多数となっています。 つまり、人口の1%が、超多忙となり、ボランティアを何役もこなしている実態があるのです。 頼める人が減り、頼める人はすでに忙しい。 忙しい人にまた役職が増えるという悪循環です。 わたしも自治会を3年やりましたが、1年のつもりが3年になったのは、後釜を探してもなかなか見つからなかった。
■花火大会の活況・こども会消滅・モンスターの出現
果たして、これらの社会的現象はどうみたらよいのでしょうか。 読者の中には、自治会やPTAやこども会の役員の方もいらっしゃると思いますが、 なぜ、99%のひとびとが、これらのボランティアに消極的になってしまうのでしょうか。 そして、一切手伝わないで、花火大会や盆踊りになると、家族総出で参加者や受益者となるのでしょうか。 なぜ、主催者側にならないのでしょうか。 100%の受益と0%の奉仕で、それが当然という態度の大人が急速に増殖したのです。
■70代ー80代の「甘い」子育て
今の親の「モンスター化」の背景には、親の親の世代である70-80代の子育てに問題があったのではないかとわたしは考えています。 戦争を体験し、戦後の貧しさを体験し、高度成長を担った親の親世代は、自らの苦労を子どもに背負わせようとしませんでした。
結果として、
苦労させず、
家事をさせず、
おもちゃを買い与え、
休みには旅行に繰り出し、
子供部屋を与え、
子供が勉強だけしていれば文句を言わない育て方をしました。
40-50代は、塾に最初に行った世代です。
核家族化の中、家事や労役を免除されたこどもたちは、当然ですね、わがままになりました。
手伝いもまったくしない。他人への関心が薄れますよ。 その40-50代が親になってしまいました。 わたしは50代ですが、子どものころ、「関係ないね」が流行語になりました。 「関係ない」という究極の無関心世代が親になりました。 わたしたちは、単なる身勝手な消費者になってしまったのです。
■なぜ誰もやらなくなったのか
PTAの仕事を頼んでも、十中八九断られる理由は「余裕がない」です。 まず、 「仕事が忙しい」 「とにかく忙しい」 「子どもの教育や習い事への付き添いが忙しい」 「親の面倒がある」 うちの地区では、保育園の年中行事であるクリスマス会がなくなりました。 理由は、「親が大変だから」です。 「親が働いていて大変だから保育園に預けているのに、なぜ親が休日に準備を手伝わなくてはならないのか」という理由です。 また、少年野球のコーチが見つかりません。 PTAの会長がなり手がいません。 この「やる気シリーズ」では、日本の職場の長時間労働を問題視していました。 長時間労働が人々から余裕をなくし、余裕のない人々は、他人に対して冷たくなるという論理です。 余裕があれば、子育てにも積極的に関与できます。 また、地域社会への貢献もある程度できるでしょう。 ところが、今の40-50代を見ていると、どんなに余裕があったとしても、 手軽な趣味に興じて、自治会やPTAなどには参加しないと感じるようになりました。 本当の理由は、PTAや自治会がつまらないからというのがみんなの本音なのかもしれません。
でも、でもですね、こんな若者がいたんですよ。
■おばあちゃんが掃除機を探しに家電量販店に来た
- この若者は、家電量販店に派遣されている派遣社員。
あるとき、おばあちゃんが、掃除機を求めにきました。 誰も相手をしません。
この若者は、忙しい中、2時間もこのおばあちゃんに、ひとつひとつの掃除機のことを手取り足取り、おばあちゃんに、わかりやすく丁寧に説明しました。 しかし、派遣会社には苦情がきました。 家電量販店は回転率がすべて。この若者のように、来る人に2時間もかかりきりになっていては商売になりません。 若者はその後1ヶ月で職場を交代することになりました。首になったのです。
現場では「つかいものにならないとろいやつ」というレッテルを貼られました。
わたしたちは、何事にも早急さを求めます。
それを生産性と言ったりしてね。
早急さは本質の敵、真理の敵であるのに。
その若者には、後日談があります。
その家電量販店をやめる日が来ました。 その当日、彼は1日で100万円の売上げを上げました。
100万円はたいした金額ではないかもしれません。
掃除機を彼から買ったおばあちゃんが、二世帯住宅を新築したとき、家電一式をこの若者からどうしても買いたいと願ったからでした。 顧客に真正面から向き合うという、この若者の姿勢が、大きな約定となって返ってきたのです。 彼はその後、イタリアに渡り、料理の修業を2年間して、日本に戻りました。 そして、いつか、東京でイタリアンレストランを開業するのが夢です。 しかし、その開業資金が足りません。 いまは、引越しや現場労働者などの、「時給の高い、わりのよい」仕事を精力的にこなしています。
■格差は受け入れるべきもの
きつい仕事は、気が付けば、ほとんどが外人が担っています。 きつい仕事を避ける日本人には、引き受けてがいないからです。 格差社会の問題は確かにあるとは思います。 わたしは重大な問題であると思っています。 しかし一方で、格差は誰にでもあり、成功者であれば、誰でも、格差を格差と思わないでがんばっています。 がんばることは大切な美徳です。 「必要なことだけど、誰もやらない。だから仕方なくやる」というのも美徳です。 人は生まれながら、格差に悩むものです。 わたしは、高校のとき、背が低いことがいやでした。 しかし、その格差を人に訴えたところで、何も解決はしません。 生まれながらにして、人は不平等です。 金持ちの子どもは有利です。 学歴の高い人は賃金が高くなる傾向があります。 しかし、これらの格差を乗り越えるのは、自分自身の精神力しかないのもまた事実なのです。
■一発逆転の人生ではなく、着実な一歩を!
やる気シリーズでは、 余裕の大切さ、 基本の反復の重要性、 リーダーシップとプロフェッショナルリズムの意味について、 なぜ、甘えてはならないかという問いへのわたしなりの見識、 夢ややりたいことをどうしたら見つかるかへのヒントなどを書いてきました。
■自分の時間の1%をボランティアに!
自分の時間の1%だけでも、自治会やPTAや地域社会に還元してもらえないでしょうか。 あるいは、なんらかのボランティアに参画していただけないでしょうか。 そのことが、視野を広げ、世の中をよりよく理解するきっかけになるでしょう。 視野の広さは、何事にも最終的な責任を受け入れる立場がなければ養われないものです。 また、人生にとって、視野の広さは、他人へのかかわりを円滑にするでしょう。
■P.S. 生意気なことを書いてしまいました
こういう自分も、まだまだ未熟者。 格差社会については、政治問題でもあり、わたしの辛らつな指摘は、この問題に真摯に取り組む人々にとっては無礼だったかもしれません。 ただ、わたしの立場は、格差を受け入れ、折り合いをつけるのは、他人ではなく、格差に悩んでいる本人だということです。 もちろん、政治的、システム的、法律的なセイフティネットを否定するものではありません。 理不尽な格差をなくす方向で、なんらかの貢献をしていきたいと考えています。 このやる気シリーズを読んだ方のなかに格差に悩む人がいれば、過去の4回をもう一度読み直してほしいと思います。 差別される側が、専門的な技術や知識を長期的に着実に一歩一歩つけていくことが格差の解消になると信じています。 「上流」と「下流」や正社員や派遣社員という区別を発展的に解消するためには、 上流を下流に落とすのではなく、「下流」が「上流」に追いついてこそ、WIN-WINとなると信じています。
まとめ
そこで、我が家は、
- クリスマスや誕生日プレゼントは1000円まで
- 子供部屋は与えない
- 子供は家事を手伝うこと。ゴミ出し。食器片付け
- 習い事はなるべく認めない
- 祭りの手伝いなどボランティアを強制する
- 塾には親からは行かせない。子供がせがんできたら行かせるか考える
- 賛否両論: 子供に勉強机を与えない (うちは子が机がほしければダンボールで自分専用の「机」を作っています)
- テレビはリビングには置かない
- ゲームなどは好き放題にやらせる(中学生になれば、飽きます)やる気引き出すその1からその5まで 結局何すればいいの??
「やる気シリーズ1−5」 親は何をすればいいんだっけ??
親がすべきこと、すべきでないこと
- 親は規則正しい生活をさせる。(ご飯はみんなで食べる)。
- プレゼントにお金をかけない。あげない。何も与えない。
- 「何かできたらご褒美」は絶対にダメ。(勉強するのは誰のため?親のためじゃないから)
- 習い事はやらせない。公教育で十分。習い事にお金をかけない。
- 子供部屋はつくらない。勉強机も与えない。(本だけは貸し与える)
- 時間的なゆとりや精神的な余裕を与える。(つまり、放っておけということ)
- 親が自分の好きなことを楽しくする姿を見せる。
- 親がボランティアを楽しくする
- 親が学校や保育園の先生をがんばってサポートする(先生は正しいと言い切る)
- 親が難しい課題に長期的に取り組む姿勢を見せる。
- 親が小さくてもいいからなんらかのプロジェクトのリーダーになる。
- 親が毎日、工夫した反復練習を楽しくする様子を見せる(漢字や英単語)
- できないことはない。細分化すればできる。子の可能性を否定しない。
- 親は見守る。口出さない。ガミガミいわない。
- 部活や学校がつらかったら、すぐにやめていい。
- 親が一生懸命にならない。主役は子供。親はただ黙って見ていればよい。
Enjoy Every Moment! 山本 潤
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