ROICで企業を比較してみる

銘柄を探すときに重視している数値はなんですか?

ROE、営業利益率、利益率の伸び、など様々でしょう。

ROICを比較してみるといいかもしれません。

ROICとは何か?

(営業利益 * (1-税率) ) ➗ (株主資本 + 有利子負債)

がROICです。株主と債権者から集めた資本をどのくらいうまく運用しているか、をはかります。

ROEとどう違うのか

ROEは株主資本だけを使って経営効率を評価します。株式で資金調達せずに、有利子負債で資金調達して利益を上げていけばどんどんROEは上がっていきます。しかし、借金をすればするほど倒産リスクが高まっていきますが、ROEでは借金は考慮されません。

後述するように、ソフトバンクなどはROEが非常に高いです。ただ、有利子負債が多いため、ROICは低めに出ます。

補足

ここで紹介した計算方法は一番簡単な方法です。算出方法は研究者によりさまざまです。

帳簿にある価格をいろいろとアジャストする手法もあります。例えば・・・

  • 税引き後営業利益に減価償却、資本減耗を足し戻したて、営業キャッシュフローで見る
  • R&D、広告宣伝費、一般管理費などの一部を資産として足し戻す

などです。ここでは一番お手軽なこの方法を使います。なお税率は平均的な法人税率として、35%を一律で使います。

注目されているROIC

機関投資家は気にしているけれど、企業はあまり重視していない指数。それがROICです。

「平成29年度 生命保険協会調査 株式価値向上に向けた取り組みについて」によると

投資の意思決定をする際の判断基準について・・・(機関)投資家は「投下資本利益率(ROIC)」が適切だと考えているのに対し、企業は「事業投資資金の回収期間」や「売上・利益の増加額」を重視している

とあります

米国株で見るROICの動向

マッキンゼーによる1963年から5000社をリサーチした結果(*1)によると

  • ROICは会社のサイズではなく業界で変わる。
    • 特許やブランドで競争優位が築ける業界では中央値が15-20%
    • 製紙、航空、電気ガス水道、などは中央値5-10%だった
  • 企業規模(利益額)とROICは関係がなかった
  • ROICが高い企業は高いまま、低い企業は低いままだった
    • 1995年にROICが20%以上だった会社は2005年になっても同水準のROICだった。

また、コロンビア大学でバリュー投資を教えているブルース・グリーンウォルドの本(*2)によると、

  • 参入障壁がない業界だと、ROICは資本コストを上回らないレベルまで下がる
  • 儲かる業界には参入者が多い、競争で価格は減る
  • 参入者が増えると儲けが減り始める

とあります。ずっとROICが高いのは参入障壁のある業界で儲かる商売ができてる。と考えられます。

*1: Valuation: Measuring and Managing the Value of Companies, 5th Edition

*2: ブルース・グリーンウォルド、ジャッド・カーン「競争戦略の謎を解く」

 

日本株でいくつか見てみると

(すべて円単位は100万。税率はすべて同じ35%とした)

キーエンス ROE 16.40%

  売上高 営業利益 株主資本 有利子負債 税率 ROIC 営業利益率
2014 ¥334,034 ¥175,719 ¥909,877 ¥0 35% 12.55% 52.61%
2015 ¥379,282 ¥205,521 ¥1,037,870 ¥0 35% 12.87% 54.19%
2016 ¥412,699 ¥221,380 ¥1,061,239 ¥0 35% 13.56% 53.64%
2017 ¥316,347 ¥169,750 ¥1,178,436 ¥0 35% 9.36% 53.66%
2018 ¥526,847 ¥292,890 ¥1,373,828 ¥0 35% 13.86% 55.59%
平均           12.44% 53.94%

(変則決算の場合は営業利益が1年になるまで合計してあります。株主資本は変則決算の最後の期を使いました)

キーエンスは高収益企業として有名です。利益率、ROE、ROIC、ともに高いです。

ソフトバンク ROE 23.70%

  売上高 営業利益 株主資本 有利子負債 税率 ROIC 営業利益率
2014 ¥6,666,651 ¥1,077,044 ¥1,930,441 ¥9,186,488 35% 6.30% 16.16%
2015 ¥8,504,135 ¥918,720 ¥2,846,306 ¥11,619,148 35% 4.13% 10.80%
2016 ¥8,881,777 ¥908,907 ¥2,613,613 ¥11,922,431 35% 4.06% 10.23%
2017 ¥8,901,004 ¥1,025,999 ¥3,586,352 ¥14,858,370 35% 3.62% 11.53%
2018 ¥9,158,765 ¥1,303,801 ¥5,184,176 ¥17,042,188 35% 3.81% 14.24%
平均           4.38% 12.59%

業界は違いますがソフトバンクもなかなか好業績です。利益率も悪くない水準です。ROE も非常に高い。

ただ、有利子負債が非常に多いのでROICがとても低くでます。ROEだけ見ているとここには気が付きません。ROICの平均は下に書いた食品製造企業のマルサンアイと同水準です。多額の設備投資が必要で薄利多売な食品製造業と、収益を上げやすいITなどの最新技術に関わるソフトバンクがROICで見るとあまり変わらない、というのは面白い事実です。

マルサンアイ ROE 10.30%

  売上高 営業利益 株主資本 有利子負債 税率 ROIC 営業利益率
2013 ¥21,975 ¥423 ¥3,193 ¥5,063 35% 3.33% 1.92%
2014 ¥22,234 ¥341 ¥3,405 ¥5,072 35% 2.61% 1.53%
2015 ¥23,707 ¥631 ¥3,706 ¥4,496 35% 5.00% 2.66%
2016 ¥24,238 ¥748 ¥3,860 ¥5,638 35% 5.12% 3.09%
2017 ¥25,346 ¥710 ¥4,185 ¥9,762 35% 3.31% 2.80%
平均           3.87% 2.40%

ROICに注目してみると面白い企業もみつかります。キーエンスと同じような機械製品、設備の専門商社である西川計測です。キーエンスと比べると営業利益率は非常に低いですが、 ROEとROICはほぼ同水準。ROICは平均も2桁台で安定しています。

西川計測 ROE 13%

  売上高 営業利益 株主資本 有利子負債 税率 ROIC 営業利益率
2013 ¥26,184 ¥959 ¥4,932 ¥0 35% 12.64% 3.66%
2014 ¥25,106 ¥1,073 ¥5,421 ¥0 35% 12.87% 4.27%
2015 ¥25,510 ¥983 ¥5,981 ¥0 35% 10.68% 3.85%
2016 ¥26,232 ¥1,350 ¥6,704 ¥0 35% 13.09% 5.15%
2017 ¥28,661 ¥1,476 ¥7,525 ¥0 35% 12.75% 5.15%
平均           12.41% 4.42%

ROICで比較する

例えば「西川計測」を比較してみます。

   同業他社を探す

同業他社を探すには「かぶたん」が便利です。

とあります、計測機器のほうが近い感じなので「計測機器」で出てくるコードを全部コピーします。

GMOクリック証券で比較

GMOクリック証券の財務分析機能を使います。

一度に3社しか表示できませんが、ひとつずつ見ながらROICを比較していきます。

四季報CDROMを使う

四季報CDROMでもROICが計算できます。

これはあまりおすすめしません。CDが1万円しますし、自分で数式を定義して計算させないと暦年のROICがわかりません。やってみたことがあるのですが、とてもめんどうでした。

結構かんたんにできるようです

(更新データのダウンロードができませんが、ヤフオクやメルカリなどで中古の四季報CDROMを買うという方法もあります。)

確認のため手計算してみる

面倒ですがROICは最後に必ず手計算してみてください。この場合かならず有報や短信から値を取得するようにしてください。例えばカブドットコムの西川計測の財務データを見ると「有利子負債」に数字が入っています。ところが有報をよく見るとこれは「リース負債」の金額です。

有利子負債にリース負債を含めても良いと考えているなら証券会社のデータを使えば良いですが、そうでないと思うのであれば計算の前提と違ってしまいます。

その他

Posted by 古瀬雄明