定性情報の集め方 ー企業に電話をかけてみようー
大半の上場企業の情報はあつめにくいです
上場企業の情報はとても集めにくいです。
「有報を見ればその会社のことはわかる」、といった有名なアナリストがいるそうですが同意しません。有報には「なんで儲かってるのか?」ということが全く書かれていないからです。
- 雑誌の記事を読む
- 新聞を読む
- テレビ番組でみかける
- Twitterで話題なる
こんなふうにどこかで取り上げられる企業はごく僅かです
会社のウェブサイトを見て、有報を読んでみて・・・それでも疑問が出てくるだけです。
疑問は直接会社に聞きましょう。IRに電話してみるのが一番良いです。
この記事では私がリンクスリサーチで働く前にやっていた投資情報の集め方を書きます。
注意
この記事では実際の会社が出てきます。私はその株を所有していません。またこの記事で書く会社の情報はほぼ1年前のものです、なのでこの情報を参考にして投資をするのはやめてください。この記事は情報の集め方を書いたもので特定の株式をすすめるものではありません。
投資銘柄を見つける
とりあえず投資対象を見つけましょう
- チャートがいいから
- 財務分析してみて
- スクリーニングして
- 雑誌で見た
- 他人から聞いた
などなど何でも良いです
- XXXさんがTwitterで勧めてた
- YYYさんがブログで「爆買いします!」とか書いてた
みたいなのはやめましょう・・・
会社の基本情報を集めましょう
公開資料を読む(会社のサイト、有報、決算説明会のスライド)
- 中途、新卒向けの採用情報を読む
- 会社のことがわかりやすく書いてあります
- 最新の年度末の有報を通読する
- どんな資産があるか、主要な取引先はどこか、業績の説明はどうか、など
- 株主通信を読む
- 決算説明会のスライドを読む
- 予想の修正、配当修正などの開示があればそれも読む
- 一番儲かってないときの有報を見るのも大事
アナリストレポートを読む(あればラッキー)
「会社名 レポート」とかやると出てきます
図書館で日経テレコンを使う
東京23区内の図書館だとテレコンが使える場所があります。テレコンで企業名を調べましょう。記事は30年分見れます。大企業だと数千件出てきますが、30年だしてもいいとこ300 件くらいです。斜め読みして重要なところはメモします。(印刷は手間がかかります)
財務をみてみる
- 売上、利益
- キャッシュフロー
- 固定・流動資産
- 固定・流動負債
の金額をグラフ化して、大きく増えたり減ったりしている年度をチェック。気になるところは質問としてメモっておきます。
受注残などの受注関係の数字も見ましょう。
数値は全部手でEXCELにうつすしかありません。大変ですがやる意味はあります。
疑問が結構出てくるはず
- 「お客はどうして御社のサービス、製品を使うのか?」
- 「それは競合とどう違うのか?」
- 「XX年に儲からなかったのはどうしてか?」
- 「営業がお客を見つけるにはどうやるのか?」
はどの会社でも絶対聞きたいですね。
あとは
- XX年にYYの項目が上がった/下がったのはどうしてか?
- 投資計画について。
- 中期経営計画について
- 上方修正/下方修正したのはどうしてか?
- 受注高、受注残の状況
なども聞きます。質問はリストにしておきましょう。電話口の相手がいろいろ喋りやすいような質問をすることを心がけましょう。
例えば
サイネックス(2376)
- 時価総額だいたい50億ぐらい(2018年時点)
- (資産 – 負債) > 時価総額 であること
- (現金+売掛金+有価証券+投資有価証券+投資用不動産) – (買掛金+短期・長期借り入れ)でだいたい60億ぐらい
2018年時点で、借金を払い終わってもまだ株価のほうが安かったです。株を全部買うと資産がついてくる状態でした。ネットネットとかいうやつですね。(今はどうかわかりませんが)
質問を書き出します
いろいろな資料を参考にしていくつか質問を書き出します。有報とウェブサイト以外ほとんど情報がなかったので基本的な業務内容も聞きます。
- ようするに行政の広報事業の代行? 受注するにはどうするのか? 入札はあるのか?
- 53,52,51期とここ三年売上や利益やCFが乱高下してるのはどうして?
- 期ズレで減益してたが期ズレは起きやすいのか?どういうときに起きるのか?
- 自治体だと定期的に需要があるんじゃないの?
- ふるさと納税代行。これ競合が多そうだし、総務省も厳しくすると言ってるのでこれからどうなるのか。
- 新しい自治体から受注しようと思ったらその自治体に支社がないと取れないのか?
- (訪問などの定期的なコミュニケーションのために)
- 資産、キャッシュなどは結構持ってて、カネに余裕がありそうだが、投資用不動産買うぐらいしか使いみちがないのか?
電話をかけます
短信や有報に書いてある代表の番号に電話します。
向こうも会社員なので基本9時5時勤務だと思ったほうが良いでしょう。たぶん12時ぐらいに昼食休憩。昼休みを遅らせて2時ぐらいに電話する。出勤を遅らせて10時ぐらいに電話する、などの工夫が必要です。
電話したら
- 「個人投資家です」
- 「御社の株式の購入を検討しています」
- 「いろいろ質問がしたいのでIR担当の方をお願いします」
といいます。だいたいこれで担当者に繋がります。名前を聞かれたら自分の名前を名乗りましょう。担当者がいないことがあります。折返しをしてもらうのはちょっと悪い気がするので、だいたい後でこちらから折り返しています。
電話するときの注意
聞いても教えてくれないことがあります
- 次の決算の内容、決算が類推できるような情報
- 具体的なマーケットシェア
- 発表してないか、そもそもニッチ過ぎてわからない、のどちらかです
- 具体的な顧客名
- 有報に公表されている場合もありますがそうでない顧客はだいたい教えてくれません
聞いてみて「それは開示してません」と言われたらそれ以上聞いても無駄です。
臨機応変に
質問は臨機応変に。いろんな担当者がいます。いろいろ教えてくれる人、聞いた内容だけ答えてくれる人、あまり質問されることに乗り気じゃない人、よく知ってる人、経験がなくてあまり知らない人、いろいろです。
質問してる最中に話しの流れでここを聞いたら面白そうだな、と思ったところがあったらいろいろ突っ込みましょう。用意した質問に縛られることはありません。
ツッコむほどいろいろ出てきます。
相手も人間です。「株を買ってやるんだから」といういばった態度ではだめです。取引先に電話をかけるような感じで、ビジネスライクかつ楽しげに会話しましょう。
いろいろわかりました
その結果で投資判断をしましょう。サイネックスに電話していたのは30分程度でしたが判断を下してもいいかな、と思えるぐらいいろいろわかりました。
おまけ
競合や関係会社にも電話してみましょう
検討対象の競合が上場企業ならそこにも電話してみると良いです。関係する会社にも電話してみると面白いです。
例: ネット通販の会社を買いたいが配送費の上昇が心配
ヤマト、佐川、郵政に電話して。
- EC関連の配送費収入はどのくらい売上に影響してるか?
- 顧客との値上げ交渉はどうやるのか
- どうやったら配送費を下げてくれるか
全く違う商品を売る別のネット通販会社に電話して
- 配送料がどのくらい上がったか?影響はどのぐらいあるか?
- 対策は考えてるか?どうするか?
- 顧客の反応はどうか
などなど聞いてみると面白いです。
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