3922 PR TIMES ー行動者が世界を変えるー by yano

2019年2月7日

インターネットが普及し、スマホが2008年以降加速的に普及する中で、ウェブメディアというものが登場した。ウェブメディア上には無数の広告枠があり、これまでのTVや新聞・雑誌という限られた広告枠ではなくても、企業に自社の商品・サービスを従来よりも安価にPRする機会が急速に増えてきている。これまで大企業中心に広告予算が潤沢にある企業しかできなかった広告が中小企業にも身近になってきている。
さらにTwitterやfacebookやinstagramなどのソーシャルネットワークが急速に発達し、一個人でもメディア化して、情報発信ができる世の中となってきている。
このような昨今、情報が乱立し、何が正しくて、どこで社会にとって重要で面白い生の情報を獲得するかというのが各メディアにとって問題となってきている。

急速な時代の変化と追い風を受けて、同社は企業から直接発信したい情報をメディアや生活者に発信するプラットフォームである「PR TIMES」を中核事業として運営する。

従来のプレスリリースの枠にとらわれず、企業とメディアと生活者をつなぐプラットフォームを展開する唯一無二の企業である。
業績は右肩上がりの成長を続ける。

◆沿革

記事ネタコムという会社名で2006年6月に立ち上げたプレスリリース事業が同社の発足である。
当時、プレスリリースは読まれないし、プレスリリースは終わったというのが業界の評価であったが、プレスリリースの利用価値を再定義して、2007年4月に事業の再スタートを切った。
発足当時は、基本機能無料にしてアップサイドで有料化の機能を追加したが、2年で1000社の獲得にとどまり、基本機能は無料であるのになかなか企業に使ってもらえないという状況であった。
その後、抜本的に料金体系の見直しやビジネスモデルの再構築を図る中で、顧客やユーザーが何を求めているのかを追及し、「無料でマスを広げる戦略」は辞めた。
外部環境がパソコンからスマホに、マスからSNSの流れが追い風となってきた。その成果が徐々に顕在化し、2015年には利用企業数が1万社を突破した。

山口代表はコンサルタント出身であり、2006年にベクトル入社した。ベクトルのCFOとして、IPO準備をしていた。ベクトルは2005年に業績がピークとなり、これまで1.5倍成長していたが、2006年に減収減益に陥り、事業の軌道修正など試行錯誤する中で上場は、2012年となった。
そんな中で新規事業として立ち上げたPRサービスを軌道に乗せる中で、同社も2013~2014年にIPOを目指すようになった。
2016年3月にマザーズ上場、2018年1月に東証一部。

ベクトルの同社持分は56%で、ベクトルにとって同社は対企業向けのアピールポイントとなるような核となる事業である。
比較的労働集約的な要素の強いニュース配信PRリリースはすべて同社が代替できている。
ベクトルはPRを超えて、広告迎えて、タレントキャスティングをして、ウェブでも流せるよりクリエイティブな仕組みづくりにリソースを投下できる。
両社はお互いに事業に集中し、高め合える補完関係にある。

生活者に直接届けられるプラットフォームを展開するのは、グローバルでも同社だけで、長期的には海外展開も視野に入れる。
ただし、中国は2013年に進出したが、一度撤退しており、今後海外進出は慎重に行う予定だ。

◆ビジネスモデル

①「PR TIMES」サイトへの掲載
メディアの記者や編集者がサイトを閲覧し、報道するための情報源として活用でき、また生活者がニュースとしてサイトを閲覧して、SNSで情報共有するために利用する。

②メディアへの配信
ニュースリリースをメディアの記者や編集者のために素材として配信し、パブリシティの機会を創出する。12000媒体強のメディアリストをデータベース化し、顧客企業が発信する内容に応じて、メディアを選択することができる。

同社は「PR TIMES」というプラットフォームかつ巨大なメディアを持っているということが最大の強みである。同社のページビュー数は約1200万を誇る。

◆料金モデル

1配信モデル    3万円/回
月配信無制限モデル 8万円/月
半年間契約モデル  7.5万円/月
年間契約モデル   7万円/月

オプションとして、 
リリース原稿作成    3万円/回
Webクリッピングレポート 1万円/月
FAXによるリリース配信  5000円/回

1回3万円からとリーズナブルに主要なメディアや最終顧客にPRできる点が最大のメリットである。たとえ3万円でもメディアが興味を持てば、能動的に情報を発信してくれ、情報が拡散するので、費用対効果が大きい。
マネジメントとしては、年間契約か月契約かは意識していない。
日々ニュースのある会社は年間の契約の方が優位であるが、そうではない会社を年間にしてしまうと、重要なニュースでなくても、プレスリリースをたくさん出してしまう可能性もあり、重要でない情報があふれてしまうからだ。

◆プレスリリース件数

◆顧客数

<累計>

2018年3月期末時点で21,399社であったが、19年3月期上期時点で24,833社となった。
この上半期で3,434社の利用につながり、伸び率は前期末比で16%、前年同期比31%となった。

また、上場企業約3700社のうち、同社利用率は約33%と年々向上しているのも特徴である。

伸びている背景の一つである積極的な取り組みとして、これまでPRとはあまり縁のなかった業界や地方への展開も進めている。
2017年5月に京都銀行との提携を皮切りに、北陸銀行、千葉銀行、横浜信用金庫、名古屋銀行、西日本シティ銀行、武蔵野銀行と次々と銀行と獲得した。またつくば市や西日本新聞とも提携をした。
この提携による銀行のメリットとしては、銀行の取引先が6カ月に3回で無料でプレスリリースを配信できるというサービスを提供できることで、他行と比べて取引先により密接に営業推進ができることになる。
取引先は、地方だけでなく、全国に通用する商品・サービスのPRができれば、販路拡大とともに地元企業の活性化につながり、地域として発展できる。
今回、地方進出の足掛かりができたことは同社の新規顧客数の獲得にとって、非常に大きな意味を持つと考える。
これまで全く「PRプラットフォーム」という存在を知らなかった地方企業に対して、公共性の高い銀行や地方自治体によって、認知が広がっていく可能性がある。
経済産業省による2017年の日本の法人数は大企業1.1万社、中規模企業約55.7万社、小規模事業者約325.2万社とされている。
ちなみに国税庁の調査法人数は280万社となっている。
同社の利用企業は約2.5万社であり、今後のポテンシャルは大きい。

<新規>

顧客のリピート率は特に重要視していない。
2016年に上場後、中期計画を発表した。
当時1万強社だったが、2020年に5万社を目標にし、当時OP1.8億円だったが、2020年に10億円目標に据えた
当時はチャレンジングな数字だったが、現在は着実に見据えている。

◆メディア

メディアの数はひと通り網羅している。同社の企業数、PV数の多さから、自然とメディアが集まっている。

◆付随サービス

プランニングサービスや原稿作成サービス、ウェブクリッピングサービス、広告サービスを行う。

<ウェブクリッピングサービスのユーザー数>

◆PR 画像、動画

2017年11月に動画PRサービス「PR TIMES TV・PR TIMES LIVE」を立ち上げた。

すでに素材としてデータが蓄積してきており、顧客のサービスへの期待の高さが窺える。
今後の単価面でのポテンシャルの一つである。

 

◆業績

<四半期売上>

<四半期営業利益>

 

◆バリュエーション

株価    1,954円(12/21終値)
時価総額  130億円
EV/EBITDA 24倍
PBR    7.6倍
配当利回り 0%

 

2019年2月7日銘柄研究所

Posted by 矢野