3995 SKIYAKI ーファンサイトのプラットフォーム提供ー by yano

2019年2月7日

2月は月初の2日からダウが大きく崩れ、ダウは反発しても予想外の円高で日経平均は弱い状況が続いています。ダウはほとんど戻したというのに、日経平均、小型株が大きく下がったままです。 
こういうときこそ、マーケットウォッチから少し離れて、長い目で純粋に良い会社を見極めるべく、しっかりリサーチする良い機会になるかと思います。良い会社を知っておくと、安心して自分の好きなタイミングで投資できますしね。
地道にコツコツと努力を積み上げていくことが大事ですね。 

本日ご紹介する企業は去年10月に上場した3995SKIYAKIです。
SKIYAKIと名前を聞いただけでは、すき焼きを連想し、飲食店の会社かと思われるかもしれない。この会社は「創造革命で世界中の人々を幸せ」を企業理念に掲げ、アーティスト・クリエーターとファンをつなぐファンクラブサイトのプラットフォームを提供する会社です。2017年10月からはCCCとの協業で音楽にとどまらず、あらゆる趣味のファンクラブサイトの運営もスタートさせています。

設立

2003年に設立。代表の宮瀬氏は、早稲田大学理工学部卒で元々テクノミュージックでアーティスト活動をしていた芸術家の一面も持つ。ソニーミュージックに入社した後、20代半ばで起業した。
当初は携帯キャリアのiモードサービスなどでファンクラブの運営をしていた。その会社をアドウェイズに全株売却したが、2011年に同社SKIYAKIに共同代表という形で参画した。その後、宮瀬代表が全株買取し、単独での代表取締役に就任した。
アミューズは上場で全株放出したが、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)は2013年から出資しており、持ち分52%保有で子会社。新株発行で48%に保有比率が下がったが、役員を一人派遣し、事業面でのつながりもあり、売却の予定はなく、需給面での懸念はない。
2017年10月26日マザーズ上場。公募価格3400円、初値8400円。

2013/1期からの業績動向

 

16/1期までは立ち上げでエンジニアや管理部門の固定費が重く、損益分岐点売上に達していなかったことから、赤字が続いていたが、会員数型のストック収入モデルなので、分岐点を超えると収益化した。また16/1期はファミリーマートと組んでキャラクターグッズ販売を在庫保有して行ったが、想定以下の売上となり、商品評価損をした影響を受けた。これがなければ、16/1期の営業利益はフラットだったようだ。16/1期の失敗から在庫ビジネスはやらないで受注生産とした。

 

収益源はストック収入中心

ファンクラブサイト運営事業(FC) 売上の約70%
ファングッズ事業(EC) 売上の約30%

その他事業 数%

ファンクラブサイトプラットフォームを軸にグッズ販売やチケット販売に展開する。将来的には、購買行動履歴を活かして、ファンに特典還元やアーティストにデータ提供、ツアーやイベント、新規サービスを展開していくことで収益創出の機会を広げていく方針だ。

ファンクラブサイトのプラットフォーム事業

ファンクラブサイトは、アーティストを応援するために、芸能事務所やプロダクション、からの依頼でファンクラブのプラットフォームの提供、運営をしている。同社へ依頼する事務所やプロダクションは200社を超える。
効率化されたプラットフォームを持つため、プロダクションやレコード会社のサイト構築初期費用や運用固定費用は発生しないで、導入のハードルが下げており、スピーディーにサービスの立ち上げができる。サイトへのアクセスや購買などの行動履歴のデータが蓄積されており、プロダクションやレコード会社にデータをもとに施策の提案ができる。さらに国内外での決済手段を持っており、最大37ヶ国語の翻訳も対応していることから、同社にファンクラブサイトを任すメリットは大きい。

月額課金と年会費の2つの収益モデルがある。 
月額課金の方は、月300~500円のスマホ課金で年会費型サービスは年5000円前後のサービスである。売上の割合は、月額課金が7~8割、年会費が2~3割。
月額課金と年会費型のサービスの違いに関してだが、月額課金のほうでは、スマホアクセス、限定動画、マネージャーのブログでアイドルのオフショットなどがタイムリーに見ることができる。年会費型のほうは、四半期で会報誌の発行を行う。年会費型は、印刷コストや配送コストがかかる。

ファンクラブサイト運営事業(FC)の売上は、プロダクション・芸能事務所とのレベニューシェアの方式になっていて、売上はレベニューシェア前の総額(グロス)で計上し、費用として、按分割合を支払う会計方式を採用している。月額課金の方は、レベニューシェアの取り分は50%で、年会費の方はレベニューシェアの取り分は30%となっている。
年会費の方で印刷コストや配送費が変動費としてかかってきたり、月額課金では一部キャリア経由の場合、決済手数料が変動費としてかかるので、限界利益率は3割強くらいとなっている。

有料会員数の急成長~モノからコト消費のながれ~

18/1期3Qの総会員数は131万人、そのうち有料会員数は57万人。前年同期比で総会員数は45万人増の52%増、有料会員数は13万人増の30%増となっている。

有料会員になる動機のほとんどがチケットを優先的に手に入れるため。
アーティストは自分たちのキャパより小さめにして、チケットとれない需要を作っており、チケットは常に逼迫した状況となっている。
2017年7月末での男女比は4:6くらいで若干女性が多い。
年齢層 10代14%、20代4割、30代24%、40代15%、50代5.5%
10年前よりも30~40代が増えてきている。
音源収入(CD販売)落ちているが、ライブ活動とグッズ販売にシフトしている。
新人デビュー数はこの10年で年間300組程度と落ちていないし、ライブ公演回数はこの10年で2倍になっている。
無料でファンサイト作って使えるようにしてあげている。
ライブやコンサート来場者数は10年前よりも2倍になっており、年間5000万人弱の人がライブやコンサートに行っている。
営業先はプロダクションでマス向けに広告やネット広告をしていない。
顧客は、プロダクションのオフィシャルサイトなどで誘導するので、顧客の獲得コストはかからないモデルだ。

 

CCCとの協業

2017年10月から趣味に特化した(鉄道、クラッシックカー、コナンなど)ファンクラブを年会費1500円程度で立ち上げている。CCCがここ数年徳間書店など出版社を買収しているが、そのアウトプットの形として立ち上がった。
イメージとしては、専門誌の定期購読をウェブで実現しようとしている。
CCCからシステム手数料として、レベニューシェアが同社の売上に計上される。
今後FC事業に入ってくる。有料会員にはまだ入っていない。
Tポイントカードは6400万人保有するカードでこの中のファンにリーチできるのは今後のビジネスの広がりは大きい。
行動履歴、購買履歴でファンにポイントを付与して、上位100人、1000人限定ライブなどを企画する。ファンのポイントをトレードできる仕組みを構築していく。

 

ライバル

年会費型のアナログ企業だが、トップはテイパーズ(去年アミューズが大型出資で子会社)
その次にEMTGでこちらは月額課金型である。同社は後発だが、すでにEMTGと同規模になってきている。

EC事業

EC事業はツアーグッズなどの物販を行っている。同社取り分の20%のみを売上(ネット)に計上している。原価としては、倉庫料、保管料、決済手数料などかかる。
粗利率は、50~55%

その他事業

スポットで特設ページなどホームページの作成やクラウドファンディングの手数料や自分で作るアーティストグッズなどの様々な事業の集合体で限界利益率は80~90%と高い。
2016年7月に業界初のワンタイムQRコード認証とSMS認証を利用したチケット販売・発券アプリ「SKIYAKI TICKET」を発表した。電子チケットのQRコードが30秒ごとに切り替わる仕組み(特許申請中)でスクリーンショットを防止し、入場時に端末認証をする。スマホごと譲るというケースは考えられないので、高額・不正転売の防止につながる。現在の累計流通金額は1億円程度となっている。コミッションはチケット代金3.5%またはユーザーに300円課金となっている。
さらに2016年10月には行けなくなった場合に安全に転売できる2次流通マーケットをリリースした。
ぴあは手数料として6~8%とっているが、配席までできる。同社の場合、配席まではできないので、今後協業などで工夫していきたい。
チケットの高額転売や不正転売が横行していて、その解決策を求めるファンやアーティストは多く、今後の成長に期待したい。

 

ポテンシャル 

プロダクション、芸能事務所、地下アイドル個人事務所は数千社あると言われている。
大手のアミューズなどのプロダクションは自社でファンクラブ運営サイトを持てるが、中小の事務所は自社で持つことは難しいので、そのアウトソースを請け負っていく。
現在、ガクトとハイド、ゴールデンボンバー、ゆず、刀剣乱舞などの大物アーティストのファンサイトの運営を行っているが、大物アーティストの獲得は有料会員の獲得に直結するので、今後の成長にとって重要である。
プロデューサー(業界わかっていて営業できる人)は現在8人で信頼関係を構築して、アーティストの獲得を決めている。
ファンクラブ軸に、子会社で旅行の企画販売、ライブコンサート制作、飲食店とタイアップでファン限定メニューなど派生事業に取り組む。

販売管理費

人件費(固定費)とFC事業のキャリア決済時に支払う10%の手数料(変動費)が中心。
人員は労働集約的ではないので、規模拡大によって人員を増やさなくてもよいモデル。
エンジニア24人、プロデューサー18人、管理7人の効率経営。

 

■3Qまでの状況から業績予想

※18/1期~の3期予想はやのや予想になります。

FC事業は、3Qまでで有料会員数が3割伸び、単価面でも17%程度伸びている。以前は月額300円が中心だったが、コンテンツを充実させ500円のものも増やせているようだ。
今後も有料会員数だけではなく、単価面もドライバーとなることが期待される。

バリュエーション

株価 5100円(2/14終値)
時価総額 105億円
18/1PER  45倍
19/1PER  24.8倍
20/1PER 17.5倍
PBR 12倍
ROE 26%
18/1期EV/EBITDA 35倍

2019年2月7日銘柄研究所

Posted by 矢野