5388 クニミネ工業 ーベントナイトを軸に着実に増収増益企業ー by yano
成長企業を見るときに、過去の業績10年を見てみましょう。業績は客観的な企業の成績表です。
この10年、リーマンショックや震災、民主党政権の混乱など厳しい外部環境があり、そんな中で着実に売上利益を伸ばしつづけてきた成長企業って実は少ないことに気がつきます。
同社はこの10年着実に売上利益を伸ばし、売上は10年前と比べて1.3倍、営業利益は5倍強と伸ばしてきました。リーマンショックの2009年でさえ、増収増益を実現しています。
さらに、数年の研究開発の末、来期以降は、放射能汚染物質の焼却後の灰の問題を解決するため、ベントナイトが採用されることが決まり、来期以降の業績ドライバーとなりそうです。
経営企画の方に強さの秘密をお聞きました。
まずはセグメントの内訳から見ましょう。
■セグメント
■ベントナイトって何??
粘土鉱物であるモンモリロナイトを主成分都市、石英や長いしなどの随伴鉱物を含んでいる弱アルカリ性粘土岩のことを言う。
その特徴は、水を吸収すると膨潤し、さらに分散させると粘性が表れる。そのほか、各種陽イオンを吸着できる能力など様々な特性を持つことから、鋳物や土木やペット用トイレから特殊化成品まで応用される。ベントナイトは1000の用途を持つ粘土とも称される天然の鉱物なのだ。
■同社のベントナイトの強み
同社は、ベントナイト鉱山を自社で国内5ヶ所保有する。国内で7割生産し、足りない3割を海外から輸入している。
ライバル 国内未上場ホージュン他数社おり、輸入品に関しては三菱商事や双日など商社系がいる。
ベントナイトの市場規模は大体200億円程度であり、同社の売上規模から、トップシェアで50%強もある。この点が他業種の鉱山系の会社と違い、強いポイントだろう。
■ベントナイト事業
全ての事業領域で二桁程度の利益率がある。
①鋳物部門
自動車や産業機械の部品となる鋳物を作る鋳型でベントナイトが粘結材として、砂を成型するために使われる。要は、砂型で型つくって鉄を流し込み、砂を固める製剤としてベントナイトが必要とされる。
自動車部品としては金型も使われるイメージを持つが、鋳型と金型はその性質から用途が異なるのだ。
鋳型は重いが、強度と磨耗性が優れている。
鉄を溶かす温度は約1400度なので、金型は持たないのだ。
エンジン、ブレーキ、シャフト周りは高温になるため、鋳型が使われる。
またコスト的にも金型は設備投資が高いが、鋳型は再利用ができる。再利用の際に、水と砂とベントナイトで摩耗して一部減ったものを補充すればよい。
大体500度でベントナイトなくなってしまうので、それを補充する必要がある。
この性質から、安定した需要が生まれるのだ。
取引先は、全ての自動車メーカーに直接納入、部品メーカー各社にも直接納入している。
さらに、独自製法ときめ細やかなサービスにより、同社は着実に年々シェアを上げてきている。
「ミックスベントナイト」というやり方で国内品と海外品を混ぜて、デンプンと石炭をミックスして提供することで不良率が下がる。ベントナイト向上は国内に3工場保有している。他社はここまでやっていない。
さらに、営業マンがついて、ベントナイトの不良率の低減のために、エンジニアリングサービスで鋳物製造のアドバイスをし、付加価値提供している。
取引先の管理コストを低減することで、他社に乗り換えられないようにしている。
取引先の利益も上げるための創意工夫でとても良好な関係を築いているのだ。
数量については、生産台数に左右されるが、シェアがこの部門では取り組みの成果が奏功し、年々向上し、7割に上る。
単価面もここ10年、数年おきに値上げを実施し、しっかりと付加価値に見合った価格を提示できてきた。この点が同社の業績にとって、一番のポイントだろう。
国内鉱山での調達資材コストは、輸送費などで重油などの上昇を受ける。また基本的に国内調達だが、海外調達の3割のところで円安ならマイナスの影響を受ける。
感応度としては、ドル1円の振れで1000万円くらいのインパクトがあるが、しっかりと価格転嫁して影響はない状態を維持できている。
今後EVが日本でも普及すると、鋳物の軽量化への対応が課題となる可能性はある。
②土木
基礎杭の掘削工事にはベントナイト泥水を使用することで、粘土分で孔壁に膜を形成し、水の浸透による孔壁崩壊を防止する。
ベントナイトの遮水性を活かして一般廃棄物処分場の遮水工事に用いられたり、「クニシール」や「クニシート」の止水材が地下構造物の防水材料として使用される。
再生可能エネルギーである地熱発電や海底資源掘削向けなど中心にボーリング需要も増加している。
さらに、興味深いのが、放射能汚染物質の貯蔵施設にベントナイトが用いられることとなった。下水の焼却汚泥で焼いた灰に高濃度のものがで続けており、問題となっていた。数年掛けて国の要請のもと、研究開発してきた成果が出た。
放射性セシウムを吸着するために貯蔵施設の搬入スペースに土壌を充填したり、雨水の侵入防止のためにベントナイト混合土で貯蔵施設を覆土する。
復興関連として、本格的に来期に貢献しはじめ、単年度の話ではなく、長期にわたって売上利益に貢献することが見込まれている。
この分野には研究開発したベントナイトを用いており、中国産など低グレード品は入ってこられない。
杭工事業者に納入するものに関しては、建築物のグレードに左右され、低コストの建築物の場合、低グレード品との争いになるが、高グレードのものを使いたいときは同社に受注が来る。
震災復興中心に東京オリンピックなど今後旺盛な需要が見込まれる。
③ペット部門
ベントナイトの吸水性と粘結性を利用し、ペットの排泄物を固め、手軽に処理できるトイレ用の砂。小売りや商社が中国産を直接PB商品などで売り始め、それに対抗するために2016年4月に仕入れ販売窓口を子会社のクニミネマーケティング株式会社に一本化し、効率的な販売体制を構築した。
価格はPB部門と同じレベルでの戦いで、3つの事業領域のうち、最も利益率は低いが、それでも10%程度は確保しているようだ。
■アグリ事業
農薬加工での薬効成分が放出される速度や量をコントロールする製材技術に強みを持つことから、国内外の農薬メーカーから粒子状の農薬の受託製造を請け負っている。
多品種少量生産の流れへの対応と、殺虫剤・殺菌剤と除草剤が製造過程で農薬が混じり合うクロスコンタミネーション問題を防止する管理体制が厳しく求められている事業である。
取引先は、日本に製造拠点を持たない外資大手数社中心に国内メーカーと複数社と取引をする。
ITを活用した省人化への設備投資も実行し、利益率は高い。
売上は下期寄りの構造で下期中心に利益率が高まる。
農薬メーカーの新剤対応のため設備投資を続け、設備投資は今期全体で年10億円、今期以降は化成品事業を中心に10億円を続ける。
■化成品事業
ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトの純度を高めた精製ベントナイト「クニピア」は保湿性や伸展性、増粘性が向上する。
また合成スメクタイト「スメクトン」は高粘性や高チクソ性を発揮する特徴を活かして、透明性のある増粘剤や機能性向上剤として利用されている。
クニピアもスメクトンも化粧品や液体農薬、塗料、医薬品などに使われている。
この2つの商品がこの事業の半分をしめている。クニピアが大きいが、スメクトンが楽しみ。
この分野、高品質のベントナイトは同社しかもっていないので、ライバル品がでないので、高い利益率が維持できている。競合品は海外品数社あるが同等品ではない。
既存の樹脂を樹脂メーカが付加価値を付けようとしている動きがあり、樹脂に添加することで耐熱性、難熱性やガスバリア性がアップする。
化学品大手メーカーとの共同開発に注力しており、今後新しい需要を創出していく。
■上期業績
■バリュエーション
株価 956円 (12/12終値)
時価総額 137億円
EV/EBITDA 1.7倍
PER 9.8倍
PBR 0.8倍
ROE 8%
配当利回り 2.1%
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