4331 株式会社 テイクアンドギヴ・ニーズ 〜時代を先駆けた「婚礼」を開拓。 唯一無二の洗練された喜び、満足、幸せを創造するプロ集団〜
4331 株式会社 テイクアンドギヴ・ニーズ 〜時代を先駆けた「婚礼」を開拓。
唯一無二の洗練された喜び、満足、幸せを創造するプロ集団〜
・国内における婚礼の歴史と同社
人生の節目の重要イベント、冠婚葬祭。その中で、最も華やかかつ重大なイベントである「婚礼」。古くは奈良時代が起源、室町時代には文化としての形が整ったと言われています。そして婚礼にまつわる商いが生まれたのが明治時代、写真技術の登場により記念写真を撮影するようになったのが起源と言われています。記念写真を撮るからには、身なりを相応に整える必要があることから、衣装や美容師なども紐づいて、産業としての形が生まれました。
戦前戦後にかけては、神社での挙式後に帝国ホテルで披露宴パーティーを実施するスタイルが富裕層の間で流行、これがきっかけとなり、写真館もホテル内に完備された、所謂ホテルウェディングスタイルが生まれました。 一方で、いわゆる結婚式場での婚礼も生まれ、その起源は、昭和初期に料亭として開業した目黒雅叙園が結婚披露宴を行ったことである言われています。元々専用式場発祥ではない椿山荘や八芳園においても、結婚式場利用が増え、専用式場としてのビジネスモデルが認知形成、料亭発祥の白雲閣、日本閣も式場としてのビジネスを展開、一社である冠婚葬祭互助会も平安閣、高砂殿、玉姫殿を展開、戦後の経済発展、高度経済成長、ベビーブーム世代の結婚適齢期の追い風も受け、専用式場、ホテルウェディングのビジネスモデルが大きく発展し、現在に至ります。
1990年に土地バブルが崩壊し始めた後は、法人向けの宴会が減少したホテル各社が、ウェディング事業に注力、業界での影響力を高めると同時にそれまでの婚礼にまつわる慣習も徐々に変化、料理に拘ったレストランウェディング等、それまでの格式ばったスタイルから自由度が高く、プライベート感も味わえるウェディングスタイルが人気を博すようになりました。
ウェディングスタイルは、さらに洗練を遂げハウスウェディングへと進化、外国の映画のワンシーンに登場するような洗練された内外装と、独立したチャペルを備えた「ゲストハウス」を一軒貸し切り、新郎新婦がゲストを招待し、洗練された食事を共にしながら祝う形式で、プライベート感、憧れ、自由な祝福スタイル、といったニーズを盛り込んだ世界観が人気を博し、主な婚礼形式の一つとして大きな影響力を持つようになりました。
この婚礼形式を先駆的に全国展開、ウェディング業界に新たな潮流をもたらし「ハウスウェディング」という言葉が認知されるきっかけを作ったのが、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ(4331)です。
・同社の沿革
同社は、1998年10月、現代表取締役会長の野尻佳孝氏が創業。当初はレストランと提携したウェディングプロデュース事業を手がけておりましたが、2001年に兼ねてより構想していたハウスウェディング事業を開始、東京代官山の会場を皮切りに全国各地にハウスウェディング会場を展開します。2001年にはナスダック・ジャパン(現 東証ジャスダック市場)へ上場、2004年には東証2部へ上場、2006年には1部に指定替えとなるなど、スピード感溢れる成長を遂げ、直営婚礼店舗(ハウスウェディング会場)は、全国63店舗(93会場)(2021年3月現在)を誇る規模になりました。その他、直営レストラン2施設、業務提携施設が7箇所、直営ホテル3施設を有す国内ハウスウェディング業界の最大手企業へと成長しました。
・同社の特徴
同社の特徴で特筆すべきは、同業他社と比較した際の、あらゆる面での「質の高さ」です。
婚礼は、新郎新婦はもとより、親族、友人といった関係者にとっての人生最大と言っても過言ではない大変重要なイベントです。そのため同社は、ハード、ソフト両面の質を徹底的に磨き込み続け「人の”心“を、”人生”を豊かにする」を合言葉に、あくなき追求をしています。これが同社固有の価値の源泉となっています。
ハード面に当たる婚礼会場は、独立したチャペル、ヴァンケット、ガーデン、控え室、バックヤードにキッチンを備えた邸宅風の佇まいであり、それらの基本構造はいずれの施設とも共通するものの、一つ一つ異なるコンセプト、各周辺ロケーションの持つ魅力も包含しながらオーダーメイドで作られた施設です。例えば、東京白金の「アーフェリーク白金」は、白金のプラチナ通りのイメージに相応しい高級感と上品さを兼ね備えた内外装で、天井高10mのウッディーなしつらえのチャペル、パリの5つ星ブティックホテルにいるような上質な空間、都内の一等地でありながら庭とプールが備えられ、白金ならではの最上級の贅沢さとプライベート感を味わえる造りになっています。
一方で、横浜のみなとみらい地域にあるコットンハーバークラブは、海が一望できる開放感ある披露宴会場とシームレスに海に向かって伸びる、まるでヨットハーバーのようなウッドデッキの大きな庭とプールが特徴で、横浜の気持ち良い海風を感じながら婚礼ができるコンセプト、すぐ近くにあるベイサイド迎賓館ベランダは、赤レンガ倉庫エリアの雰囲気を継承した煉瓦造りの会場で、コットンハーバークラブとは違ったリノベーションによるセンスの良さとカジュアル感、海抜けの気持ちよい眺望が特徴です。
同じく横浜の山手にある、山手迎賓館は、前述した横浜の2拠点の近隣ながら、山手地域ならではの舶来の洋館といった雰囲気が演出されており、「上質」「プライベート」「センスの良さ」が、近隣エリアであっても見事に差別化された形になっています。
そして、いずれの施設も、内外装、調度品のこだわりが細部まで感じられ、新郎新婦、参列者が憧れる非日常の世界観の中で、最高の婚礼を挙げられるような工夫がなされています。これらの時流を先駆的に捉えた質の高いコンセプトを創造できるのは、創業者である野尻会長の持つ鋭い感性と先見性、そしてそのDNAを継承している幹部や従業員のセンスによるところが大きく、類似したハウスウェディング会場は数多ありますが、独自の感性と徹底的な磨き込みにより質の高いハードを有しているのは同社ならではの特徴と言えるでしょう。
同社では、良いウェディングは、上述したようなハード面だけでなく、サービスにおいても新郎新婦に向き合い心を尽くすことをポリシーとしております。そのためウェディングプランナーと呼ばれる、婚礼の総合舞台監督のようなプロフェッショナル人材が一顧客一担当制で、式全体の取り仕切りを一貫して担当する方式をとっています。顧客満足度の高い婚礼には、豊かなノウハウを持ちながらコミュニケーションや交渉能力、全体俯瞰能力に優れたプロの知見が不可欠であり、披露宴の進行は勿論のこと、装飾、衣装、ヘアメイク、料理、その他演出、各種の打ち合わせ、リハーサル、契約など、式にまつわるすべての項目を顧客の要望に寄り添いながらきめ細かく対応、提案をすることで式の成功へと導く、結婚式に不慣れな顧客にとっての心強い伴走者のような存在です。質の高いウェディングプランナーは、同社ならではのサービスを提供できる特徴です。
近年は同業他社でもウェディングプランナー制を取り入れている例も多くなりましたが、この方式を先駆的に取り入れた同社には、数多の実績とノウハウが蓄積されており、同社のDNAである高い感性や、業界の革命児であるが故の知名度が呼び水となり、元々他者への祝福や喜びをやり甲斐とするプロ意識の高い人材が集結、さらにこれらの人材を育成する各種のノウハウも有していることから、ハード面と併せてソフト面においても差別化要因になっていると思われます。
・市場環境と同社
2020年の挙式・披露宴市場は、1.4兆円(結婚周辺市場を含めると2.5兆円)で、同社を含めた上位5社で7%程度のシェアを占めており、中小の事業者が多い寡占化が未成熟の市場と言えます。
2020年における国内の結婚式の平均単価は、300-350万円程度、参加者1名あたりの単価は、3万円程度と推察されています。そのような環境下、同社の平均的な顧客単価は、350-400万円程度で、前述したハード、ソフト面の質の高さが付加価値を生み出していることが要因ではないかと考えられます。
国内では、今後、少子高齢化が一層進むことで、婚姻届出組数、挙式実施組数ともに減少の傾向が強まると同時にライフスタイルの変化から、結婚式をしないカップルが増えたり、式を実施するカップルにおいても、そのスタイルの多様化が一層進んでおり、将来的にもその傾向が継続すると思われます。業界全体の俯瞰的視点では、斜陽の産業とも言えるかもしれませんが、画一化されたハードやサービスよりも、唯一無二のオーダーメイドスタイルが一層価値を増す可能性もあり、市場環境の全体的傾向に逆行する形で、従来より磨き込まれてきた同社の価値が一層際立つ結果になるかもしれません。
・コロナ禍と同社の取り組み
2020年に発生した新型コロナウィルスの世界的蔓延により、同社は大きな影響を受ける形となりました。政府からの度重なる緊急事態宣言発令の外出自粛要請により、多人数が一つの空間に集まる結婚式場は、感染防止のための自粛対象となることから、式の中止や新規受注の停止に追い込まれ、2021年3月期の通期決算においては、連結売上200億円、営業損失111.9億円、純損失162.1億円という結果となりました。また、2022年3月期第一四半期においては、売上94.7億円、営業利益1.0億円、純利益3.8億円で、前期に比べて回復基調にありますが、その傾向は緩やかな状態となっており、引き続き外部環境の大きな影響を受けながらの舵取りとなっております。
そのため、2020年9月末には、海外・リゾートウェディング事業を株式譲渡した上に、さらに販管費の抑制をするなど、同社の価値の源泉であるウェディングの質の高さを落とさないように配慮しながらも、経営の強化を図りました。
経費の抑制だけでなく、収益性の改善にも着手、特に衣装と装花の内製比率を高め、特に衣装の内製比率は86%に達するなど、着々と手を打っています。
コロナ禍は、同社にとっては大逆風となる出来事でしたが、日々のタスクで多忙を極めていた従業員が自分と仕事を深く見つめ直す機会と捉えて、ポジティブな改革も断行しました。例えばジョブローテーションを取り入れて、他部署での業務を行うことで従業員同士の組織の相互理解と強化をはかったり、「俺の私のチャンス制度」というユニークな名称で、行きたいセクションを従業員自身の自由意志で上長に知られることなく、人事部に直接立候補できる年2回の公募制度を創設しました。こちらの制度は、採用時に優秀な人材を確保する決め手にもなっているようです。さらに特筆すべきは、従業員の給与をアップ、コロナ禍にあっても先を見据えた布石を打ち続けました。第一四半期において、黒字で着地したのは、これら的確な経営判断が功を奏した結果であると言えるでしょう。
・イノベーターとしての同社の将来展望
前述のような財務体質の強化、安定的なキャッシュの確保、従業員エンゲージメントの向上を継続的に実施しながら、同社らしい在り方で新しい分野への事業開拓にも注力しています。
創業当時、まだ国内になかったハウスウェディング市場を開拓したイノベーター気質により、次に開拓を目論んでいるのが、「TRUNK」ホテル開業に象徴される、国内ホテル市場のイノベーション、ブティックホテル市場の開拓です。
ホテル市場への参入、遠目には、過当競争のレッドオーシャンへの参入に見え、その狙いに合点がいかないかもしれません。しかし、思い出してみれば、2000年代前半、同社のウェディング事業創業時も婚礼市場は過当競争であり、後発の新規参入で勝機を見出すのは、至難の技と見られておりました。そこにハウスウェディングという新しい価値を創造し、見事婚礼業界で一位の地位に成長した実績があります。野尻会長を筆頭とした同社には、次の時代のトレンドをキャッチできる先見性と潜在需要を見出す感性とノウハウが備わっているのです。
現在の国内ホテルは、必要最低限の機能と低価格指向のビジネスホテルと質の高い体験を売りにするフルサービスのシティホテルと大別できると思います。近年、シティホテルは、その高級志向が一層高まるもののその路線で表現できる程度にも限界が訪れました。そして、どの拠点に宿泊しても均一化された「高級感」やマニュアル化されたオペレーションによって、安心感やブランド体験を得られる一方で、特に旅慣れた富裕層にとっては、飽きられつつあるスタイルとなってきており、ラグジュアリー性を担保しながらも上質なカジュアルさや柔軟性の高いサービスに対する人気が高まっています。どこを見渡しても「目に見える」高級感で埋め尽くされた大型ラグジュアリーホテルは飽きられ、少ない部屋数で上質できめ細やかなサービス、さりげないラグジュアリーさを内包したホテルへの時代へとトレンドが変化しているのです。
元々、ハウスウェディング事業によって、きめ細やかで上質なサービスを提供するノウハウを有する同社であるがゆえに、「TRUNK」のようなブティックタイプのホテルは、得意分野と言えるでしょう。さらに同ホテルには、複数のデザイン性の高いチャペルや披露宴会場としても活用できるスペースも有しており、宿泊だけでなく、婚礼での利用も可能となっております。そして、ESG的なコンセプトも盛り込まれ「ソーシャライジング」としてホテル内各所に表現されており、今後は全国への展開が期待できる事業となっております。
業績の推移
クレイマー
レポート執筆はリンクスリサーチ所属アナリストであるKさんによるもの。山本が長期投資家ゼミの講師の立場で監修いたしました。コロナ禍は同社にとって、いわれなき苦境でした。合理的とはいえない政府や自治体による行動制限や国民活動の自粛と委縮の長期化。理不尽の一言です。コロナによりダメージを受けた企業を一社一社しっかりと応援していこうと思うのは人情です。ですから本レポートは人としての善意によるものです。投資家の社会的な役割は企業経営者と社員を応援することにあります。投資家だからといって上から目線で事業や経営の良い悪いを批評してもそれは人間としては下等の部類です。そのような態度では投資家は社会の何の役にも立ちません。企業の社会で果たしている立派なお仕事を理解し応援することが投資家の社会的な価値だと思います。よってこのレポートは買いや売りを推奨するものではありません。同社について少しでも知っていただければという思いでリンクスリサーチのアナリストが善意で執筆したものです。そしてレポートは愛にあふれています。(リンクスリサーチ長期投資ゼミ講師 山本 潤)
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