9262 シルバーライフ ー高齢化社会の食を支えるインフラ企業ー by yano

2019年2月7日

今日は米国金利が少し上昇し、円高も進行したということで、久しぶりの調整でしたね。年明けからいろんな中小型銘柄が一本調子で上がるので、なかなか新規で買いを入れるタイミングは少なかったのかなと個人的には思っています。

企業の特性を知った上で、こんな世の中になったらいいと、将来にこの会社が必要かイメージすることは、「持続可能な成長率」を予測するためにとても大事だと常々思っています。心理的にも応援したいと思える企業であれば、多少株価が調整しても、保有も継続できます。応援したい企業かどうかは、やっている事業はもちろん、ホームページや雑誌に掲載されている社長のコメントや企業理念など見て、個人の感性で判断してくださいね。
長期で株式投資という形で、その企業を応援できれば、きっと社会貢献にもなるはずです。 

本日ご紹介するのは、2017年10月25日にIPOした「シルバーライフ」です。
まずは、ビジネスモデルから見ていきましょう。

ビジネスモデル

高齢者向け宅配弁当サービスをFCモデルで展開する。
FC向けの食材卸売上、老人ホーム向けの食材卸売上、OEM(他社ブランド:ウェルネスダイニングの大半)向けの食材卸売上が9割を占める。
ロイヤリティー・加盟金は売上の1割と小さい。
同社のFCの宅食サービスを利用すれば、お弁当を宅配した際に二次元バーコードで安否確認のメールが配信されるサービスが無料で付けられる。
これは遠方に住む子どもにとっては、安心まで提供される。
差別化をはかるサービスとして、ビジネスモデル特許を出願している。

高齢者向けビジネスを判断する上で、重要なのは、国の財源に依存しているかどうかだ。たとえば、デイケアセンターや老人ホームビジネスの場合、本人負担は1割で残りを国からの収入に依存している。
介護保険に依存して成り立つサービスでは、労働人口が減少して税収が減っていけば、国からの介護保険の給付も減っていく可能性があり、中長期で安定した利益成長に確信が持てない。
その点、同社は国からの収入はゼロで、宅食を望む高齢者が全額支払うことになっている。

市場規模

矢野経済研究所による個人宅向けの高齢者配食サービスの市場規模は、2016年で1190億円、前年比6%増加している。
2020年には1470億円規模になると予想されている。
また、高齢者施設の給食外部委託の市場規模は、2016年で5990億円、前年比4%増加している。外部への委託率は66%に上る。
このように市場成長に加えて、シェアアップにも期待ができる。
同社の2017/7期(前期)売上52億円でそのうちFC加盟店向け卸収入が40億円である。粗利率3割としてFC売上全体でも推定で約130億円程度であり、高齢者配食サービスのシェアで10%程度とまだ拡大余地は大きい。高齢者施設に至ってはさらに大きい。
同社の顧客となる後期高齢者(75歳以上)は2015年に1646万人だが、2020年には1879万人、2025年には2179万人、2030年には2278万人、2035年には2245万人と増加していく見通しである。大きなマーケットが存在する。

初期投資が驚くほど小さく、FCオーナーにとても優しい料金体系

2タイプの契約形態がある。
オーナーは脱サラの個人で法人は基本的にいない。
通常プラン①加盟金50万円(研修費用含む)、保証金40万円、ロイヤリティー上限10万円で売上の5%
ゼロプラン②加盟金ゼロ、保証金ゼロ、月々会費3万円
通常プランとゼロプランでは、食材の卸価格に違いを持たせている。

損益分岐点は1日40~50食で、月商70万円となり、その場合のオーナー収入は20万円程度となる。
食材卸でも本部が粗利率をあまりとっていないので、FCオーナー側の粗利率は6割程度確保できるイメージである。
出店コストは、飲食店の場合はかからないし、自宅でも開業でき、低コストで開業ができる。店舗で調理をしないでよく、配送するだけの簡単なオペレーションで1人でも開業できるという魅力もある。
FCビジネスは、コンビニを始め色々な小売業で活用されているが、大体オーナーの初期投資は1店舗あたり3千万円~1億円程度かかる。またロイヤリティーを例にとっても、コンビニのロイヤリティーは粗利に対して3割程度ととても高くて、疲弊するオーナーまで出ているのが実態だ。
社長は自分自身で高齢者向け宅配弁当事業をスタートし、現場も経験してきたからこそ、FCオーナーに寄り添って経営されている。一個人での宅食事業には限界があり、本当に必要としている多くの人の役に立ちたいという想いから、フランチャイズという仕組みを使って、全国の高齢者に配食サービスを広めたという経緯から、儲けを優先させていないのである。FCオーナーとWIN-WINの関係だからこそ、結果として利益が付いてきているのだ。

FCの店舗数

店舗数の伸びは二桁増プラスで伸ばしている。直近の2期16/7期、17/7期は各々年率13%増のペースで店舗数を伸ばしている。
1人のFCオーナーは基本的に1店舗を運営する。配達範囲を広げればいいだけなので複数店舗を持つ必要はないからだ。
同社のFCオーナーへの説明会は週に3回行っており、FCオーナーの初期投資がかなり小さいこと、店舗オペレーションが簡単なこと、労働時間が朝8時~夕方6時までと他のFCオーナーに比べて少ないことから、FCオーナーの出店意欲は強い。
同社の卸売上は、出店店舗数に応じるが、既存の店舗の食数が出店して2~3年かけて伸び続けるので、その部分も上乗せされる。 
大体開業時の初月の売上が大きい小売業界だが、同社の場合は異例といえる。
地域のケアマネージャーなどに営業して信頼を勝ち取って行くので、出店のときは売上ゼロでも2~3年かけて伸び続けるのだ。
平均6.6ヶ月で損益分岐点の一日40~50食で達する。
バイクなどで近所へのルートセールスなので、商圏は小さくても出店できるのである。
たとえば、直接の競合ではないが、参考までにお持ち帰り弁当「ほっともっと」を展開する上場企業の9945プレナスの直近17/12期店舗数2702店舗である。
出店ポテンシャルはかなり大きいと考える。

 ライバル

7522ワタミと3137ファンデリーが広い意味での競合だが、現場レベルではカテゴリーが違うので、競合とは意識していない。
同社は後期高齢者75歳以上向けに作るのが大変になってきた人に食事であるのに対して、ファンデリーは糖尿病などの病気の人向けの食事である。
ファンデリーの競合はOEM先のウェルネスダイニングになる。
同社は週に3回配送しているのに対して、ファンデリーはまとめて1週間分で配送している。
ワタミは、若い人からアクティブシニアまで若い人までターゲット広い。
価格はワタミのほうが1割くらい高く、弁当箱で送られてくる
同社は、食材を真空パックで入れて、盛り付けや湯煎はFCでやる。かさばらないようにして配送費を抑えられるので、週3回の配送ができるのだ。

強み

①多品種ランダム生産体制
通常の食品工場は単一商品の生産でいいが、同社は毎日違う食材で1日12品のお弁当を提供している。スケールメリットを活かして、ローコスト製造を確立している。
②低価格かつ豊富なメニュー
値段は、下記の最低価格からFC独自に競合環境を見ながら価格を自由に決定する裁量がある。普通食450円~、小町(小食者向け)320円~、ムース食(咀嚼が難しい高齢者向け)540円~、カロリー調整食600円~、低タンパク食700円~、やわらか食700円~ (小町以外はおかずのみの価格)
大量生産によるスケールメリットとリーズナブルな価格体系を実現している。
保存料はほとんど使わない。塩もあまり使わず、だしで味付けしている。
③一気通貫モデルの実現
管理栄養士による商品開発から自社製造工場と提携工場での生産、2017年10月から冷凍・冷蔵倉庫を群馬に設立して、物流面も整備した。FC加盟店や最終顧客からのフィードバックを商品開発に活かす仕組みもできている。

FCビジネスゆえの高い営業利益率

同社の粗利率は食材卸で約2~3割、ロイヤリティ100%と推定する。
通常の小売業は、出店すればするほど人件費や家賃などの販売管理費が増えるが、FCビジネスは、出店しても本部の販売管理費が増えないので、営業利益率は高い。同社の前期末の営業利益率は9%と比較的高い。

業績推移

17/7期の増収率は前年比26.8%。
17/7期売上の内訳は、FC加盟店向け卸売上が40.7億円(前年比+18.7%)、高齢者施設向け卸売上7.4億円(+60.3%)、OEM売上4.4億円(+66.6%)だった。
FC店舗の純増数ペースは13%程度だったので、既存店の成長が6%程度あったものと推定する。今後数年も売上は二桁で増収が続くと予想する。
高齢者施設向けは、市場規模も大きく、伸びも高いことから、今後も注力していくことで高い伸びが期待される。
16/7期の粗利率が24.7%、17/7期の粗利率が26.2%と改善している。
2017年10月に稼働を開始した群馬の物流倉庫によって、業務効率が改善すると予想される。一日あたりの出荷可能件数がこれまで550件だったが、3000件まで増やせることになった。
今期以降のさらなる粗利率改善に期待できる。

バリュエーション

株価   5590円
時価総額 145億円
予想PER 38倍
PBR 6倍
配当利回り 0%
EV/EBITDA 23倍

2019年2月7日銘柄研究所

Posted by 矢野