7810 クロスフォー アイデアでジュエリー革命を起こせ!!膨大な需要へ勝負の一手! レポートby相川伸夫
※2019年3月4日更新
更新① クロスフォー公式によるダンシングストーンのTVCMの動画が期限切れと思われるリンク切れをしていたので動画リンクを削除
更新② 記事の動画リンクの前にフジサンケイビジネスアイによる同社の特集記事のPDFを追記
クロスフォーは昨年2017年7月20日にジャスダックに上場。売り上げのほとんどを<揺れる宝石―ダンシングストーン>で稼いでいる宝飾が盛んな山梨県・甲府にある企業です。
記事前半では会社概要と収益モデル&在庫について、後半では記事執筆の決め手になった新規事業であるテニスブレスレットがもたらす可能性についてを深く掘り下げます。
※記事が大変長文なので赤字を追うと読みやすくなるかと思います。
◆ 会社概要
土橋社長は若い頃冒険家になりたいという夢があり、世界を回ることができる職業にあこがれも持っていました。宝飾が盛んな山梨出身ということもあり、大学を出てアメリカで宝石鑑別の資格を取得して帰国。1980年から輸入宝石販売ビジネスを個人事業として始め、1987年に山梨県甲府市に株式会社を設立します。宝石の産出国は紛争地域などの途上国が多いですが、土橋社長自ら各国を巡り様々な原石や宝石を買い付けて輸入販売をしていました。
しかし、1990年以降、バブルが弾けて多くの宝飾企業は倒産していました。同社もその際に多くの売掛金が回収できなくなる事態を経験しましたが、買付金を掛けではなく現金で払っていたためになんとか事業継続することができました。
バブル全盛期からそれが弾けていくのを経験して土橋社長は強く思ったそうです。
『宝石販売だけではダメだ!オリジナルでかつ価値の高いジュエリーが作れなければ…』
バブル絶頂の1990年には宝飾市場規模は3兆円でしたが、10年で半分以下まで縮小し、以後なだらかに縮小を続け、現在の日本の宝飾市場規模は9000億円強です。
土橋社長は様々な試作を繰り返しながら開発を続け、ついに現在の同社名前の由来である<クロスフォーカット>を1999年に考案します。
クロスフォーカットを旗印に同社は宝石販売業から製造販売業に業態変化をし、取引先も売上も拡大していきました。
2010年には現在の同社の代名詞ともいえる<ダンシングストーン>を開発
これらの考案・発明の全ては土橋社長を核としたチームで実用化しており、また知財戦略にも長けている同社は基本特許(他社が類似品を作る時には避けられない非常に強力な特許)を国際出願により主要な国々で取得、状況によっては特許ではなく実用新案だけ取っておくなどの柔軟な対応もしています。
・ダンシングストーンは<世の中には無いもの>
認知度アップの為に自社ブランドを安価な価格に設定して販売を始めました。そしてダンシングストーンを全世界展開させるために自社ブランドにはあえてこだわらず、OEM(相手先ブランド名で生産、供給するメーカー)での生産をしていきます。
同社の目的は自社で作ったジュエリー製品を単純に売る事ではありません。
真の狙いは自社の特許技術やアイデア、金具が入った製品を全世界に広めることです。
そして、それは大きく成功しています。
現在中国ではダンシングストーンの模倣品が大量に出回っており、その影響で前期の業績は悪化してしまいました。しかし、それは同時にコピー品が大量に出回るほどダンシングストーンの需要が強く、大人気であるという証拠でもなります。
このダンシングストーンで築き上げてきた世界中の取引先はスワロフスキーをはじめ世界有数企業250社以上にもなり、その販路は世界中の国・店舗へと繋がっています。ダンシングストーンは国内で年間50万個、海外には年間400万個出荷、出回っているコピー品も合わせればそれよりもはるかに多くの数量のダンシングストーンが世界で流通しています。
既に飛躍の素地は整いました。これからの動きが注目の時です!
私は同社の今後の成長における可能性は大変有望だと強く期待しています。
↑の写真は社長が社員旅行でハワイに行ったときに「観光ではなく釣りがしたい」とクルーザーで実際に釣り上げたカジキマグロのレプリカ。
ちなみにこのレプリカは本業とは全く関係ないにもかかわらず応接間に飾ってあり、社長が非常に型破りな性格かつアグレッシブであることを垣間見ることができます。
◆ ダンシングストーンについて
【新作】ダンシングストーン®【PR動画】(30秒)
2018/04/20 に公開
※動画はリンク切れになりました。
昨年上期に上記TVCM(広告宣伝費2.5億円)を実施
―揺れる仕組み―
―多くの有名ブランドでの製品採用例と人気―
守秘義務でブランド採用先を開示できませんが、それぞれのブランドでダンシングストーンが使われた製品があれば、そこはクロスフォーとの取引があるという証拠です。
―収益モデル―
クロスフォーの製品とお金の流れは勘違いや誤解を起こしやすいので注意が必要です。
① 地場の山梨をはじめとする協力工場で生産するファブレス経営
よって、万が一クロスフォーの製品がいきなり明日から売れなくなったとしても工員の人件費がかかる心配はありません。
その理由は、貸借対照表の『製品』金額には<原材料+工賃>で計上されるからです。
製品が売れると製品ごとの<原材料+工賃>が売上原価に計上されます。
② 国内販売は委託販売方式であり、製品在庫には換金価値がある
18kやPt、またダイヤモンドを使った製品(自社ブランド以外)は国内でも数多くありますが、どうしても原材料が高価な分、卸価格もその分高くなります。
これを小売店に買い取り方式(一般消費者に売れる前に商品代金を卸業者(クロスフォー)に支払う)で展開すると、小さな個人店などは商品を店頭に1個しか並べられなかったり、売れてから発注をしても再度店頭に並ぶまでに時間がかかる(機会損失が発生)ことがあります。
これを解消するために前期は委託販売を強化する方針で経営しました。
委託販売方式(小売店や卸業者に先行で製品を貸し付けて、売れた時に商品代金を卸業者(クロスフォー)に支払う)であれば小売店は仕入れリスクを非常に小さく、店頭に複数個の製品を陳列することもでき、クロスフォーとしては機会損失を無くし、売り上げアップも狙うことができます。
※今回の決算で不安視されることが多い貸借対照表の『製品』の勘定項目の在庫リスクについて
戦略的に委託販売の在庫を増やした分は増収に一定の効果はあったとのことでしたが、在庫を増やし過ぎたと評価せざるを得ないでしょう。また、これだけ在庫を増やした=店頭に並ぶ商品が増える⇒しかし、増収は31百万円(1.2%)でしかなく、ダンシングストーンの国内事業は厳しい状況かと思われます。
この点に関しては間違いなくリスク要因になります。当たり前のことですが、同社の在庫は食料品などと違って腐ることが無いために在庫が多くなっても直ちに問題にはなりません。しかし、過剰在庫はデメリットでしか無く、今後の動向によっては減損の可能性を否定できません。
※減損とは価値の低下、または無価値として損失を計上する事。ちなみに原価金額以上で安売りをして捌くと粗利が下がるだけで減損として計上されない。
今後、同社の一番の需要期であるクリスマスのある2Qまでで製品在庫を適正水準に戻していく計画であり、その過程で製品⇒現金になる算段です。
また減損においてですが、例えばアパレル企業の製品在庫が減損される場合は「価値無し!」として大きく減損計算されますが、クロスフォーの在庫は大部分がジュエリーである為、地金と宝石に換金価値が存在します。またはそれを溶かして新たに作り直すこともできます。こうして減損される場合の減損金額は、地金をジュエリーにした加工賃代です。
よって在庫を抱えるリスクは一般企業の在庫と比較すると低く、銀行からの融資枠にはまだ十分な余裕もあるとのことなので、過度の心配は不要と考えています。
製品18億円のうち約9割が18kやPtにダイヤモンドをあしらった換金価値の高いOEM製品(※自社ブランド製品は換金価値が低い)であり、現在もそのほとんどは店頭や卸業者の手元です。国内でのダンシングスト―ンの販売個数こそ自社ブランドのが多いですが、国内売上に占める割合の半分以上がOEM製品の数万円以上のジュエリーです。
※「仮に減損になっても大丈夫!!」と言いたいのではなく、製品18億円分が全て減損(換金扱い)になったとしてもせいぜい数億の損失だろうと試算できるので、打撃は大きいだろうが会社が傾くまでは考えにくいからそこまで心配しなくていいのではないか?ということです。
③ 海外販売は金具パーツのみの販売
こちらは国内と逆の買い取り方式であり、先に原価分の入金(デポジット)を確認してからパーツの発送⇒残額入金なのでキャッシュフローは良好になります。また、金具一つ一つは安いですが、ここにマージンとロイヤリティを乗せて販売することができる為、海外へのパーツ販売は非常に粗利率が高いのが特徴です。
ダンシングスト―ンの可能性は大変に広く、使用用途はジュエリーに限定されないのが魅力です。
バッグ、カードケース、財布、ベルト、サングラスなどなど現在も様々な製品に採用され続けていますがそのすべてをクロスフォーが知りえているわけではありません。
なぜなら海外にはパーツしか販売していないため、それが最終どんな製品に使われているかまで追跡するのが困難なほどに世界も市場も広い為です。
韓国の有名上場企業ではダンシングストーンを財布にあしらったところ大人気となり、一時は入荷が3か月待ちになるほどだったそうです。
現在は中国の模倣によりパーツ販売が鈍化していますが、模倣品は正規商品を扱う企業にとっても好ましくないため、正規商品を扱う企業も自ら模倣品に関する注意アナウンスを出しています。
そうした対策の効果もあり、前期下期には中国でのパーツ売り上げも回復の兆しが見えてきています。
そしてこのダンシングストーンによって拡大し続けてきた販路がテニスブレスレット事業へと繋がる布石となったのです。
◇ 膨大な需要を狙う新規事業!テニスブレスレットの製造販売
まず、テニスブレスレットという名前を初めて聞く人が多く「何それ??」という人が多いと思われますが、要するに『ずらっと全周ダイヤモンドが施されているブレスレット=テニスブレスレット』です。ブレスレットとテニスに直接の関係は一切ありません。
この事業の真の価値を理解するまでに私も時間がかかってしまいましたが、テニスブレスレットの製造販売は急速に成長して、あっという間にダンシングストーンの売り上げをも超える可能性を秘めています。
冒頭で述べたように、今回記事の執筆をする決め手になったのはこの事業のポテンシャルと同社の動き方(本気度)が尋常ではないものだと感じたためです。
順を追って説明します。
①…<生産>機械と品質について
私は製造業出身であり、特に機械系については精通していると自負しています。
今回、訪問取材時に機械と金型も見させて頂きましたが、作りはかなり精巧な代物であり、これを作ったイタリアのメーカーは本当に大したものです!!
現在、全世界で流通しているテニスブレスレットはもれなくキャスト(鋳造)で作られており、部品を職人が一つ一つ繋いで作っているとのことです
物にもよりますが、一つのテニスブレスレットを作る(部品繋ぎ⇒石留めまで)ためにかかる時間は早くて6H、大体一日1本と言われています。
工賃として日本の職人が作ると3万円というのがひと昔前。最近は中国の工員で1本1万円程度との話です。
こちらの機械では貴金属の薄板からプレス成型で宝石を嵌める空枠を作り、枠連結部をレーザーで溶接(ろう付け)して閉じていきます。出来上がるのはチェーンのような長尺のものであり、海外の宝飾メーカーにはダンシングスト―ンの時同様、金具パーツとして売ります。
※ちなみにこの機械のことをテニスブレスレット専用だと思い込みがちですが、カットする長さを変えればネックレスにもピアスにも指輪にも装飾部品にも出来ることが大きな強みです。社長いわく、「この製品から派生させられるデザインは千以上存在する」とそこには強い自信がみなぎっていました。
先ほど出来た長尺の半製品にダイヤを嵌めて固定(ツメ留め)していく機械です。
ダイヤを嵌めた後は作りたい製品長さに合わせてカット、金具取付と磨き工程を経れば売り物として完成します!
この機械で製造した製品についてですが、私はジュエリーの専門ではないのでジュエリーとしての評価はできません。
その代わりに工業的な視点で評価すると、ろう付けに欠けやダレはなく、ある程度の力で引っ張っても切れず、関節部にゆとりがあるために非常にしなやかに曲がり、石も傾きなく正確に配列されており、非常に良い出来栄えだと言えます。
機械には材量投入だけすれば連続で自動生産することができます。
また、材質は銀、金、Pt、真鍮、ステンレスなどにも対応出来、生産スピードも変わらないと言います。これは大変凄いことです。
②…<需要>市場調査と現状のテニスブレスの人気
機械一台で1時間当たりテニスブレスレット18本分完成するということは…
・8H144本⇒20日(1か月)2880本⇒240日(1年)34560本
テニスブレスレットが単純計算では出来上がる事になります。
クロスフォーは貴金属(18kやPt)&ダイヤ(キュービックジルコニアではない)での高価格向けのテニスブレスレットを量産する事を予定しています。
本来ジュエリー(貴金属)は職人が一品ずつ作るものであり、大量生産には不向き(売れないから)と言われていますし、そう思います。
<需要が本当にそんなあるのか!!?>
これが一番肝心だと思うので、実際に東京、名古屋、大阪の実店舗を回って調べてみました。
まず、アクセサリーショップ(3000円~10万円以内の価格ライン)を回っても
テニスブレスレットの存在は皆無でした。
次にジュエリーショップ(10万円~数百万円以上の価格ライン)に行ってみました。
そこでやっと見つけることはできましたが、高級ジュエリー店にしかテニスブレスレットは無く、安くて18万円。高いモノは300万円オーバー。
インターネットで検索してみると、ネットには驚くほど無数の商品がありました。
・日本語で『テニスブレスレット』を画像検索
3万円~10万円の価格帯は18k or メッキ×ダイヤ or QZ
それ以上の価格はハイジュエリーとしての製品だと思われます。
次に海外も調べます。
・英語で『Tennis bracelet』を画像検索(Googleの言語設定も変更する)
・その他の国でも同様にGoogle翻訳で「テニスブレスレット」を言語を合わせて検索(Googleの言語設定も都度変更する)
この結果から各国ともにテニスブレスレットとして認識されており、その国ごとに製品の存在はしっかりと確認することができました。
しかし、これだけではまだ需要があるとまでは言えません。
・【Google trends】を使って全世界を比較検索
世界の主要な40か国で検索エンジンとしてのシェア断トツ1位のGoogleが提供している検索ツールをご存知でしょうか?
こういったBtoCビジネスを調べる時に私はよく使いますが、検索数(Google、およびGoogleエンジンを使っているYahooとかも恐らく含む、検索窓に文字を入れて検索された数)を比較表示して人気の度合いや推移を調べる事が出来る便利なツールです。
限界はありますが、かなり有意義なので知らない人は実際に使って調べてみることを強くオススメします。
※中国とロシアではGoogleのシェアが低いのでGoogleトレンドは有効ではありません。
↑Googleトレンドは絶対数で表示されず、相対比較でしか表せないのでここでは『bracelet』を基準に考えます。
また、世界で一番使われている言語である『英語』でキーワード検索しているので例えばこのやり方だと日本なんかは検索に一切ヒットしません。
上記キーワードを全てその国の言語で統一していくと需要(検索数)を比較することができます。
上記のデータから以下の事が読み解けます。
・検索はクリスマスに向けて毎年周期的に平常の倍の検索になる
・『ブレスレット』に対してテニスブレス&テニスネックレスの需要は概ね2~3%ある
・『ブレスレット』に対してダイヤモンドを含むジュエリー需要は概ね12~16%ある
※ちなみに日本ではここまでの数値が出ません。そうなるとテニスブレスレットは国外顧客がメインと想定出来ます。
↑の二つの画像は先ほどの検索の続きです。
・世界地図の色の濃淡は検索数の違いですが、色自体は1%以上でついてしまうので色のかなり薄い物は除いて考えるとよいです。
『bracelet』の検索ワードには色石やレザー、天然石、作り方、似合う物の選び方等あらゆるものが含まれています。もちろんそれは『Tennis~』での検索でも同様ではありますが、braceletに比べるとノイズの割合は少ないと考えられます。
私はこれらの数字を見てやっとテニスブレスレットの膨大な需要が世界に存在することを確信しました。
↑の市場規模はアクセサリーまで含んでいるので、ジュエリー市場はこの3分の1以下の数字だと思います。それでも市場は膨大です。
あとは、価格と品質と販路と競合がクロスフォーが作るテニスブレスレットの半製品が売れるかのポイントです。
③…<障壁>誰でも簡単に儲かる商売はすぐに陳腐化する
参入が簡単で、しかも儲かる商売はすぐに多くの企業の参入で価格競争が始まって陳腐化するというのが経済市場の理です。
最近で言うと太陽光発電や収益不動産のサブリース契約販売、マンガアプリやスマホゲーム、水素水などがパッと思いつくところだと思います。
誰よりも早く参入した企業はすさまじく儲かり、それを見て続々と企業が新規参入。気づけば数年でレッドオーシャンになり、儲からなくなってしまう。
ではテニスブレスレットはどうなのでしょうか?
・2017年9月 イタリアの展示会に出展したことがテニスブレスレット事業のきっかけ
同社がこのテニスブレスレットに繋がった経緯はこの展示会です。
https://www.vicenzaoro.com/it/
世界のファッションの中心地=イタリアであり、有名ブランドを列挙すると直感的に分かります。
<イタリア発ファッション有名ブランド>
ブルガリ、フェンディ、グッチ、プラダ、フェラガモ、トッズ、ドルチェ・アンド・ガッバーナ、ディーゼル、アルマーニ、ミュウ・ミュウ、フルラ、ヴェルサーチ
等が挙げられますが大体知っていることと思います。
他にも自動車だとフェラーリ、フィアット、マセラティ、ランボルギーニとかもです。
上記展示会は企業商談を目的とした展示会であり、金および宝石部門では世界最大規模の展示会です。
クロスフォーも例年のようにダンシングストーンの新規販路開拓を目的に出展していたらたまたま製造機械の販売契約を目的に出展していた企業に出会い、そこからすさまじいスピード感で今回の導入、整備に至ったという次第です。
『機械を買えば誰でも作れるなんて全然ダメじゃん!!』
一見そう思えるのですが、産業構造はそうなっていないところに参入障壁はあると感じました。
・ジュエリーの大量生産機械は全然売れない
- そもそもジュエリーは在庫回転月数が長い(すぐに売れる物ではなく、店頭で滞在する期間が長い)
- 宝飾品は地金がとても高価なので尚更大量生産に向かない(作りすぎると地金にキャッシュが取られて会社が回らない)
- 年間34560本も機械で作れてもそんなに捌けない(販売先、小売店、宝飾メーカーとの繋がりの物量が重要)
- 大量生産=価格低下を自分で引き起こしかねない(世界で大成功しているブランド(高価格帯)は販路があっても大量生産はやらないと思われる(この機械を導入できるとすればスワロフスキーのような安価な価格で量を売っている企業)
- 宝飾業界の機械として一台5000万円程度はかなりの高額(貴金属は柔らかくジュエリーも小さい=機械も小型で済む。業界での機械相場は1000万以下)
以上の理由からこの機械はまだ世界で数台しか販売実績が無い(この機械もここ数年で市場に出てきた)との情報です。
ジュエリー業界の業態と常識が参入障壁だと考えることができます。
・参入障壁はビジネスモデルと販路
自社ブランドで立ち回るのではなく、黒子として存在し、世界で年間400万個のダンシングストーンが売れる=それだけの宝飾メーカーや販売業者との取引がすでにあり、世界から品質に対する信頼や認知、上場による信用があり、大量生産できる資本を持っているクロスフォーならこの機械でのビジネスがバシッとハマるのではないでしょうか?
つまり、ダンシングストーンの販路にテニスブレスレット(ネックレス・ピアス・指輪)をアドオンすることが出来るのです。
各国の宝飾メーカーはクロスフォーから買った長尺から作りたい製品長さや石のランク、金具を変えて自社ブランドで販売すればいいのです。
クロスフォーは工賃代=電気代なので当然テニスブレスの粗利は高いことが予想できます。
また、プレスで加工するのとキャスト(鋳造)部品を人の手で組み上げるのだと地金量に大きな違いが出ます。
キャスト(鋳造)は薄板製造が苦手で、プレスは薄板が得意。よってプレスの方が薄くて軽くなるのは必然です。
これも物によるとは思いますが、それでも地金の総量が半分以下にはなることが予想できます。
これによって従来より細く、また多少安い価格での流通&市場の供給量の増加から消費者からのテニス製品(ブレスレットやネックレス)への認知度が世界的に高まることも期待できます。
金具販売をすでに世界にしているクロスフォーだから市場への金具・パーツ流通ビジネスが可能になるのです。
クロスフォーがこのビジネスで成功すれば、中国当たりの宝飾メーカーは機械の導入を考える可能性はかなり高いのではないかと思います。
テニスブレスレットが量産できる機械は世界中の展示会を年間10以上回っているクロスフォーが知る限りはイタリアのこの1社だけとのことで、現在他社の参入対策を検討しているそうです。ちなみに量産機械を買わずに一から開発するのは正直相当困難だろうと思う程には精巧な作りでした。機械を真似するよりも機械を買うと思われます。
④…<狙い>なぜファブレス経営だったのに機械を買ってまで取り組むのか?
ここまでの流れで大部分は説明が終わりました。
しかし、なぜクロスフォーはファブレス経営でリスクを抑えてきたのに、ここにきてリスクを負うようなマネをするのでしょうか?
その謎を解くカギは上場時の有価証券報告書にありました。
同社はチャンスに備えてずっと準備をしてきたのです。
そして2017年9月のイタリアでの巡り合わせが待っていたチャンスだった。
だからこそこのチャンスに力強くBetしたのだと思います。
新規に導入したテニスブレスレットは単純計算だと年間34560本作れると試算しました。
7月には本社に搬入され、イタリアからメーカーの職人が完全調整と生産ノウハウや機械保全等の伝授をしてそろそろ生産に入るとのことです。
『果たしてこんなにも売れるのだろうか…?』
ふつうはそう考えると思います。
もし、すごく売れ行きが良ければ昼夜で16H回せば年間69120本生産することもできます。
さらに売れ行きが良ければ残業や土日でさらに回す事も出来ます。
ー同社の動き方(本気度)が尋常ではないものだと感じたー
はじめにこう言ったのは、この空枠製造機を年末までにもう1台と、年明けにももう一台。
計3台本社に搬入する契約をすでに結んでおり、現在イタリアでその装置を製造していると確認できたからです。
社長は宝飾の世界をずっと自分の足で歩き、自分で開発した金具を自分で売り込んできた人物です。
その社長がアクセルをベタ踏みするというのであれば、これはもしかすると、あるいは期待できるのかもしれませんが、それでも生産で躓いたり、思ったほど売れなくて激しくコケるのかもしれないし、むしろ凄まじく伸びる可能性だってあります。
※念を押しますが、くれぐれも投資は自己責任です。
◇新商品Deco Rin(デコアートを乗せれる5kの指輪)
実用新案は取得済みです。
Deco Rinのターゲットはネイルサロンで働いているネイリストやフリーのネイリストになります。ネイリストの国内の数は統計がありませんがネイリスト協会の技能検定での有資格者数から判断してみます。
【※公益財団法人日本ネイリスト検定試験センター公式HPより】
1級:トップレベルのネイリストとして必要とされる総合的な技術及び知識。
2級:サロンワークで通用するネイルケア、リペア、チップ&ラップ、アートに関する技術及び知識。
3級:ネイリストベーシックのマスター。ネイルケア、ネイルアートに関する基本的な技術及び知識。
上記の事から日本には潜在的なネイリストを含めると10万人程度(1級の人は2級にもカウントされていると想定)いる事になります。
新商品の『Deco Rin』はネイリストの皆さんの空き時間を有効に使って収益アップを図ってもらおうという商品です。
指輪の台座部を日常的に使うネイル道具だけでデコることが出来ます。
デコアートを施したDeco Rinはネイルに来たお客さんやネットフリマなどで売却して収益を得てもらうビジネスモデルです。
お客さんがデザインに飽きたらネイルを剥がす要領でリムーバーを使ってOFFすれば何度でもデコれます。
世の中にありそうでなかった商品なのが面白いです!
現在、ネイルサロンは国内に25000店舗以上あり、出張スタイルで働くネイリストも多いこともあり、ネイル人口がこの数の何倍になるかは分かりませんが、需要は一定数あると思います。
また、指輪では出来ない造形がDeco Rinなら出来るというのも魅力だと思います。
◇クロスフォー(7810)の投資指標
※2018/10/5現在
終値 421円
時価総額 74億円
※19年7月期会社予想
売上 43.4億円
営業利益 3.5億円
経常利益 3.4億円
純利益 2.0億円
今期末配当 2.5 円
配当利回 0.59%
PER 36.93
PBR 2.64
ROE 7.6%
自己資本比率 47.8%
今期の業績予想について、テニスブレスレット製造やDeco Rinに関しては取材時に「新規事業なので控えめに想定している」との表現がありました。
設備投資に対する姿勢とは裏腹に、テニスブレスレットによる増収要因はほとんど計上されていないと判断できると考えています。
・ 9月28日付 東証の信用残高
買い残 598500株
売り残 450800株
・ 株主優待
100株以上で4500円相当のダンシングストーン(クロスフォーブランド)
優待利回り10.69%
◇ あとがき
ここまで読んで頂けたなら同社について十分理解いただけたと思います。
書き忘れましたが、テニスブレスレットの海外販売に関しては買取方式で事業展開していくとのことなのでこの点においては資金繰りの心配はいらないでしょう。
国内に関してもテニスブレスレットは買取方式での展開を検討しているとのことでした。
また、ここまで読んだ方の中に「職人が作ってないジュエリーなんて売れる訳ない!!」
と思った方がもしかしたらいるかもしれませんが、それは大間違いです!!
というのも、今や結婚指輪や婚約指輪だって2Dや3DのCADを使ってデザインしてキャスト(鋳造)で指輪の原型を作るのはスタンダードですし、それはフルオーダーのジュエリー屋さんでも同様です。キャストを使うのは、従来の鍛造にはコストが掛かる(製作時間が長い)のとデザイン限界があるからです。
複雑な形状のシルバーアクセサリーが巷で色々売られていますが、1万円以下で売られている物の99%は機械による量産技術が使われているからあの価格で買えるようになったんです。肌感覚になりますがここ10年くらいで急にいろんなデザインや種類が増えたように感じませんか?
300万円以上のジュエリーにも当然キャストは使われています。原型を機械で作ってからその後の石留めや連結、金具や磨きには確かな職人の腕が必要なのはこれからもまだ変わることはありませんし、「こちらの商品は職人が一個一個作ったブレスレットです!」という営業トークは今も、そしてこれからも健在です。
クロスフォーはキャストした部品を手組みしていた工程を機械化して量産出来るようにコマを進めようとしているだけであり、量産でも構わないから安くて品質の良い【原型】が欲しい顧客にだけ売るのです。【キャスト×指輪orネックレスorブレスレット】などで検索して出てくるデザインは原則量産可能という事になります。それがPtや金だと値段が高くて、銀だと値段が安いだけの話なのです。機械化が進んだおかげで昔よりも様々なデザインのジュエリーが身に着けられるようになったのです。※切なくなった方いたらごめんなさい。
同社が今後どうなるのかは未知数ですが、間違いなく今後の動向を注視していく楽しさがある要マークの企業です(笑)
最後に同社の企業紹介にまつわる動画等を貼っておきます。
◆特集記事『クロスフォーの挑戦』IRへのリンク ※2018年12月27日
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