7810 クロスフォ―アップデート EZ Claspとテニスチェーンの持つポテンシャル! レポートby相川伸夫

2019年12月4日

前回レポート2018年10月6日掲載

◆7810 クロスフォー アイデアでジュエリー革命を起こせ!!膨大な需要へ勝負の一手! レポートby相川伸夫

https://double-growth.com/7810-crossfor/

【前回記事の要旨】

  • 創業者の土橋社長は切った張ったの世界のジュエリー業界を渡り歩ける経営者であり、世界市場で勝つ気しかない野心家
  • 0to1の会社であり、特許の知財戦略も視野に入れた『ジュエリーパーツ製造企業であり、自社開発・自社製造した付加価値の高いジュエリーパーツを売る
  • テニスブレスレットと製造機械について
前回の記事主題はこの3点の内容になっています。

※今回初めて読まれる方は前回の記事も読んで頂いた方が全体感を理解しやすいでしょう。

◆アップデートレポート執筆に至った経緯

前回の記事でお伝えしたテニスチェーンの進捗情報に加え、クロスフォ―への印象が大きく変化する新規事業であるEZ Clasp(イージークラスプ)事業が立ち上がったからです!

前回の記事を読まれた方からの私への意見として「どうして相川さんが業績低迷しているジュエリー企業を取り上げているのかが分からない」という声をいくつか頂き、私がこの企業を取り上げている真意が今ひとつ伝わっていないと感じましたので冒頭に書き加えさせて頂きます。
私がクロスフォ―を取り上げているのは、この企業の持つポテンシャルが極めて高いということと私の専門分野である『製造業』である企業というのが大きな理由です。
業績には現在数字としての結果が出ていません。私が執筆しているのは全てこれからの話であり、決算に数字が表れる段階ではまだありません。
アナリストとは元来実績を元に定量分析と定性分析を行い、将来の業績予想を行うものですが、今は定性分析に大きく偏る分析しかすることはできません。
 
業績としての結果の数字は数年後に分かります。
それでも結果がまだ分からない【今】この企業を取り上げる事が私の中で非常に価値のあることだと感じますので執筆させて頂きました。
クロスフォ―を理解するに当たり、一番大事なポイントは、企業にとって非常に大きな変革点に立っている事への認識です。
 
ダンシングストーンの開発に伴う世界中での特許取得。それからのパーツ製造事業が同社を上場させるまでに至りました。
それ以上のポテンシャルを秘めているのがEZ Clasp(イージークラスプ)になります。
同社をジュエリー小売り会社としてではなく、【製造業】として見てもらうと私が感じる魅力に気付いてもらえるかもしれません。

クロスフォ―を製造業としてみた時の魅力

  1. 設備投資に対してのリターンが極めて高い(5000万円の設備で年間どれだけ稼げるか?)
  2. 貴金属はg当たりの金額が高いので商品が小さく置き場にも運搬にも困らず、製造ラインも場所を取らない(生産量を伸ばすための在庫倉庫、出荷倉庫、輸送費に悩まされない)
  3. 製品の粗利率は低いもので25%、高いもので90%以上まであり、商品の平均でも40%以上の粗利率(全製造業平均の20.5%と比較しても2倍以上と高く、限界利益率も極めて高い)
クロスフォ―という会社を製造業としての視点で視た場合には上記の評価が出来ます。
つまり、これらの事からテニスチェーン、EZ Clasp(イージークラスプ)における〈生産を軌道に乗せられた場合、固定費を大きく増加させずに売上を数倍以上に伸ばせて利益を産める特殊なビジネスモデル構造の企業である事からポテンシャルが高いと評価している〉というのが私がクロスフォ―に感じている魅力です
※出典 経済産業省 平成30年企業活動基本調査確報-平成29年度実績-
 
一般的に粗利率が際立って高いビジネスは営業人員や広告費・販促費などの販管費が大きい構造であったり、そんなに頻繁に商品が回転しない(眼鏡屋さんのように在庫をたくさん並べていても売れるのはわずか)事から営業利益率まで高くコミットできる企業は少ないために、<営業利益率10%以上はエリート企業>と言われる所以です。
宝飾の世界は眼鏡屋さんと同じであり、在庫回転率が悪いビジネスです。よって小売店では粗利率を高く設定しておかないと売れる数が少ないので潰れてしまいます。
 
そんなジュエリー小売店が欲しいのは売値を高くしても売りやすい商品であり、〈仕入れ値段に対してキレイで可愛いもの〉つまり、付加価値が高い商品が欲しい!
世界中のジュエリー製造企業はそうした付加価値の高いものを作れば、ジュエリー小売り店が買ってくれる。
『コストを掛けずに付加価値を付けることは出来ないだろうか?』―あった!!ダンシングストーンだ!!―
 
こうした理由からクロスフォ―のダンシングストーンパーツが世界中のジュエリー製造企業から買われているのです。
・例えば、金のダンシングストーンのパーツが一個5$だとして、小売り店に通常のネックレスで納めると売値が1800$、パーツを使用してダンシングスト―ンジュエリーとして納めると売り値が2000$であれば5$でパーツを使用しない理由がありません。
たとえそのパーツの原価が1$であろうが気にされません。パーツを購入するジュエリーメーカーはパーツ代以上の【付加価値】を手に入れ、小売り店は2000$のジュエリーを4000$で出しても売れるのでWIN―WIN―WINです。
・EZ Clasp(イージークラスプ)もこのモデルに近いストーリーです。付加価値を売るのです。
しかし、同時に留め金具は道具なので、粗利率はそこそこに世界中のシェアを取ることに注力します。
 
テニスチェーンは良い品質のものを現在の市場製造コスト(流通価格)よりも安く製作し、流通価格との差益を狙う製造業の王道ビジネスです。
王道ビジネスではありますが、固定費(投資金額)に対してここまで極めて優れたリターンが出せる製造業を私は知りません。
一般的には大量に安く作って売るという考えだけでは成功しません。なぜなら儲かると分かることは誰もがやりたがり、すぐにレッドオーシャンになってしまうからです。
…が、実は思うほどこのテニスチェーン製造は簡単ではなく、ジュエリー業界の特殊性も手伝って大きな参入障壁が存在していると考えられます。

◆記事構成

  1. 市場で使われている留め金具について
  2. EZ Clasp(イージークラスプ)の持つ高い可能性
  3. テニスチェーン製造の現状
  4. 日本精密との提携【ブリリアントブレス】
  5. 総括
  6. 参考資料

1、市場で使われている留め金具について

アクセサリーの留め金具について、普段意識されている方は少数だと思われます。そこで、現在の留め金具についてまとめました。

ネックレスに関してはこの二つでほぼすべてのアクセサリーからジュエリーまで取り付けられています。100円の安いストラップにも使われますし、100万円以上するようなカルティエのハイジュエリーのネックレスにもカニカンも引き輪も使われます。

ブレスレットの方が留め金具の種類やデザインも豊富です。

  • マグネットは付けやすさは優れていますが落下・紛失の懸念からアクセサリー向けです。ジュエリーに使う場合は他の留め具がセットになっている事が多く、磁石分だけ重たくなります。
  • マンテルはアクセサリー(1万円以下)に使われる事が多いです。マンテル自体がデザイン性を持ちますが多くの地金を使うのでジュエリーには向きません。
  • スライダーはシリコンの穴の隙間でチェーンを動かし、摩擦力で位置を維持します。付けやすいかと思いきやものによっては苦戦します。また、シリコンが損傷すると緩みやすいです。アクセサリーから数万円以下までのジュエリーでよく見かけます
  • 折り込み《高級》はストレート形状でデザイン性も損ないません。また外れにくいので高価なジュエリーにしか使われていません。しかし、装着難易度が絶望的です。
  • 挿し込み①〈低級〉突き刺すだけで留める事が可能です。比較的装着難易度は易しいのですが、幅広の物しか存在していないので使えるデザインがかなり限定されます。
  • 挿し込み②《高級》はストレート形状でデザイン性も損ないません。幅広だった低級の物に対して細くなっても強度が持つように引っ掛かりが強くなり、サイドの固定金具も付いています。しかし、そのせいで折り込みよりはマシなものの装着性は悪いです。
※これ以外にも留め具は有りますし、引き輪やカニカンが使われることもありますが、大別するとこのようになると思われます。
装着性が悪くとも現状こうした商品も売れている訳で、慣れで克服できるのだとは思いますが、概ねの評価としてこうなります。

先ほどの金具自体の特性+販売価格に合わせて、パーツの材質が上図のように変動されてネックレスやブレスレットの留め金具として選定されることになります。
 
ネックレスに関しては高い物から安いものまですべて引き輪かカニカンの2種類で作られていると言っても過言ではありません。
しかし、ブレスレットに関しては価格帯が上がり、数万円以上になると折り込み《高級》か差し込み《高級》しか選択肢が無く、テニスブレスレットのような10万円以上のジュエリーでは留め金具の装着性が悪いことが購入を断念する理由になっていることを宝飾の小売り店10店舗以上へのリサーチからも確認しました。※記事後半で紹介
実際の販売員の数人から「簡単に付けられる留め具があればもっとブレスレットも売れるのに…」という声も確認できて、土橋社長の狙い通りなのは間違いないと感じます。
つまり、EZ Clasp(イージークラスプ)の最初のターゲットはブレスレットの留め具です

 

2、EZ Clasp(イージークラスプ)の持つ高い可能性

◆EZ Clasp開発 代表インタビュー動画 ※音声有り推奨
 
EZ Clasp(イージークラスプ)はブレスレットはもちろん、ネックレスにも使う事が出来ます。
留め金具はチェーンが使われたアクセサリーにおいて【必須パーツ】です。
引き輪もカニカンも製造しているのは世界中の中小のジュエリーパーツ製造メーカーが作成して、それぞれの国で市場流通しています。引き輪もカニカンもいつ、誰が作ったのか分からないくらい前から存在していたという話でずっとこれが当たり前だったというのです。
世界で有名なジュエリー小売り企業は何社もあります。しかし、世界を股にかけてそのパーツを輸出するのは世界でもクロスフォ―のダンシングストーンのパーツくらいな物なのです。
これは実はとてつもなくスゴイ事をやってのけています。
最終製品はそれぞれの会社のブランドの名前で販売すればいいのです。その製品の黒子としてクロスフォ―の金具が使われるだけで良い。
世界でシェア45%も誇る日本のある大企業のビジネスモデルに非常に良く似ています。
ファスナーを製作しているYKKのビジネスモデルです。
ちなみにクロスフォ―の社外取締役の井上社外取締役がまさにYKK出身かつユニクロでの経歴を持つ方であり、現在も知恵を借りているのだと推測されます。

EZ Clasp(イージークラスプ)は先ほどの留め金具の市場に対して大きな革命を起こす可能性を秘めた製品であると思われます。
肝心なのはこういう物がありそうでなかった事です。
ダンシングストーンの開発をしたときもそうです。世の中に存在しなかったものを土橋社長が0から生み出しました。
中国のパーツ製造企業は製品を見て模倣品を製造しました。模倣品製造が容易であり、流通価格が高く設定されていたからです。それだけダンシングストーンの与える付加価値が非常に高いことの裏付けでもあります。
クロスフォ―はダンシングストーンのパーツをライセンスを結んだジュエリー製造メーカーに直販でのみ販売しています。
パーツ卸市場には今も昔も一切流していません。それは信頼できる相手に使い方も教えライセンスを結んだお互いのブランド価値を維持して共に利益を上げる為です。
よって、クロスフォ―の取引先は必然的にブランド価値を重視する大手のジュエリーメーカーが多く、中国の中小ジュエリー製造企業は正規ルートのブランド価値よりも、正規流通価格より安価な模倣品による差益を求めたのです。
中国も昔に比べるとファッションやブランド、特許に関する認知や考え方はかなり向上してきているとのことですが、現在クロスフォ―は中国以外への営業に注力しています。
そうした活動によって着々と直販ライセンス契約社数は増えており、世界で350社との取引口座が開設されているとのことです。
上記の動画(2:20~)で話していたように、香港の展示会で信頼できる取引先に5日ある日程の初日だけEZ Clasp(イージークラスプ)を披露しました。
2日目からは展示することはありませんでした。
何故なら展示会1日目だけで現状の生産体制で作れる受注キャパを超えてしまったからです。
EZ Clasp(イージークラスプ)の特許も世界で先願しており、ダンシングスト―ン同様に高い付加価値を付けて販売していくのがこれからの同社の新規ビジネスになります。

◆EZ Clasp(イージークラスプ)の生産について

現状の生産体制はキャスト製造(鋳造)したものをタイの組付け工場で一つ一つ手で組み付けしているので製造コストも高く生産量もまだまだ少ないです。
プレス金型のプロトタイプが出来たので、足ふみ式によるプレスで一日3500ショットの生産は可能になるそうですが、まだまだサイズ、金種共に開発段階とのことです。
 
ここから一年程度はプレスの金型台数と種類を増やし(金や銀、サイズでも金型は異なる)、手組人員を増員してノウハウを蓄積しながら生産数を増やしていく計画です。
その先はフルオートメーションによる自動化での加工・組付けでEZ Clasp(イージークラスプ)を生産できるようになればかなり面白い市場が開けるのではないでしょうか?
上の数字は世界の金具市場の概算であり、土橋社長いわくかなり厳しい低めの数字で2000億円という推計とのことです。
今期のEZ Clasp(イージークラスプ)の売上見込みは4億円です。
5年後の200億円というのは全自動ないしはそれに匹敵する生産能力が確立できたときの絵になりますが、大量生産によって製造コストが下がればその分売価も下がる。するとジュエリー製造メーカーにとっての購入コストも下がるのでシェア獲得は加速するでしょう。
私の市場調査における感覚としては、販売コストさえ下がればこの数字は実現可能ではなかろうか?と感じています。
 
またEZ Clasp(イージークラスプ)製造を必ずクロスフォ―がしなくてはならない理由も特に無いと思います。
ティファニーやカルティエなどは指定工場で作らないといけないという話ですので、そういった企業にはライセンス許諾してフィーをもらうという方法でも構わないと思います。
EZ Clasp(イージークラスプ)はどことも喧嘩することがありません。
YKKのファスナーは有名企業のジーパンにも地元のジーパンにも使われます。鞄にも自動車のシートにも宇宙服にも使われます。
EZ Clasp(イージークラスプ)にはさすがにそこまでの汎用用途は無いですが、現在がシェア0%なので今後の可能性は無限大でしょう。
数十年引き輪とカニカンしかなかったのならそろそろ新しいEZ Clasp(イージークラスプ)が使われるようになっても不思議では無いと思います。

◆そうは言ってもEZ Clasp(イージークラスプ)も模倣されるのでは?

無いとは言えませんが、その可能性はかなり低いと考えています。
【模倣されにくいと考える理由】
  1. EZ Clasp(イージークラスプ)は留め金具であり、道具なのでマージンがそこそこの設定になることから模倣しても差益が少ない
  2. 加工難易度が高く、ダンシングストーンの時よりも金型投資が高額になること。
  3. 特許侵害による訴訟リスク(特許が成立した場合。現在世界中で特許出願中)
  4. 1・2の理由から模倣品を買う側にとって模倣品がそんなに安くならないだろうこと
  5. ゆくゆくは全自動化によって製造コストを大きく下げ、世界中に普及させるべく販売価格を大きく下げるので模倣品より安くなるだろうと考えられる
以上の5つのことからEZ Clasp(イージークラスプ)に関しての模倣リスクは低いと考えます。
※ちなみにダンシングストーンを模倣する業者にとってのストッパーは〈3〉くらいしかありませんでした。

3、テニスチェーン製造の現状

前回の記事で17年9月に出展したイタリアの展示会での出会いから導入したテニスチェーン製造機械において大きな進展があったので報告したいと思います。
「テニスチェーン?テニスブレスレット?って何だっけ?」
という方は再度↓の前回記事を参照ください。基本的な説明は割愛します。

【テニスチェーン製造の進展】

  1. 奇跡の人材の入社(最重要事項)
  2. 生産設備が正常稼働開始
  3. 新規受注をストップ
  4. 検査工程自動化設備の開発
  5. 国際宝飾展でクロスフォーのEZ Clasp付きテニスブレスレット現認
主な進展はこの5つになります。
掘り下げて一つずつ説明していきます。

1、奇跡の人材の入社(最重要事項)

私がアナリストになる前の経歴は、大手自動車部品工場の現場で試作・金型整備・プレス型の保全・改善、号口での不良低減活動などの【塑性加工(切る・曲げる・削る)】を10年以上してきました。
また、機械系の技能五輪選手(https://aichi-gorin-abilym.jp/competition/#ginou01)として2年間修練を積んで得た経験とμm加工技能と知見もあります。
そうした経験も活かして、製造業のアナリストとして活動させて頂いています。
 
そんな私は、クロスフォ―がテニスの機械を導入するという話を聞いてすぐさま現地で機械を確認して前回の記事を執筆しました。
その際に設備をくまなく確認させて頂いた際に「この機械設備は極めて構造が複雑であり、機械生産のノウハウも持っていない御社は早急に技能・技術・知識のある優秀な人材を採用しないとこの機械生産のシナリオはコケてしまいますよ!」と生意気ながら強く進言させて頂きました。
その後実際に優秀な人員が採用できなかった期間は生産体制の構築も調整にも難航して、決算短信の業績不振の説明にも『テニスチェーン製造の遅れにより…』と書かれていたのは記憶に新しいです。
 
その後しばらくして、今年の3月にやっと奇跡だと讃えられるほどの人材が入社したのです。
そのエンジニアの方に先日、クロスフォ―本社で現物を見ながらどういう不具合があったのか、どうやって改善していたのかを2時間ほど取材させて頂き、あまりにも規格外の傑物が入社した事を確信できました!
製造リスクは同社にとって極めて大きなリスクです。しかし、私はやっと安心できました。この方で駄目なら誰でもダメなんじゃないか?と思うほどに(笑)

◆奇跡のエンジニアの半年程度で築いた実績紹介

  1. 機械を調整して生産をスタートさせた
  2. イタリアメーカーからの消耗部品(部品納入に3か月で、かつ納入部品精度が毎回10ミクロンはズレていた⇒日本企業ではありえない!!)を全て国内メーカーで内製化して品質も安定化
  3. 加工品質を引き上げるための各所の設計変更(しなやかさ・強度上昇)
  4. 金・Ptが量産出来なかったのを設計変更で量産クリア(以前はバリが出ていた)
  5. 連続ショット数を2倍に出来るように部品変更を材質・表面処理から調整
  6. 生産管理・品質管理の仕組み・条件表の整備(工場としてのあるべき姿に)
  7. レーザー溶接不良率を各種改善で大幅に低減(取材当日は12Hの稼働で30m製作し不良率0%でした)
  8. 機械が置いてあるだけだった環境に酸洗い・バレル処理などの後工程を追加して生産環境を完全に確立
クロスフォ―に来る前に彼が何をしていたか?というと【あらゆる企業や現場を転々として出来ない事や困っているモノがあれば行って解決して、そしたらまた次の企業へ行く】と。マンガに出てきそうですが実在しています。
年齢は40代。趣味はDJであり、元バイクのレーサーであり、パラグライダーの学校にも入っており、金魚のブリーダーでもあり著書も出版していてと多岐に渡ります。
エンジニア経験は業種を大きく跨いでおり、機械・電気・レーザー(光学は特に専門にやっていた)・流体力学・生産システム・品質管理・液晶開発・LMガイドなどの超精密制御。東日本大震災では放射能関連のビジネスをし、日本科学技術連盟のQCにて、某企業での講師経験もあります。
オーストラリアの食品ナッツ工場を一から立ち上げる仕事を請け負った時も、自分がやった方が圧倒的に早いからと自ら工場配線。設備メーカーも現地に無かった事から炒ったナッツを冷却する放熱冷却設備を自ら設計して現場から大好評を得ました。オーストラリアでの工場立ち上げ一年の工期予定をわずか半年で軌道に乗せて日本に帰国という驚異の人物です(笑)
 
とにかくワクワクするチャレンジが大好きで、面白そうだと感じて貿易を始めた事も。
ベルギーチョコの輸入を始めてバレンタイン商戦の3か月で売上2億円叩き出したり、韓国と台湾では名指しで半導体会社の指名を受けての仕事もしており、出来ない・知らない物もその分野の会社での仕事で修得してしまう。
 
『知る人ぞ知る』人材として企業を渡っているプレイヤーです。
【ホントに優秀な人材は一か所には留まらず、また何をやっても結果を出す】という話を前に聴いたことがありますが、まさにそんな印象を受ける人物でした。
 
クロスフォ―への入社動機は至ってシンプル!
『こんな訳の分からない機械があって現状満足に誰も動かせられない!この機械を動かして新規事業を軌道に乗せるのが面白そう!!!』
 
動機はホントにこれだけ(笑)
マンガに出てくるキャラクターみたいな人でした!
責任感は極めて強いのでそこは安心しています。
現在はテニスの生産体制の完全構築、EZ Clasp(イージークラスプ)の全自動の量産まではコミットしてくれるでしょう。
その先に土橋社長が新規事業で面白い事が始まれば継続して力を振るってくれるものと期待しています。
私が今まで出会ってきた中でもダントツに優れたエンジニアであり、かつ複合的な視野で行動・連携が出来るリーダーシップも持ち合わせていると思われます。
現在製造部部長として現場指揮を執っており、テニスチェーンもEZ Claspも、機械・金型・自動化計画のすべての中核を担うスーパーエースです!!
今後の大活躍に期待しています。

2、生産設備が正常稼働開始

イタリアのテニスチェーン製造機械設備はジュエリー業界では非常に高価な5000万円という設備(一般には1000万円以下)であり、またテニスブレスレットという一般には販売価格が高く、量産できてもほとんどの企業では生産能力に対して売り捌くことすらできないというのは前回の記事で説明したと思います。
クロスフォ―が導入しているのは現行最新モデルで、その前の旧型モデルも存在しています。

【確認出来ている機械導入拠点について】

  • 日本…クロスフォ―に最新モデルが3台(金・Pt・銀をすべて加工できる)
  • タイ…旧モデルが1台(銀専用)
  • インド…旧モデル(多分)が1台(Pt・金は加工出来ない)
  • トルコ…最新モデルが1台(現状稼働していない。壊れた?)
  • スワロフスキー(拠点不明)…旧モデル、恐らく1台ではないか?(真鍮と銀)
金のテニスチェーンは世界でクロスフォ―以外に出来ている企業が無いという事が分かってきました
何故こうした事が分かったかと言えば、テニスチェーンの受注があまりに好調過ぎたために作りきれない分を他社から買い付けようとオーダーを出していった結果、どこでも作れていないという事情が分かったというのです。
極めて面白い展開です(笑)
クロスフォ―で金が加工できるようになったのは先ほど説明した『奇跡の人材』その人の多大な功績に他なりません。
クロスフォ―が大元のイタリア機械メーカーに確認したところ、テニスチェーン製造機械はこれまで累計で10台未満しか販売実績が無いという話でした。
この話を信じるのであれば、概ね上記企業群に+1~2社となります。
 
―銀はみんな量産出来るのに、金は全然出来ていないー
この一番の理由は、金がたった1gで畳1畳まで延ばすことが出来る高い展延性に起因しています。つまり、プレス工程がネックになるのです。
銀や真鍮をプレスするのはおせんべいをパキって割るようなイメージに対して、金は粘りが極めて強い。これは柔らかい生木を折るようなイメージになります。
 
【せん断加工とは?:プレス加工の基礎知識6】Tech Note
 
上記引用画像は鉄の板材をプレスする際の説明ではありますが、金も銀も基本的な流れは変わりません。
しかし、板厚が0.2mmとなると難易度が格段にハネ上がります。
ましてや材料の粘りが強くなるにつれてクリアランス(刃と刃の隙間)を狭くしないといけないというのがプレスでの常識になります。

私には金なんて高価な貴金属をプレス加工した経験は無いので、適正クリアランスは分かりませんが、片側当たり板厚5%以下ではあろうと思われます。
つまり…
厚み0.2mmの薄板をプレスしてバリを最小に加工するためのパンチ(オス側)とダイス(メス側)の片側クリアランス(隙間)は…
 
  •  2mm×10%÷2=0.01mm以下=10μm以下(単位ミクロン)

従って超精密な10μm以下の精度調整が必須であり、パンチもダイスの切れも非常に重要、加工の歪みを抑える工夫も重要
 
髪の毛1本の太さをご存知でしょうか?
個人差はあるものの大体100μmであり、日本人の平均だと80μmです。
髪の毛の約10分の1以下の調整をしないといけないにも関わらず、イタリアメーカーの部品を測定した結果10μmのバラツキが出てしまうとの事!!
他にもイタリアメーカーとのやり取りにおいて、日本企業であれば起きないであろうトラブルの続発により、機械設備の改造・及び消耗部品の国内内製化を進めました。
結果、品質も保全性も生産能力においても他社の追随を許さない領域に至りました。
このような企業努力の結果、現状では金とPtのテニスチェーンが量産できるのは世界でクロスフォー1社だけです。
―災い転じて福となすー
機械を買うだけで生産が出来るなんてことはやはり無いのです
今後クロスフォ―以外にも設備を改造して生産できるようになる企業が出てくるかもしれませんが、すぐには出てこなさそうです。

3、新規受注のストップ

現在のテニスチェーン製造は1直残業のフル稼働をしています。
しかし、新規のジュエリー製造企業からの新規オーダーの受付を一旦ストップしていると聞いています。
それは数か月先まで納入予定で埋まっているという受注の好調さが理由になります。
テニスチェーンはクロスフォ―の自社開発した製品ではありません。
昔からある定番のデザインであり、シンプルでファッション性の高い商品です。
しかし、従来のキャスト(鋳造)で作るテニスチェーンよりもしなやかで軽く、製造コストも工賃も安く仕上がるので、ジュエリー小売り店も喜んで欲しがるのです。
 
金(10k・14k・18k×WG・PG・YG)でのテニスチェーンを量産できるのは繰り返しになりますが、現状世界でクロスフォ―だけです。
現在の受注もクロスフォ―の中堅取引先のたった1社が軽く出したオーダーで生産がパンクの様相になっているとの話を聞いて私も驚きました。
 
3台の機械を7台まで増やそうか?という案も出ているそうですが、まずは無難に人海戦術で生産能力を限界までアップすべく生産オペレーターの人員採用を目下急いでいます。
そして1直⇒2直ではなく、一気に3直4交代まで生産体制を加速させるとの計画だと伺いました。
3直4交代になることで会社の連休以外は土日も操業する生産体制になり、単純には2.5倍程度まで生産量はアップするでしょう。
 
海外向けには石留めをしていない状態でジュエリー製造メーカーに販売(m売り)します(売上は出荷基準で計上
  • ブレスレットにしても良し!
  • ネックレスにしても良し!
  • 短く切ってピアスにしても良し!
  • 他のジュエリーに組み合わせて使うも良し!
国内向けには石留めをした完成品として小売り店や卸業者に販売します(売上は委託販売なので店頭で実際に売れたら計上

4、検査工程自動化設備の開発

生産量が増えた分、完成品検査が人力では間に合わなくなるので画像認識での検査機導入を検討。
しかし、金属の反射光が問題で画像認識の設備開発が難航していたそうです。
これまた奇跡の凄腕エンジニアが開発参入してあっさり1か月で課題解決して、現在検査機製造の見積もりステップに進んだとの事。
早ければ1年以内に検査機が導入できる見込みとの話です

5、国際宝飾展での市場調査について紹介

2019年10月24日に丸一日国際宝飾展でじっくりと市場調査しました
この国際宝飾展はジュエリーメーカー・卸業者や小売店・個人バイヤーとの商談の展示会であり、ほとんどの業者がそのまま即売もしています(並んでいる価格は全て卸値)
展示会ではこの卸価格で買えますが、実際の小売店の店頭に並ぶとこの金額の2倍~3倍以上の値札に変わります。ここには冒頭で説明した仕組みが絡んでいるからです。
国内で一部販売がすでに始まっているEZ Clasp(イージークラスプ)付きのテニスチェーンも販売されていましたが、値札を見て私は驚きました!!
なんと販売価格が一般的なテニスブレスレット(キャスト×手組で製造コスト大)とクロスフォ―テニスが同価格で販売されていたのです!
展示会で扱っている業者はまだまだ少なかった(供給量が足りないことが影響していると推測)ですが、販売員はEZ Clasp(イージークラスプ)を皆一様に絶賛していたのが印象的でした。
その際にクロスフォ―の仕入れ原価は他のと比べてどうなのか?と聞いたら次のような会話になりました

◆展示会での販売人との会話一例

「クロスフォ―のテニスブレスレットは他のテニスに比べると仕入れがちょっと安いので、私たちが売った時の上がりも大きくなるんですよ!なので数をもっと仕入れてたくさん売っていきたいですね!でも、クロスフォ―さんもこのテニスを作るために買った機械がめちゃめちゃ高いみたいで、安くは売れないみたいなんです。どこも大変ですよね~。この留め金具が凄く評判も良いので、金具だけも買いたいって話しを営業にしたらうちじゃ捌けない数のオーダーからじゃないと卸してくれない&値段もかなりの金額で提示されたので諦めましたよ(笑)」
非常に興味深いです。
 
別の店で7年前からDSのクロスフォ―を売ってきたというベテランとの話では「数年前からQZしかやらなかったクロスフォ―がダイヤと18kとかも扱うようになったんですよ~2年前かな?CMをテレビで流したあたりから急にかわいいデザインが一気に増えてダンシングストーンの売れ行きって良くなったんですよ。ダンシングスト―ンを使った商品ってジュエリーの中では売価高めにできるし、結構他のに比べて売れる商品なんですよ。テニスブレスは昔流行って一旦ブームが去って、最近また流行り始めてる気がしますね。でも、ブレスレットって留めにくいから人気があんまり無いんです。良い留め具とか出来たらもうちょい良くなるかもしれないんですけどね~」
ちなみにこのベテラン女性販売員はEZ Clasp付きのテニスブレスの存在を知らなかったようでした。
クロスフォーの決算業績では国内の売れ行きは話とは対照的に盛り下がっています。なのでこの店舗に限った話かもしれませんが、ダンシングストーンが評価されている事は確認できました。
 
私が展示会で見て、歩いて様々な商品を手に取って行く中で感じたことは、テニスブレスはシンプルがゆえに合わせやすい定番商品であり、クロスフォ―のテニスは他のキャスト製品と並べても全く遜色ない品質だと感じました。これはお世辞ではなくホントにそう感じます。
また、テニスブレスレットのデザイン(石を止める金属部の構造)に関しては5パターン程度しかそもそもなく、冒頭説明したようにテニスブレスレットの留め金具は折り込み式と差し込み式ばかりで、一人で装着するのが大変困難だと私は感じました。
ちなみに商品の確認も兼ねてEZ Clasp付きのテニスブレスレットを妻にプレゼントして早一か月以上になりましたが、非常に簡単に着けれて気に入ってくれています。。
※EZ Clasp(イージークラスプ)だとしても手首の太さに対してブレスレットが短ければ付けるのが困難になるのは言うまでもありませんので、購入の際にはサイズに注意です。

4、日本精密との提携【ブリリアントブレス】

2019年10月21日
◆日本精密株式会社との業務提携に関するお知らせ
この提携はポジティブです。日本精密もある種クロスフォ―のような裏方の事業モデルであり、時計バンドの黒子企業です。

時計バンドを始め、こうした石留めをする良い加工法が無かったのですが、今回の提携を機に光の通り道をきちんと確保した状態で石を留めるジュエリー装飾工法が発案されました。
クロスフォ―が商品を売ることもあれば、日本精密が商品を売ることもあるでしょう。
これによってお互いの取引先に相互にクロスセルをすることが出来、営業機会が増加します。

 

 

これらは試作品の1号とのことで、今後ますますデザインもブラッシュアップされていくことと思います。
詳しく知りたい方は動画があるのでこちらから視聴ください

【朗報】全て見せます!業務提携共同記者会見 クロスフォー(7810)&日本精密(7771)

↓動画リンク

5、総括

2018年の秋にクロスフォ―本社の山梨甲府へ取材に行き、それから数回土橋社長にもお会いしていますが、非常にパワフルでエネルギーの塊のような方です。
ジュエリー業界についての様々なお話で分かることは、ジュエリー業界には悪い奴がいっぱいいて、騙しありハッタリありの魑魅魍魎の世界だと。その世界で張り合うのは並な考え方ではいけないのだと学びました。
そしてジュエリー業界はIT化も機械化もすさまじく遅れている業界であり、土橋社長はこうした古い習慣ややり方をブレイクアウトしたい。革命を起こしたいと常々熱弁を振るっています。
上場時が業績の天井となり、ダンシングストーンの中国での模倣品問題や国内売上が低迷したことで業績も悪くなり、傍目からすでに終わった企業だという評価も多く聞きます。
冒頭のように「なぜ相川さんは終わったクロスフォ―を注目しているんですか?」とこれからもまだしばらくは聞かれるかもしれません。
それに対しての私の答えはこうです。
 ークロスフォ―はこれから始まるんですー
 
 
奇跡の人材である優れたエンジニアが入社して機械生産の歯車が回り出し、日本精密と提携し、テニスもEZ Claspも初動の感触は良い!
これだけ万全な状態のエースが全力投球して勝負に負けたなら、、、力が無かったんだと認める他にないでしょう。
数年後に同社が市場からどういう評価を受けているのかを今は知る由もありませんが、調べに調べ、考えに考え抜いてこの記事を執筆しました。
是非一度、アクセサリーの留め金具などに意識を向けてみてください(笑)

◆12/7(土)クロスフォー(7810)会社説明会&すぽさん出版記念セミナー

直前の話になり恐縮ですが、昼の12時から愛知県名古屋駅近くの会場にてクロスフォ―企業IRとすぽさんの著書の出版記念セミナーを開催します。
定員までわずかになりますが、まだ数人は空きがありますので是非土橋社長の話を直接聞きに来てください。
↓申し込みはこちら↓
※名古屋勉強会のお申込みページ
 

6、参考資料

コーポレート紹介動画

◆IRTV 公開日:2019年04月19日

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