7453 良品計画 ビジョンにブレはないか
7453 良品計画
企業は社会の課題解決のために存在する。
ただ自社の利益を追求し、社会からの価値の搾取をしている企業は継続しない。
企業の成長の源泉は、社会課題の解決であり、その企業の製品・サービスの提供はその課題解決の手段でしかない。
社会課題に対する取り組みにぶれなければ、その手段は変わっても成長を継続することが可能になる。
長期投資においては、足元の数字の確認よりも、その製品・サービスを理解し、
どんな社会課題を解決しているのかを理解することが最も重要である
10年投資するならばその企業の過去10年を知らなければならない。
100年投資するならば、、、、
100年続く企業にはその企業独自の人・文化がある。
その人・文化が企業を継続させる。
長期継続性の信頼度を高めるうえでその企業の人・文化を理解することを重視したい。
1980年 株式会社西友のPB商品「無印良品」誕生
1989年 株式会社良品計画が設立された。
*以下、
無印良品の、人の育て方 “いいサラリーマン”は、会社を滅ぼす 松井 忠三 2014年7月
https://www.amazon.co.jp/dp/4041015200/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_86hWEb44KHE9P
より引用
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無印良品は大量生産・大量消費の時代に、ブランドものばかりを追い求める風潮に対するアンチテーゼとして生まれた
設立当初は「わけあって、安い」というコンセプトをもとに良い品質の商品を安く提供していた。
シンプルで機能性を追い求めるスタンスを貫いていた。
時代の変化につれ、安いだけでは売れなくなり
「わけあって、安い」という根幹を変えずにサブコンセプトを見直した。
サブコンセプトは
「”これがいい”ではなくて”これでいい”」
これ”で”には抑制や譲歩を含んでいる
この”のレベルを上げることは諦めや小さな不満を払しょくすることなのだ
私たちは「で」のレベルを引き上げるために、リーズナブルプライスで高品質の商品を提供しようとしている
いずれコンセプトが合わなくなってもコンセプトを進化させればいい。
サブコンセプトを変えても
”低価格でありながらも高品質で自然の素材を活かし、シンプルで日々の生活で使いやすい商品を作るという
無印良品の哲学に関するところを変えなければ、世の中に受け入れられ続ける。
いずれ、無印良品の日本語の表示が要らなくなる時代が来るのではないか、と考えている。
無印良品の価値観を世界中に知ってもらえたら、商品を見るだけで「これはMUJIだな」とわかるようになるでしょう。
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*松井氏は2001年から良品計画の代表取締役、2008年代表取締役会長
2015年まで在籍し、現在の良品計画の成長を牽引してきた。
〇無印良品との出会い
今でも覚えている。
大学時代に無印良品のシンプルな商品に惹かれて、買ったのだが、
友人からはなぜか笑われてしまった。
まだブランド力もなく、
”安かろう悪かろう”
の評価だった。
実際、価格はそれほど安かったわけではないが
ブランド力がなかったため、多くの人にとって安物
という捉え方をされていたのだろう。
今はどうだろう。
無印良品といえば、認知度は高く十分ブランド力がある。
ブランドジャパン2020 ブランドランキングでは3位となっている。
ブランド・ジャパン 2020 ブランドランキング発表|CCL.|日経BPコンサルティング
グローバルブランドとしても
2017年 日本のグローバルブランドを対象とした「Japanʼs Best Global Brands(以下、JBGB)」では
「無印良品(MUJI)」が初めてランクイン19位となった
一方株価を見てみると
2018年6月の高値から3分の1になってしまっている。
企業価値が毀損されるような何かが起こっているのだろうか。
〇長期業績推移
まず長期的な業績推移を確認しよう。
2002年2月期第2四半期(2001年8月)初めての赤字決算となった。
通期では黒字を確保し、そこからV字回復。
最悪期に社内で聞かれたのが
「無印良品は好きだけれども、良品計画は嫌い」
という言葉だった。
危機的な状況だったようだ。
その後、リーマンショックによる世界的な景気の悪化の影響で2009年2月期は増収減益、2011年2月期まで3期連続の減益となった。
一度、危機的な状況を乗り越えた社員が揃っていることから、順調に業績は回復していたかに見えるが、歪も生まれていたように思われる。
特に変化の大きい過去10年は以下の通り。
〇連結業績
2011.2 2020.2
営業収益 172,860 438,713
営業利益 13,550 36,380
〇国内
売上高 150,000 267,864
営業利益 12,303 22,224
〇海外
売上高 24,297 170,846
営業利益 1,826 13,364
〇店舗数 国内 海外
2009年 339 115 (100店舗を超えた)
2020年 437 533 (うち 東アジア383)
中国273店舗で、海外店舗533の半分は中国。
国内も成長しているが、海外の成長がより顕著である。
中でも中国が成長を牽引している。
〇成長の過程で気になる3つのポイント
①中国での評価
②棚卸資産の増加
③人材育成
①中国での評価
株価下落の2018年7月 第1四半期の発表後から株価下落が始まった。
その後2019年1月に業績の下方修正を発表。中国での販売伸び悩みがあった。
前述の書籍で中国での自社の評価についての記述がある
”中国のお客様は無印良品の商品だから買っているというよりは日本製だから買っている人のほうが多い”
現時点では”MUJI”のブランド力は中国において不十分であるということであろう。
どの程度浸透しているだろうか
・他の日本製品が進出してくる
・中国製品の質が向上する
などによって、同社の成長には影響を及ぼしている可能性がある。
②棚卸資産の増加
成長とともに流動資産の増加が加速している。
棚卸資産の増加である。
むらさき部分が 棚卸資産
棚卸資産は
21,908 → 88,265百万円
4倍以上になっている。
棚卸資産の回転期間の推移は以下の通り
特にリーマンショック後の回復と同じ2011年ころから回転期間の長期化が顕著である。
消費者向けに生活雑貨などを売ることを考えれば、
5か月を超える棚卸資産残高は少し異常な水準である。
当初は海外展開を進めるために必要な在庫と考えて、増やしていた。
機会損失を最小化するため、通常売ろうとする金額以上の在庫を準備する必要がある。
例えば100売ろうとすれば150程度の在庫を準備する必要があるだろう。
100売ろうとして150準備したところ80しか売れなかったとすれば70が在庫として残る。
急拡大を前提としていた為、想定より売れなかった在庫が高水準となったことが予想される。
現在は棚卸資産の削減に注力しているようだが思うように削減できていないようだ。
季節性のない商品であり、減損の必要はないというのが会社の見方かもしれないが、
常に商品の改善を進める同社にとっては、過去に開発して残っている製品は陳腐化した製品であり、
減損の可能性は考慮しておくべきだろう。
③人材育成
成長とともに社員数は増えている。
危機を脱したときから現在まで約2.5倍1万人を超えた。
国内の出店とともに積極的な海外展開をすすめたことによる人員の増加。
前述の著書には次のような記述がある。
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人の問題を、人の数で解決するという方法は会社を弱くします。
売上が10%アップして社員の仕事も増えたから人も10%増やそう
これはリスクの高い発想
業績が好調なときはいいのですが、悪化したときは一気に人件費が負債としてのしかかる
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この認識があるとすれば、必要な人員増加ということだが
人材育成は十分できているのだろうか。
さて、ここまで過去を振り返ってみると株価の下落は
これまで同様の成長が可能か、ということに疑問を持っている投資家が多いということのように思われる。
さて、過去の業績と現状を確認してきたが、重要なのは将来に向けて長期的な継続性。
一度V字回復を遂げた同社が再度長期的な成長のレールに戻ることができるか
長期的な継続性で重要なのはその企業の人・文化である。
良品計画の文化に目を向けてみたい。
<企業理念>
https://ryohin-keikaku.jp/corporate/philosophy/
〇良品を定義していない
同社は
”良品”とは何か どんなものが良品なのか
を定義していない。
各自が考えてれば、常にその良品を上回る良品を生み出すことができる。
ということである。
*”常に良品を上回る良品を生み出す”
ということと、残ってしまった棚卸資産を
”いつか売れるから減損の必要がない”(=価値が落ちない)
という考えには矛盾を感じてしまうのだが。
〇日本のモノづくりを世界へ
無印良品の理想
私たちは何のために存在しているのか
美意識と良心感を根底に据えつつ、日常の意識や、人間本来の皮膚感覚から世界を見つめ直すという視点で、モノの本質を探究していく。
そして「わけ」を持った良品によって、お客様に理性的な満足感と、簡素の中にある美意識や豊かさを感じていただく。
良品計画の目標
私たちはどこに行こうとしているのか
良品計画で働く仲間の永続的な幸せを第一の目標とする。そのために、社員、スタッフ全員が高い目標にチャレンジし、
努力し、達成した時の充足感を持てる風土をつくることで、無印良品の思想を具現化し、
世界レベルの高収益企業となることを目指す。
良品計画の価値観
私たちは何を大切に考えるか
誠実で正直であること、仲間を大切にし信頼を深めること、そしてひとりひとりが地球大の発想で考え、
挑戦し、やり抜くことを尊重する。
それが良品計画の目標を達成するための土台となる
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〇は地球だろうか?世界を視野に入れている。
同社の製品の特徴なシンプル。
自然の中にある色、素材を使うことが基本である。
それによって自然への負荷をかけず、かつ良いものを提供するという考えがある。
同社の理念の根底には日本独自のモノづくりに対するこだわりがある。
”江戸時代以前の職人たちの伝統工芸品の中にヒントはあります、先人が他国では類を見ない日本独自の精神を築いたおかげで、
欧米でも戦前からジャポニズムとして評価されました。そのころから日本のモノづくりの使いやすさとムダを排除し、
優れたデザインとコンセプトを実現させています”
そのコンセプトを引き継いだ良品を世界へ広げる。
〇”わけ”を説明しないが使えばわかる
無印良品の製品のコンセプトは
”わけあって安い”
が、その”わけ”を一つ一つの製品でアピールしていない。
使ってもらえばその質の高さを感じ取ってもらえると考えている。
そのわけと質の高さは同社のサイト
”100の良いこと”
に表現されている。
また同社の取り組みの社会的な価値に触れることができる。
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100の良いこと
無印良品は、その商品やサービスを通して生活を簡素に美しく整えることにより、
社会全体や地球人としての課題の解決を目指してきました。
無印良品誕生から30年あまりたった現在、私たちはその想いをさらに発展させ、
世界の人々に「感じ良いくらし」を提案していきます。
無印良品は、商いを通すことで、人々が喜び、そして美を伝播することができる。
この価値観のもと、社員ひとりひとりがそれぞれの立場で実践している
生活者の役に立つこと、社会の役に立つこと、たくさん(=100)の取り組みを集めた
「100の良いこと」の事例を紹介します。
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例えば
オーガニックコットンの活用
https://ryohin-keikaku.jp/csr/list/list_009.html
オーガニックコットンの使用量を継続的かつ長期的に増やす努力をしています。
オーガニックコットンとは、農薬や化学肥料を3年以上使用していない土地で、
自然の仕組みに沿って育てられる綿花のこと。
効率よく大量に作ることはできませんが、環境や人にやさしいものづくりができます。
衣料品のほぼすべての商品は2018年から、生活雑貨のファブリックは2019年秋冬商品から
オーガニックコットンを100%使用しています。今後も可能なかぎりオーガニックコットンの使用をすすめ、
環境と生産者に配慮したものづくりをしていきます。
また、衣料品では、オーガニックコットンの中でも生産量の少ない超長綿を種まきからはじめて
生産量を増やしていく試みをはじめました。
綿花のなかでも、繊維長が特に長い35mm以上のものは超長綿と呼ばれ、手触りのよさ、丈夫さ、
透けにくさのすべての条件を満たした理想の素材といわれています。
商品開発者が実際に綿花農場に足を運び、農家の方々との関係を深めながら少しずつ超長綿の生産量を増やし、
2019年春夏シーズンからはブロードシャツなど一部の商品で使用しています。
生産量が限られ高価になってしまっていた素材を、継続的な生産に取り組むことで多くの人へ届けます。
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〇人材育成=マニュアルは生きているか アップデートされているか
同社は業務のすべてにおいてマニュアルを重視するということで有名だ。
”MUJIGRAM”
このマニュアルは一般できなマニュアルと違い、
トップダウンで作るのではなく
現場で働く社員やお客様の声を集めてマニュアルにしている
また一度作ったら終わりではなく、内容を更新する。
*以下、引用
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商品の洋服を畳んだり、品出しをしたり、店内の掃除や在庫の管理など、無印良品には「何となく」する作業はない。
すべての作業には目的や意味がある。
作業を教える前に、まず作業の目的を教えるのがMUJIGRAMの特徴
「目的」を教えることは無印良品の理念や哲学を現場の作業を通して教えることでもある
一つ一つの作業を通して無印良品の考え方を教えるうちに、理念や哲学が身体にしみこんでいく。
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〇会社の伸びしろは無限になる
同社の成長可能性について前述の著書にある記述を引用する。
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会社の伸びしろは無限になる。
無印良品は大量生産・大量消費の時代に、ブランドものばかりを追い求める風潮に対するアンチテーゼとして生まれました
設立当初は「わけあって、安い」というコンセプトをもとに良い品質の商品を安く提供していた。
シンプルで機能性を追い求めるスタンスを貫いていた
時代の変化につれ、安いだけでは売れなくなり
「わけあって、安い」という根幹を変えずにサブコンセプトを見直した
サブコンセプトは
「”これがいい”ではなくて”これでいい”」
これ”で”には抑制や譲歩を含んでいる
この”のレベルを上げることは諦めや小さな不満を払しょくすることなのだ
私たちは「で」のレベルを引き上げるために、リーズナブルプライスで高品質の商品を提供しようとしている
いずれコンセプトが合わなくなってもコンセプトを進化させればいい
サブコンセプトを変えなくても
低価格でありながらも高品質で自然の素材を活かし、シンプルで日々の生活で使いやすい商品を作るという
無印良品の哲学に関するところを買えなければ、世の中に受け入れられ続ける。
いずれ、無印良品の日本語の表示が要らなくなる時代が来るのではないか、と考えている。
無印良品の価値観を世界中に知ってもらえたら、商品を見るだけで「これはMUJIだな」とわかるようになるでしょう。
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松井氏がいない現在もこの
ビジョンとマニュアルによって成長するビジネスモデル
は同社の中でイキイキとしているだろうか。
もしそうならば再度の成長軌道に戻すことができるだろう。
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