5034 unerry ”リアル版Googleを目指し、unerry,every whereを実現する”
2024年6月16日に個人投資家向け説明会を実施しました。
活発な質疑が行われました。
こちらもぜひご覧ください。
<目次>
1.沿革
設立
起業の経緯
創業の背景
初期のプロジェクトの成功
2.内山社長の経歴
3.リテール(小売)DX市場と企業の課題
市場について
リテール事業者の課題
ECとリアルの違い
リアル事業者のDX
4.事業内容
Beacon Bankプラットフォーム
デジタルマーケティングとデータ解析
「リテールDX事業」
「分析・可視化サービス」「行動変容サービス」「One to Oneサービス」
「リテールメディア事業」
「スマート事業」
「グローバル事業」
5. 顧客事例
伊藤ハム米久ホールディングスの事例
小売店チェーン店での事例
株式会社トライアルカンパニー
東京ミッドタウンマネジメント株式会社
6.特徴、強み
個人情報を利用しない人流ビッグデータ
リカーリングを生み出す収益モデル
大規模なデータ収集と解析能力
特許技術とイノベーション
強力なパートナーシップ
7.成長戦略
2028年6月期に売上高100億円を目指す
顧客数の増加と顧客単価の向上
グローバル事業 北米市場に注力
新技術の導入と開発
持続可能な都市開発の推進
8.業績
実績と見通し
9.バリュエーション
<レポート>
1. 沿革
〇 設立
2015年に設立され、東京を拠点に活動を開始した。設立当初からリアルワールドデータをデジタル化し、消費者行動を解析することに注力してきた。特に、Beacon Bankというプラットフォームを開発し、現在は合計3.9億のIDと月間800億件以上の位置情報ログを収集することで、マーケティングやスマートシティ開発に貢献しています。(2023年8月末時点)
〇ミッション
「心地よい未来を、データとつくる。」
をミッションとして掲げる。
リアル版Googleを目指し、unerry,every whereを実現する
〇起業の経緯 米国留学とITベンチャー設立
創業者の内山氏は「人流データ」を活用した新しいビジネスモデルを構築することを目指していた。特に、リアルな消費者行動データをデジタル化し、マーケティングや都市開発に活用するというビジョンを持っていた。このビジョンは、デジタルとリアルの世界をつなぐ「リアル版Google」を目指すという形で具体化された。
パートナー企業との協力を通じて成功事例を積み重ねてきた。ビーコン技術の活用を主軸にスタートした事業は、後にGPS技術の導入やデータ解析の高度化により、現在の主要なサービスラインである「分析・可視化」「行動変容」「One to One」に集約される形で成長を遂げた。
2.内山社長の経歴
〇ミシガン大学での経験
名古屋大学卒業後、ミシガン大学大学院へ留学。同大学院での2年間は、その後の人生を変える大きな転換点となった。Googleの創業者であるラリー・ペイジ氏が大学OBとして顔を出していたり、北京大学の首席の方が同窓生にいたりと、非常に優秀な人々と交流する機会があり、この環境で、自分の能力と周囲の差に衝撃を受け、それが現在の仕事の原動力となっている。
〇AIエンジニアとしての勤務
大学院在籍中、研究所でAIエンジニアとしても勤務していた。アメリカの大学では、教授が研究テーマを持っている場合に学生をアルバイトとして雇うことが一般的で、内山氏もその一環としてリサーチアシスタントとして働いた。この経験を通じて、AI技術に関する深い知識と実践的なスキルを身につけた。
〇コンサルティング業界での経験
帰国後、外資系コンサルティング会社にて事業戦略や企業再生コンサルティングを手がけました。この期間に、彼は多くの企業の事業戦略の立案や再生プロジェクトに関与し、ビジネスの洞察力と戦略的思考を磨いた。
3.リテール(小売)DX市場と企業の課題
同社が対象とする市場である、リテールDX市場の可能性を考えるにあたって、対象となる小売業の特徴と課題について整理する。
〇市場について
小売業におけるDXの市場規模は急速に拡大している。
富士キメラ総研の調査レポートによれば、2020年には441億円だった市場規模が、2023年には2,455億円まで成長すると予測されている。この成長は、デジタル技術を活用して業務プロセスを刷新し、顧客体験を向上させるという小売業界の取り組みを反映している。日本のDX市場全体も拡大傾向にあり、2030年度には8兆350億円に達すると予測されている。特に注目すべきは、生成AIの活用。内部業務の効率化や外部向けのカスタマーサービス、マーケティングなどで活用が進んでおり、今後さらなる成長が期待されている。
小売業界では、AIやIoT、IT技術を活用したイノベーションが進み、店舗運営や顧客体験に大きな変革をもたらすと予想されている。
〇リテール事業者の課題と特徴
リテール業界の課題と特徴にはいくつかの要素がある。まず、競争が激しいことが挙げられる。市場参入の障壁が低く、多くの企業が競い合うため、競争は激化しやすい環境である。次に顧客志向が強いこと。直接消費者にサービスを提供するため、顧客の満足度が収益に直結する。これが企業に迅速な顧客ニーズへの対応を求め、競争をさらに激化させる。
また、技術革新や新しいビジネスモデルの導入が頻繁に行われることも特徴。業界の競争優位性を維持するためには、持続的な革新が不可欠となる。これらの課題に加えて、リテール業界のビジネスモデルは薄利多売が主流であり、効率的なオペレーションとコスト管理が重要。商品の販売サイクルが早く、在庫回転率が高いことと特定の季節やイベントに売上が集中するなどの季節性の影響も大きく、迅速な在庫管理と戦略的な販売促進が収益性の鍵を握る。
さらに、業界全体で収益性を圧迫する要因もある。人件費や原材料費の上昇、エネルギーコストの増加などが挙げられる。また、消費者の購買行動の変化や競争の激化により、売上の伸び悩みが常に課題となっている。加えて、人手不足も深刻で、店舗スタッフの確保や業務効率化が急務となっている。
これらの課題に対応するため、小売業界ではデータ活用やテクノロジーの導入が進んでおり、DXの推進が不可欠とされている。さらに、オンラインとオフラインの融合による顧客体験の向上も重要な課題となっている。
〇ECとリアルの違い
ECとリアル店舗では、直面する課題に違いがある。ECの主な課題は、顧客の購買行動データの収集と分析、配送の効率化、返品対応、そしてウェブサイトのユーザビリティ向上など。一方、リアル店舗の課題は、来店客数の減少、人件費の上昇、在庫管理の効率化、そして顧客の購買行動の把握などが挙げられる。ECでは顧客の行動データを比較的容易に収集できるが、リアル店舗では顧客の店内行動を追跡することが難しいという違いがある。また、ECは24時間営業が可能で地理的制約がないという利点があるが、商品の実物を見たり触ったりできないというデメリットもある。リアル店舗はその逆で、実際に商品を確認できる一方、営業時間や立地に制約がある。両者の課題を解決し、それぞれの強みを活かすために、小売り各社はオムニチャネル戦略の実現に注力している。
〇リアル店舗でのDXの重要性
リアル店舗におけるリテールDXによる行動データの活用は、コスト削減と売り上げ増に大きな効果をもたらす。
・広告などのコスト削減による効率化について
顧客の店内行動データを分析することで、効果的な商品配置や販促施策を特定できる。これにより、不要な広告費を削減し、より効果的なマーケティング戦略を立てることが可能になります。例えば、特定の商品の前で立ち止まる顧客が多いことがわかれば、その商品の販促に注力することで、広告費を効率的に使用できる。
・効果的な集客による売上増について
顧客の購買パターンや好みを分析することで、パーソナライズされたオファーや推奨を提供できます。これにより、顧客満足度が向上し、リピート率や客単価の増加につながる。また、店舗内の混雑状況や人の流れを把握することで、スタッフの配置を最適化し、顧客サービスの質を向上させることができる。これらの取り組みにより、効果的な集客と売上増加を実現することが可能となる。
消費者の購買行動や嗜好の変化は直接的に売上に影響します。トレンドを迅速に把握し、適応する能力が求められる。小売業は他業種と比較して非常にダイナミックで、消費者のニーズに迅速に対応することが求められる分野であることがわかる。
同社のサービスは特に、顧客の行動を把握することで、効率的な広告を打つことでコスト削減を実現するとともに、売り上げ増も実現する。変化する顧客の需要にも迅速に対応できる特性があるサービスである。
4. 事業内容
前述のようなリテール事業者の課題解決のためにリテールDXのサービスを提供する。
〇Beacon Bankプラットフォーム
Beacon Bankというプラットフォームを通じて提供される位置情報データの収集と解析サービスを提供する。このプラットフォームは、216万個のビーコン(2023年8月末時点)を利用して、屋外、地下、屋内の位置データを収集し、消費者の行動を可視化する。
ビーコンはデパート、駅構内、飲食店など様々な場所に各事業者が独自で設置していおり、自社のアプリにプッシュ広告を送るなどに利用している。同社はプラットフォームにビーコンを登録してもらうことで大規模ネットワークを構築している。
〇デジタルマーケティングとデータ解析
収集したデータを活用して、広告、販売促進、店舗体験の最適化など、さまざまなデジタルマーケティングサービスを提供している。これにより、顧客企業は消費者の行動を詳細に理解し、効果的なマーケティング戦略を立案することができる。
具体的には次の4つの事業を提供している。
・リテールDX事業
・リテールメディア事業
・スマートシティ事業
・グローバル事業
以下、それぞれの事業について詳しく説明する。
〇リテールDX事業
商圏・店舗の消費者行動をデータ化・AI解析し、リテール業界のデジタルトランスフォーメーションを支援。実店舗とECを連携させたOMOコミュニケーションの実現を目指す。
以下の3つのサービスを提供している。
・分析・可視化サービス
・行動変容サービス
・Ono to Oneサービス
・分析・可視化サービス
月間800億件以上の人流ビッグデータをAI解析し、人々の回遊、滞留、競合来訪、日常行動傾向などを多角的に可視化。商業施設や観光地、自治体の意思決定に活用できる。
ビーコンだけでも屋内・屋外ともに216万か所検知できる場所があり、人の行動を網羅的に把握できる。
預かるデータには名前や電話番号などの個人情報は含まれない。
位置情報データ(個人関連情報に該当)を受け取り、複数のデータを組み合わせてAIで年齢、性別などの属性を類推している。
例えば、週に数回コスメショップに訪問する人は女性で、20代、30代とか。(実際はもっと多数の条件の組み合わせにより属性を類推している)
分析・可視化サービスでは、取得した位置情報ビッグデータを同社が独自開発したAI群で解析することにより、ユーザーのプロファイリング(どのような場所に行く傾向があるか)、移動状況(徒歩・自動車・電車等の移動手段)、行動予測によるリコメンド(ある場所に行った人が次に行く可能性が高い場所はどこか)等を推計し、小売事業者、商業施設運営事業者、消費財メーカーや自治体等へニーズに応じた行動分析レポートを提供している。
提供サービスの一つである「ショッパーみえーる」が中心となるサービス
全国4.5万店(23年6月末)での来店者のリアル行動データをAIで推定することで、商圏の把握、競合店舗とのシェア比較、来店客の新規・リピーターの割合や属性、細かな行動嗜好等を可視化するツールで、小売事業者のマーケティング施策の意思決定等に活用されている。同サービスはSaaSとして提供されており、店舗数等に応じた月額課金(15~95万円)となっている。
顧客の導入効果は大きい
・行動変容サービス
「ショッパーみえーる」によってデータを見ると競合の状況がわかる。競合との比較で来店可能性のある顧客を自社に来店させたい。その時に利用するのが「Beacon Bank AD」。
分析で得られたインサイトをもとに、商圏内人口や来訪者を対象とした広告配信を行い、集客や回遊を促進。来店したかどうかも確認できるため効果測定も可能であり、実際の行動変化を追跡できる。
例えば、100万円かけて1万人の来店増加につながったら、1人100円で集客できた、という費用対効果を計測できる。紙チラシをデジタル化し、GPSや店舗設置のビーコンで来店数等の広告効果を測定、より効果の高い広告につなげるPDCAサイクルを実現する。
行動変容サービスでは、小売事業者や消費財メーカー等に対し、リアル行動ビッグデータのAI解析により、来店可能性が高い顧客群と商圏を発見し、当該顧客群を中心にFacebookやInstagram等のSNSやYouTube、アプリを通じたプッシュ通知等で広告を配信することで、消費者の行動変容を促す広告サービスを提供している。
同サービスの収益は、デジタルチラシの配信料の他、新規出店や特売セール等のイベントに応じてスポットで受け取る配信料がある。
・Ono to Oneサービス
得られたデータを統合したり、データを基にLINEやアプリで情報配信したりするシステムを全般的に提供する「Beacon Bank 1to1」サービス。行動を予測し、顧客に対してOne to Oneでリコメンドする。
主に小売事業者や商業施設運営事業者等に、オリジナルアプリの開発や、CDP(統合マーケティング基盤)の構築により、一人一人へパーソナル体験を届けるシステムソリューションを提供している。
同サービスでは、同社のリアル行動ビッグデータを始めとした各種データソースと小売事業者等が保有するデータ等をGoogleクラウド上のCDPに集約し、リアル行動、リアル購買、ネット行動、ネット購買のデータを統合・分析し、AIで意味づけすることで、個々の顧客が必要としている情報を最適なタイミングと最適な媒体(インターネット上の広告表示、アプリを通じたプッシュ通知、デジタルサイネージ等)を通じて提供する。
同サービスの収益は、システム・アプリの構築や、構築後の運用・保守からの収入である。
〇リテールメディア事業
小売事業者が消費財メーカーから依頼されて広告を行うことをサポートする。
小売り全体のDXが進むと店頭データ、購買データ、人流データが揃い、データ配信の仕組みが整うと小売事業者が広告メディアを担うということが可能になる。米ウォルマートは年間数千億円の売上を上げている。小売企業が自社が保有する顧客データなどを活用して広告を配信する仕組み。従来の広告配信とは異なり、実際の購買行動から得た顧客データをマーケティングに活用することで、確度の高いプロモーションやターゲティングを行うことができる。
行動データ×購買データを活用し、消費者にとっての最適化されたタイミング・コンテンツフォーマット・メディアで情報配信する。具体的にはECサイトやアプリ上での広告配信、店頭デジタルサイネージでの広告によって小売企業は新たな収益源を確保し、メーカーはより効果的な広告配信を行うことができる。
*リテールメディアとは、店舗を持つ小売事業者およびEC専業小売事業者が運営するメディア(Webサイト・モバイルアプリ・デジタルサイネージなど)、小売が保有するアセット(データ・コンテンツなど)を活用して配信される広告や購買者の調査・分析サービスの総称。米国での発展をきっかけに、日本市場も急速に成長し、CARTA HDの調査によると2024年には4,688億円、2027年には9,332億円に達する見込み。
店舗事業者のリテールメディア事業だけでも2027年に1390億円に達する見込み。
*リテールメディアカオスマップ
株式会社CARTA HOLDINGS(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員:宇佐美 進典、以下 「CARTA HD」)と、株式会社unerry(東京都港区、代表取締役CEO:内山 英俊、以下「unerry」)が、小売/広告/アドテクノロジーの各業界最前線に従事する主要24社とプロジェクトを組成し、主要プレイヤーの洗い出しやカテゴリー検討などの業界分析を重ね、リテールメディアカオスマップ2024年版を作成した。
同社はデータの部分で重要かつユニークなポジションに位置している。
〇スマートシティ事業
人流ビッグデータを活用し、混雑回避や都市の強靭化を支援。Society 5.0に向けたデータ活用の高度化や社会課題解決に取り組む。都市や地域の移動ニーズを定量的に評価し、行動予測モデルを構築することで、都市の交通流を改善し、持続可能な都市開発を支援している。
事業会社だけでなく、東京都をはじめ全国19都道府県にある自治体にデータを提供している(2023年12月末時点)。
〇グローバル事業 北米に注力
北米市場を中心に、人流ビッグデータを活用した分析やダッシュボードサービスを展開。米国小売市場でのBeacon Bankサービス展開を目指す。インドネシアやタイでのプロジェクトも進んでいるが、メインの市場は北米であると判断し北米市場のプロジェクトに注力している。
・北米の小売市場は日本の4倍以上大きい。
小売市場の規模を比較すると、日本市場は約160兆円で長期的には少子高齢化、人口減少などに寄り市場縮小が予想される。一方で米国は約5兆ドルで約800兆円と4倍の差があり、長期的にも差が広がることが予想される。(構成要素が異なるため厳密な比較ではない)
・2023年5月にGroundLevel Insights Incに出資
北米において人流ビッグデータを活用した分析やダッシュボードサービスを提供するGroundLevel Insights Incに出資。創業者は人流データを取り仕切る団体の理事長をしている。
5. 顧客事例
主な顧客は小売り・外食、消費財メーカー、不動産・自治体・官公庁など。
それぞれで以下のように活用されている。
・小売り・外食
チラシのデジタル化、食品ロス削減、出店戦略・需要予測
・消費財メーカー
広告の効果測定、生活者理解、需要予測
・不動産・自治体・官公庁
スマートシティ、EBPM、オーバーツーリズム
リテールDX事業の顧客事例の一部を紹介する。
他、以下のリンクより事例を確認することができる。
1. 伊藤ハム米久ホールディングスの事例
伊藤ハム米久HDは、unerry社の人流データとID-POSデータを組み合わせて活用しました。具体的には、消費者行動を分析し、休眠消費者の購買意欲を喚起するための施策を実施した。
この取り組みにより、消費者の行動パターンや嗜好をより深く理解することができ、ターゲットを絞った効果的なマーケティング戦略の立案が可能になった。結果として、休眠消費者の再活性化や新規顧客の獲得につながり、売上の向上に寄与した。
2. 小売チェーン店での活用事例
スーパー、ドラッグストア、ホームセンターなどのチェーン店に対して、リアル行動ビッグデータを活用したリテールDXソリューションを提供している。
具体的には、月間800億件(2023年8月末時点)を超えるリアル行動ビッグデータを解析し、顧客の自社店舗および競合店舗への来店状況を可視化。さらに、このデータを活用して潜在顧客へ店舗や商品の魅力を伝える販促広告を実施した。
この取り組みにより、小売チェーン店は顧客の行動をより詳細に把握し、効果的な販促戦略を立案・実行することが可能になった。結果として、新規顧客の獲得や既存顧客の来店頻度の向上、さらには競合店舗からの顧客獲得などの効果が得られた。
これらの事例は、同社のリアル行動ビッグデータを活用したリテールDXソリューションが、消費財メーカーや小売業者の課題解決に大きく貢献していることを示している。
Beacon Bankの成功事例として、株式会社トライアルカンパニーと東京ミッドタウンマネジメント株式会社の事例を紹介する。
①株式会社トライアルカンパニーの事例
概要
株式会社トライアルカンパニーは、Beacon Bankを活用して、テレビCM、紙チラシ、SNS、デジタル広告などのマーケティング施策の効果を統合的に分析。
取り組み
トライアルカンパニーは、Beacon Bankのリアル行動データを用いて、各種マーケティング施策が来店や購買にどの程度寄与しているかを詳細に解析。また人流データと視聴データ、購買データを組み合わせて、フルファネルの効果検証も行った。
効果
この取り組みにより、トライアルカンパニーは各マーケティング施策の効果を可視化し、最も効果的な施策を特定することができました。マーケティング予算の最適配分が可能になり、定期的に見直す取り組みが進んでいます。
・集客の予算最適化⼿法の開発
TV‧屋外広告‧デジタル広告‧WEB‧アプリ‧LINEの集客/購買効果を総合的に分析可能に。
右図のように、紙チラシよりもLINEによる集客の効果が高かったことが分析に寄り把握できた。
②東京ミッドタウンマネジメント株式会社の事例
概要
東京ミッドタウンマネジメント株式会社は、Beacon Bankを活用して、天気情報と連動したリアルタイムプッシュ配信を行い、イベント集客を強化した。
取り組み
東京ミッドタウン日比谷では、Beacon Bankの人流データと気象情報を組み合わせて、来場者の行動パターンを分析。これに基づき、天気に応じた最適なタイミングでプッシュ通知を配信し、イベントや店舗への誘導を図った。
効果
この取り組みにより、天気に応じた効果的な集客施策が実現した。例えば、雨の日には屋内イベントの告知を強化し、晴れの日には屋外イベントの案内を行った。検証の結果、施設利用の比較的ライト層に対してプッシュ配信が来訪の後押しとなる可能性が示唆された。
これらの事例は、Beacon Bankのリアル行動データを活用することで、マーケティング施策の効果を最大化し、顧客の行動を詳細に把握することが可能であることを示している。
6. 特徴、強み
〇個人情報を利用しない人流ビッグデータ
同社の人流ビッグデータは個人情報を直接利用していない。代わりに、「位置情報データ」(個人関連情報に該当)を活用している。
unerryが取得・活用している主なデータは以下の通り。
デバイス識別子 (広告ID)
位置情報 (緯度・経度)
時刻情報
Wi-Fi情報
ビーコン情報
これらのデータは、単体では特定の個人を識別することはできないため、個人情報には該当しない。しかし、改正個人情報保護法が定める「個人関連情報」に該当する。
主にGPSとビーコン技術を活用してこれらのデータを取得している。具体的には、位置情報データを取得するSDK(ソフトウェア開発キット)が組み込まれたアプリを通じて、unerryのデータベースにデータが蓄積される。
重要な点として、データの取得はアプリの利用規約またはプライバシーポリシーに同意したユーザーに限定されていること。
また、プライバシー保護のため、データ活用および提供の際には秘匿加工処理を行っている。これにより、個人を特定することなく、人の動きや傾向を分析することが可能となっている。
*主な秘匿加工処理方法は暗号データ化、センシティブなデータの排除、統計データ化、少数サンプルの秘匿処理など。
このようにして取得した位置情報データを活用し、リアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を運営している。
〇リカーリングを生み出す収益モデル
同社のサービスは目に見えて効果が表れることから、継続しやすい。
リカーリング顧客(1年以上利用している顧客)の割合が90%で第3四半期末時点で104社。
〇大規模なデータ収集と解析能力とイノベーション
・最大の強みは、大規模なデータ収集と解析能力
Beacon Bankプラットフォームを通じて、GPSと216万か所のビーコンから収集される月間800億件超の位置情報データを解析し、消費者の行動を詳細に把握することができる。
・特許技術とイノベーション
情報処理装置等に関する特許を保有しており、これにより他社との差別化を図っている。特許技術を活用することで、より高度なデータ解析とマーケティング戦略の立案が可能となっている。
〇強力なパートナーシップ
Google Cloudや三菱商事などの大手企業と強力なパートナーシップを築いている。これにより、技術的なサポートや市場拡大の機会を得ることができ、事業の成長を加速させている。2017年度に小売り・外食向けデータ支援を目的にコカ・コーラウエストと業務提携、2018年度には三菱地所、電通、アドウェイズ、2019年度にimpactTV、2020年度にNTTデータ、2021年度に三菱商事、カインズ、2022年度、TOPPAN、LINE、三井住友カード、グーグルクラウドジャパン、2023年度には三菱食品、FEZ、CISCO、2024年度はdatabricksとそれぞれ業務提携や連携したことで、業界トップクラスの企業が協業する企業と認識されてきている。
特に三菱食品は小売り3000社との取引があり、取引先にunerryの仕組み導入が進められている
三菱食品が発表した中期経営計画「MS Vision 2030」において、もっとも重視する戦略の”デジタル活用”に名前を連ねている。
https://www.mitsubishi-shokuhin.com/news/news_file/file/240509ReleaseHPMSV2030.pdf
7. 成長戦略
〇2028年6月期に売上高100億円を目指す
2028年6月期に売上高100億円を目指す方針を掲げている。
継続率の高いサービスで安定的なリカーリング収益のリテールDX事業による安定成長に、リテールメディア事業、スマートシティ事業、グローバル事業の成長を上乗せする。
〇顧客の増加と顧客単価向上
成長エンジンは
リカーリング顧客へのマルチプロダクトによる顧客単価増。
リカーリング顧客を増やし、リカーリング顧客への満足度を高め、単価増を実現する。
・リカーリング顧客数
リカーリング顧客(1年以上利用している顧客)の割合が90%で第3四半期末時点で104社。2024年6月期末には116社を目指す。
・リカーリング顧客1社あたり単価増
まず、5店舗から10店舗で「分析・可視化サービス」を月額15万円で利用していただき、行動変容も使おうということで20店舗で月額100万円で利用してもらうというようにアップセルにつながり、顧客単価を上げる。
現在、1社あたり年間顧客単価2,400万円程度で安定的に推移している。
〇スマートシティ事業
持続可能な都市開発の推進。持続可能な都市開発を目指して、都市の移動データを活用したソリューションを提供しています。これにより、都市の交通流を最適化し、住民や訪問者にとって快適な都市環境を構築することを目指している。
〇グローバル事業 北米事業に注力
国内市場だけでなく、海外市場への展開も積極的に進めている。特に注力しているのは北米市場。
市場規模が大きく成長性が期待できる北米ビジネスの開拓に注力しており、顧客開拓、案件開拓にも成功している。
〇新技術の導入と開発
unerryは、Google Cloudの機械学習や人工知能ツールを活用して、新技術の導入と開発を進めています。これにより、データ解析の精度を向上させ、より高度なマーケティング戦略や都市交通の改善を実現しています。
〇競合との違い
比較される事が多い携帯キャリアは基地局のメッシュデータを基に利用者の行動データを取得する。屋外のみであり、分析の最小単位はおよそ500m(都市部では250m単位、郊外ではそれよりも広くなる)で人流データの精度は落ちる。また、データの利用に同意を得ておらず、広告配信もできない。
一方でunerryが保有するデータはビーコンデータであり、屋内・屋外1-20mの範囲でシームレスな行動を把握できる。
8.業績
〇通期見通しと第3四半期までの進捗状況
2024年6月期は売上高2,898百万円(前期比+39.6%)、営業利益117百万円(同+233.4%)を見込む。
第3四半期累計業績は、売上高2,085百万円、営業利益173百万円(同+162.5%)。通期見通しに対する進捗率は売上高72%、営業利益148%となっている。
サービス別では、「分析・可視化サービス」が前同比+53%、「One to Oneサービス」が同+68%と成長。
リテールDX事業の堅調な推移とともに、スマートシティ事業が想定以上に進捗した。獲得した公募案件が滞りなく進捗し自治体、不動産事業者において利用がすすんだため。来期以降の売上寄与にも期待できるとみている。
〇リカーリング顧客数を四半期ごとにチェック
リカーリング顧客数を2024年6月期末までに116社に増やす見通し。
同社の長期的な成長の基盤となるのはリカーリング顧客であるため、投資をする上では四半期ごとの”リカーリング顧客数”と、リカーリング顧客になる可能性のある新規または取引中の顧客数をチェックする。
”リカーリング顧客1社あたり売上高”は新規リカーリング顧客が増えると減少する可能性があるが、中長期ではアップセル、クロスセルによる単価上昇により売上高を押し上げる。
業績の特徴として”業績の季節性”と”サービスごとに大きく異なる利益率”があることを理解しておきたい。
〇業績の季節性
第3、第4四半期に偏重する傾向がある。特に第3四半期の1-3月は顧客企業の繁忙期であり、販促の予算を集中させる傾向がある。
スマートシティ、街づくりの予算も3月に集中する傾向にある。
〇売上総利益率の特徴
サービスごとに売上総利益率に特徴がある。
「分析・可視化サービス」は約90%であるのに対して「行動変容サービス」は28%程度と低い。「行動変容サービス」はFaceBookやGoogleなどのメディアを通じて広告を配信するため、媒体原価があり、原価が高いことが要因。「One to Oneサービス」は社内及び外注を利用した開発費が原価となる。それぞれのサービスの成長が売上総利益率に影響し、最終利益にも影響する。
〇将来の利益見通しについて
2028年6月期に売上高100億円を目標として掲げるが、利益水準については言及していない。
”事業計画及び成長可能性に関する説明資料”において中期財務モデルとして
売上総利益率40-45%、営業利益率15%~25%を目指すとしている。
10.バリュエーション
時価総額 114億円
株価 3,070円 (2024年6月28日終値)
会社予想PER 171.4倍
会社予想EPS 17.91倍
無配
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません