3192 白鳩 取材メモ – 成長への意思を感じて- by yamamoto

2018年12月27日

前置き

日本のECでは楽天が有名だが、下着というニッチな市場で存在感を示しているのが京都の白鳩。

企業紹介というか、京都の本社を訪問。池上正社長と面談させていただき、様々なことを教えていただいた。

要するに取材メモである。時期は三月上旬であった。リンクスリサーチのアナリストであるわたし、相川アナリストなどで訪問。

ポイントは、年商50億円の同社が本社隣の敷地において物流設備に積極投資、中期100億円、長期では年商250億円も目指していくという成長への強い意思であった。また、女性社員が多い同社だが、地元京都へ雇用で貢献するという気持ちの部分が確認できた。

京都本社

メモ

池上 正 社長 と リンクス アナリスト

アナリスト:「衣料ECの白鳩さん。自社の紹介をお願いします。」

社長:「ZOZOTOWNはアパレル中心、うちは下着屋さん。

下着屋さんって街にあまりない。 モールに100店舗あっても1店舗あるかないかの頻度。 下着は単価も安い、市場も小さい。だから売上の規模も小さくなってしまう。

うちは、他社が嫌がること・労働集約的なことを厭わない。これからも細かいことをやっていく。

顧客との接点が大事。 ZOZOの場合、なんとHPからの問い合わせ先の表示がない。気軽に苦情を言えない。 その姿勢は違うんじゃないかな、と個人的な感想として感じている。誠意というか。

顧客にいろいろ聞かれたら、それは接点として声を取り込みたい。 チャットでもなんでも、いま、AIとかになっているが、そうじゃなくて、社員が顧客の声に直に対応し、 うちは、自信を持って下着のプロとしてやっていく。」

アナリスト:「これまでの経緯を振り返ってください。」

社長:「父親が会長である。 ECは97年から父がやりはじめた。 まずは自社サイトから始めた。99年11月だったか、楽天に出店している。だが、本格的には2000年からだ。 わたし(現社長である正氏)が2000年5月に白鳩に帰ってきて、そのとき従業員たったの2名でECをしていたんだが。わたし(正社長)は、もともとグンゼにいた。グンゼで8年下積みをした。そこで下着事業とはなんたるかを考えていた。 ネットはその頃なかった。だが、2000年当時は、これからはECだという気持ちであったのは事実。」

アナリスト:「成功の秘訣は?」

社長:「自社のECは鳴かず飛ばずで。 すぐに楽天、ヤフー、Docomoなどのポータルサイトに出ていてってみた。 そうなると、下着を買う場合にリーチできるところを抑えるのが肝心だとわかってきた。 業界は下着市場は大きくなく、ニッチであった。だから、先行者利益となった。 自社サイトより、人気あるポータルに露出する方が効率的だった。 また、楽天以外にも出すなど、全方位の方針がよかったと思う。」

アナリスト:「中国の展開も楽しみですね」

社長:「2013/7から中国サイトのタオバオに出店。 

だが、当時は偽物だらけだった。  アリババのT-mallにも出店している。 アリババの担当者が訪日したとき、国際バージョン、越境モデルを作ろうと思うと言われた。 白鳩に営業に来れられた、その場で即断即決。「やります」と。

2012当時、まだ日本でT-mallは5店舗(ケンコーコム、ニッセイなど)しかなかった。カルビーさんもいたかな。 T-mallと違って、自前でここでやっている。

収益では苦労。中国では11/11は安売りの日になってしまい、どうしたものか。 安売りでは儲からないので、やり方をかえる必要があった。いまは平常時にピークを持っていく方針。

中国売上は、2-3年前に8%であった。いまも売り上げの7%程度ではないか。 楽天さんと組まれている中国サイト、最近はKaola.comにも出している。」

アナリスト:「アリババに即断即決。すばらしいご判断でしたね。経営において、どこを重視していますか?」

社長:「在庫、物流、撮影、デザイン、総合的にすべて重要。だが、うちらは基本は小売。品揃えが重要なんだ。だから、いろんなメーカーから仕入れている。品揃えでは、 日本最大級だ。下着分野でのロングテールが自慢だ。注意していることは、価格競争は避けたいね。展示会しても、すぐに特需なんかは終わってしまう。 特需や流行に頼らず。下着は比較的陳腐化が小さいので在庫ロスはほとんどない。」

アナリスト:「送料無料や日時指定は重要な要素か。」

社長:「単価5000円で送料無料にしている。昔は7000円で無料だったか。まあ、 それは10年以上前であるが。重要なのは配達の途中で下着の形が崩れないこと。Wireなどをいれて、変形しないようにしている。ダンボールとレターパックを使い分けている。 送料には配慮しながらやるが。メール便は知れているが、宅配は高くても300円台の業者価格でやってもらっているが運送業界の人手不足が深刻。 4月から他のECは悲鳴をあげるのでは。運送費負担の増加は需要の逆風になる。注文は、3時までの注文はその日のうちに出る。 東京は翌日、青森は中1日。 最近、思う。これはやりすぎや。1日ぐらい待ってもいいじゃないか。 現場が朝10時に出すなんて、現場が疲弊する。それは巡り巡って質が落ちるから顧客にもよくない。 いま、日本、ユーザーさんを過保護にしすぎているのかもしれない。配達に時間指定なんかいらないのではないかな。 」

アナリスト:「ここで仕分けしているんですね。」

社長:「ロジスティックはこの本社で全部やりノウハウを積んできた。 入荷・棚付け・オーダー・ピッキング。楽天、ヤフー、いかに捌けるかが、細かいノウハウの積み重ね。 いま、システム制御。1分でも1秒でも速くやるように、基幹システムをつくった。自社ECにあったものを転用している。 少人数で捌ける仕組みをつくってある。ここの本社の1Fと2Fでやっている。100万件に対応できる。ある程度仕組み作れば物理的な作業は実は大変じゃない。 パッと見るとまるで築地市場のよう。労働集約的といえばそうだが。 」

アナリスト:「新型の大型倉庫を本社横に決めました。」

社長:「中期で売上100億円を目指す。横の敷地が空いている。どーん需要をとる。 中期とは4−5年後。1年後に大型の倉庫を発注する。 本社の売却も実は選択肢のひとつであった。 更地にして売って移転。いろいろ考えたてみた。 借入金の比率が多かったし。でも小田急との協業を選んだ。」

社長:「なぜ小田急との協業か。倉庫立てるのは彼らの関連会社でできる。 さらに、小田急は資金力がある。また、マネジメント同士が繋がりがあり、信頼関係がある。 こちらも小田急にECノウハウを伝えることもできる。 小田急は百貨店あるが、ECには大きな課題あるという。ならば、うちのグループのECのノウハウを参考にしてくれれば、うちが将来は彼らのECの中核にもなれるかもしれない。 小田急がEC会社をGroup化しているので、その流れに乗っている感じ。 小田急の戦略も関係している。たとえば小田急OXは7/11と提携し、FC化する。 小田急の白鳩への出資は今回の40%まで。これ以上は頼まない。 あくまでも白鳩は独立路線。 こちらで物流やろうと考えている。」

社長:「新設の大型倉庫は借り入れで対応。 ここを買うときと立てるとき、第三者割当てだった。 3月末で借入金はゼロになる。将来、 倉庫立てるときは借り入れを起こす。 土地はすでに買っている。 京都の企業として、地元の雇用にこだわっている。スタッフは徐々に増えて行く。 女性が多いが。」

アナリスト:「成長への意思を感じます。」

社長:「うちは、業界で、突き抜けるつもりだ。グローバル化の文化も大事だ。 京都は、保守的、老舗、有名なのは製造業ばかり。京都で、小売でグローバルECはない。そこに挑戦したい変わっていることは誇り。 変わっているな、というぐらいでいい。なんなの?それといわれるぐらい思い切りやりたい。 先を見据えたダイバーシティがあるので業績は伸びる。 なんでもありでの感じの自由闊達な会社の雰囲気がないとだめだと思う。」

アナリスト:「参考にする経営者はいますか。」

社長:「三木谷さんの発想は参考になる。 楽天の影響は受けたのは事実。 スピード、スピード、ああいう人と接していて、やはり同じように大胆にスピーディにやらないとダメなんだと思った。 リスクばかりを検討する会社はダメだ。とりあえず、やってみる。それが白鳩のやり方。 やる。やる。やるんだ。 「はいやります」だ。

そうすると、スタッフは変な顔をする。 それでもやりつづける。トライする。挑戦する。そうしないと、みんなが保守的になってしまう。わたしより、 父親(会長)なんかはもっと大胆な人。もっとやってしまう。大胆さ、これは遺伝ですわ。」

アナリスト:「地元で女性を活用されている会社。優秀な人も多いのでは。」

社長:「保育園が会社あるとパートさんが来てくれる。 託児所はプロに運営を任せている。社員は地元の人を入れる。保育所は国の補助金もあるが。いま、育児休業も3−4名いる。」

アナリスト:「PBへの取り組みはどうでしょう。」

社長:「PBコラボ。 1Qで売上のPB比率は23%弱。 この2−3年21%−23%で安定。 30%が目標だ。売れ筋にニューアイテム投入する。 5年前、20%をきっていた。 PB:当社オリジナルインナーやソックス、ルームウェアではブルーミングフローラというブランドで展開しています。 他社メーカーとのコラボ商品も、トリンプを中心にコラボ先を拡大しております。PBは売れ筋だけに。カニばりを避けるために、メーカを厳選しながら。 まあ、試行錯誤しながらやっていますよ。」

社長:「ECは本質的には箱物。大型倉庫は必要。お金も必要だ。うちがやるのはB2Bだけ。wholesalesだけ。下着にまつわるものだけ。 売上は今後250億円まではキャパがある。250億円はいきたい。今期中に骨格を貯めて、来期の頭11月には中期計画5年計画。 全部自分たちでやる。 いまの客はスマホで買うだけ。webにこだわってもしかたないと考えている。 」

アナリスト:「女性が多いので組織運営で、とくに気をつかっている部分はありますか」

社長:「社員を平等に扱うことが重要だ。 やっていけないことは特別扱い。 たとえば「飲みに行こうか」といいたいが、組織には飲めない社員もいるわけ。そうした、飲めない社員はえこひいきをちゃんと見ている。 社員は公平性を求めている。

障害者の社員が大切。彼らの目線に経営レベルを合わせている。障害者はいま6名雇用しているがそこに合わせている。

できるだけ、若い社員にも仕事を任せることも大事。あと、共通なこととしては、社員を褒めるならば、全員の前で褒める。社員は認められたいというのはあるが、別に上司のためにやっているわけでない。顧客のためにやっている意識、そこが大事だ。

そうすれば、ぶれない。ぶれないと結果として、売り上げが付いてくる。

 人事評価は、管理査定している、社員同士に任せている。チームでやっていこうという雰囲気を出したい。 チーム運営は、適正化は無理。すべて、雰囲気などを察しながら、あるときは我慢して。社員の性格は変わらないし、人間は変わらない。 うちは、女性の会社です。 そして、市場調査もスタッフがやっている。うちの社員はメーカの内情とかもとてもよく知っている。 新卒採用は、重要。7年前からリクナビで新卒を始めた。 11名とった。 新卒採用は続けている。 来月も3名入っていくる。 若い子を入れないと将来が不安だ。 それまでは中途採用中心だった。新卒いれると中の風が吹き、先輩が育つ。 いまの若い子は優秀だ。 社員にも採用プロセスに参加してもらっている。二年目なのに、面接している。そして、自分たちで勝手に落としている。 以前、トップが勝手に採用すると、現場は不満だった。役に立たん社員ばかりまた入れはったわといわれる。勝手に入れらたと思うと、社員同士に壁できる。よくなかった。だから、 面接は下っ端の社員でも参加。わたしも採用には関わったよね、としないとダメなんだ。 2年目社員がグループミーティングを仕切っている。 そうすると、みんなで採用したねとなり、コミュニケーション的には問題がなくなる。ただし、同じような子ばかりになるが。 今風の社員が多くなる。」

アナリスト:「成長の手応えは。」

社長:「日本ではECは着実に追い風だ。 バックステージ7年たった。ここ竹田で自分たちでやってきた。one-stopでやってきた。 だから、コスト的は競合より安い。外注で業務を外に投げると高いし遅い。 自分たちのノウハウが蓄積できた。いま、打って出るときだと判断した。」

アナリスト:「社長、今日は貴重な時間をいただきありがとうございました。50億円の会社が250億円を目指す。その成長への意思を感じることができました。頑張ってください。わたしどもも微力ながら応援したいと思います。」

 

2018年12月27日銘柄研究所

Posted by 山本 潤