2928 RIZAP ー変身の時ー  by yamamoto/usa

2019年6月20日

この記事はわたしが主催する定額運用サービス、[10年で10倍を目指す超成長株投資の真髄]のサロンサービスのうち、過去のライブラリーから、投資判断やバリューエションの部分を全面的に削除した上で、企業研究のレポートとして再編集したものです。フルバージョンをご覧になりたい方は、以下のURLから会員登録をお願いします。                        ※当記事は2018年11月10日に執筆したものを再編集したものです。

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|転換期
RIZAPの株価は現在、2017年の高値から株価が8割の下落となっています。

2019年3月期の業績発表で93億円の営業損失を計上しました。去年度比でみると211億円もの大幅な落下、赤字転落です。

大幅な営業損失計上の理由は主に以下の3つです。

1)計画された企業買収を凍結したことで予定していた負の暖簾(暖簾)が得られなくなったこと
2)過去の買収先の業績が計画以下であり、在庫の評価減、暖簾減損を余儀なくされたこと
3)買収先の追加リストラ、店舗閉鎖等が不可避になり一時費用が発生すること
などです。

|負の暖簾
RIZAPの過去の主要買収先である23社中、10社に負の暖簾が計上されています。

負の暖簾とは、企業買収において、買収先の簿価(自己資本)よりも買収価格が低いとき、その差額です。

負の暖簾が発生する企業は、成熟企業であり、将来の見通しが立て難い事業を営んでいます。
また、負の暖簾の活用は「会計トリック」と呼ばれる利益かさ上げの手法のひとつです。
ですが、これは違法ではありません。

負の暖簾が発生する企業とは、つまり、PBRが大きく1倍を下回る企業であって、
以下の特徴を有します。

1)事業に強みがない
2)シェアが低い
3)価格交渉力が低い
4)利益が創出できないか利益率が低い

これらの企業は、本来、「買ってはいけない」企業です。

PBRが1倍を大きく下回る企業をたくさん買えば買うほど、負の暖簾という期間利益は増えます。
PBRが1倍を下回る事業は赤字もしくは低収益で成長のない事業です。
負の暖簾を多用することが、本当の意味での「企業成長」であるはずはありません。

むしろ、PBRが低位の「ガラクタ」を買えば買うほど、RIZAPはどんどん成熟企業になるはずです。
「ガラクタ」効果により、RIZAP自身のPBRもどんどん下回っていくと考えるのが合理的な判断です。

|ガラクタを買って成長するというパラドックス

「成熟企業を買うことが成長を牽引する」

これは明らかにパラドックスであり、いつかは破綻する戦略です。

18年6月にカリスマ経営者として招聘し、19年3月期決算発表へ至るまで構造改革への監督を務めた松本氏は、買収先のいくつかを「壊れたおもちゃ」と称しました。

—  手段が目的化してしまう —

企業買収先の業績を本格的に回復させるためには、その買収先がよい製品やサービスを提供できるポテンシャルがなければ無理です。
あるいは、そこで働く人々が、ぐっとやる気になるなどの買収先社員のモチベーションの向上が不可欠でしょう。
買収はそんなに簡単なものではなく、失敗する買収も多いのです。

RIZAPには、はっきりとした本業があるので、本業のやり方が通用する買収をすれば成功する確率も高いのです。
ですが、総数で80社を超える買収先の中には、得意分野ではなく、シナジーが期待できない買収が数多く存在します。
そこが問題だったのです。

企業の利益成長は手段であって、それ自体は目的とはなりません。
お金は単なる道具であり、生きる目的とはならないのと同じ理由です。
社会にこれまでにない付加価値を提供し、人々の生活を支え、人々を幸せにすることは、企業存続の目的になりえます。
結果として利益の成長が後からついてくるのです。

利益成長が手段ではなく目的となってしまうと、手段である企業買収も目的化してしまいます。
企業買収は、企業の自己実現のための手段に過ぎないのに、買収自体が目的化してしまったのでしょうか。

—  瀬戸社長の役員報酬の全額返上 —

RIZAPは昨年の構造改革途中に瀬戸社長の役員報酬の全額返上を発表しました。
それも230億円の営業利益を超えるときまで返上するというのです。

通常、企業経営というものは、経営陣全員が責任を負うものです。
ところが、RIZAPでは瀬戸社長一人が責任をかぶる形になりました。
ここに、瀬戸社長の仲間への思い、投資家への決意、自身の覚悟が垣間見れます。

こういう男気を粋に感じる投資家も多いと思います。
社長一人が無給という責任をとったことになるため、社員も団結してくれるのではないでしょうか。

やはり、瀬戸社長は他の経営者とは違う何かを持っている人だとわたしは思います。

わたしからみた瀬戸社長は、「見えないものが見える人」です。
三日坊主市場という潜在的には膨大な市場を収益化した天才経営者です。
ダイエット、英語、ゴルフと領域を伸ばし、「人は変われる。」を証明してきました。

これからのRIZAPは、本業への回帰によって、本来の持続可能な成長に立ち戻ることができるでしょう。
まだ若い瀬戸社長は経営者として、一皮むけることを期待したいと思います。

それでは、転換点を迎えたRIZAPの現状はどうでしょうか。

|ボディメイク事業の将来性

本業のボディメイク事業は高収益です。
セグメントでは美容ヘルスケア事業となりますが、同セグメントの年間売上はざっくりと800億円程度です。
広告費用が最大の費用となりますが、年間60億円から80億円規模の営業利益を稼ぐ力がある事業です。

今後は法人需要の開拓、海外需要の開拓で利益率は落ちるかもしれませんが、利益額は確保できるでしょう。
また、競合の厳しいゴルフや英語、料理といった新規参入する市場ではかなりの苦戦をするでしょう。

瀬戸社長の今後の事業展開力に期待をしたいところです。

|リスク
リスクはボディメイキング事業の一般的にみれば「非常に割高」とされる会費です。
参入障壁が低いため、模倣が可能です。これが懸念材料です。
本業での競争が激化し、大幅な値引きが日常的になり、平均単価が下がる局面になれば、コア利益は半減してもおかしくはありません。

2019年6月20日銘柄研究所

Posted by 山本 潤