BRANU(460A)現場起点で積み上げた建設DX、評価は見極め段階
1. 変化を迫られる小規模建設業界とBRANUの立ち位置
建設業の現場は、工程が多岐にわたり、かつ天候など予定外の要素に左右されるため、基本的には計画通りに進まないことが多い。そのため建設業は戦前より、専門スキルを有する職人単位が日々柔軟に対応できる仕組みで成り立ってきた。
戦後は、高度経済成長期における旺盛な建設需要を背景に、こうした職人単位の生産体制が元請・下請構造として定着していく。その結果として現在まで、小規模な建設事業者が全国に多数分散して存在する状況が維持されてきた。
正確な予測がしづらい現場を回すため、小規模な建設会社にとっては、社長や現場監督が都度意思決定を行う運営スタイルが合理的。そのため業務の標準化やシステム化は後回しにされやすく、DXの導入は他業種と比べて遅れて推移してきた。
しかし近年は、じわじわと進行する人材不足や、2024年からスタートした時間外労働の上限規制をはじめとする就業規制の強化を背景に、これまでの運営手法では立ち行かなくなる現実が急速に迫っている。
BRANUは、こうした小規模建設事業者を主な対象としてサービスを展開してきた。手掛ける事業は大きく3つ。1つ目が、2009年に開始した個社向けオウンドメディア構築支援サービス。2つ目が、2014年に開始した建設事業者同士をつなぐマッチングメディアの運営。3つ目が、それまで時代状況に応じて個別に提供してきた各種ツールを、約2年前から統合して提供している業務支援SaaS。
これら3つのサービスが、変化を迫られる小規模建設業者の現場で実際どのように受け入れられているのかの検証も踏まえつつ、同社の事業と成長性について分析していく。
2. 現場起点の思考で積み上げてきた事業
2-1. フェーズ1:建設業特化のHP作成支援で先行優位を確立
同社は創業年の2009年、小規模建設業者向けに、HP作成を中心としたオウンドメディア構築支援のサービスを開始した。当時は、建設業界に限らず多くの中小企業はまだ自社サイトを持っておらず、HP作成そのものに価値があった時代。このため、さまざまな業界でウェブ制作支援を行う事業者が登場していた。
創業者の名富氏は実家が建設業を営んでいたため、建設業界のニーズを把握しやすかったとみられる。また、ITソリューション企業で実務経験を積んできたこともあり、このビジネスモデルを発想しやすい立場にあったと考えられる。
このサービスは一定の成果を上げていったものとみられ、拠点は都内から、創業3年目に大阪支店、4年目に福岡支店を開設し、関西および九州へと営業拠点を広げた。建設業界に特化したオウンドメディア支援を早期に立ち上げたことで、同社は先行優位性を確保し、認知と顧客基盤を広げていくことができたとみられる。
その後しばらく拠点拡張は見られなかったが、2025年9月に仙台支店を設立、再び営業エリアの拡大に踏み出している。東北6県には推定約3.5万社の建設業者が存在している。東京都(約4.5万社)、大阪府(約4.1万社)、九州全体(約4〜6万件)といった、これまで展開してきた地域と同規模の市場となるため一定の成長期待はできるだろう(参照元:国土交通省「建設業許可業者数調査の結果」)。
2-2. フェーズ2:案件と人材をつなぐマッチングメディアへの展開
創業5年目の2014年、同社は、オウンドメディア構築支援とは別に、建設事業者間の案件と人材をマッチングするメディア「CAREECON」をローンチした。
同社が対象とする小規模建設業者は、職務が流動的で現場が地域に限定され、単価が必ずしも高くない一方、建設業経験者という専門性が求められる。そのため、人材や協力業社を案件単位で探すことができるマッチングメディアは、業界特性と相性がよかったと考えられる。
「CAREECON」は建設業に在籍していれば個人が無料で登録できるサービスで、開設から11年を経た現在の登録ユーザー数は5,000人弱と、緩やかに成長してきた。
「CAREECON」の登録者の中には、有料オプションを利用し、掲載順位の優先表示や広告掲載を行っている事業者も含まれる。これらの売上についても、急拡大が望める性質のものというよりも、登録者基盤の拡大に連動して、今後もゆっくりと積み上がる収益と考えられる。
2-3. フェーズ3:施工管理SaaSへの挑戦と位置づけの変化
2019年、同社はそれまで提供してきたオウンドメディア構築支援およびマッチングメディア「CAREECON」とは趣の異なる取り組みとして、施工管理専用ツールをSaaS型で提供開始した。
当時は、人手不足の解消を目的としてICT施工を進めるi-Constructionを国交省が2016年に立ち上げて間もない時期であった。また、業界を問わずSaaS化が一段進んでいた時期でもある。同社もこの潮流に乗って、事業の拡大を狙ったものと考えられる。
しかし、リリースから3年後の2022年には、同サービスはCMSやマッチング機能などとあわせて、同年にリリースされた「CAREECON+miniプラン」(以降、ミニプラン)に統合され、施工管理機能はその一部となった。おそらく、単体サービスとしては想定ほどの成長に至らず、主軸から補完的な機能へと位置づけが変化したと思われる。
施工管理の分野では、当時すでにアンドパッドやスパーダープラスが同社の数年前から参入していた。この2社は施工管理に特化し、一定規模以上の建設業者を主な顧客としている。一方、同社が対象としてきた小規模建設業では、現場運営が属人的かつ非定型で運営されてきていたため、施工管理ツールの導入そのものの難易度が高かったと考えられる。
2-4. フェーズ4:機能統合による「CAREECON Plus」への収束
ミニプランのリリースと同年の2022年、今度はSaaS型単体サービス「CAREECON 採用」をローンチ。そして翌年には、「CAREECON 採用」やその他単体サービスをミニプランに統合させて、アップセル版として「CAREECON Plus Standardプラン」(以降、スタンダードプラン)をリリース。
単体→パッケージ→また単体→さらに大きなパッケージという順番のリリースは、行き当たりばったり感が否めず、こうした経緯の終着点として、方向性の異なる、CMS、施工管理、採用全てを一つにまとめて整理するところに落ち着いたものと見られる。
3. バリュエーションのしにくさ
BRANUは売上を、フロー収益の「CARECOON」事業と、ストック収益の「CAREECON Plus」事業の2つに区分している。しかし、それぞれの事業内には複数の収益導線が混在しており、どのサービスが成長の源泉となっているのかを把握することは難しい。この分かりにくさは、サービスが段階的かつ試行錯誤的に統合されてきた結果を、後追いで2事業に整理しているからだと考えられる。
「CAREECON」事業には、創業以来の主力である個社向けオウンドメディア構築支援による売上と、マッチングメディア「CAREECON」における有料オプション収益が含まれている。両者は収益モデルや成長ドライバーが異なるにもかかわらず一括で開示されており、どちらが売上成長を牽引しているのかを判断することができない。
「CAREECON Plus」事業も、ミニプランおよびスタンダードプランの売上が合算されて開示されている。また、契約動機も顧客ごとに異なり、CMS機能の継続利用を主目的とする企業、施工管理や採用機能の利用を目的とする企業が混在していると見られる。このため、顧客行動の分解やプロダクトごとの評価が困難となっている。
KPIの開示についても同様である。例えば、スタンダードプランの契約社数は、23/10期の5社から24/10期には153社へと増加しているが、その内訳は新規契約とミニプランからのアップセル契約が合算されており、区別されていない。仮にアップセル比率が高い場合、次期以降に同様の成長を再現できるかどうかの判断は難しくなる。
また、ミニプランの契約社数についても、過去にHPを構築した企業がCMS機能のみを利用して継続しているケースと、施工管理や採用など他機能の利用を目的とした契約とが合算されている。そのため、どの機能が需要を喚起しているのか、成長の要因を特定することができない。
もっとも、ミニプランの契約社数は23/10期の2024社から24/10期は2,248社へと1年で増加しており、アップセルによる減少分を加味すると、年間で数百社規模の新規契約が積み上がったと推測される。アップセル率も約10%とされ、建設業向けDXサービスとしては健闘している部類に入るだろう。ただし、その背景にある需要構造や顧客の利用目的が開示されなければ、同社が本質的にどの領域を主戦場としているのかは判然としない。
売上が伸びていること自体は確認できるものの、何が成長を牽引しているのかが見えにくく、中小建設事業者のどの課題に最も強くアプローチしているのかを読み取ることが難しい。結果として、事業の将来像を描くことができず、投資判断を行いにくい。
ここ数年の株式市場では、上場維持基準の厳格化とともに、事業価値の可視性が重視されてきている。同社の場合、現状の開示姿勢のままでは、一時的な株価のアップダウンはあったとしても、中長期的投資によるコンスタントな上昇は必ずしも望みにくいだろう。仮に5年後に時価総額100億円規模を目指すのであれば、今後の開示改善が重要な課題となるだろう。
参考:売上高と営業利益率の推移

4. 創業者支配型経営と上場後の論点
BRANUのIPOは、新規発行500,000株、既存株主による売出がOAを含めて799,500株、売出人は創業者で現代表の名富達也氏のみ。
IPO後の名富氏の持分は約33.6%。名富氏の資産管理会社と見られる株式会社名富の持分を合算すると、3,310,000株/4,500,000株=約73.6%となり、上場後も支配権は極めて強い。
上場後も創業者が支配権を維持するオーナー経営型である同社は、将来的には創業者持分の段階的な放出が行われるケースや、持分を高水準で維持したまま長期経営を続けるケース、成長フェーズの節目に合わせて戦略的に一部放出を行うケースなどが想定される。いずれの場合においても、株式需給やガバナンスの変化には継続的な注視が必要となるだろう。
以上

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